Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 3: Tran-DS Eliminated
part2

「「これは!!!」」

その町並みを見て、さすがにフェナも驚きを隠せず声を出した。
無限に広がるかのように見えるその町、いや大都市には何かを中心に爆発が起こった後や、クレーターが無数に広がっていた。
あきらかに戦乱の結果であると誰もが分かるような景色だった。

「下に・・・・降りられる?」

フェナがフィオリーナにたずねた。
無言に頷くとフィオリーナは二人をエレベーターに案内した。
その時、浮遊していた球体は行く手を阻むようにフィオリーナを止めようとする。
彼女はそれを無視し、二人を案内し続ける。
困ったかのようにそれはいずこへと急いで消えていった。
エレベーターが三人を町のレベルまで送ってくれた。
そして下に付き、ドアを開けるとそこは下町のような所であった。
店らしきものがあり、果物や野菜をを売る時おく箱などもある。
一件地球にある古代文明とそっくりに見えたが、時々機械、またはディスプレイみたいな物があった。
また、何かが焼かれたあともくっきりと残っている。
人の形をしたものもある。

「千年以上は立っている・・・」

フェナがそうつぶやいた。
やがて、爆発で消滅した所に来る。
建物が蒸発しており、中心まで綺麗な野原ができている。
中心には黒い物体二つがあった、おそらく爆破の原因だろう。
その一体近づくにつれ、それをどこかで見たことがあるとフェナは感じていた。
そしてそれはその機体の頭部を見たとき確信となった。

「キラードール・・・」

「え?!」

頭部を見たときフェナが言った言葉に真沙緒の顔は白くなった。
急いでフェナの側に立つとそこにのっぺらぼうが二人の前にあった。
機体損傷は胸のところにあり、おそらく反応炉かなにかをもう一機に射抜かれて爆発したんだろう。
フェナがフィオリーナに顔を向けたとき、フィオリーナは拳に力をいれ、地面をみていた。
なにかいやな事を思い出しているのだろうかとフェナは思った。

-千年それ以上立っているかもしれないのに彼女だけがいる-

フェナはふと自分の事を考えて見た。

-コールドスリープ?-

いや、いくら冬眠装置でも限界がある、ましてや千年以上は人体に異常が出てくるはずである。
そんな事をフェナが考えているとき、真沙緒はそのとなりに倒れているもう一機のそばに駆け寄った。
しかしそれはキラードールとは別のものであった。
いや、キラードールとはどことなく似ていたが・・・・

「獣?・・なにかしらこの形・・・獅子・・寅?」

頭部を見ながら真沙緒は自分が知っている物とイメージを組み合わせようとした。
口は大きく開いており、牙がある。
そして四脚の機体のようだ。
どうやら相打ちだったらしく、その機体も胸・・・いや、腹部を貫かれ絶命していた。
その姿を見て、フェナ脳裏にある光景が浮かんだ。
そこには無差別に攻撃してくるキラードールとこの都市を守ろうと戦う獣見たいな機体。
しかしその戦いに敗れたのはこの都市の人たち・・・・
そして彼らはフィオリーナを残しこの世から姿を消した、いや消された。
フェナの想像ではこんな所であったが、気になるのは何故この都市を破壊する必要があったかである。
キラードールは無差別に人間をも襲った、そして人間達はその最後の抵抗として核という兵器を使った。
かりそめであるかもしれないが、大きな犠牲の上地球の人間はこの星で平和を勝ち取ったと言える。
しかし、キラードールの行動の動機が不明であった。
もしかしたらここでそれが分かるかも知れない。

「フェアランス少尉・・・どうやらこの獣の形をした機体よりキラードールの残骸があるみたいです」

真沙緒が廻りをみてからフェナに言ってみる。

「そう・・・」

『もういいでしょうか・・・』

「あ、・・・・うん」

あんまりいたくない場所なのかフィオリーナはそこを早く離れたい態度を持ち出していた。
二人はそれに抵抗せずエレベーターに戻っていった。
そしてどんどん上に進むエレベーターの中から現れて来る破壊された町並みを見ていると

