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忙しい忙しい。
それでもウェブ巡回はやってる今日この頃です。
一体いつやっているのだか。
で、ネットを巡ってれば他の人の書評にも出会います。
これは面白いと勧めてあるのを見て、ヨダレがキーボードの上に垂れたりします。
いや、結構マジです(きたねー)
それはそれとしておいて、もとい。
という事で、今回はネットの中で見つけてきた、
あれやこれやの書籍について語りたいと思います。
残念ながら早川濃度は0になってしまいます。あしからず。
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という訳で、読みたてのほやほやの児童文学から。
バンシーの夜 | 船井 香 |
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ハードカバー A5版 1999年 初版発行 ISBN4-52-639875-1 |
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なんとはなしに のださんち の 日記 を 見てて、 これは面白そうだと思って慌てて手に取ってみた一冊。 (のださんへ、ここに感謝。) その評価をみるに、最近読んでなかった「科学小説」の匂いを強く感じる、 これは読まねば、という事で、早速読んでみたのでした。 結果は。 いろんな意味で、期待を裏切りませんでした。 久しぶりに酔って読めました。 なんていうかね、胸の中のね、痛い所にね、直接当たるんですよ。 おいらも歳をとったもので、児童文学というと、なんていうか、こう、 一歩離れて眺める、斜になって見てしまう所がある訳です。一所懸命な機関車を見て、 「おう、頑張れ頑張れ」と、クーラーの効いた部屋から、頬肘つきながら言う、 そんなみたいな。 ところが、今回はそれがなかった。 ある種、既に作者がそういう冷めた目線を持っていて、 それで書いているからかもしれない。 登場する子供らが、そういう現代っ子な感覚、冷めた、 そして醒めた気質を持っているからかもしれない。暖かくない。 なのに、これが気にならない。鼻につかない。 (今巷に流れているノベルズとか現代小説とか、 あの辺が苦手な私にはこれは美味しい驚きでした。 客観的にみたら同じ様な文体のはずなのに、 何故にあれは駄目でこれは大丈夫なのかなあ。 児童文学だからかな。あ、そうか、そこか。<脱線。) 暖かい、とは又なんだか違うベクトルの、新しい形の「仲間」を、 この本は提供してくれています。 「冒険者たち(ガンバ)」「兎の眼」「小さい勇士物語(ミス・ビアンカ)」。 私の黄金の児童文学ラインナップな訳ですが、それらと一脈通じる部分があります。 もちろん違う味なのにです。 「仲間」でありながら「仲間」でない関係。 「仲間」でないのに「仲間」である関係。 新しい関係。 この感覚は、「僕らは機関車太陽号」で味わった、 学校という世界でも形のある無茶ができるんだと判った時の「驚き」 に近いかな。 「忍術八郎ざの冒険」とは、ちと遠いか。 実はまだ未読なのだが、ひょっとしたら 「ブギーポップ」に近いのかもしれない、とも思う。 あらすじ。 妹の寝言が、翌日自分の夢の中で「現実化」する。 主人公は、そんな不可思議な現象に出会う。 やがて主人公は同じ現象をあらわしている同輩小学生らと出会う事になり、 彼らと共にネットワークを組み、この謎の観察と原因の追跡をはじめる。 その間にも緩やかに離れていく仲間、新しく入ってくる仲間。 いつしか皆は深部へ、更に深部へと探索を続けていく。 全てが、許されていて、そして、制限されている、その夢の中で。 全部を判りあえる相手を「親友」というのなら、彼らは決して「親友」ではない。 全く判らない、理解できない、そんな不透明な部分を幾つも抱え込んでいる 「ソレ」とでも呼びたくなる存在は、むしろ潜在的な敵でさえある−− 読者である私には、そういう思考に考えが進む。 だが、作中の人物である彼らはそうはならない。お互いを判っていないにも関わらず、 お互いを認めていないと組めない「ネットワーク」を組み、維持し、 そしてその構築を通して謎の焦点を絞り込み追い詰めて行く…… おっとっと。