Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 3: Tran-DS Eliminated
part1
吹雪になっていた。
月が時々雲の後ろから現れ、その不毛地帯に明かりを射した。
廻りには氷しかないその世界に生きているものがいるわけがない。
地球より寒いエルファの北極、七年前に使われた核兵器の影響はここで一番感じられた。
50年前までは地球にいる北極熊によく似た生物もいたが、今は彼らのもいない。
氷が溶けるなんと言う事はほとんどなかった。
そんな所に聳え立つ氷の塔があった。
いや、氷ではない。
幅20mしかないのに自然で直角に氷が聳え立つことはまずない、ましてや120mも。
人工建造物である。
下から上へ目をやると亀裂が無数にあり、建造されてからかなりの年代が立っていることがわかる。
不思議なことに塔の廻りには雪がたまっていない。
塔の土台のまわりに氷しかなく、とけた様子もなかった。
まるで、塔を押し倒そうと吹雪が吹く。
いつもはその風の音だけが流れていたが、今夜は違った。
その風の音に機械の音と空気を切る音が含まれた。
月から何かが落ちてくるような形でそれは現れた。
落ちてくる速度が尋常ではないので、吹雪の風はなんの影響も与えなかった。
だが、その飛行物体、レイピアシャトルは視界が悪かったのか、前方にある塔には最後の最後まで気が付かなかった。
バーニアとスラスターで必死に塔を避けようとするが、大気圏突入の速度であるため間に合うはずがなかった。
直撃だけは避ける事ができたが左翼が塔と衝突し、もぎ取られる。
『なんでセンサーに反応しなかったの?!!』
回転しだした機体を制御しようとパイロットは悲鳴に近い声を上げながら近づいている地面を見た。
そして、これ以上のことは出来ないと確信したとき、衝突体制を取った。
ばきっ!と言う音と共にレイピアシャトルは機首真っ先に落ちた。
コクピットブロックは最初の衝突で折れ、宙に投げ出された。
そのブロックが一応脱出装置の一部であるため、地上との激突をやらわげるようエアバッグが展開される。
二、三回跳ねると、止まった。
コクピット内でもエアバッグが展開されていたため、パイロットは外見からしてほぼ無事のようであった。
だが、後部はそういかなかった。
最初の一撃から跳ね上がり、二、三回歯車のように回転してやっと止まったのである。
その際、シャトルの格納庫のハッチが開き、TA二機とコンテナがばらまかれた。
すべての物の動きがとまった瞬間、後部は爆発し燃え出した。
吹雪がその炎をまるで消そうかとより一層に強く吹き始める。
「く」
コクピットのハッチを開け何とか這い出したパイロットは、バイザーが割れているメットをとる。
頭から血がにじんでおり、顔にも小さな傷がいくつかあった。
廻りを見渡し、燃えている後部を見ると走りだそうとするが、片足がそれを許さない。
それを引きずって後部へと向かおうとする。
しかし今度は胸が痛みだし、血を吐き出し始める。
口を押さえるが、今度は息ができなくなっていることに気付いた彼女はもう一歩進むとそこへくずれた。
墜落したときのショックが大きすぎたのだ。
生きている方が不思議だったかも知れない。
自分の血が流れるのをみていると気が遠くなっていく。
手に力が入らず、瞼が重くなり目を開けていることができなくなっていた。
いや、世界が勝手に暗くなって行っているのだ。
その時、塔のふもとでオレンジ色の明かりが現れた。
塔の中から発せられてるその光は開いた扉から出ている。
人の形をした陰が一つと、人間とは違う陰をもった物がいくつか出てくる。
それと同時に塔の三分の一の所に強力な光が現れ、墜落現場に照明を与えた。
人の形をしている者は防寒服をきているらしい。
雪の上に倒れている人物を発見すると大急ぎでかけよる。
『・・・・!!!・・・・・!!』
意識が消えかけてるせいか、言葉がわからない。
ブーーーン・・・ぴぴぴ!!という音が取り出された機械からした。
『・・・・!!・・・・・!!!!・・・・・!!』
また何かを言っているが、やっぱりわからない。
今度は人の形をしていない陰が近寄り、不思議な光に体が包まれ・・・浮いた。
そして扉へ向かいはじめる。
「m・・・ま、まって・・・」
動きが止まった。
人物が駆け寄ってきて、手を握る。
『・・・・・・!』
最後の力をしぼってか、真沙緒は片手をあげ、Tran-DSの陰と思えた物に指を刺した。
「a・・・あと、m・・・も、ひ、ひと・・・」
それ以上は言えなかった、再び血が口から吹き出る。
『・・・・・・・・・!!!・・・・!!』
女の子の声が・・・何かをいうと、再びうごき始める。
塔のふもとにある光に向かっていき、暖かい空気と光に包まれた瞬間、真沙緒は暗闇に落ちた。
○
泡の音がする。
身体は暖かい液体に包まれ浮いているようだ。
液体にいるせいか目を開けると、視界はぼやけていた。
ただ目に見えたものは、白い部屋と、あっちこっちに点滅する光だった。
その時ある事に気が付く。
口と鼻に空気を送っているものが取り付けられてなかった。
慌てて口と鼻を押さえようとする。
だが激痛が両腕に伝わった。
左腕の傷・・・とどうやら右腕も折れているようである。
息を我慢しようとするが不思議に息苦しくならない。
液体が直接肺に酸素を送り、二酸化炭素を取り出しているようだ。
思いっきり吸い込んでみる。
胸に、正確には肺に激痛が走る。
ゆっくり吐き出してみると血が混ざって出てくる。
どうやら、肺に損傷問題があるようだ。
普通だったらもうすでに死んでいるはず。
今度はゆっくりと吸い込んでみた。
液体の温かさが体中に広がって行くようだった。
気持ちいい。
最後にお覚えているのは・・・Tran-DSを・・シャトルに着艦しようとしたところまでだ。
その後何があったのか、時間がどれぐらい立っているのか、色々な質問が頭をめぐる。
真沙緒は?