『みんな早く帰って来ないかなぁ』

とフィオリーナが言ったのである。
どうやらだれかに、ここの人達は一時的にここを離れ、帰ってくるとおしえられたらしい。
それを聞いておたがいの顔を真沙緒とフェナを見た。
真沙緒の目には涙が現われていた。
口を押さえ、後へと振り向く。
そしてその答えを一番分かっていたフェナはやさしくフィオリーナを後ろから抱いた。

-この子はどれぐらい一人でここにいたんだろう?-

など、普通思わない事が浮かび、フェナは強くフィオリーナを抱いていた。

『お、おねえちゃん?』

ちょっと驚きの声をだすフィオリーナにフェナはこう答えた。

「大丈夫、すぐにみんな帰ってくるよ」

といいさらに強く抱いたのである。
この時、真沙緒はフェナの顔がまるで別人に変わっていたことに気が付いた。
いつのものの無表情ではなく、易しさでいっぱいである。
それにさっきは自分を名前で呼ばれている。
フェナに何か変化が起きているのかと思った。



「そういえばまだお礼を言ってなかったね?」

治療を受けているフェナを待ち、真沙緒はフィオリーナと話していた。

「あの時は有り難う・・・もしフィオリーナが出てきてくれなければ、私たちは・・・」

『本当は出ていっちゃいけなかったんだ・・・』

「え?」

『敵に見付かっちゃうから出ていっちゃだめだってマザーが言ってた』

「マザー?」

『うん、ここのメインコンピューター』

「・・・・」

『あ・・・いかなきゃ』

「いくって?」

『お勉強の時間』

「勉強って」

『いやだなーー、お姉ちゃん達といるほうが楽しいのに』

「私たちもいっていいかな?」

『フェナお姉ちゃん!!』

治療が終ったので出てきたフェナがたずねてみる。
フィオリーナはフェナに飛びつく、その態度はまるで猫である。
どうやらさっきの町の一見でフェナはフィオに気に入れられたらしい

「ちょ、ちょっと、まだいたいんだから・・」

『ご、ごめん!』

「で、どうなのかな?」

真沙緒がフェナの質問を聞き直した。

『だめだと思う・・・・私しか受けれないものみたいなの』

「・・・・・・」

『ごめん!ああ、おくれちゃう!じゃね!』

フェナから飛び降りるとフィオリーナは通路の迷路の中に消えていった。

「元気な子ね・・・」

走って離れていくフィオリーナの姿をみながら、真沙緒がつぶやいた。

「そうね・・・」

眩しいものを見るかのようにフェナは合意する。

「ところで・・・私たちの機体どうなったのかしら」

フェナがとっさに発言をした。 「!!!!!!」

いままでなんで気が付かなかったのかということに吹き出し笑う二人の女性の笑い声が、だれもいない通路の中にしばらく響いた。



「ひどぉおい!!」

真沙緒は自分の機体の有り様を見て思わずて声をあげた。
フェナも自分の機体を見てため息をついた。
格納庫らしきところに案内され、二人の反応は当然といえば当然であった。
二機ともぼろぼろである。
特にTran-DSのほうは前戦のための損傷のうえに墜落したときのショックをもろに受けたためぼろぼろであった。
大気圏突入の際、バックパックを強制排除したため、そのジョイント部分が設計された以上の摩擦熱を味わい、変形していた。
頭部も両センサーがつぶされ、両足のスラスターもおしゃか状態であり、TVSなど問題外であった。
トランゼスSのほうもただではすまなかった。
墜落の時のショックと無造作に放り出されたため打ち所が悪かったらしい。
頭部はつぶれ、肩のスラスター、足のスラスター共に全滅。
戦闘はと言う前に動かすのが無理だった。
大きなため息を吐く二人を見たフィオであった。

『だいじょうぶ!ここの機械を使えばすぐになおるよ!』

「パーツ・・・・どうしよう」

「・・・・・・・・・・一応手はある・・・けど」

「ま、ま、まさか?」

真沙緒はフェナが考えている事をすぐにわかった。
町の中にはキラードールが転がっている。

『だめ!!!!』

険しい顔をしながらフィオはその考えを拒否した。
絶対にゆるさないと言う顔である。
無理もない反応ではあるが。

「ふう」

とフェナがもう一度ため息をするとリフトらしきものに乗るとコクピットにあがった。

-I'm not feeling well、Is there a doctor in the house?-
(気分が最悪です、お医者さんいらっしゃいませんか?)

