Q そもそもどうしてイラクに査察をするの? 査察って、どの国もみんな受けているものなの? A どの国でも査察を受けているわけではありません。イラクは1990年にクェートに侵攻した(湾岸危機)ため、米軍を中心とする多国籍軍がイラクに攻撃を行いました(湾岸戦争)。 1991年イラクは、多国籍軍の攻撃を停止するための条件、国連安保理決議687というものを受け入れて、湾岸戦争は停止しました。その決議の中に、査察受入れが 規定されているのです。 Q 査察って誰がどんなことをするの? A 査察は、大量破壊兵器(射程150キロ以上の弾道ミサイル、生物兵器、化学兵器、核兵器)を廃棄させ、将来も開発できないよう原料・材料や施設を除去させるもので、国連が無条件・無制限でおこなうことになりました。 実際には、核兵器関係は国際原子力機関(IAEA)の査察官、それ以外は国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)――のちの国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)――の査察官がおこないます。 査察官は、イラクの軍事施設に事前通告なしに立ち入り検査を実施する権限を与えられ、イラクへの入国、出国も無制限です。 Q 最近は査察が中断していたの? A 1991年から1998年まではまがりなりにも査察は行われていたのですが、1998年12月に、アメリカとイギリスが一方的にイラクを爆撃し、数百発のミサイルを撃ちこみました。このため、イラクは査察に一切応じないという声明を出し、それ以来査察は全く行われていませんでした。 Q なぜアメリカとイギリスはそんな爆撃をしたの? A アメリカは、イラクが査察に応じない部分があったことを理由にしています。 しかし、査察に応じなかったら攻撃をしてもいいという国連の決議はないので、この攻撃は正当だと国際的に支持されているわけではありません。(湾岸戦争のときの攻撃には、国連安保理決議678という根拠がありました。) Q 査察に応じなかったのは本当なの? A 無制限には応じなかったのは本当ですが、実は応じなかったのは少数で、300件以上の調査は支障なく行われたといわれています。 米軍の爆撃に根拠を与えたバトラーUNSCOM委員長の報告書は、バース党本部への立ち入り調査が拒否されたかのように記していますが、実際はイラク側が現行の手続き通り4人の立ち入りを認めていたのに、バトラーは12人にすることを主張し、 それが通らなかっただけだということが現在はわかっています。 参考1 査察は軍事施設以外に対しても要求され、しかも査察団の構成が米・英に偏っていたために、それでは兵器の存在以外の情報までが無防備になるので、イラクは抵抗したり拒否したりしたということらしいです。参考2 また、それらとは別に、核兵器にかんすることで、書類を押収した査察チームを拘束し、書類を奪い返したという事件も報道されています。 Q なぜ査察団は軍事施設以外も調べようとしたの? A ひとつには、フセイン大統領の居場所にかんする情報や、国防にかんする情報を得たいためだといわれています。フセイン大統領の暗殺やイラクを効果的に攻撃することを目的にしたスパイ活動であるという見解です。 参考3 これは、現在のブッシュ政権が、フセイン政権の打倒のために必要なら大統領を暗殺してもよいと公言していることを考え合わせれば、いっそう真実味があります。 もうひとつは、イラクが拒否せざるを得ないことをわざと要求して、拒否させ、それを口実に攻撃するためだといわれています。 Q アメリカではなく国連の査察団なのに、スパイ活動なんてするかな? A アメリカの特殊部隊出身の、またCIAの準軍事的チーム出身の、数十人の人々が、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)に入り込んでいたということを、 その人たちの上司であった元主任査察官スコット・リッター氏が証言しています。 参考4 Q イラクが拒否するような査察をわざと要求するというのは? A アメリカは、査察団内部にスパイを送り込むだけでなく、査察団そのものに圧力をかけて思うままに動かそうとしたようです。