彼女は無事なんだろうか?
同じように治療を受けているのだろうか。
身体の隅々まで液体の温かさが広まったせいか、睡魔が襲ってきた。
いままで我慢してきた疲れが一度に出てきたかのように。
今はこれ以上我慢していてもしょうがない、休む事にする。
目を閉じると彼女は深い眠りに落ちた。
○
「うん」
なにかきっかけがあったわけではなく、目が覚めた。
目には白い天井が映っている。
上半身を上げると頭が少しくらくらした。
頭を振ってそれを振り払う。
あたりを見回すと、それは一つの個室であった。
ベッド、机、テーブル、棚・・・極普通の部屋。
下へと顔をおろして手を見た。
拳に力を入れてみる。
痛みは無かった。
胸にも手を当てる。
痛みはない。
「え?」
自分が何も着てない事にその時気が付いた。
顔が赤くなり、だれもいない部屋でカバーの中に身体を隠した。
身を丸くし、カバーをきつく巻き付く。
-何やってるのかしら・・・わたし-
しばらくしてからそう思い、もう一度部屋をみる。
テーブルらしき物の上に布がおいてあった。
真沙緒は起き上がると、その布を手にした。
服だと言う事がすぐにわかる。
「!」
軽い・・・重さがほとんど感じられない、まるで羽のような軽さだった。
白と黒の部分があり、白いほうはドレスみたいなスカートであった。
黒い方は、どうやら軍で着ていた下着と同じようなボディースーツらしい。
さっそく手足を滑り込ませた。
「!!」
再び驚かされる。
着こごちはいままで着た物のの中で最高だった。
彼女の身体のラインをその通りフィットし、きつくも緩くもなかった。
まるで自分の身体の線をそのままトレースして作った、彼女だけのものと感じられた。
少し身体を伸ばしたりするが、締められるとこはなかった。
満足すると今度は白いドレスを着てみる。
地球のデザインとはあまりかわっていなく、これもまた彼女身体の線をそった。
肌との感触はまるでシルクドレス見たいであったが、違うとも感じられる。
くるくると身体を回転させてみた。
ふわっとスカートの裾が浮き上がる。
動きを止めるとスカートも元の位置に戻った。
-こんなの久しぶりだな-
ふと昔の事が浮かび上がる。
何年か前のある日が。
ある場所が、ある夕焼けが、ある男が。
いまごろ何を思い出しているんだろう・・・と思い目をつぶり、真沙緒は頭を左右に振った。
再び、ベッドの上に倒れると天井をしばらく眺めた。
変化しない天井とにらめっこしてると、ドアのほうからチャイムみたいな音がした。
だれかが来たらしい。
身体を起こし髪をちょっとかきあげてから返事をした。
「ど、どうぞ」
ほかに言う事が浮かび上がらなかった。
ドアが開き、女の子と彼女の側にふよふよと浮かんでいるものが入ってきた。
『・・・・・』
少女はそういうとお辞儀をする。
どうやら「こんにちは」と挨拶をしているらしかった。
真沙緒もやさしく微笑むとおなじく挨拶をする。
『・・・・?・・・・』
何を言っているのかわからない。
真沙緒はちょっと対応に困った。
『・・・・。・・・・・?』
「ちょ、ちょっと私、貴方が言っている事が・・・・」
言葉が通じないと気が付くと真沙緒は口を止め、手のしぐさで言いたい事伝えようとする。
『?』
最初ではわからなかったらしく、相手は少し頭を掲げた。
「うーーん」
真沙緒はもう一度何か考え、やってみた。
『あはははは!!』
燃えるようなオレンジ色の髪を二つのおさげにしている髪を震わせながら少女は笑い出した。
よほど真沙緒のしぐさがおかしかったのだろう。
真沙緒もつれられて笑う。
それで何が言いたいのかわかったのか、少女は笑いを止めると彼女の頭上に浮いている球体に話し掛けた。
カメラアイみたいな物が現れ、真沙緒を数回回るとそれは少女に話し返す。
了解とか言ってるかのように少女は頷くと真沙緒の手を掴み引っ張り始め、どこかへ連れていこうとする。
真沙緒も抵抗はせず彼女とともに部屋をでた。
球体はしばらく部屋にとどまり、真沙緒が寝ていたベッドをさっきのカメラアイでスキャンした。
