1997年11月28日更新
さて、調子にのって更新しました。
前回と同じではつまらないので、
多少不本意ではありますが全面的に変更しました。
1 「なればいい」 The Spiders
2 「Long Tall Sally」 The Outcast
3 「銀色のグラス」 The Golden Cups
4 「お前に夢中さ」 The Carnabeats
5 「マイラブ, マイラブ」 The Youngers
6 「ベラよ急げ」 The Mops
7 「ガールフレンド」 The Ox
8 「I Got The Feeling」 Zoo Nee Voo
9 「眠れる乙女」 The Adams
10 「Space Express」 The Savage
次点 「網走子守唄」 井上宗孝とシャープファイブ
第一回でかなり使ってしまったので、
今回は若干落ちますね。
この調子で落ちていったらどうなるかと
不安になったのでちょっとセーブしてます。
いや〜、本当に落ちていったらどうしよう。
本来の主旨とは
全く違ったお笑いページになってしまうに違いない。
今回の1位はスパイダースの「なればいい」。
もうほとんど事前決定です。
歌詞はやっぱり時代を感じさせる面もありますが、
日本初のサイケデリックソングといっていいでしょう。
海外でリリースされたGS海賊版(海外にマニアがいるのです
)にも収録されたことからもわかるように、
傑出した出来です。
遅れて始まった日本ロックシーンが一気に
世界に追いついた瞬間でもありました。
この曲を聴いてなお、
GSは一時の流行現象であるとか、
音楽的には無価値だと言う人はいないでしょう。
しかし、
今、レコードでこの曲を聴くのは難しいのです。
スパイダースはボックスセットにしてでも再発してほしいですね。
本当は後期はいらないんだけど全部セットでも買うからさぁ。
ジャックスがCD再発されていて、
スパイダースはコンピレーション盤のみという辺りに、
日本におけるGSの位置づけが見えますね。
主流はダメ、
カルトの方がもてはやされるという状態です。
あ、タイガースは別格ですね。
ジュリーが現役で歌手をやっているからだろうと思うんですが。
アウトキャストの「Long Tall Sally」は、
ビートルズやリトル・リチャード
を想像して聴いたら驚愕ものです。
こうなるとオリジナルスタイルと
どちらがいいとかいう比較をすべきではありませんね。
アウトキャストは
この有名曲をパンクなオルガンロックに変えてしまいました。
「Everything's Alright」
ではThe Mojosのオリジナルより遥かに
パワーアップしていたものの、
リバプール5というマイナーバンドのアレンジが
下敷きにあるという指摘がされています。
ところが、この「Long Tall Sally」
ではそういったものが見あたらない。
どこでこのような曲想を得たのでしょうか。
GSのパイオニアのひとつである
アウトキャストがこんなド派手な曲を録音していたとは。
「えんぴつが1本」
の彼らしか知らない人
(そういう人が今なお現存していればの話ですが)
には、同じバンドの所業とは思えますまい。
嫌いな人はとことん嫌うであろう突飛なアレンジです。
こんなことも出来たのに、
彼らはアウトキャストを解散し、
アダムスになってしまうのでありました。
ゴールデンカップスは「銀色のグラス」です。
これも定番ですが、
何よりこの曲はカップスの
ずば抜けた演奏力が発揮された名演に尽きます。
カップスの録音の中でも
最もハードな演奏かもしれませんね。
思うに、曲自体はさほど魅力的でもなく、
カップス以外のバンドがやったらこうはいかなかったでしょう。
またしてもルイズルイス加部のベースが
爆発です。「Hey Joe」
よりこちらの方が音数は多く、
ひたすらうねってます。
ぼんやり聴いているとシングル狙いの
単に目まぐるしく曲調が変わる曲としか聞こえないかもしれませんが、
そういう曲においても激しい演奏をしていたことがまた、
カップスというバンドなのかもしれません。
カーナビーツはふたりのヴォーカリストを擁しましたが、
それぞれに魅力がありますね。
臼井啓吉はヴォーカル&MC担当、
アイ高野はドラム&ヴォーカルでした。
臼井はず太くパワフル、
高野は熱っぽくポップな所が持ち味でした。
ふたりともに共通して言えるのは
荒削りながらも切ない響きを持っていることですね。
このバンドはあまりオーケストラを使用しなかったので
音が薄いんですが、
そこを聴かせてしまえるのはこのふたりのヴォーカリストに加えて、
リードギターの越川ひろしのファズ・ギターのなせる技です。
越川はバンドのリーダーだけあって、
ギターのおいしいところは大体全部、
もう一人ののギタリスト喜多村に任せずに
自分で弾いてしまっているようですが、
それだけの優れたものを持っていますね。
ギタープレイに関して、
「速い」とか「正確だ」とか言う類の技術ではなく、
その音色と切迫した感じを抱かせる個性こそが彼の魅力ですね。
この「お前に夢中さ」
は臼井啓吉のヴォーカルです。
彼らしくズドンと腰の据わったいい歌です。
カナダのバンドのカヴァーという、
選曲の理由はよくわからないものです。
またしてもヤンガーズの登場ですが、
「離したくない」に続いてこの曲を取り上げてしまうと
彼らはもう出番がないかもしれませんね。
「マイラブ・マイラブ」
も1969年としては新鮮な(オーケストラ抜きの)
バンドだけの演奏で、
技術的には若干気になるところもあるものの、
勢いで乗り切ってます。
活きのいいドラムが引っ張ってますね。