1991―97の対イラク国連武器査察長官ロルフ・エケウス氏によると、アメリカは査察団に圧力をかけて、大統領の居場所に関する情報を知ろうとしたり、緊張の高まっている時期に国防省を査察させようとしたり して、攻撃を正当化するような「査察の障害」を作り出そうとしたといいます。 参考5 大統領情報を探ることに対しては、98年1月にイラクは、大統領関連施設については国家主権の観点から査察は一切認められないと拒否しました。すると米軍は兵力を配備して、攻撃寸前の状態になりました。2月にアナン国連事務総長が調停 して、国連はイラクの主権と領土を保全尊重すること、大統領関連施設8箇所の査察にあたっては特別査察団の編成など特別な手続きを踏むことなどで合意し、イラクは大統領関連施設の査察を受け入れたということです。 Q イラクの国家主権の主張は正当なの? A 国家というものには外国に干渉されない主権が認められていて、国連憲章2条七項でも国内管轄事項に関しては外部からの干渉は認められないとされています。しかし国際平和にとって危険だとみなされると、国連総会や安保理の多数決によって国連が介入できることになっているのです。 ですから、この場合はイラクの主張は認められないと考えるようです。 参考6 ただ、イラクが抵抗することに心情的に共感する意見はあります。 参考7 また、当のアメリカ自身は、化学兵器全面禁止条約を批准した際に「米国の国家安全保障をそこなうと大統領が判断するときは、査察官を大統領が拒否できる」という米国独自の国内法を制定している ということです。参考8 Q イラクには核兵器や生物兵器がありそうなの? A あるという証拠はありません。国連の査察委員長によると、ごく最近の衛星写真でも、その証拠にはならないそうです。 過去にイラクへの抜き打ち査察をおこなってきたスコット・リッター氏は、「イラクは7年間(1991年〜1998年)の継続的な国連査察によって、 大量破壊兵器に関する限り、90〜95%非武装化されていると言え、それは関連兵器生産施設も含めてである」と明言しています。 しかしもっていないという証明もされていませんから、査察をして、もし兵器があったら廃棄させることが肝心だといえます。 必要なのは査察であって、兵器を持っているかどうかわからないのに攻撃することではない、とリッター氏は述べています。 Q イラクが査察を受入れるというのに、アメリカはなぜ新しい安保理決議をしたがるの? A 現行の安保理決議よりも強制的な方法の査察をおこなおうとしているようです。報道によると、イラク国内外に地上軍を送り込んで軍事力を背景に一定期間に査察を強制実施するという新たな決議を求め、 それが実現しなければ、米英両軍のみで対イラク軍事作戦を発動させる方針だということです。 その一方でアメリカ政府は、現在も「フセイン追放」「イラクの政権転覆」を追及すると公言しています。そのような国が軍隊を使っての査察を要求するというのですから、 その意図が疑われるのもうなずけます。 Q アメリカはどうしてもイラクの大量破壊兵器を廃棄させたいんじゃない? A どうでしょうか。ブッシュ政権は、2002年4月22日、イラクに対して化学兵器禁止機関(OPCW)加盟を働きかけ化学兵器査察を進めようとしていたホセ・ブスターニOPCW事務局長(ブラジル)を、理由もなく急遽解任しました。 イラクが査察に応じれば、フセイン打倒の根拠が弱まるので、それを恐れたといわれています。 参考9 ブスターニ氏は、「彼の査察官たちは、200万の化学兵器と、世界の化学兵器工場の3分の2の解体を監視してきた。彼はまた、二の足を踏んでいた国々をじょうずに説得したので、この5年間に化学兵器禁止条約の締約国は、87ヶ国から145ヶ国に増えている。近年の多国間条約の中で、これほど伸びているものはない」 と英ガーディアン紙に評されるほど、成果をあげていたのです。 イラクに化学兵器を持たせたくないならば、なぜイラクの化学兵器禁止機関(OPCW)加盟と化学兵器査察を、妨害するようなことをしたのでしょうか。 関連するニュース スコット・リッター氏のイラク国会での演説 スコット・リッター氏のCNNインタビュー イラク査察年表 対イラク戦争 略年表 (どすのメッキーさんのサイト「爆弾はいらない 子どもたちに明日を」) 米のイラク攻撃についての疑問 (ねっと版ピース・ニュース) Y!ニュース - イラク国連査察拒否問題
