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All people be HAYAKAWA'N

<<一億総ハヤカワ化計画20>>

積ん読消化
: Presented by IPPO :

 枕元に積んどいて、かたっぱしから片付ける。そりゃもう節操も脈絡もなく。
 そうやってなんとか未読を消化し続けてきたはずなのに、 なぜかこの洗脳計画の進捗ははかばかしくない。 おやおや? とHDの中身を整理してたら……結構出てきましたね、 カケラ達が。という事で、カケラ達を一挙御紹介。
 ……と、いきたかったんだけど。なんだ、これ、なんかまとまりがねえなあ。 あれをこっちに持ってきて、それをそっちで……

 「名作」と「駄作」の入り交じった御紹介になります。 狙った訳でもないのですが、見事に交じりましたね。まとまりがないなあ


中継ステーション クリフォード・D・シマック
WAY STATION Clifford D. Simak
ファウンデーションの誕生(上・下)
《銀河帝国興亡史 7》
アイザック・アシモフ
FORWARD THE FOUNDATION Isaac Asimov
キリンヤガ マイク・レズニック
KIRINYAGA : A FABLE OF UTOPIA Mike Resnick
アイヴォリー
−ある象牙の物語−
マイク・レズニック
IVORY Mike Resnick
第二の接触 マイク・レズニック
SECOND CONTACT Mike Resnick
デクストロII接触 イアン・ワトスン&マイクル・ビショップ
UNDER HEAVEN'S BRIDGE Ian Watson & Michael Bishop
神の鉄槌 アーサー・C・クラーク
THE HAMMER OF GOD Arthur C. Clarke
垂直世界の戦士 K・W・ジーター
FAREWELL HORIZONTAL K.W.JETER
ナイトサイド・シティ ローレンス・ワット=エヴァンズ
NIGHTSIDE CITY Lawrence Watt-Evans
広瀬正・小説全集・1
マイナス・ゼロ
広瀬 正
   

 まずは伸ばしに伸ばしていたこれより。
 名作。


中継ステーション クリフォード・D・シマック
WAY STATION Clifford D. Simak
昭和五十二年初版 1963
ISBN 背中になし

 ヒューゴー賞受賞。

 ああ。
 SFだ。

 そういってため息をついて、そして、それだけで満足してしまって、 本をたたむような。
 なんって、そういう、満足の吐息の似合うSFな事だろうか。

 最近のすねてしまったSFにはない、「良きSF」の味がします。
 安直、古くさい、そういえばそうですが、でも。
 私は、こういうSFを読んで育ったんです。
 お勧め。

 特に中盤の展開は、ニヤニヤしながら一気に読みました。
 読後感は、終章を読むか、読まないか、で、少し変わりますね。
 私は、どっちの方がいいのか悩んでます。
 読み終ってすぐは、終章なんかない方がよかった、と思ったのですが。
 思い返し反芻するうちに、う〜ん……

 登場する、どのキャラクタにも(私は)思い入れたっぷり。
 いいっす。


 あらすじ。
 中継ステーション。
 地球の片隅、誰も訪れない様な、アメリカのど田舎に建っている、一軒屋。
 誰も知らない。ここが、銀河文明圏の辺境ステーションである事を。
 沢山の宇宙人が、ここを訪れ、そして更に宇宙の深部へと転送されていく。
 主人公は、ここの管理人だった。
 何年経っても年をとらない彼を、 周囲は田舎特有のボクトツさと無感心で許容している。 近所に住む、聴けない、喋れない少女との、微かな友情もある。
 とても静かに、管理人は暮らしていた……

 某名作シリーズ物のラストとか。
 このシリーズもここまで来たら、ぶっちゃけた話息切れか?


