倒壊した家屋で路地が塞がれてしまい、避難および救助が難航する場面があちこちでみられました。この状態では、火災が発生した場合に延焼の危険が大変高くなり、消火活動も行えません。対応策は、1)まず、家の構造を丈夫にして耐震性能を上げること。家の中にいる人の生命を守るためにも不可欠です。これは全ての建物を鉄筋コンクリートで造れ、ということではありません。在来木造工法でも、きちんと設計施工されていれば、必要な性能は確保できます。
2)道幅を広くすること。消火活動の為に必要な最低限の道幅を確保することは、法律で定められていますが、古くからの地区では極度に狭い路地も多く見られます。ここでは、日常の利用と災害時の安全のバランスを考えて、適正な幅員を確保する必要があります。
3)街路樹を植えること。木や電柱は倒壊して被害を大きくする場面もみられましたが、一般的には道路や人を倒壊物から守ってくれることの方が多いです。延焼を防ぐのにも効果的ですし、日常的にも潤いを与えてくれます。
被災地域において、学校施設が避難と復旧の拠点となった地区が多数見られました。校庭が火災からの緊急避難所となり、体育館は仮の宿泊施設や医療施設となり、プールの水や備蓄食料も利用されました。情報の交換や緊急物資の集配備蓄も行われ、後には仮設住宅の建設が行われた事例も見られました。少子化など家族構成の変化により、小中学校を中心としたまちづくりは時代遅れであるという意見もみられますが、災害時において学校施設が重要であることは震災を通じて再確認されたと思います。今後は、学校施設の耐震性能および緊急対応機能をさらに高めていくと同時に、就学児の有無にかかわらず、多くの周辺住民にとって日常から親しまれる学校づくりが望まれます。
学校施設と並んで、避難と復旧の拠点となった施設は公園でした。火災時には延焼から守られた空地となり(注:関東大震災で熱風に見舞われた例もあります)、その後はテントや仮設住宅が設置され、緊急物資の集配備蓄も行われました。日本の都市部における公園の不足は指摘され続けていますが、今後はその整備を具体的に進めていくことが求められます。
震災時には多くの怪我人が発生し、その後日数が経つに連れて心身の病気を患う人も増えていくため、病院の機能が大変重要になります。そこに求められるのは、1)入院患者や医師などの人命を守る丈夫な建物あること、2)医療機器が地震の揺れで破損しないよう設置されていること、3)十分な量の医薬品が地震の揺れで破損しないように保管されていること、4)医療機器が停電時でも動かせる補助電源、5)救急患者の緊急輸送手段、6)他医療施設との連絡をおこなう通信設備、などです。阪神大震災では、地震の衝撃に耐えられない施設、また建物は平気でも診療・医療機能が麻痺してしまった施設が続出し、大きな問題となりました。今後の大きな反省点です。
人と人とのつながりこそ、避難や救助における最も初歩的かつ重要なことです。被災地では隣近所の助け合いが多くの人命を救いました。一人暮しが増えるなど家族構成が変化し、また外国人の増加などもあり、都会では隣人の顔すら知らない場合が多くなりましたが、これは災害時には大変危険なことです。プライバシーが十分に確保され、かつ人と人とのふれあいのあるまちづくりが望まれます。
神戸市民に親しまれた阪急三ノ宮駅は地震動で構造的に大きな被害を受け、取り壊されてしまいました。異人館などその他の神戸のシンボル的な建物にも修復不可能な被害が見られました。歴史的に重要な建物やまちのシンボルとなる建物の保存は、まちづくりの一貫として行われるようになってきていますが、保存からもう一歩踏み込んだ耐震補強工事が行われることは、予算などの制約によりあまり普及していません。保存や耐震補強の是非については、費用が予算に占める割合も重要ですが、お金に置き換えられない建物の価値をも考慮することが必要です。
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