1 2 3 <アマさん雇用顛末記> あれはいつの事だったか、コンドミニアム(日本風に言えばマンションか?)に住む、私たちの隣の部屋に住む中国人の所帯にアマさんがやって来たのは。見た所、年の頃25〜30歳くらいか、色がやや浅黒く、マレー風の服を着て、うちの家族が部屋に出入りする度に隣の入り口辺りまで出て来て「ハーイ!」などとフレンドリーである。これが私たち家族と隣のアマさん、ジョシーとの最初の出会いであった。 言い忘れたが、『アマさん』とは東南アジア一帯で『家政婦』(メイド)の事を指す。“語源”はなんなのかまでは良く分からないが・・・。 ここでマレーシアにおけるアマさんに関する基礎的な知識を述べよう。マレーシアではちょっとした家庭(決して特別な金持ち階級に限定されない)では気軽に外国人のアマさんを雇って家事をさせる習慣があるので、アマさんを雇っているからと言って、そんなに『金持ちだ〜〜!』と驚く必要も無いのである。実際、日本人にとっては『家政婦』『お手伝いさん』を雇うという事は尋常ではない程の『ステイタス』 であり、『特別な金持ちである』という象徴であろうが、マレーシアでは日本とは異なり、アマさんを雇うという事は割と一般的な事であると言える。 このアマさんを雇って何をさせるのかと言えば、マレーシア人は夫婦共稼ぎが多く、奥さんが昼間に家事や子守りなどを物理的にこなせないのでアマさんを雇って自分の代理人としてこれらの家事をさせて仕事と家事を両立?させているのである。 特に中国人がアマさんにとっては鬼のような存在で(後述)、なかば奴隷のような待遇を受けているという話もよく耳に挟む。マレー系は子守り&家事専用としてか。当然、雇用主の性格によってもアマさんの扱いに大差があると言える。 それに対して日本人のアマさんの使い方といえば、日本のテレビドラマなどに良く出てくる、金持ちの家に勤める『お手伝いさん』を想像してもらえば殆ど正解であろう。中国人もこれに近いと言えば近いが、アマさんに対して日本人とは比べ物にならない程“ファシスト”、いわゆる『皇太后的』である。 日本人の奥様方は日中は家に居るが、生活習慣の違いや言葉の問題等、外国に住んでいる事自体に既にストレスを感じており、わんぱく盛りの子供の子守りや家事で更にダメ押しされて身体はクタクタ、精神はボロボロになり、積もり積もったストレスでもう爆発寸前、家事はしんどいので出来ればやりたくない、それどころか他にも“英会話”や“お茶会”、その他多数の『習い事教室』などの過密スケジュールゆえに物理的に家事がこなせない(こなせる筈がない!)為、『そうだ、アマさんを雇って自分の代わりに家事をしてもらおう!』というなかば『不純?』な動機で雇っている場合が少なくないと推察される。中には双子の赤ちゃんを抱えながら、更にもう一人出来てしまった。どうしよう・・・?。というような『子守りのストレス』に悩む奥様が、主に『子守り要員』として(ついでに家事や料理ももちろん全部してもらうのだが)必要に迫られて雇うといった場合も割と多い様である。 旦那方にとっても私のように、ここは外国でありいろいろと仕事上のストレスが溜まっている上、しかも帰宅毎に奥様方が日頃のストレスゆえ、キーキーと『ヒステリー』を起こして延々とそれに付き合わされることを思えば、多少の出費はかさむが、アマさんを雇って奥様に楽をさせてやる事で万事“夫婦仲”が上手く行くのであれば、これくらいは目をつぶってやって良いのではないか、と内心思っている人も実は多いのではないかと私は密かに想像しているのである。でも大多数の日本人の奥様方はそれでも旦那方に愚痴一つ言わずにじっと耐えて頑張ってしまうので、旦那方は奥様の苦労がなかなか分かり辛く、気が付いた時には家族は嫌気が差して帰国、自分は単身赴任状態、・・・時、既に遅し・・・なんて言う事も考えられそうな話だ。 しかし、日本人の心情として『使用人を雇うとはなんと贅沢な・・・けしからん。そんな無駄遣いをするくらいなら貯金しろ。』とでも言いたげな旦那が大多数であるともまた、私は想像しているのである。 また金銭の問題では無く、他人、しかも外国人が自分の家庭に入ってくることに何某かの抵抗感や違和感、あらぬ猜疑心を感じる人も多いのではないか。恐らくこれも又、事実であろう。皆、この不安感を乗り越えてアマさんを雇っているのである。 話は多少横道に逸れてしまったが、ウチの隣にアマさんが来た時、(その当時は、彼女がアマさんだともフィリピン人だとも知らなかったが)本当に明るい女性だと感じた。ウチの息子にいつも『グリル』(注:マレーシアでは一般的に防犯の為、出入り口に『グリル』という鉄格子を付ける)越しに『ハロー!』と笑顔で声をかけてくる。彼女の名前はジョシー。30歳。フィリピン人だ。隣の中国人のところへ『住み込み』アマさんとして働いている。 最初の頃は家から出掛ける時とか帰宅時に、外で顔を合わせた時にはちょっと声をかける程度だったが、それから数ヶ月経ち、家内が家の外でよくジョシーと“立ち話”をするような関係になった。彼女はフィリピンに幼い子供を残してマレーシアに出稼ぎに来ているらしく、時には子供が恋しくなるようだ。ジョシーにとってはウチの息子が格好の遊び相手?らしく、会えない自分の子供の代わり(かどうかは知らないが)に、よく遊んでくれた。 彼女との交流が始まる以前にも、隣の中国人の子供(5歳男児と7歳女児)がいきなりウチの“玄関のベル”を連打して我が家に乱入してきては、息子のおもちゃで勝手に遊んでは壊したり、当然の如くジュースやお菓子を要求して来たり、ゴミはその辺に放り投げっぱなしで、子供がそれを口に入れたり・・・とにかくガチャガチャに家中を引っ掻き回しては、突然『バーイ!』と嵐のように去っていく被害(我々は呆然と見ているしかない)が連日のように続出し、隣の親は一体どんな教育をしているのだろう、と、よく憤慨したものだった。しかし何故だか、子供の親など、隣のその他の人物とはそれまでは全く交流が無かったのである。 つづく By.YT 1 2 3 |
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