ファウンデーションの誕生(上・下)
《銀河帝国興亡史 7》
アイザック・アシモフ   [TITLE]   [TITLE]
FORWARD THE FOUNDATION Isaac Asimov
一九九八年発行 1993
ISBN4-15-011236-3
ISBN4-15-011237-1

 アシモフの描き続けた「ファウンデーション」シリーズは、 これをもって幕を閉じる。偉大な作家に幸多かれ、あの世でも。

 セルダン老後のお話。派手などんでん返しもなく、伏線の大流もなく。
 なんとなく、作者とオーバーラップしてしまうなあ。
 人生は小さな谷と山の連続であり、それぞれに思いとこだわりがあり、 そして産まれ、死んでいく。
 そんな哲学を思わせる。
 「一人の老人」が産まれて、生きて、死んだ。
 ある歴史の中で。

 「銀河帝国興亡史」 と言えばド派手なものと相場が決まっていただけに (特に初期の三部作にはその感じが強い)、 ちょいと番狂わせな感じを受ける、スカされたというか。

 いや、それはそれで好きな話ではある。

 伏線の大流がない=結構御都合主義かもしれない、 ぐらいは、それでも不満点としてあげておこうか。 こういう所の整合性があの人の職人芸だったのだからなあ。 「ミステリSF作家」アシモフの。

 「誕生」は「死」。
 「死」から始まる「誕生」。
 銀河の「端」にもう一つのファウンデーションを作った、 彼ならではのアナロジーだったのかもしれない。


 あらすじ。
 中年から老年へと年を経て行く「心理歴史学」の研究者、ハリ・セルダン。 その「銀河の未来」を救えるかもしれない学問の完成はいつまでも遠く、 だが、帝国の崩壊は徐々に、しかし確実に続いていく。 いつでも常に障害はなにかしらあり、だが、それにも敗けず、 彼は研究を続けていく。走れずとも、歩き、歩けずとも、例え一歩ずつでも、 1ミリずつでも。
 多くの危機の中、時には力で、時には機転で、時には身分で、時にはスパイで。 ひたすらにセルダンは目指していく。
 確かに銀河の歴史は男と共にあった。
 だが、男は、歴史の中を歩いた一人の男に過ぎなくもあった。
 そして男は舞台から去った。

 歴史は、続いていく。

 あ、それから、近頃話題の本でも。
 ついでだから、この作者の本、 私の読んでる限り一挙御紹介しときましょうかね。


キリンヤガ マイク・レズニック   [TITLE]
KIRINYAGA : A FABLE OF UTOPIA Mike Resnick
一九九九年発行 1998
ISBN4-15-011272-X

 ヒューゴー賞、ローカス賞受賞。

 他、SFクロニクル賞、SFマガジン読者賞、ホーマー賞など15賞受賞、 だそうである。まあ、客観的なデータとして提示しておこう。
 オムニバス長編という事なので、目次も示す。

 目次。
    プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに
    One Perfect Morning, with Jackals
  1. キリンヤガ
    Kirinyaga
  2. 空にふれた少女
    For I Have Touched the Sky
  3. ブワナ
    Bwana
  4. マナモウキ
    The Manamouki
  5. ドライ・リバーの歌
    Song of a Dry River
  6. ロートスと槍
    The Lotus and the Spear
  7. ささやかな知識
    A Little Knowledge
  8. 古き神々の死すとき
    When the Old Gods Die
    エピローグ ノドの地
    The Land of Nod
     作者あとがき
     訳者あとがき


 あらすじ。
 かつて、アフリカの大地には、 神ンガイから農耕を与えられたキクユ族が住んでいた。 やがてヨーロッパ人が現れて彼らを「汚染」した。 いつしか土の家はコンクリートになり、言葉は英語になり、 服は背広になり、かつてキリンヤガであった山はケニアと名を変えた。
 キクユ族は、ケニア人になった。偽ヨーロッパ人に。
 ヨーロッパで教育を受けながらも民族に、血に拘る彼は、再び 「キクユ族」たらんとする。同志を募り、国と交渉を行ない、 環境重力共に調整した、俗世間とは隔離された 小惑星=「ユートピア」の設立を認めさせたのだ。 そこで彼らは、再び機械のない生活に戻る。廃棄ガスのない生活に帰る。 全ての「ヨーロッパ」を排斥し。伝統に基づいた生活に。
 彼もまた「祈祷師」として、部族の伝統の守護者として、その地へ向かう。
 一度は地上で失敗した「楽園」を再び。
 神ンガイと共にある、本当の我々の生活を、再び。
 だが、それは絶えず侵入してくる「ヨーロッパ文化」との闘いだった。


