When I said my brother wasn't suicidal, I knew by the look on your face you thought the same. But you also didn't want to admit it. Why? Is it because you were afraid if it was you? ...Or you regret not being there for him?
Blank
by Lilinpo



Part 2








「荷物取りに行くだけだから 別に車からおりなくても‥」
車にいた方がいいと言ったが、頭を弱々しく振って彼女はパッセンジャードアを開ける。どうしてもついて来るらしい。
オレはドアを閉めオートロックをする。そして久し振りの外の空気を吸い込む。 相変わらず汚い空気だが何故か落ち着く。ロサンゼルスに長くいるとこうなってしまうのか…。



LAPDの大きな署に入ると そこにいた人達全員オレらにsaluteする。女性警官たちがヴァルを抱き締め、何人かオレと握手を交す。オレはただ単にニックの弟だからってなだけで社交辞令程度なんだろうけど、ヴァルはきっとこの署の人達の「同僚の奥さん」だけではなく、「仲間」という関係なのであろう。
オレには絶対入ることのできない空間‥。


「Nice to see you again, Val. Please, accept my condolences...」
ニックのオフィスのドアを開けると、長身の男がヴァルを招き入れる。おいおい、オレって無視されてる〜? と思いながらも気をとり直してヴァルの後を続く。彼はヴァルをニックの椅子に座らせコーヒーを入れて来ると言って出て行った。オレは早速ニックのデスクの中身を箱に入れていく。
早くここから出たい‥。
ニックのいない署なんて居心地が悪すぎる‥。
「‥殆ど何も入ってないけど‥。もしかして事件のファイル全部取り出されちゃったのかな‥‥」
ニックが解決したあらゆる事件。‥‥オレはちょっとガッカリする。
「‥‥多分、お母さんたちが先に見たいと思うから後で彼女の家に寄っていいかな?」
ヴァルは一緒にデスクを片付けながら遠慮がちに尋ねてきた。オレは首を振る。
「お袋は全部ヴァルが貰いなさいだってさ。ヴァルが要らないんだったら家へ持って来いとのこと」
「‥そう。‥‥お母さんらしいね」
ヴァルは少し微笑む。オレは一番下の引出しから宝石箱を取り出す。高校卒業指輪だ。
ちゃんと持ってたんだ‥‥。オレはとっくに失くしたとゆーのに。
オレは自分の指にはめてみる。
『げっ、結構大っきーじゃん。ニックの指って細くて女みたいな手だったけどな〜。』
オレはちょっとブルーになりながらも、指輪をヴァルに見せた。
「ごめん、ヴァル‥。これだけは譲ってくれないかな?」
ヴァルは手を止め その指輪をじっくりと見る。
「卒業指輪か〜。勿論それは私が持つ訳にはいかないわ。…ここだけの話だけど私、自分の失くしたの‥」
エヘヘと笑う幼い彼女。きっと無理している。
「実はオレも」
最悪〜と一緒に笑う。こうゆう風に二人で笑い合うのって何年振りだろう? 高校の時は当たり前のように二人でジャレ合ってたのに。
「でも、これだけは絶対に失くさないよ。」
オレは宝石箱を自分のジャケットのポケットに入れる。
「約束よ」
オレは了解のサインに彼女の頬に軽くキスをする。
そこにタイミング悪くドアが開く。
「ブラックでいいかな?」
男はゆっくりとヴァルにコーヒーカップを手渡す。
「ええ、ありがとうグレイ。」
ヴァルに「どういたしまして」と言い、オレに振り向く。
は多分この方が美味しいだろう」
と、オレにオレンジソーダを渡しやがった。
『…この男』
オレは「どうも」とぶっきらぼうに言いながらプシューとソーダを開ける。 昔っから童顔なんだし、今更怒ってもな‥。
オレはゴクッゴクッと甘いジュースを飲む。
『あれ? 美味しい‥‥』
久し振りに飲んだせいか、シュワシュワと冷たい炭酸が喉をさっぱりと潤してくれた。
『‥たまにはいいかも』
オレはちょっと男に感謝しながらそう思っていると、とんでもないことを言ってきやがった。
「弟君はもう幾つになったんだい?」
「‥ーブっ!!」
オレは飲んでいたジュースを少し吹き出す。冗談にも程がある。
「24だよっ。ヴァルと同じ!」
オレは男を睨み上げながら答える。この男一体何がしたいんだ?! もしかして一週間前の葬式のことで怒ってるのか?

「ぷっ、ぷぷ」
その時ヴァルが もう我慢できないと言いながら笑い始める。
『あ、ヴァルの本当の笑顔だ』
オレはそれから怒っていたことをすっかり忘れてしまう。





「ありがとう、グレイ。手伝ってくれて」
ヴァルはグレイを抱き締める。
『オレが殆どやったんだけどね‥‥。』
荷物の入った箱を持ちながら心の中で呟く。
「貴方がニコラスのパートナーで本当に良かったわ。彼の会話には必ず貴方が入っていたのよ。…彼がどれだけ貴方に救われていたか‥‥」
それはオレにも反対できない。確かにニックはパートナーのグレイ・ミラーを尊敬し 信頼していた。二人で傷を舐め合い、助け合ってきた「仲」だ。他に誰も入れない関係をニックはこの男と築いていた。
「俺もニコラスと組めて、心から感謝している」
グレイがヴァルを抱き返す。
‥‥だからかもしれない‥。 オレはちらっと男を見る。
オレはきっとこの男に嫉妬してたんだな‥‥。ブラコンなガキみてぇ〜。

別れを言った後、ヴァルは階段に向かう。オレはグレイに振り返り 思いっきり尋ねてみる。
「もし、ニックが自殺してなかったら‥‥貴方は捜査を手伝ってくれますか?」
彼は表情も変えず、ポケットに手を突っ込み壁に凭れる。
「それは、彼が殺されたという意味か?」
「‥そうなりますね」
暫しの沈黙。オレは静かに待つ。

「もし‥‥本当に真犯人がいるというなら徹底的に調べる。‥だが他殺という証拠はあるのか?」
オレは押し黙る。何もないからだ‥。
「家族を亡くして可哀想な子供はやまほどいるんだよ、坊や。証拠でもないと捜査は始まらないんだ。Understand?」
子供を扱う様にオレの頭をポンポンと軽く叩く。
「じゃあな」
彼は他愛もなくオフィスのドアを閉める。オレは暫しポカンとするが、思わず吹き出してしまう。


「はは、兄貴‥確かに‘不器用な男’だな‥。…全く‥‥素直に頑張れと言えばいいじゃん‥」
















Part 2:
End


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