「・・・・・・」

聞く前に答えられてしまったフェナは無言に作業を始めた。

「被害状況全部・・・お願い」

-Roger-

ぶれるスクリーンにいくつかのウインドーが開かれた。
シルエットにはほとんどのパーツが赤く点滅している。

「Wile・・・千年もたったパーツ使えると思う?」

-・・・・・・You're joking right?-
(冗談だろう?)

「・・・・・・」

フェナは何もいわず、被害状況を確認していった。
再設定を行いはじめるが状況は変わらない。

「動ける?」

-No-

「間接が全滅か・・・・・やっぱりここはあの子に頼るしかないのか・・・」

そういうとフェナはコクピットから上がり、リフトで再び下へ降りた。
ちょうど同じ時に真沙緒がコクピットから出てきたときである。

「はぁ」

彼女もため息をしながら降りてきた。

「普通の戦闘でもここまで壊れたことはなかったのに・・・」

頭を掻きながら真沙緒はトランゼスSを見上げた。

『へへへ・・・』

にこにこと笑うフィオがその二人の様子をみた。

「な、なに?」

それに気が付いた真沙緒が少したじろいだ。

『いいよね・・・マザー・・』

と誰かに問い掛けたフィオはポケットからあるスイッチらしきものを取り出した。
そして望んでいた答えがその「マザー」という者から来たとき、それを押した。
次の瞬間少々暗かった格納庫は眩しい光に覆われた。
そこに現われたのが巨大な工場であった。
瞬時に小型ロボットが両機に飛びつき、その「目」でスキャンしはじめる。
その様子はまるで巨人のまわりに飛ぶ小人みたいだった。

「フェナ・・これは」

先史文明の工場である。

「・・・・・すごい」

フェナはその光景をみて、その言葉をもらした。
見とれてるとフェナははっと我に帰る。

「直すと言っても・・・どうやって」

『うん、お姉ちゃん達を助けたすぐ後に、マザーが両機のデータをアクセスしたの』

「え?!」

「Wile, 確認して」

-Please wait a moment・・・・・・・・・・confirmed, Mother accessed all data concerning the origin, design and recent battles of Tran-DS and Tran-ZSS-
(少々お待ちを・・・・・・・・・・・・確認しました。マザーはTran-DSならびにトランゼスSの根拠、設計そして最近の戦闘データをアクセスしています)
そのことを聞いてフェナは少し青くなった。

「・・・・・・まさか・・フィオ」

『うん?』

「解体なんかしないわよね」

キラードールに滅ぼされた町。
そして、そのキラードールを元に作られたトールド・アーマー。
仇が目の前にいるようなものである、破壊されても不思議ではない。

『・・・しないよ・・お姉ちゃんたちは敵じゃないもん、だってあのキラードールを倒したじゃない。マザーはそれは分かってると言った、だからもっといい機体にするって』

フィオは頭を下げながら言った。

「そう、ちょっと気に入らないけど・・・まかせるしかないわね。改造って・・・・?」

『それは、ヒ・ミ・ツ』

意地悪そうな顔でフィオが答える。
フェナはもう一度Tran-DSを見上げた。
小型ロボット達がスキャンを終らし、Tran-DSはベルトコンべイヤーに乗せられ、工場の奥のほうへと進んだ。
Wileのご機嫌がどんどん悪くなる事に付いてフェナは頭を抱えた。