 という話な訳です。
 評価から先に言ってしまうと、どうにも微妙なお話です。
 どうもこういうナショナリズムはいまいちすかん。
 そう、主人公は民族意識に凝りかたまった一人の老人なのです。
 彼の視点は、常に「キクユ族=善」「ヨーロッパ=悪」という信念を持ち、 ゆらぐ事がない。いや、それは単に「差」でしかないと判っているのでしょうが、 「純粋」を保とうとするその闘いは、私には最初から虚しく見えてしまうのです。 混血していく事が、変化していく事が、生き様だと、人にしろ、文化にしろ、 そう認め悟っている(気でいる)私には。
 彼の望む「あるべきキクユ族」の姿は、常に変化の危機に曝されます、 それも内外から。
 特に注目すべきは内側からのつき上げです。そう、真に私が、 おそらく多くの読者が感情移入するのは、主人公ではなく、 その待遇に居る人物らなのです。
 つまりこれは、「敵」の視点から全てを描いた物語、と私には見える。
 この点において評価は高いです。
「嫌われ者」「頑固者」「狭量者」「知恵者」「権力者」 として描かれる主人公。 彼に共感するとしたら、そう、それは、自己嫌悪と共にあるものでした。
 そこを狙っているのなら、そういう意味でも評価は高いです。
 でもね。
 読後が気持ちいいのかというと、そういう訳で、 あんまり気持ち良くなかった訳ですね。敗者の物語でもある訳だし。 はふう。自己嫌悪。

 「いつかはこの御国も消えていく。」
 そういう無常感は、あります。日本人には。
 だから胸にじんとくる人も居るでしょう。というか、 日本人がこれを書いていればそうなっていたでしょう。 そうなっていたら好みだったでしょう。
 でもこの話はそうなっていないです、私的に。
 やはり西洋人が書くと、そういう視点のワビサビが消えますね。
 きっかりかっちりと線をひいて、 そうつまりは勝者か敗者かの目線でしかない訳で。 「拡がり」の手ごたえがないんですよね。

 主人公である彼を「敵」とした時のみ、 死者の視点から見た時にのみ、この物語はそういう「ワビサビ」を持ちます。
 だからこそ多くの賞をとったのだろう、と私は理解しています。
 でも、私はそれでよしとはしたくないですね。 やはり主人公その人に拘りたいです。

 彼は、ある意味自分の過ちに最初から気がつきながら、それを認めない。 イコジに、どこまでも自分に枷をはめ、 ひたすらに最初に決めたナショナリズムの道を突き進む。 彼はそれに全てを賭けたのだから。今更降りては、 それまでの自分が全て無意味になってしまうのだから。
 その、意地の張り方。
 哀れでもあり、やはり自己嫌悪でもあります。

 寂しい物語。
 むなしい物語。

発掘 Reference
  1. 白炭屋さんとか。
  2. 『キリンヤガ』書評リンク集


アイヴォリー
−ある象牙の物語−
マイク・レズニック
IVORY
(A LEGEND OF PAST AND FUTURE)
Mike Resnick
一九九二年発行 1988
ISBN4-15-010960-5

 上に示したのが私のレズニック「第三の接触」なら、 これが私の「第二の接触」(笑)。で、「第一の接触」が 下に示す「第二の接触」。 ややこしいっつうか(笑)

 基本的に、私とレズニックの相性は、悪い。はっきり言って。
 この、タンタンと語られる物語は、どこか感情移入を拒む。 いわゆる諸行無常感みたいなものが、 ある種の日本人にはフィットするのかもしれないが、 躍動感がない。 加えて、詩情というよりは単に冷めてるっていうか投げ槍な感じを与える。
 好きじゃない。
 物語的にも、そうだ。どうってことのない物語、と言いきっていいと思う。
 何故SFであらねばならないのか、と、悩む部分の多い作家。
 売れてるのかね。
 売れてるらしいから私的には不思議。

 これも、前述「キリンヤガ」と同じようにオムニバス長編の形をとっている、 と言っていいよな。
 で、これまた黒人のにいちゃんの話で。部族の誇りが主筋で。
 今度はキクユ族じゃなくてマサイ族なんだけどね。