曲に若干キャッチーな所が足りなかったかもしれませんが、
この曲はB面ともどもメンバーの作詞作曲であるのも光っています。
職業ソングライターが入らなければ、
もっとこういうものが出来たかもしれないんですよね。
不幸にもヒットには至らず、
ヤンガーズも坂を転げ落ちていくのでした。
どうでもいいけれど、
バンド名はやっぱり変です。
「ベラよ急げ」。
モップスから選ぶとしたら、
「朝まで待てない」かこれか、どちらかだと思ったのですが、
全編に渡ってひたすらがなっている
ファズ・ギターを理由にこちらを選びました。
ギターが鳴り続けているスタイルはビーバーズを思い起こさせます。
モップスはそんなに好きでもないんですが、
極端に変な曲がないのが特徴です。
他に変な曲のないバンドというと、
ボルテイジ、ズーニーブーがありますが、
彼らもシングルではかなり変ですし、
ズーニーブーのファーストアルバムの出だしのMC?は今聴くとつらいものがあります。
さて、「ベラよ急げ」ですが、
鈴木ヒロミツがこんな歌を歌っていたのかという感慨がまずありました。
こういうのってあまり本筋と関係ないのは承知の上で、
こんなヴォーカリスト
がGSの中には結構いたのに、
みんなどこにいっちゃったのかなあという疑問も私としてはありますね。
ロックなんてどうでもよかったのかな。結局。
さて、オックスの出番ですね。
このバンドは「スワンの涙」
という大ヒット曲をもっていますが、
そちらはパスです。パス。
ではなぜ「ガールフレンド」なのか。
「オックス・クライ」でもいいんですけど、
あざとさの際だつ点で
「ガールフレンド」を選びます。
オックスはフリルひらひらブラウスのコスチュームや失神ステージなど、
相当にきわどいバンドだったのですが、
実は極めて巧妙な戦略的なバンドでもありました。
一説にはGS嫌いのレコード会社重役の手によって
GSブームつぶしのために送り込まれた
キワモノバンドとまで言われます。
中でもこの「ガールフレンド」には、
橋本淳のGS変態化計画とでもいうものを感じるのです(
本当にそんなものがあったのかどうかわかりませんが)。
彼の作詞が当時のGSに貢献したのは確かですが、同時に
現在振り返ることを
困難にしている一因でもあるわけです。
この「ガールフレンド」の歌詞もまた、
わかったようなわからないような歌詞なんですが、
整合性を求めて読むと
「夜這い」
の歌であるとわかります。
お城に住むお姫様の歌だと思っていたら
とんでもないワナにかかってしまいます。
こうして当時の少女たちは、
橋本淳とオックスの仕掛けたサブリミナルな
ワナにかかってこの歌を大合唱したりしていたんですね。
タイガースのデビューヒット
「僕のマリー」で橋本淳が描いた異国情緒への憧れは、
ここに至って(その前からかもしれないけど)
当人の手によって蹂躙され尽くしました。
ズーニーブーは、
この「I Got The Feeling」よりいい曲もありますが、
何よりこの時期に
JBファンクに真っ向勝負したことが聞き所だと
思うんです。
大抵はバラードのヒット曲「It's A Man's Man's World」
に走るところを(ズーニーブーも録音してますが)、
この曲に挑戦しているのがいいですね。
ボーカルのノリがいまいちなど、
決して成功しているとは言えませんが、
それもまた歴史です。もしかしたらこの録音は、
日本のソウル/R&B
史上初のJBファンクナンバーのカヴァーでは?
9位にアダムス「眠れる乙女」。
この曲が頭抜けていいということはないと思いますが、
クラシカル歌謡としてはよく出来た曲です。
アダムスとしては最高傑作だと思います。
しかし、「にくい時計」を聴くと、
彼らはやはり
元アウトキャストなんだとしみじみ感じますね。
しかし、それはパンクなアウトキャストではなく、
センチメンタルなアウトキャストなんです。
アウトキャスト
の青春しんみり路線が再現されてしまったのが
「にくい時計」ですね。
この曲は最近CDで再発になったばかりの
「カルトGSコレクション ソニー編」
で聴くことが出来ます。
最後はインストルメンタルです。サベージはスパイダースほどワイルドではないものの、
この曲では本領発揮といった所です。それでもやはりこのリストの他の曲に比較すると見劣りしますが、
決して悪い演奏ではありません。ギターインスト嫌いの私でもこの曲は割と好きですね。
この曲をリストアップしてから気がついたのですが、
GS再評価をしている人の間では好みが似ています。
次点はこの曲あたりにしておきましょう。
忍び寄る暗い影という感じですね。
今回のリストの中で、
この曲だけは積極的に聴く必要性ゼロです。
ロックバンドの形態で敢えてこのようなことを
しなくてはならなかった理由に思いを馳せると、
想像力がかきたてられるのもまた事実です
(本当か?)。
これは恐らくは小編成エレクトリック・バンドのメリットを
誤解した例だと思います。
まだエレキバンドが海のものか山のものか
はたまたロックなのか、
それすらも自明のことではなかった
時期のことですから。
この曲に関しては、
少なくともロックというコンセプト
に対する理解は皆無です。
今回の選曲は、
スパイダース「なればいい」
以外は頑張って探せばCDで聞けると思います。
アウトキャストはもしかしたらLPしかないかも。
スパイダース「Wipe Out」は正規盤では出ていませんが、
「Banzai Freak Beat」という海賊盤に入っています。
さあ、次回はどうなるのか?もう1回硬派な路線で行くのか、
それとも・・・。いや、頑張ろう。
棚橋勝敏(イージーファン)