They say the flow and the sound of water calms people's heart. I've never realized how true that was until now. As I watch the quiet flow of the lake, I can't stop thinking how my brother felt when he was looking at the same scenary... Was it sadness? .....Or loneliness?
Blank
by Lilinpo



Part 9








Angeles National Forrest.
ニックの遺体が見付かった公園。

オレは視野に広がるCastaic Lakeを眺めながらぼんやり歩く。
確か、‥湖の近くにあるベンチに座ってたんだっけ?
辺りを見回すと無数のベンチが並んでいる。オレは適当に座り 静かな湖を見詰める。
水は心を癒すって本当かもしれない…。オレは今までのストレスが嘘のように消えていくのを感じる。
ニックもストレスが溜ると良くここに来ていたのだろうか?‥‥

今考えてみると、オレってニックのことこれっぽっちも分からない‥‥
オレ等の会話って仕事のことばっかだったもんな‥‥。相談とかも大体オレの悩み事だったし‥、ニックの相談事と言うと殆どヴァルのことだった。

「明後日ヴァルの誕生日なんだけど、プレゼントに困ってるんだ。付き合えよ」

思えば ヴァルが最後にニックに祝ってもらった誕生日。5ヵ月前‥‥‥確か6月23日‥‥25日だっけ?
うわ〜‥‥高校ん時付き合ってた彼女の誕生日も忘れるなんて‥‥‥。
‘最低〜’とヴァルの声が聴こえたような気がする‥。


「――済みませんが、…何方かと待ち合わせですか?」
オレは遠慮がちな声に振り返る。‘Park Ranger’のユニフォームを着た中年の男がオレの顔を見て少し驚いた様な顔をする。
「あ、いえ‥‥。‥‥ちょっと捜査に‥‥」
オレの応えを聞いて更に驚いてるようだ。
「警察‥の方ですか?」
「いえ、新聞記者です。‘LA Current’のケネス・ブライアントです」
オレは記者IDカードを手渡す。彼はそれを見てすぐにオレを見上げる。
「ブライアント!‥やっぱり‥‥。‥‥‥あのニコラス・ブライアントさんの‥遺族の方ですか?‥‥」
「弟です‥‥」
オレは少しびっくりしながらも 冷静に答えた。
「そうでしたか‥‥。済みません‥‥」
彼はオレのカードを返しながら首を振る。
「…あの日以来、警備が厳しくなりまして‥‥。見覚えの無い方には必ず声を掛けるように命令されているんです‥」
「そうですか‥‥。‥‥‥‥あの‥‥‥もしかして、グラントさん‥ですか?」
オレはカードをポケットにしまいながら聞く。
「はい、そうです‥‥。私がジョン・グラントです‥‥。‥新聞に載っていた通り、私が第一発見者です。‥‥‥この度は‥」
オレは手を振りながら笑った。これで手間がはぶけたようだ。
「貴方からそんな言葉頂けないです。‥‥血族でありながら何も出来なかったですし…」
「‥そんなことはないですよ‥‥。‥‥‥‥‥それで‥捜査とは?‥」
「はい‥実は、貴方に会いに来たんです。‥‥お聞きしたいことがあって」

グラントはゆっくりとベンチに歩み寄り座る。
「彼はこうして湖を見ていたんですね‥‥最後まで‥」
オレは‘え?’と思いながら隣に座る。
「兄は ここにいたんですか?」
「?‥‥‥そうですけど‥‥。…知らないで座っていたのですか?」
「はい、‥‥適当に座って…」
グラントは穏やかな顔でオレを見る。
「仲の良い兄弟だったんですね‥‥」
仲が良かったかどうかは知らないけど、こういう些細なことで‘ああ、やっぱり兄弟なんだな’と実感する。
『性格も考えも全く正反対なオレ達でも、‥‥ちゃんとどこかで繋がってるんだな…』
オレはそれに気付いた嬉しさと、それに気付くのに遅すぎた悲しさを抱き締め 綺麗な湖を眺める。