 ……レズニックって、そっちの国の人なんですか? つまり、 自分の血の歴史を持ってアフリカを語っている? だとしても、ある時は キクユである時はマサイになるのはなんだか許せんなあ。
 もし白人として書いてるのだとしたら、余計にちゃらんぽらんというか、 相手の文化を真に理解して見極めて、 認めてやっているという感触が少ないだけに、 余計に不愉快だなあ。なんか。


 目次。
  1.  賭博師(銀河暦三〇四二年)
       第一の幕間(銀河暦六三〇三年)
  2.  墓盗人(銀河暦四三七五年)
       第二の幕間(銀河暦六三〇三年)
  3.  将軍(銀河暦五五二一年)
       第三の幕間(銀河暦六三〇三年)
  4.  盗賊(銀河暦五七三〇年)
       第四の幕間(銀河暦六三〇三年)
  5.  政治家(キリスト暦二〇五七三〇四二年)
       第五の幕間(銀河暦六三〇三年)
  6.  管理人(銀河暦一六年)
       第六の幕間(銀河暦六三〇三年)
  7.  狩人(キリスト暦一八八五年)
       第七の幕間(銀河暦六三〇三年)
  8.  君主(銀河暦八八二年)
       第八の幕間(銀河暦六三〇三年)
  9.  芸術家(銀河暦一七〇一年)
       第九の幕間(銀河暦六三〇三年)
  10.  彼自身(キリスト暦一八九八年)
       第十の幕間(銀河暦六三〇三年)
  11.  マサイ族(銀河暦六三〇四年)
       第十一の幕間(銀河暦六三〇四年)
  12.  象牙(銀河暦六三〇四年)

     作者の覚書
     訳者あとがき


 あらすじ。
 有能な博物館の鑑定士として勤めていた彼の前に、 奇妙な依頼人が現れた。金に糸目はつけないから、 ある象牙を探してくれというのだ。 それは史上最大と言っていいサイズの象牙であり、 数奇な運命によって現在は銀河のどこにあるのか全く判らないという。
 彼はコンピュータとデータベースを駆使し、 あちらの目録、こちらの新聞からと手がかりを集め、 闇から闇へと渡り歩き続けた象牙の歴史の隙間を埋めていく。
 やがて依頼人がマサイ族であること、それも最後のマサイ族であること、 そして、マサイ族とその牙との間にはなにかがあるらしいこともわかっていき、 ついに象牙の歴史は埋まり、そのありかは判明する。
 判らないのは、あと二つ。
 この物語のはじまりと、そして結末。
 はじまりは依頼人の口から語られ、彼は結末に立ち会う。


 主人公は、知的好奇心だけが取り柄の男。っていうか、 コンピュータと会話させとけば友人なんかいらないってタイプ。 心配してくれる友人はほとんどゴミ扱い。 スポーツとかしない。自分の足で聴き込みとかしない。 ずっと机の前に座り込みタイプ。
 依頼人は、血筋第一主義者でコテコテの民族主義者。 「キリンヤガ」を呼んだ人間なら、 コバリがまた出てるよってだけで通じると思う。
 幕合いは、象牙が人手から人手へと渡っていく物語でもあるんだけど、 要するにオロカモノAがアクニンBに殺されて象牙の持ち主が変わる、 を繰り返す話で、なんていうか、オチどこ? ってかんじ。

 これに詩情を感じれる人もまあいるんだろうねえ。


第二の接触 マイク・レズニック
SECOND CONTACT Mike Resnick
一九九三年発行 1990
ISBN4-15-011004-2

 私が一番最初に読んだレズニック。
 繰り返すけど、私とレズニックは相性が悪い。
 初めて読んだ時は何がどう面白いのあんまり全然判らなかった。
 最近再読してみて、なんとなく良さがわかったかもしれない。
 ハリウッド映画系の楽しみ方をするのだ。文章は落ち着いていて、 淡々としているけど、そこをイマジネーションでおぎなって 「!」とか「っ」とか擬音とか、 そういうのを沢山シーンや台詞に足しながら読むのだ。
 すると結構、こう、カーチェイスな味が出て面白いかもしれない。

 謎の魅力に比べて、オチが弱かったり、展開が安直だったり。
 そういうのも、これはハリウッドなんだからと思えば許せる。
 許せるか?(笑)