そうそう、この話、元来の目的だった 「科学小説」(特に”科学”の部分に重点をおいて発音。) としての味も楽しめます。でもまあ、こちらは、 のださんの方の書評で奇麗かつ充全に表されているから、まあいいか。 小学生の時に学校で見た、NHKの教育テレビとか、覚えていますか? あの時のあの味再び、です。「知識」を「物語る」事で与えてくれる。 いやあ、満足、満足。 この本、あちこちを廻ってみているに、なかなかに入手困難な本のようです。 私は箕面の図書館で棚に載っているのをみつけて、 サクッとそのまま学校を半日さぼって読んでしまった訳ですが。 次に行った時にはなくなっていましたから、 やっぱ人気があるんでしょうね。 それにしてもあの図書館。こんな本をこんな速攻で入れているとは……(笑) やはり図書館員の人にソノ筋の人がいるとみた(笑) 会ってみたいなあ。多分、あそこのアレとかアレも、 同じ脈によるモノと思う訳だけど……さて…… 発掘 Reference |
珍しく日本人で、更にハードカバーが続きます。
その次には同じく日本人で、今度は文庫本。
大宇宙の屍・完全復刻版 | 狂沢 瞬 |
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ハードカバー 原著1983年 発行 ISBN 背中になし |
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なんとはなしにハードカバーづいてますね。 なんでネットの書評に文庫本は少ないんだよ。財布が痛いよ。 ……いや、痛くないように、実は図書館なんですけどね。 これの原著はかなりに古い。そして紙面にもその味が残っています。 夏目さんとか寺田さんとか、って、 ひきあいに出すのにそんなのしか知らないんですが、あれと同じ調子です。 旧かなっぽい漢字の使い方。紙の中の文字と空白の比率。 そして描かれているのも、まさしく正当派のノリです。 いわく言い難い、日本のSFの黄金期、いやもっと古くからあったのかな、 更科日記とか、そういうのに通じる私小説系の匂いというか。「古典」 ですね。こんな乱暴な総括でニュアンスが伝わるかどうかはともかく。 それやこれやが重なって、私はこの本を「今の」本としてでなく、 「昔の」本としてタンノウしました。おじいさんの本棚から、 こっそりとって来て、押入れの隅でこっそり読むような。 夕方が迫ってきて、どんどん暗くなる中で明りもつけずに読むような。 そういう偏見ファクターが入っているので、 逆に私には点が甘くなってしまっています。 冷静に見直せばコウトウムケイというか、 かなり無茶な筋立てをしてると思うんですが。 懐古な品物なんだからと許してしまう。 あるいは、サンリオとかに近い思い入れがあるのかもしれないですねえ。 最新という訳でも正しい科学という訳でもないのですが、 「あの時代」の風を懐かしみながら読む、みたいな意味で、大吉。 あらすじ。 孤立した宇宙船において発生し続ける怪異。 それはただの「ミステリー」として終るかに見えた。 だが、出された答えは次々と破綻をきたし、更に謎を提供する。 そう、それはただの「ミステリー」ではなく、「宇宙」との、 「エイリアン」との戦いでもまたあったのだ! 正答、 誤答を含めて常に物語をひっぱり続ける主人公はマッドサイエンティスト。 ね、ほら、なんだかちょっと古い舞台だて、人の回し方。 懐かしいとかって意味が通じますか? だから逆に、褒めてていいのかなあって所もね。 発掘 Reference |
無謬の町 | 上谷 伸治 |
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Shinji Uetani 一九九九年発行 ケイセン文庫JA ISBN4-1104-1-050518-8 |
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目次。
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で。ようやく海外本も。やっといつものペースかな。
電脳走査線ハイッバー・コップ | ジョーン・B・ニシカワ |
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Hybrid Cyber City |