呼びかけ−アクション攻撃ではなく、粘り強い査察を 参考資料 1) バトラーは、報告書の内容に関しては、専門家の判断だと弁明するが、その内容については、UNSCOM内部でも、英米の立場よりもっと躊躇にみちた議論がなされていたのである。報告書にあげられている事件はどれも、リチャード・バトラーが述べているよりもさまざまな解釈の可能なものだった。 イラクがイラン・イスラム解放軍の支配下にある施設の調査を許さないと非難しているが、じつは、最終的には、それを認める協定が結ばれた。また、バース党本部への立ち入りについても、イラク側が現行の手続き通り4人の立ち入りを認めていたのに、バトラーは12人にすることを主張し、 それが容れられないと、立ち入りが阻止されたと非難している。この程度の意見の不一致を重大な危機と見做したことには国連関係者の間にも疑問の声がある。 リベラション(1998.12.18付) 米英またもイラクを叩く リチャード・バトラーはいかに空爆の火つけ役となったか リュック・ランピエール記者(ニューヨーク発) 訳者:萩谷良 フランスのイラク査察団長バトラー批判記事(要約) 『憎まれ愚痴』より 2) 確かにイラクは生物・化学兵器を生産・保有しているのではないかと疑われる理由を持っており、「現在は生産も保有もしていない」と主張するイラクも、国連がそれを公正に査察しようとする限りそれを受け入れる意思を表明している。ところが実際に編成された査察チームは、16人のうち9人が米国人、5人が英国人で、残りが豪州人とロシア人各1人。 つまりはイラクにとって依然として敵国である米英のダミーにすぎない。これをイラクが警戒し、その行動に一定の制約を加えようとするのは主権国家として(というよりも今なお米英に対する戦闘態勢を解いていない軍事国家として)当たり前のことであって、それを百も承知で米英がこの挙に出たのは攻撃のきっかけを掴むための挑発にほかならなかった。 イラクは、5つの安保常任理事国で均等に構成されたチームの派遣を去る1月に逆提案している。公正さを確保する上で説得性のあるこの案ではなぜダメなのか、米英は世界にきちんと説明する必要がある。 『米国は頭がおかしい――フセイン抹殺だなんて』 高野 孟(インサイダー編集長) http://www.smn.co.jp/tks-j/opinions/0176o01j.html 3) 第3に、それとも共和党が声高に主張し、米マスコミがいとも気楽に論じているように、フセイン大統領の“抹殺”が目的なのか。例えば『ニューズウィーク』2月18日号はこう書いている。 「米議会の過半数を握る共和党はさらに強硬だ。フセインを『なんとかして排除』すべきだと、トレント・ロット上院院内総務は言った。……だがアメリカが本気だとしても、無数の防空壕をもつフセインの抹殺は容易ではない。……ことによるとフセインを排除するには、米政府が選択肢から排除している地上軍の派遣以外にないのかもしれない」 他国の指導者の抹殺が軍事技術的に可能かどうかを無邪気に論じているのが異様である。 『米国は頭がおかしい――フセイン抹殺だなんて』 高野 孟(インサイダー編集長) http://www.smn.co.jp/tks-j/opinions/0176o01j.html 米政府がイラクにおける国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)の査察団に中央情報局(CIA)要員をハメ込んで、査察と関係のない情報収集=その狙いがフセイン大統領の“爆殺”であったことは疑う余地なし=をしていたことが明るみに出て、UNSCOMのバトラー委員長が辞任し、 査察は現在空白状態になっている。 そもそも、この問題はかなり前からイラク側が米国は国連を隠れみのにイラク国内でスパイ行為をやり放題やっていると非難していたが、なぜか表面化しなかったのが、バトラー委員長のあからさまな対米協力=クリントン弾劾決議の寸前に世論の注意をそらすためイラク爆撃ができるように書かれた査察報告書を米政府に前倒しで提出した=に対する UNSCOM内からの反発が導火線となったのである。 アメリカン・アロガンス 倉田 保雄 (Kyodo Weekly 1999年3月23日掲載) EURO SCOPE 4) 前国連武器査察官スコット・リッターが思い起こして語るところによれば、彼が国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)の主任査察官であった時、アメリカの特殊部隊出身の、またCIAの準軍事的チーム出身の、数十人の人々が彼の指揮下にいた。 