 あらすじ。
 主人公は軍に勤める有能な弁護士である。彼が上司に呼び出され、 否応なしに押しつけられた今回の仕事。
 宇宙船の航行途中にトチ狂って乗務員二名を射殺したキ印船長の裁判。
 船長に面会に言ってみると
 「あいつらはエイリアンだったんだ!」
 んな阿呆な。
 ところが、この船長、本当にキ印なのかどうか確証がない。 かといって、本当に彼らがエイリアンだったのかというと、 これまた全然証拠がない。
 阿呆な阿呆なと思いつつも、船長は自身の主張を曲げず、 その方向での弁護でなければ受け付けないと強硬に言い張る。
 ついに折れた主人公は、「それじゃあ一応……」と、 乗務員らが人間に化けて乗っていたエイリアンだった、 という証拠を探しに聞き込み等を始めるのだが……壁が。
 何者かが、捜査の妨害をしているのだ。何故? まさか?
 主人公は腕利き美人のハッカーの元へと身を寄せ、 命を狙われるハメになりながらも真相を追いかけ始める。



 更についでなので、 「面白くなかった」SF特集に流れちゃいましょうか(笑)
 下の本も、面白いというにはどうかなあという本です。あちらこちらで 噂を聞くのですが。う〜ん、こうなると、聞いた噂ってのも「良い本」 という意味での噂じゃあなかったのかなあ。
 あ、早川ではなく創元です。


デクストロII接触 イアン・ワトスン&マイクル・ビショップ
UNDER HEAVEN'S BRIDGE Ian Watson & Michael Bishop
1988年初版 1979
創元推理文庫SF
ISBN4-488-69501-9

 何だか変な日本人感のはなし〜。
 日本人女性・郷土は京都な人が主人公の人で、
 鉱物型エイリアンの星にいってメタ的精神世界について問答して 隊員のうちの一人がそのままあっちの世界に行っちゃったり行かなかったりで、
 冬眠期で固まっちゃったその金色ボディをかっぱらってきて 三十三間堂に仏像として飾っちゃって遊ぶはなし〜。
 あ、あらすじ全部言っちゃった(笑)

 B級的な意味でなら、楽しい本かもしれません。
 あるいはそういう膳問答、精神世界論的な話しとかが好きな人にも いいかも知れません。
 暗く人生や恋愛についてうじうじと悩む女性像に迫る意味でも 共感する意味でもいいかもしれません。
 でも、SFとして何処が面白いんだろう?(笑)

 ええと、そういうことで。
 「エイリアン」を示してくれる、という意味では、まあ今の時代では、 結構定型のエイリアンじゃん、という気もするのですが、 その異質な体温をかなり感じれる部分まで近寄らせてくれます。
 主人公ヒロインは日本人女性らしくウジウジとして、
 その主人公の恋人は西洋人らしくどこか一直線に神秘主義に痺れていて(笑)
 ガジェット的には結構無茶ありですかね。そんなのしたら死ぬって、とか、 そんな簡単にエイリアンが英語喋るなよ、とか、要するに神様かい、とか。 でもそんなのを感じさせず、 哲学的、もしくは人間的なドラマ模様を描きだす所が、 この本の素敵な所なのでしょう。
 そこに魅力を感じないのなら、まあ、そういう程度の本か。
 ううん、何回書き直しても同じような言葉しか出てこないな(笑)

発掘 Reference
  1. 溝口さん 書評

 んでもって早川に復帰。おいといて。
 今改めて思うに、以下の本も「急いで読む必要はない本」に類しますね。 実際、読んだ後の印象があんまり残ってない。
 まあ、これに限らず、クラークの本ってのはそうなんですけどね。
 さらっと。
 喉を通してしまって、近未来すぎて、リアルすぎて。
 だから、忘れてしまう。どんな技術だったのか。
 ただ、その未来が確かに「現実」なのだと思いながら読んだ、というか、 現実だから読書の記憶カテゴリからリアルメモリの中に熔けだしちゃってて、 記憶層に残ってないというか。
 だからこそクラークは、いい。


神の鉄槌 アーサー・C・クラーク   [TITLE]
THE HAMMER OF GOD Arthur C. Clarke
一九九八年発行 1993
ISBN4-15-011235-5

