I always thought that my brother and I shared everything. Food, candy, and secrets. I couldn't keep any secrets from him because he always had a way of finding out. When I wanted someone to speak to, I always turned to my brother. So I thought he was doing the same... |
「Mr. Bryant, nice to see you. ロレンテ署長に何か用でしょうか?」
スラっと背の高い黒人の女性が尋ねる。凄く美人な女性だがどこか冷たい。まぁ、そこがまた魅力的と言うか‥。 「突然済みません。アポとかはないですけど 多分彼にオレに名前を言うと‥‥」 オレはできる限り愛想の良い笑顔をつくってみるが‥‥。 「署長からどなたも入れない様にと言われてるので、ご用件をこちらに記して下さい」 やっぱ効かない‥‥。彼女との面識はこれで3回目だが‥‥、今初めて会った様な応対だ。 『‥‥ちょっと悲しいもんがあるよな〜‥』 仕方なくペンを手にするとドアが急に開く。 「やあ、ケネス君ではないか!」 オレに握手を求めながらニックのキャプテン、サイモン・ロレンテが微笑む。 「ナタリー、彼なら通しても良いのに」 何やら書類の処理をしている秘書に言う。 「済みません。キャプテンが‘誰も’入れない様にと言ったもんですから」 冷たく微笑みながら着々と仕事をする美人秘書:ナタリー。 『ヴァルみたいな明るい性格だったら 最高な女だよな〜‥‥』 オレは横目でナタリーを見ながらサイモンのオフィスへ入る。 「何か飲むかい?」 サイモンは小さな冷蔵庫を開けながらオレに聞く。 「ソーダならなんでも‥」 オレはあのオレンジソーダ以来 ジュースが美味く感じてきた。 「ん〜…Spriteぐらいかな‥‥」 「あ、それでいいです。ありがとうございます」 サイモンはオレにソーダを渡し 自分はアップルジュースにストローを刺す。 「私も若い頃は良く飲んでたな〜炭酸類。50になってから喉が受け付けてくれん」 はっはっはっ、と笑いながらアップルジュースを口に運ぶ。オレもソーダを飲みながらふとあることに気付く。 「お孫さん。え〜と‥‥もう産まれたんでしたっけ?」 サイモンは目を見開きオレを凝視する。あれ? オレ何か変なこと言ったっけ?? 「‥‥サラは後、一ヶ月で1才になるよ」 サイモンはふふと笑いながらデスクに飾ってあるフレームを渡す。写真を見ると‥確かにサイモンが赤ちゃんを抱っこしている…。 「す‥済みません‥‥。あれからもう1年経っていたなんて」 そう、あれは以前 オレが「事件解決おめでとう」パーティーということでニックに高級レストランで夕食を奢っていた時、サイモンの25年目の結婚記念日ってのことで偶然にロレンテ夫妻に会ったのだ。その時に、いよいよ初孫が誕生すると二人は心底嬉しそうにオレたちに話したのだ。 『…あれからもう‥1年か‥』 オレは写真のフレームをあった場所に置くと、どこか複雑な気持ちになった。 『オレって仕事に関しては絶対忘れないのに、プライベートのことになるとほんと適当だよな‥‥』 今さらだが、ニックが「とうとう産まれたんだぜ」とヴァルと二人でウキウキしながらベビー服とか買いに行ってたっけ。あれってサイモンのお孫さんのことだったんだ‥‥。 『あ〜‥ほんとオレってだらしねー‥‥』 一人で落ち込んでるとサイモンが話し掛けてきた。 「それで? もう仕事には出てるのかい?」 「あ、はい。なぜそれを?」 「いや、この前 御家族に連絡をしてね。君のことが心配だったんで聞いてみるとアパートに閉じ篭もってたんだって?はは、ニコラスがよく君の心配していた理由が分かったよ。‥‥しかしあまりお父さんお母さんを困らすんじゃないよ? ケネス君。まだ子供もいないから分からないだろうけど、親が子にたいする心配っていうのはとてつもないものなんだよ」 「‥‥はい…」 オレはこんな説教じみた会話とか苦手だけど、なぜかサイモンが言ったことは納得する。恥しいことだがホントにオレってまだまだガキなんだ‥‥。 「はは、すまんな。お説教されに来た訳ではないのに」 オレの心境を読んだのかサイモンは空気をコロっと変える。 「いえ、オレには必要な言葉でした…。ありがとうございます」 「おいおい、よしてくれよ。‥‥‥‥それで今日のご用件は何かな?」 オレはリュックの中から記者IDカードを出す。 「実は仕事の事情で‥。…ニックのストーリー担当なんです」 サイモンは何も言わない。それでもオレは続ける。 「ニックの自殺に関する書類、ペーパーワーク、ファイル等にアクセスするのが必要なんですが‥」 「それで君はどんなストーリーをかくのかね?」 サイモンが口を開く。‥‥この人には嘘は付けない。 「ニコラス・ブライアントが誰に殺されたか追求していく内容です」 サイモンはオレの予想通りの答えに溜め息を付く。 「ケネス君‥‥、君が何を書こうと勝手だが‥‥‥証拠もない推理なんてアマチュアな小説家でも買わないよ」 「ニックは絶対に自殺なんてしません。だってする必要がどこにもありませんし、何か悩み事があるとオレに相談しにきました」 オレはじっとサイモンを見る。これだけは譲れなかった。 「‥ふぅ‥‥」 暫くして、サイモンが深い溜め息を付く。 「これは絶対に君に言うなといわれていたが…」 首を振りながらサイモンは真剣な目でオレを見る。 「彼は精神科に通っていたんだよ、ここ数ヵ月‥‥」 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?‥ 「彼は解決できない事件にうちのめされて、ずっと苦しんでいた…」 「‥‥‥なん‥‥」 「犯人が殺していくたび、彼はどんどん閉じ篭もっていった。話掛けると曖昧な応えしか返ってこないし、家にもあんまり帰らなくなっていたんだよ」 オレは氷付いたように動かない。ただじっとサイモンを見詰めている。 「書類は全部私が何とかしよう。だが‥‥傷をこじ開けるようなことはしないでおくれ。‥‥君も君の御家族も‥…この署の連中もみんな‥充分傷付いた‥‥‥」 サイモンはオレの肩に手を置き、書類をとりに行くとオフィスを出ていく。 オレはただ呆然と、サイモンが座っていた場所を見詰め続けていた。 Part 5: End Back top Next |