サダム・フセインを捕捉し殺すようCIAが指示を受けていた、ということが2002年6月にリークされた時、リッターは次のように述べた。「今や、ブッシュが米秘密作戦部隊に特別にフセインを除去する権限を与えていたというのだから、イラク人は査察体制を全く信頼しなくなるだろう。 この査察体制は、国連事務総長のいかなる保証にもかかわらず、イラクに敵対的な情報機関の潜入と操作を受けやすいということを既に示したのである。」(「ロサンゼルス・タイムズ」2002.6.19) 査察官を水面下で攻撃 ――国連の武器査察官のよって立つ基盤をアメリカが掘り崩す―― by ミラン・レイ 「ARROW(Active Resistance to the Roots of War)」反戦報告19, 2002. 7.10 ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題より、 5) スウェーデンのラジオで、エケウス氏は、複数の国、特にアメリカが、自国の利益のために査察への影響力を増大させようと企てたことは疑いないと述べた。「時がたつにつれて、いくつかの国、特にアメリカは、イラクの能力の他の部分について、もっと知りたがった。」と。 エケウス氏は、アメリカがサダム・フセイン、イラク大統領の居場所についての情報を見出そうと試みた、と述べた。彼によれば、彼はそのような動きを拒絶することができたが、1997年に彼が去った後、圧力が増したということである。 最も唾棄すべきことには、アメリカと他の安保理メンバー国が、政治的に危機的状況を作り出したいと望んでいた時に、イラク国防省のようなイラクが最も嫌うような地域を査察するように、査察チームに圧力をかけたことである、と彼は述べた。 「それらの諸国[安保理メンバー国]は、査察の中心人物に圧力をかけ、イラクの観点からすれば大いに議論の余地のある査察を行わせようとした。そしてそのことによって、直接の軍事行動の正当化として使われうる障害を作り出そうとした。」と彼は述べた。 『武器査察は「操作され」ていた』 フィナンシャル・タイムズ 2002.7.30 by カローラ・ホイアス(ニューヨーク)、ニコラス・ジョージ(ストックホルム)、ラウラ・カーラフ(バグダッド) ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題より 6) 今回イラクは安保理の要請のうち大統領関連施設については国家主権の観点から査察は一切認められないとしていた。本来国家は対外的主権を持ち、国連憲章2条七項でも国内管轄事項に関しては外部からの干渉は認められていないとある。 しかし国際の平和を危うくする恐れがある場合、総会や安保理の多数決により国内管轄事項であっても国連が介入できる国際関心事項が認められていて、また憲章の七章は安保理による強制措置を認めている。今回の査察も大統領関連施設もまた 大統領が強権を握るイラクにおいては決議687の示す対象にあたるとすることができる 参考資料 7) しかし、自国の軍事力や新しい兵器のテスト結果を隠そうとしない国があるだろうか。空爆によって、世界で初めてすべてを公表するようイラクを説得できるであろうか。 『対イラク武力行使は失敗のあかしである』ガッサン・セーラメ(パリの政治学研究所、国際関係論教授) ワシントンポストへ寄稿、デイリーヨミウリ(2/16/98)に転載 ビル・トッテンからのレターより 国連チームを「無条件かつ無制限に」受け入れない限り空爆だというのはギャングの論理で、最初から交渉の余地はないと言っているに等しい。 『米国は頭がおかしい――フセイン抹殺だなんて』 高野 孟(インサイダー編集長) http://www.smn.co.jp/tks-j/opinions/0176o01j.html 8) 自国の主権を守るために国際査察を受け入れないからといって、少数の国の独断により軍事制裁を加えようとした今回のイラク問題を考える際に、 空爆を主張した当の米国が、昨年、ようやく化学兵器全面禁止条約を批准した際に「米国の国家安全保障をそこなうと大統領が判断するときは、 査察官を大統領が拒否できる」という米国独自の国内法を制定しているということも併せて指摘しておきたいと思います。 