 クラークらしい、「小惑星衝突」モノ。好きな人には好きでしょう。 俺としてはドラマ点が足りないかと。

 ……で。それしか語る言葉がないんだよなあ。どうしよう。
 例によって、まるで科学解説記事を書くかのような、押えた筆致、 そのためにかもしだされるリアリティ。いかにもありそうな、 否、「あった」ような。
 まるで新聞を読むように、ノンフィクションを読むように。
 日常の中に埋没させて、ある日の「事件」を描くのでした。

 だから面白い/面白くないって人が居るでしょうねえ。


 あらすじ。
 地球に徐々に近付いてくる小惑星。 その軌道は、地球と衝突するものと計算された。
 落ちれば天変地異は確実。いきおい、国際協力のもとに、 この小惑星の軌道変更、 ないし破壊を目的とした宇宙行が企画運営される事になる。
 だが、思わぬ所に落し穴は多い……
 そして宇宙は暗き底なし穴なのである。

 そうそう、最近読んでて面白くなかったというのには、 以下のなんてのもあります。


垂直世界の戦士 K・W・ジーター   [TITLE]
FAREWELL HORIZONTAL K.W.JETER
一九九八年発行 1989
ISBN4-15-011248-7
カバーイラスト/沖一

 いやはや。
 「普通」のパンクもの、である。サイバーパンク。
 ジーターというと 「ドクター・アダー」。 私はこれしか読んだ事がなく、これで「うわ、アングラな作家だ」 とレッテルを貼ってしまい、以後読まないでいたのだ。

 じゃあなぜ本書を買ったのかというと、 「表紙に騙された」のである(笑)。 表紙を書くのは「トリガーマン! I」(火浦 功)の挿絵もしていた沖一さん。 非常に明るい「ヤンキーにいちゃん」と 「ビキニねえちゃん」を書いてくれている。 そして、バイク。
 ね、フラフラと買っちゃう訳ですよ。

 実際に読んでみての感想は騙されたどころか、まんま表紙の通りのお話でした。 こういうと変ですが、「健全なアウトロー」の冒険です。 ちょい甘い所の残るぼっちゃんが、非行(笑)に走って独りだち、おっと、 壁にね(笑)、する話です。
 不満が残るポイントとしては、まさしくそれだけ、 の話にしかなっていなかった事。舞台が魅力的なだけに。

 「リングワールド」しかり、「ラーマ」しかり。 科学が造り上げた壮大なまでの建造物、いや、世界。 これだけでクラクラくるのがSFってもんです。そして、その世界の謎に迫る、 それこそが輪をかけてSFってもんなんです。
 これがねえ。前半をふってるのに、受けの後半がない。 なんか、肩すかし食らって怒り二倍っちゅうか(笑)
 舞台がものすごく魅力的なのに、ただそれが「背景としてある」だけで、 ほぼ説明も謎解きもなし、というあたりが、反則(笑)と思えます。


 あらすじ。
 本書で示されるのは、垂直にそそりたつ鋼鉄の塔。 誰がいつ、なんの為に建てたか判らない。いくら見上げても上端は見えず、 見下ろせば下端は雲界に消える、そんな塔の一部に住む社会が主人公の背景です。
 普通、人は塔の内部に住みます。中心部は謎の未踏領域ですが、 辺縁だけで充分です。それだって午前中に太陽が照らす側の半円だけで、 俗に言う「夜側」はうっちゃられているのです。
 水平な床を嫌うアウトロー達は、垂直な床へ、つまり、塔の外壁 (=荒野)へと出て行きます。血と暴力、勢力争い部族=軍隊。
 主人公はこの「垂直世界」へと売りだしに来たばかりの青二才。
 高所恐怖症を克服しつつ、一山当てようと努力中。
 運がいいのか悪いのか、「エンジェル」と呼ばれる種族の撮影に成功したり、 「デッド・センターズ」と呼ばれる伝説の怪物らが荒したらしい跡をみつけたり、 そして……

 あんまり「面白くなかった」ばかりを並べてもなんですね。
 んじゃ、これとか。


ナイトサイド・シティ ローレンス・ワット=エヴァンズ
NIGHTSIDE CITY Lawrence Watt-Evans
一九九三年発行 1989
ISBN4-15-011030-1

