2003/6/16
『MONSTER』(浦沢直樹 /小学館ビッグコミックス )全巻読了。
うひゃー、よく書いたな浦沢直樹!
物語のはじまりは1986年、ドイツのデュッセルドルフ。
脳外科医として将来を嘱望されていたテンマは、1人の少年の命を助ける。出世より人の命の大切さを優先した尊い決心が、恐ろしい物語の幕開けだった……。
というスタートで、物語は主にドイツを舞台に複雑に絡み合い発展して行く。美しい双子、旧ドイツの負の遺産、チェコの秘密警察……、よくできた海外翻訳のミステリのようだ。
これをマンガで日本人がやったあたり、本当にすごい。
ヨーロッパの町並みなんて、本当に描くのが大変だろうに。(ヨーロッパ特有の石畳なんか描こうとすると非常に時間がかかる) 看板、屋根など、日頃なじんでないものは資料がイノチなんだけど、この物語は何ヶ国かにまたがって発展するから、資料集めも並の量ではないはずだ。
もう、作画の苦労を考えただけでクラクラする。
まあ、そんなナナメな感想は置いておいて。
マンガで、しかも18巻という量で、こういう複雑なものが読めるとは軽いカルチャーショックだった。しかも、物語構成が緻密で、連載スケジュールでブレた感じが全然しない。(って、またうがった意見になっちゃったよ)
表紙にデザインされている英字も結構面白く見ていた。1巻の
That's how this horrible story begins!!
なんて、声に出して読んでみたもん(笑)。毎回、その巻のあらすじになっていているという寸法。裏と表は違う文章が入ってるあたり芸が細かい。
なんか、下らないことばっかり書いているけど、あんまり内容に触れたくないせいもある。前知識なくてガツンと読んだ方が絶対面白いもんね。
あ、でも、1人だけキャラクターを語ろう。
観月ありさが、雑誌「ダ・ヴィンチ」の巻頭インタビューで、好きな本に『MONSTER』をあげていた。「好きなキャラクターはグリマーさん」だそうだ。
この人は本当に複雑なキャラクターで、私も好きだ。だから、18巻の彼の名セリフは、涙なくして読めない。