1998年2月25日 題名:No.148 イラクの生物・化学兵器の開発を支援したのは米国であった ビル・トッテンからのレター 9) しかし、米国国務省の目からすると、バスターニ氏は目の上のたんこぶなのです。まず、彼は米国を他の締約国と同じように扱おうとしてきました。そして米国は、その宿敵であるイラクと同様、 彼の選んだ監察官に満足していません。第二に、彼は査察官を受け入れるようイラクに積極的に働きかけていますが、これは米国主導の第二次湾岸戦争の根拠を弱めることになります。以上のような理由で、 国務省はバスターニ氏を退陣させたがっているのです。 ブッシュの対イラク戦争準備に向けた露骨なOPCW事務局長解任劇 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/opcw_head_removed.htm |
関連するニュース <イラク査察>核兵器開発を示す証拠は何もない 国連査察委員長 イラクの大量破壊兵器査察を担当する国連監視検証査察委員会のブリクス委員長は10日、イラクが核兵器などを開発していることを示す証拠は何もない、と述べた。ただ「イラク国内で実際に査察が再開するまでは確信は持てない」と指摘し、査察要員の早期のイラク復帰を訴えた。 ブリクス委員長によると、98年末に米、英両国軍の爆撃によって破壊された核施設の設備が再建されたことが、衛星写真で確認された。しかし、委員長は「建物の中まで確認することはできない。そのまま大量破壊兵器の存在を意味するものではない」と記者団に述べた。(ニューヨーク共同)(毎日新聞)[2002年9月11日10時21分更新] 米のイラク攻撃、歴史的誤り 元査察担当者がイラク国会で演説 【カイロ9日=小森保良】イラクでの国連による大量破壊兵器査察に携わったスコット・リッター元米海兵隊大尉が8日、イラク国会で演説し、同国が大量破壊兵器を 保有しているという指摘を否定したうえで、米国がイラク攻撃に踏み切れば「歴史的な誤りになる」と述べた。 同氏は個人の資格でイラクを訪問したという。同氏は91年から98年まで続いた査察によって、大量破壊兵器の大半は廃棄され、「イラクは現在、周辺国にいか なる脅威も与えていない」と主張。同時多発テロへの関与を示す証拠もないとして、米国が挙げる攻撃理由は確固たる事実に基づいていないと批判した。 しかし、攻撃を回避するためには国連の大量破壊兵器査察の無条件受け入れが必要と強調、同国に再考を促した。 同氏は国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)で抜き打ち査察を担当、98年8月に辞任した。(朝日新聞)[2002年9月9日] 対イラク査察に地上軍投入…米英首脳が合意 【ロンドン9日=渡辺覚】9日付の英主要紙によると、米メリーランド州キャンプデービッドで7日行われた米英首脳会談で、両国首脳は、国連安全保障理事会に対 し、イラクの大量破壊兵器の査察と解体を、軍事力を背景に一定期間に強制実施する新たな決議を求め、これが実現しなかった場合、米英両軍のみで対イラク軍事作戦を 発動させる方針で合意した。 査察の具体的内容は明らかになっていないが、両首脳はイラク国内外に地上軍を送り込んだ上で、大量破壊兵器の査察を実施することも選択肢の一つにしているとい う。生物・化学兵器などの開発疑惑の残るイラク国内の関連施設に対し、国連の査察を徹底させることが目標だ。 タイムズ紙によると、査察に当たっては、「4―6週間」の期限を設定し、続く「6か月以内」にイラクに武装解除を求める方針。仮にイラクが、査察業務を妨げた 場合は、「国連決議違反」と見なし、米英両軍が軍事行動に踏み切る方向だ。 米英の政府当局者によると、ブッシュ米大統領が12日に国連総会で行う演説の中で、イラクに対し査察受け入れを迫る「最後通告」を提示。同時に、ブレア英首相 が、対イラク作戦に消極的な姿勢を見せるロシア、フランス、中国などの首脳に対する説得工作を主導する。仮に説得が不調に終わり、国連決議を形にすることができな かった場合は、米英首脳は、米軍単独の軍事作戦を発動し、英軍がこれを支援する方針で一致したという。(読売新聞) [2002年9月9日15時29分更新] 査察対象は制限せず=イラクが初めて確約 【カイロ24日時事】イラクからの報道によると、同国のアルサアディ大統領補佐官は24日、バグダッドでの記者会見で、大量破壊兵器の査察を再開する国連査察団が 「望むならどこへでも制限なく立ち入ることができる」と述べた。16日にイラクが無条件での査察再開に同意して以来、査察対象を制限しないことを確約したのは初めて。 (時事通信)[2002年9月25日1時29分更新] |
