2003/12/24
花火、見ました。
冬の花火は空気が澄んでいるせいか、夏よりクリアに見える感じ。
今さら感があるが『R.P.G.』(宮部みゆき/集英社文庫)読了。
住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…文庫書下ろしミステリー!
私がこの作品を長いこと読まなかったのは、「ネットの中の擬似家族」というものの扱いが「なんかアヤしそう」と思ったから。
私や、この日記を読んでくださる方はある程度、ネットの中に「住んでいる」(なんか鍵カッコが多いわ、今回)ので、私が考えたこともわかっていただけるかもしれない。ネット使用当事者として、その扱いにガッカリしそうな意味での「アヤしそう」。
でも、読んでみたら、きちんとしていて(きちんとしすぎかも)、その辺の齟齬はまったくなかった。
同じくネットの世界を扱ったミステリということで思い出すのが、栗本薫の『仮面舞踏会』。
まだ、パソ通時代に書かれた作品だったと思う。私が読んだのは新書に落ちた時で、ネットの時代に入っていた。ネットにしても、まだそんなに一般的でなかったので、インパクトがあったのかもしれない。『仮面舞踏会』は、とにかく私にとって衝撃作品だった。
ある事件以後、長く日本を離れていた名探偵・伊集院大介。
そして、パソコン通信のアイドル「姫」をめぐる事件。
オフに出たことがない幻の「姫」が渋谷ハチ公前に姿を現すという約束の日、その場所で1人の女子大生が惨殺された。彼女は本当に「姫」なのか!? 手掛かりはすべてパソコン・モニターの中。2つを繋ぐのは、数年ぶりに再会した滝沢稔。
伊集院大介が未曾有の難事件に挑む。
普通の人の日常に虚構世界がこんなに近づいたのは有史はじまって以来の出来事じゃないか。
そして、ある人にとっては、それはすごく危険なことじゃないか? と、気がついてしまったのだ。
『R.P.G.』は、文庫裏のあらすじを読んで予想した内容とずいぶん違った。メールやBBSの書き込みが少しだけ引用されているくらいで、ほとんどは現実世界の人間が考え、話し、疎いている。
『仮面舞踏会』は、もちろん現実世界の部分が多いのだけれど、精神はサイバースペースに入り込んでいる。
作品が書かれた時期も違うので、作品の狙いも違うだろう。でも、私は2つの違いは作者の虚構というものへの考え方が違うから、という印象を受ける。
パソ通時代から、ネットワークを利用してる栗本薫。大極宮(所属事務所)のサイトの最初の方を読む限りではネットをしていない宮部みゆき。
状況の違いはさておき、もともとこの2人の作家の作風はずいぶん違う。
自分が作る虚構から一歩引いて冷静に作品を作る(ように見える)宮部みゆきは、ネットの世界に対して非常に冷静だ。そして、栗本薫は自分が作る虚構に酔えるタチなのだ。(たぶん、あの膨大な著作の源泉は、それだろう)
なんだか作家論になっちゃったなあ(笑)。
でも、作家としては、どちらが悪いわけではない。読者が面白く読めればそれでいいのだから。
『R.P.G.』という作品は、作品のよしあしの前に色々考えてしまうことが多いなあ、ということで。