メトロ設立の歴史と自治憲章の制定

はじめに、メトロ設立の背景として、住民自治の伝統に根差したオレゴン州の政治風土について簡単に説明します。この地域のインディアンの歴史は1万年以上に遡りますが、ヨーロッパ系移民の本格的な到来は1843年であり、州憲法は1859年に制定されました。その後、州の政治は贈収賄などで腐敗を極めます。しかし、1883年の大陸横断鉄道の完成を契機に人口が急増し、一気に政治改革の気運が高まりました。そして1902年には主権在民を具体化させる手段としての、レファレンダム(住民投票による議案採択権)、イニシアチブ(住民投票による議案提出権)、リコール(住民投票による公職者解任権)が導入され、後には他州に模倣されていく「オレゴン・システム」が確立されるのです。ここに始まる住民自治の伝統は今日でも健在であり、メトロ設立の土台となりました。

メトロの前身であるメトロポリタン・サービス・ディストリクト(Metropolitan Service District=MSD:便宜的に「新MSD」とする)が誕生したのは1979年です。当時、固形廃棄物管理やメトロポリタン動物園の管理などの地域サービスを行っていたMSD(便宜的に「旧MSD」とする)と、土地利用と交通計画を担当していた議会政府 (Columbia Region Association of Governments=CRAG)との合併が、住民投票によって承認された時でした。新MSDはCRAGと旧MSDの役割を併せ持ち、いずれも直接選挙で選ばれた議員(Council)と知事(Executive Officer)によって運営されるようになりました。その後、地域内自治体との同意や州法の制定によりメトロの役割は拡大し、固形廃棄物処理やコンベンションセンターなどの施設運営などを行うようになりました。

メトロの発展の歴史の中で最大の出来事は、1992年の住民投票による自治憲章の承認です。それ以前のメトロの権限は、州議会と州法によって与えられた範囲に限定されていました。そして、その権限を拡大するにはまず州法の改正による承認が必要でした。しかし、地域の発展とメトロの果たす役割の重要性が増したため、地域政府の権力と権限は、州ではなく選挙民によって直接管理されるべきであるいう認識が広がりました。そして1990年に、ポートランド地域において自治的な地域政府を選挙民が設立することを許可する州憲法の修正条文を州議会が住民投票にかけ、州の選挙民によって承認されました。その後すぐに憲章委員会が設立され、1992年には憲章が地域住民投票にかけられ、承認されました。ここに、1979年以来直接選挙で選ばれたアメリカ唯一の地域政府であった「新MSD」は、アメリカ唯一の選挙民に承認された自主憲章を持つ地域政府「メトロ」となりました。

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