Gorge B. Nishikawa 一九九九年初版発行 1997 アラカワSF文庫NEXT ISBN4-1501-1666-037564-X |
う、う〜ん。これは…… なんだかよく判りません。結構読み終るの苦痛だったかも。 相性ってもんなんでしょうね。 私にとって、これは、ディックに近いかもしれません。 ワイドスクリーンバロックとか、それに、実はサイバーパンクとかも、 あんまり俺とは相性が合わないんじゃなかろうか、と思う今日この頃。 どういったら言いのかな。起承転結というか、理路整然というか、 そういう筋がきちんと一本あって欲しいんですよ。感性の暴走とか、 めくるめく感覚とか言う前に。 調子にのってたったかたったか書いてるだけのは、なんというか。 もちろん、筆の滑べりはずるずるしてるよりは軽快な方が良い訳ですが。 軽快さは保証ですかね。なんの用語説明もないままに、 ただひたすらにつっ走ります。別の所では、これが「ノリ」 として評価されてるんだろうなあ。 おいらにはただただ意味不明、不親切、に映るわけですが。 話の中身も、こう、うすっぺらい。舞台が大阪なんですが、 あれですね、例のハラキリゲイシャな歪んだ 日本感がそりゃもうばっちりでして、 俺的には全然嬉しくない。町中にチョンマゲ結った通行人が出てきましたぜ。 それも大真面目に。ギャグじゃなく。 ふざけろ、けっ。 あらすじ。 未来の大阪。警察に勤める主人公の相棒に、 今回急きょ指名された相手とは……一部ではあまりに有名な、 例の暴走サイボーグ女だった。折しも臓器売買に絡んだ大きなヤマが発生。 二人はなりゆきにどうしようもなく、 ペアを組んでこの捜査にあたる事になるのだが。 どうにも噛み合わない歯車もそっちのけにして周囲に近寄ってくる危機また危機。 どうやら、なにかやばい所に踏み込んだらしい…… ある種の「パロディ集大成」としてなら評価があるのかもしれない。 「レッドシフト・ランデヴー」とか……って、比較に出したら失礼か。 やめやめ。 発掘 Reference |
時間流刑 | クリストファー・J・J・チャーノック |
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TIME EXILE |
CHRISTPHER J. J. CHARNOCK 1999年発行 1997 由文社海外ノベルズ選書 ISBN4-1501-117-444595-X |
ヤードリー記念賞受賞。 これは、可もなく不可もなく。及第点なSFでした。 でも、強烈に惹かれる部分というのは少なかったかな。 つまりは「双子の地球」「もう一つの別世界」の系列を踏んだSFでして。 ひねりというか、定番に留まってしまっててもう一つが足りない、 という所でしょうか。 この人の他の作品には期待。 あらすじ。 死刑のない、文化の発達した、未来の地球。そこは一見ユートピアに思えた。 それも当然。「適性」がないと判断されたものは、 高度な科学技術や知識を封じられた上で、局地へと「流刑」に処せられるのが この世界の不文律だったからだ! 主人公はこの世界の常識を自身の常識として身につけている、 本当に(その世界では)普通のサラリーマン。ある日、 エン罪をかけられて島流しにされるまでは、確かにその通り。 だが、ひとたび流されて来た彼に復活の手立てはない。周囲を見回せば、 そこに居るのは同様に流され来た「社会不適格者」ばかり…… いや? そうなのか? 果たして本当にそうなのか!? 物語は徐々に展開を始める。 と、こうしてみると、これは「宇宙商人」などにも似た味を思い出させる。 「反逆の星」 (だったと思う。鉄が通貨になっているミュータント惑星の話) とかとも一脈通じる所があるかもしれない。 ある種「はみだし者」たちが活躍する話であるだけに、 私の趣味の琴線には非常に触れる、というか、触れてもいいはず、 だったんだけど。 そして最後に襲ってくる大どんでん返し。 やられたと言えばやられたなのだが、これもありきたりと思えばありきたり。 判っていながらそれでもやっぱりやられたよなあ、しみじみ、とかとは、 うまく言い難いのであった。 しばらく時間をおいた上で再読すると評価があがるかもね。 そういう事は、おいらの場合、森岡さんとかでもありましたから。 発掘 Reference |
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