 王道です。探偵もの、それもシャーロック系ではない、 泥と金の裏街を歩く探偵の探偵ものです。 SFですが、ヒロインですが、その心はよれよれトレンチコートの、 あの探偵です。
 そして物語の謎の、一見してのでかさ。実はという結末の小ささ。
 まさに泥まみれの裏街に値した、そんな小さな物語。

 最近読んだ所で近いものを探せば、 「ホログラム街の女」 の味に近いでしょうか。ですが、あれが話の結末をどんどん大きくしていき、 やがては社会を変える物語へと未来を開いていったのに対し、 この話の結末は閉塞しています。あくまでも、あくまでも、 こすからい探偵の、こずかい稼ぎにしかならない事件。
 そんな据えた味が。
 ああ、ハードボイルド(?)だなあ、と、酔わせてくれる話です。
 しみったれ加減を楽しみましょう(笑)


 あらすじ。
 この惑星は、微妙なバランスの上に成立していた。 その自転は完全に静止しており、 惑星は、片面は太陽へと向けて永遠の昼を、 そしてもう片面は永遠の夜を描いていた、 はずだった。夜の面の中央に近いクレーターに、その鉱山都市は作られ、 そして鉱夫らの町が栄え、栄え続けるはずだった。
 だが、自転は完全には停止していなかった事が後に判明する。町は、徐々に、 だが確実に、僅かずつではあるが、灼熱の昼の世界へと近づいているのだ。
 それは遠い未来の事、と、誰もが、どの世代もが思い、 ほうったらかしになっていた。
 だが、やはり平等に、夜明けは訪れたのだった。
 かつての栄光は町から消えた。今の町はクレーターの外縁山から朝日を見、 町の半分は光にさらされて無人のゴーストタウンに、 もう半分は一瞬を楽しむだけのカジノと繁華街へと変わった。
 あと一年。あと二年。それで完全に街は焼かれる。
 そんな未来のない街で、ヒロインは探偵をしていた。
 そして舞い込んだ依頼。その、ゴーストタウンと化した、 役にたたないはずの土地を買い占めている奴がいるというのだ……

発掘 Reference
  1. 溝口さん 書評

 それとか、これとか。
 再び早川から離れて、今度は日本人作家。


広瀬正・小説全集・1
マイナス・ゼロ
広瀬 正
  集英社文庫
1982年 第1印
ISBN4-08-750491-3

 「とにかく名作だから」「読めって」
 とまあ、そういう声が沢山聞こえてくる本です。
 ようやく見つけて、というか、人から借りれたので読みました。
 いや、確かに名作です。なんでもかんでも彼に例えてしまって恐縮なのですが、 カジオシンジに近いです。一つの「日本人作家」の流れというか、 流派なのでしょうね、これは。
 たんたんとした現実に紛れ込む非現実で超科学なイベント。 巻き込まれる、一市民である所の主人公。
 そして、土地に、風景に、人に、ある、愛着。その愛が語らせるノスタルジィ。

 逆を言うと、それらを越えていない、という所で、前評判倒れというか、 期待し過ぎていたな、という所はあります。読む人は、 期待せずに読んでその衝撃に打たれるようにしましょう。 構えて読んではいけない。

 それから。ほぼ同じネタのタイムパラドクスものを、 ハインラインが傑作集の中の何処かで書いていたような気が……


 あらすじ。
 それは第二次世界大戦まっただ中だった、ある日の日本の片田舎。
 少年の隣家にはマッドサイエンティストが住んでいた。
 少年は、その隣家のお姉さんに淡い想いを寄せていた。
 そして空襲。燃える隣家に入った少年は、おじさんに 「必ず20年後にこの研究室に居てくれ」と遺言される。その時、 あこがれていたお姉さんの姿はどこにもなかった。
 そして20年。中年になった彼は、ふとあの時の約束を思いだし、 田舎へと足を運ぶ。研究室で夜が来るのを待つ……その時、 なんの予告もなしに見覚えのある箱が中空から現れた。 あれは20年前、研究室にあった、 いや、そして最後のあの時にはなかった……そしてその箱/乗物の中には、 もんぺ姿の少女が居たのだ。


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よければ、見たついでに評価よろしく。ま、お代変わりにでも。
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