アメリカに住むようになって最初に購入して、結局去年(1996年)に手放すまでの唯一の愛車となったのが、この1985年モデルの、ヤマハFZX750Sです。こちらでは単にFAZERというペットネームで売られています。
FAZER - YAMAHA FZX 750S with NEKOCCHI at Potomac River side.
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手放したのは、去年の秋には日本に帰国する予定だったからです。アメリカではもともとオートバイはポピュラーな乗り物でも遊びでもないため、また特に私の住むワシントンDC以北では冬はかなり寒くなりとても乗ることができないことなどから、単車の価格の季節による変動はとても大きいのです。秋に帰国するのならば夏の間は乗っていたかった・・・けれども、シーズン終了後に単車を売るのと、これからシーズンイン、という時に単車を売るのとでは中古車価格が2割は変わります。これは痛い!おまけに当然保険料も払って乗り続けるわけですから、合計すれば単車代がほぼ丸まる出てしまうくらいになります。というわけで、まぁ半年後に日本に帰ればまた単車を買えばいいから・・・と、涙を飲んで買ったお店に売り戻しました。売価は$1400。お店の営業が個人的に友達だったこともあって、びっくりするほどのいい値段で引き取ってくれました。
購入したのは93年の春です。92年の秋に渡米して以来、大好きなオートバイから数ヶ月も離れるなんてぇ言う生まれて初めての苦痛を味わったものですから、春の訪れとともにとても我慢できなくなり新聞の売買欄をあさり、電話帳をマークし、ワシントンDC一帯のバイク屋をくまなく探し回りました。しかし!まぁ私の財布の中身が貧しすぎることにも問題があったのでしょうが、中古車価格の高いこと!日本だったら数年旧い不人気車など二束三文だというのに、こちらではいずれもそれなりの値段、しかもちょっと旧いと程度のいいものは激減、そもそも中古車の数も少ないのです。
そこそこの値段(予算は$3000程度に見積もっていました)での範囲となると、GPz900R、GPX600、EX500、HAWK、FJ1200、XS650、CBX750、VF500あたり。VFは幾らなんでも旧すぎるしこの馬鹿でかいアメリカではいささかアンダーパワー、これはEXやHAWKも同じです。HDは大好きだしいいチャンスではあったのですがやはりアメリカでも決して安くはなく、これは完全に断念。予算に合いそうな年式で好きな単車を探すとなるとGPz900RかFZ750が2大候補でした。趣味からすればもっとやすいポンコツを勝ってきて直してもよかったのですが、住まうアパートがそうしたスペースを許していない上工具もないのでこれは最初から断念、3年程度は簡単なメンテナンス程度で走り続けられるレベルのものを探すとこの辺が限界なのですね。
しかし、何軒か回った先で見つけたこれらのバイクはいずれもかなり激しく乗られた痕があり、ちょっとまともな金額を出して買う気にはなりませんでした。ところがとあるお店に何度か顔を出しているうちに、いつのまにかそこの営業マンとすっかりお友達になってしまった私(笑)。メリーランド州の外れ、ワシントンDCの南に位置するその周辺は彼らに言わせると「日本人なんか見たこともない」ような場所で、まぁ要するにあまりいい場所ではないのでした。けれども私にはバイク屋はあるし道は広いし店員とは仲良しになっちまったし、というわけで特別文句の付けようもなかったんですね(笑)。その店の倉庫や仕入れに出入りするようになるまでわずか3週間(笑)、ついにかなり程度のいいFZXを見つけました。最初は「ウーム・・・いまいち・・・・」とも思っていたのですがそろそろ単車無しの生活には我慢ができなくなっており(日本を離れてすでに半年になろうとしていました)、またこの調子では次の機会がなかなか来ないこともおおよそ見当が付いてきていたので、結局購入することに。
お店では$3000の正札を付けて売られるはずだったこのFZXは、結局私の手元に諸費用込み$2800でやってきました。やはりバイク屋さんとはお友達になるに限る!保険の加入もここで紹介してもらい、ついでに「英語下手糞なんだから代わりに電話してよぉ」と無理矢理頼み込んで(笑)保険購入。バイク屋がメリーランド州、住居はヴァージニア州で登録や保険など州法の違いもあっていろいろ苦労しましたが、年式の割には傷もなければ走行も少ないFZXに乗ることができたのは93年の5月のことでした。
少しはバイク自体のことも書いておこう(笑)。1986年モデルの北米仕様FZX750は、日本向けとは異なり、エンジン・変速機は共にFZ750と共通(6-speed, 100ps:日本仕様は 5-speed, 72ps)、ファイナルだけ専用に馬鹿でかくなっているので加速は気持ち悪いほどいい・・・(笑)。けれども所詮高回転型エンジンですから、基本的には回してナンボで、見た目ほどV-MAXのような加速仕様ではありません。FZ/FZXはあまり売れなかったのですが(税制や保険制度の問題もあった)、その後似たようなデザインで売り出したFZ600・Radianが好調に売れたためいよいよ影が薄いバイクになっています。私が乗っていた3年間、ついにこの界隈では他に見かけることがありませんでした。でも、Eddie Lawson が Daytona 200mile で勝ったあの FZ750 と一緒だもんね♪というプライドがあったので(笑)、私は元気のいい FZ600 を見かけるとよく後ろから突っついて苛めて遊びました(タチ悪い・・・・・)(笑)。
写真は、バイク屋に売りに行くFZX最期の日に、後ろにワシントンDC の街を望んでポトマック河畔で撮ったものです。この日、写真を撮り終えてから河畔の George Washington Parkway を試しに全力走行、そのまま Capital Beltway = Interstates 495 に入って2周(笑)、狂ったようなペースで堪能してから納得してバイク屋に持ち込みました。最期だと思って本当に一生懸命ムチ呉れてやったら、実はビビルくらい速いバイクで、ちょっとうっちまうのが惜しくなりました・・・実際、その後米国にもう少し長居することになったので今は売ったことをかなり後悔しています。この日、生まれて初めてメーター読みで150mphで走った・・・カウル無しのジェットヘルだとちょっと怖かったです、ハイ。