「ここでは寒いので ロッジの方でどうですか? 温かいコーヒーもありますし‥‥」
オレはうなずき彼の後を追う。




「狭いとこですが 何年も警備の担当をしていると家よりも居心地がいいですよ」
コーヒーを入れながらグラントはオレを小さなソファーに招く。オレも狭い部屋の方が落ち着くので微笑む。グラントはデスクの椅子へ座りオレを見る。
「はは、ほんと‥‥貴方はお兄さんにそっくりだ‥‥。あのベンチに座っているのをみた時、正直幽霊かと思ってヒヤヒヤしましたよ‥」
グラントは首を振りながら苦笑する。オレは彼のコメントに少し驚く。
「…オレ達が似てるって言ったのは貴方が初めてです。‥‥兄弟と言っても全然別人ですし」
ニックは綺麗で、‥‥オレは汚い人間だ…。

「性格の方はどうか知りませんが、外見は瓜二つですよ」
グラントはコーヒーを飲みながら顔が真剣になる。
「それで‥‥私に会いに来たとは?‥‥‥記者の方とは聞きましたが…」
オレは小さなメモパッドを取り出す。どんなに小さな情報でも必ずメモれ、とニックに教えられ 今では癖になっている。とても役に立つ習練だ。

「はい、少し質問がありまして‥。‥‥貴方は確か銃声を聞いて外に出たんですよね?」
「はい。テレビをみながら少しうとうとしてましたが、すぐに目が覚めました」
「新聞には兄の車のヘッドライトが付いていたと書かれてましたが‥」
「ええ、‥‥あのベンチに当たっていたんです。‥‥‥多分‥‥見付けやすいように‥‥」
「‥‥‥‥‥車は、どこにあったんですか?」
グラントは窓を指す。
「‥‥あそこのパーキングロットです」
オレは指された場所を目で追う。ベンチから駐車場まで最低100メートルの距離はある。

「‥‥‥‥‥車の中とか、‥‥辺りには誰もいませんでしたか?」
グラントは オレが何故ここに来たのか、ようやく分かったようにうなずく。
「さぁ‥‥私は車ではなく ベンチの方に走りましたから‥。‥‥でも その日一緒にいたサリバンは車の中をチェックしたと思います」
「? 貴方一人ではなかったんですか?」
「いえ、助手のサリバンと二人でその日は警備してました。奴は今日夜勤だけで‥‥、まだ寝てると思いますが電話をしてみますか?」
「済みません、お願いします」
どの新聞にもサリバンなんて名前はなかった。‥‥どうしてそんなミスがあったんだ?

「ああ、サリバン‥グラントだが、‥‥‥‥すまんやっぱり寝ていたか? 昨日遅くまでご苦労だったな。‥‥ああ、実は‥あの事件のことだが‥‥‥。‥‥いや、その‥‥弟さんが来ていてな‥‥」
グラントはオレから視線を逸らすように顔を斜めに向ける。
「あ〜、…ちょっと気になることがあってな。お前さん…車の中を覗いただろう?‥‥その時何か見えなかったか? ‥‥‥‥何も?‥‥‥ヒーターで窓ガラスが曇っていた?‥‥そうか…」

…え?‥‥
「‥‥ ヒーター?‥‥グラントさん替わって下さい!」
オレはソファーから跳び上がり受話器を奪い取る。
「済みません、サリバンさん? 車、ヒーターが付いていたんですか? 」
『え?…あ、はい‥‥。車内は…全く見えませんでした‥‥』
相手はビックリしたような声で答える。
「ドアを開けました?」
『あ‥いえ‥‥ロックされていて‥‥』
オレは身体中が熱くなり、目をきょとんとさせているグラントに視線を戻す。
「銃声が鳴った後、貴方はすぐに外に出ましたか?」
グラントは目をオレから外さず首を振る。
「…そんな馬鹿なことは絶対しないです。私達が狙われてると思ってすぐに地面に伏せました」

そうだ‥‥。
銃声を聞いて外にすぐ走る人間がどこにいる? ‥‥どこから‥‥誰を狙って撃っているのか分からないのに‥‥。

「済みません、ありがとうございました!!」
オレは受話器をグラントに返し 公園の案内書を一枚取る。
「これ、ここの電話番号載っていますか?」
「え?‥ああ‥‥インフォメーションと書いてあるところに…」
「一枚頂きます。それと‥何か ちょっとしたことでも思い出しましたら いつでも電話して下さい」
オレは一度も使ったことがないビジネスカードを渡し 小さなロッジを飛び出す。

『…お願いだ‥‥ニック‥‥。これを只の想像で終わらせないでくれっ』

オレは車のエンジンをかけ、21分署をめざす。
















Part 9:
End


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