髪の毛一本見付けるとそれは小さな「腕」と「手」をだした。
そして、髪の毛をつかみ自分の小さな収納庫にいれるといずこへと消えた。
○
「フェアランス少尉!」
少女に連れられて到着さきには、フェナがいた。
彼女も真沙緒と同じような物を着ていたが、真沙緒の白いドレスより黒いものになっている。
まるで彼女の白銀の髪と肌の白さを引き立てているようであった。
少し疲れた顔でフェナは真沙緒を見た。
『・・・・・・』
少女が何か真沙緒に言ったが分かるわけがなかった。
「すみません!私のせいで・・・」
誤ろうとした真沙緒にフェナは無言に顔を左右に振った。
「責任は私にあるわ、あの時無理に出撃したのはあたしですもの」
「しかし!!」
「い、いいの、気にしないで真沙緒さん」
「!!」
そういうとフェナはそこにあった椅子に腰をおろした。
まるで老人のようにゆっくりとそして、胸を押さえながらである。
その様子を見ながら真沙緒はフェナが自分を名前で呼んだ事に驚いていた。
今の彼女はまるでハインラインにいた彼女とまるで別人のようであった。
「く!」
表情が歪み、フェナは胸を押さえる。
「フェアランス少尉、貴方まだ傷が」
「うん、まだ完全じゃないみたい・・・わたしはちょっと・・ね。」
『・・・・・・・・』
少女がまた真沙緒に何かをいう。
その深いエメラルドグリーンの瞳が真沙緒を見詰める。
「それにしてもここは?」
「・・・・・・それは・・・・この子に答えてもらいましょうか」
「え?でも言葉が・・」
通じないと真沙緒は言いたかったが、フェナはその時自分の左腕を上げた。
手首には銀のブレスレットみたいのがされとり、それの中心には無数の色に光る宝石が埋め込まれていた。
よく見ると針がいくつか皮膚の下に刺されている事が見えた。
「これは?」
「ここの住民のために使われていた身分証明書。翻訳機も内臓されてるみたい。あなたのもすぐにできるとおもう」
そういってる間に、例の球体が戻ってきた。
少女の側に来ると、その小さな手を使い、収納庫からフェナと同じようなブレスレットを取り出した。
それを少女が受け取ると真沙緒所に駆け寄り、それを真沙緒に差し出した。
真沙緒は、ありがとうといいながらそれを受け取り、色々と調べはじめた。
特に別に変わった所はなかったが・・・それは手首を全部回るようには見えなかった。
「手首の上に乗せて、その宝石を押して」
いわれるままにして、手首にうまくバランスして、宝石を押す。
ぱしゅ!っと小さな音がして宝石の上下から触手が伸び、手首をしめた。
それと同時に宝石の左右から針が三本伸び、皮膚に刺さる。
「う!」
注射をされるときと同じ痛みが生まれた。
「あ!」
座り込み、手首を右手で押さえ痛みをこらえようとした。
思わず引き千切ろうとするが少女が真沙緒の右手を掴み顔を左右に振った。
どんどん伸びていく針はやがて真沙緒の神経と接触をした。
接触した瞬間、真沙緒は自分の脳の中でなにかちりちりする感触を覚える。
しかしそれも一時的なもので、数秒でおわった。
「はぁ、はぁ」
ものすごい痛みが一点に集中したため息が少しあらくなった。
そしてそれが消えて真沙緒が顔を上げるとニコッと笑う少女の顔があった。
『これで言っている事がわかりますね』
「え?!」
言葉は耳から聞こえたわけではなく、直接脳に聞こえる。
『あらためてはじめまして!わたし、フィオリーナといいます』
真沙緒はまだ驚きを隠さず、手を自分の頭においた。
『そして、あなたがたいう先史文明の一つの首都、イルヴィーヌへようこそ』
そういいながらフィオリーナという少女はその部屋にある一つのスイッチを押した。
フェナのそばにあった壁がうすくなり、広い町並みが彼女達の前に現れた。
しかし、それは人が住んでいるような場所ではなく、建物が破壊され、あっちこっちに強大なクレーターがある、戦のため荒れ果てたものであった。
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