スコット・リッター氏のイラク国会での演説 我が米国政府は、歴史的に重大な誤りを冒そうとしているようです。すなわち、第2次世界大戦以来、国連憲章によって打ち出された国際法の基礎、諸国間の紛争は平和的な解決を図るという政治力学を永遠に覆してしまうような誤りを。 アメリカ合衆国の熱烈なる愛国者、善良なる市民として、自分の国がこのように振舞っているときに、黙って見ているわけにはいきません。 我が政府は、真実と事実に基づく現実ではなくて、恐れと無知からイラクに対する戦争をはじめようとしています。 米国民は繰り返し言い聞かされてきました。イラクが過去に無責任な行動をとった、そして、1991年に国連安全保障理事会によって禁止された化学・生物兵器や核兵器、大陸間弾道弾を開発しようとしていることから、われわれは極めて危険な状況に直面していると。 しかし真実は、イラクが昨年9月11日に起こったテロの擁護者ではないということ、むしろ、あのおぞましい日に米国を襲った者たちのような急進的なイスラム原理主義者を押さえることに熱心だということです。 アメリカの人々がこの真実に接し、受け入れたなら、「恐れ」の政治は打ち負かされ、2国間の戦争の危険は大きく後退するでしょう。 実際のところ、イラクは隣国にとって何ら脅威ではなく、外国にとって脅威になるような行動はとっていません。 国連憲章に基づく国際法に従うなら、現在のイラクの行動を理由にイラク攻撃をすることは正当化できません。 イラクが大量破壊兵器を過去において所持していたとか、現在獲得しようとしている、とかいう証拠が示されたことはありません。 イラクは7年間(1991年〜1998年)の継続的な国連査察によって、大量破壊兵器に関する限り、90〜95%非武装化されていると言え、そこには関連兵器生産施設も含んでいます。 イラクはこうした兵器を所持する意思がないことを声高に宣言し、それが現実であることを証明するために国際法の枠組みの中で協力すべきです。 イラクがそれを実現する唯一の方法は、国連の査察団を無条件で受け入れること、1991年の国連決議に従って(大量破壊兵器の)武装解除を完了するために、イラク国内のいかなる施設の査察も無制限に許すことです。 イラクが査察に協力すれば、米国はイラク脅威論について孤立することになり、それが戦争を回避する最善の方法になります。 『スコット・リッター:米国のイラク攻撃をいさめる兵器査察専門家』 訳:今村 和宏 BBCニュース(Web版、9月8日) |
1990. 8. 2 イラク軍がクウェートに侵攻 91. 1.17 米軍を中心とした多国籍軍がイラクを攻撃=湾岸戦争始まる 4.11 国連安保理が、イラクに大量破壊兵器廃棄などを求めた停戦決議を採択=停戦
93. 1 イラクが国連査察団の航空機乗り入れを拒否したため、米英仏がイラクを爆撃 6 米国、ブッシュ元米大統領暗殺計画ありとのCIA報告に基づきイラクをミサイル攻撃 96. 9 イラクのクルド人地区侵攻への制裁で米国がミサイル攻撃
97.10 イラクが国連査察団の米国メンバー追放を発表。国連は査察団の活動を一時停止 11 ロシアの調停で、イラクが無条件査察再開の受諾を発表 98. 1.13 イラク、大統領関係施設への査察を拒否 2.22 アナン国連事務総長とイラクのフセイン大統領が会談、イラクの査察受け入れで合意 10.31 イラクが査察協力の即時停止発表 11.14 イラクはアナン事務総長への書簡で査察再開に同意 12. 9 イラクが与党バース党本部への査察を拒否したという報告書 12.13 国連査察団がイラクから撤退 12.17 米英両軍がイラク攻撃
2001. 2 米英がバグダッド郊外のイラク軍司令施設などを空爆
2002. 3 国連とイラク、査察問題をめぐる対話再開 9.12 ブッシュ大統領が国連総会で演説、査察失敗なら単独でも攻撃と表明 9.16 イラクが査察の無条件受け入れを表明 9.24 イラクが査察対象を無制限に受け入れることを確約 10. 1 国連監視検証査察委員会、国際原子力機関とイラクとが査察再開で合意 1 米国務長官が新たな国連安保理決議採択までは査察の再開を認めない方針を表明