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SLA South Lebanon Army
南レバノン軍(自由レバノン軍)

■ 自由レバノン軍設立

1970年にPLOがヨルダンから追い出されレバノンに逃げ込んできてからというもの、イスラエルからの攻撃、シリアの干渉、キリスト教徒とイスラム教徒の対立などでレバノン国内が大混乱におちいりました。

そんな中、レバノン軍の人事異動があり、南部軍管区へサード・ハダット少佐が着任しました。ハダット少佐は、無政府状態となっている自分の国と、政府によるコントロールを失ってしまった軍から独立し、真のレバノン軍を立ち上げました。

独立の目的はシリアやPLOを追い出し、レバノン人によるレバノン人のための政府を復活させることです。

こうして、1979年、自由レバノン軍が設立されました。ハダット少佐はキリスト教徒ですが、この軍隊は宗教上の軍隊ではないので、ムスリムの兵隊もいます。

自由レバノン軍の装備はイスラエル製の中古兵器です。制服もイスラエル国防軍と同じで、胸のマークがSLAとなっています。

 

■ SLA戦闘詳報

■ イスラエルによる第1次レバノン侵攻(リタンニ作戦)
1978年、イスラエルがレバノンに侵攻してきました。これはファタ・ランドを狙った攻撃で、レバノンを攻撃したというよりPLOを攻撃したのです。その際イスラエルは、レバノン人であるがPLOと戦っているレバノン正規軍のハダット少佐に目をつけ、同盟を結びました。

そしてイスラエルはこのハダット少佐の支配する南部レバノンを”安全保障地帯”と呼びました。これにより、PLOゲリラがイスラエルに越境して侵入する事が難しくなったのでした。

■ 1982年イスラエルの第2次レバノン侵攻(ガリラヤ平和作戦)
PLOが安全保障地帯を越えてカチューシャ・ロケットをイスラエル国内に撃ち込み始めると、イスラエルは北部のガリラヤ地方の安全を守ると言う名目で、再度レバノンに侵攻してきました。これについてはレバノン戦争をクリック

この作戦によりPLOはレバノンから追い出されたのですが、シリアは依然軍隊を駐留させレバノンを支配していました。イスラエルもこの作戦間にシリアと戦闘を行ったのですが、PLOを追い出すために侵攻したのであり、シリアと本格的に戦争を始めたわけではなく、シリア軍までは追い出してくれませんでした。

この時シリアはPLOと仲が悪く、イスラエルによって北部に追いやられてきたPLOと戦闘をし、PLO撤退に一役買いました。

しかし、PLOは追い出されたのですが、かわりにイランのホメイニ師によってレバノンに送り込まれたイラン革命防衛隊の指導でヒズボラが生まれます。シリアはこのヒズボラをイランと共にバックアップをしています。

■ ハダット少佐が病死
1984年、ハダット少佐がガンで亡くなってしまいます。これにより自由レバノン軍は消滅するかに思われましたが、レバノン政府からラハド准将が派遣され、政府の意向はどうあれ自由レバノン軍はイスラエルの傀儡になりました。

■ 2000年イスラエル完全撤退
イスラエルはバラク首相が公約してきたレバノンからの撤退を実行に移し、ついに国防軍がレバノンから撤収しました。

イスラエルの庇護が外れると、SLAとしては今まで敵対してきたヒズボラと正面きって戦えるのか?自分たちだけで支えきれるのか?SLAはそれが無理なことは分かっていました。隊員達はイスラエル国防軍が撤退した後、身分を隠し潜伏したり、イスラエルへ亡命したりしたのです。

 

■ SLAの人々

写真提供 Israel GPO

サード・ハダット少佐 Sa'ad Hadat
元レバノン正規軍少佐でありましたが、PLOとシリアに占拠されている自国政府を潔しとせず、自分の任地である南レバノンを切り取り、自由レバノン軍を旗揚げしました。

1984年ガンにより病死しました。お葬式にはイスラエルのシャミール首相も出席しました。

写真はイスラエル国防軍によるリタンニ作戦時下、少佐の車ランドローバーに乗った一葉です。

 


写真提供 Israel GPO

アントワーヌ ラハド准将 Antoine Lahad
レバノン国防軍のラハド准将はハダット少佐が病死した後、イスラエルによってSLA司令官に任命されました。

1988年には准将の奥さんのエアロビコーチとして送り込まれた女性共産ゲリラ、スーハ・ベチャラ(20) Soha Becharaによって暗殺されそうになりますが、胸に2発の弾丸を撃ち込まれながらも、准将は助かりました。

ベチャラは逮捕され、イスラエルがレバノンに設置していた刑務所に送られましたが、1998年に赤十字の圧力によって釈放されています。

2000年にイスラエルがレバノンから撤退すると、SLAも解散し、ラハド准将はイスラエルに亡命しました。

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