「貴方キラードールと戦ったの?」

キラードールと聞いた真沙緒は驚きですぐに反応できなかったか、少し遅れ気味でフェナに問い詰めた。
質問にフェナは無言に頷いた。

「エルファに輸送中の私たちを襲った艦隊にキラードールがいた」

「え?」

「もっとも外盤があったから艦隊の人間にはわからなかったようだけど」

真沙緒は目を丸くしながらフェナをみる。

「どういうこと?」

わけがわからなくなってきた真沙緒が話についていこうとする。

「私にも色々と聞きたい事があるんだけど。マザーそれに答えてもらえる?・・フィオ」

『聞いてみるね・・・』

すこしさびしそうな顔をしながら、フィオはマザーと交渉をしはじめた。

「ちょっとまって!、キラードールがあの艦隊から発進したってことは・・・」

人が乗っていることになる、と真沙緒は付け足したかった。
自分が言っている事がどういうことなのか、どういう事が含まれているかの事を考えると口が止まった。
地球からの調査機がエルファに到達したとき、遺跡はあったがその文明の主達はいなかったと真沙緒は小学校のときにならった。
人がキラードールに乗っているということは・・・その先史文明の人たちが生き残っているということになる。
現に・・・フィオがいる。
彼女もここの生き残りならどうやって?
7年前、キラードールが責めた所に人間を一人も生残さず次々と人間が苦労して作った町々を消していった。
だが、「ここは」千年以上の昔に責め滅ばされている。
質問がどんどん出てくる。
ばし!と金属を切る音がし、火花が飛ぶ。
Tran-DSとトランゼスSの装甲が外されていく。
その様子を二人が細かく観察している。
その時、フェナは後ろからタックルを受けた。
いや、と言うよりフィオが背中にジャンプしてきたのである。

「ちょ!フィオ!」

『マザー明日合ってくれるって!その時色々話すっていってた』

「そう・・」

おんぶをする事になったフェナはフィオを支える為手を後ろに回し、一度持ち直す。
フィオは前に手を出して組み、落ちないようにしっかりとフェナの首を抱いている。
その様子をみて真沙緒はくすくすと笑っている。

「親子みたい・・・」

『へへへ・・・』

嬉しそうにフィオはフェナの肩に頭を寝かせた。
複雑な気分になっていたフェナはただ工場の奥の方へ消えていくTran-DSを見ていた。
機械音が続いた。
「フェナ・・・・・」

「え?」

「フィオ寝ちゃったみたいよ」

「・・・・」

居心地がよかったのか、フィオは寝息を立てていた。
無言にその寝顔をフェナがみる。
起こすのも可哀相とおもい、そのまま格納庫をでて自室に戻った。
格納庫にいても作業の口出しは出来ないのが不満だったが今はまかせるしかなかった。
すべては明日に解明されるということを願いながらフェナはフィオを自分の部屋に寝かせた。
カバーをかぶせ、手を中に仕舞い込む。
そしてそっと離れようとした時、フィオが袖をしっかり捕まえてる事に気がついた。
離す気配もなくフェナはしょうがなく腰をフィオの隣におろした。

「・・・・・・」

お下げにしてあったフィオのオレンジの髪をおろし、手で簡単にといて上げる。
しばらくそうしていると、ドアに来客の合図がなった。

「どうぞ」

ドアが開くと真沙緒が入ってくる。
二人の姿を見るとくすっと笑ってしまう。

「お子さんはよく寝てますか?お母さん」

「ええ・・」

意外な答えに真沙緒は少し驚いた。
ハインラインにいたときより、人間らしさが出ている事にフェナ自信が分かっているのかどうか真沙緒は気になった。

「ちょっと話・・・いいかな?」

「いいですけど・・・・・・・・・」

フェナが指差す所に目を動かすと真沙緒は原因を掴んだ。

「よっぽど気に入られたみたいね」

といいながら、真沙緒はそっとフィオの側に寄ると無理がないようにフィオの手を小指からこじ開けた。
寝ていたせいかフィオは抵抗しない。

「ごめんね・・・ちょっと大事な話があるから、お母さんをちょっとの間貸してね」

あやまりながら、手をカバーの中に収める。

「ここじゃなんだから ほかに行きましょうか?」

真沙緒の申し出にフェナは無言にう頷いた。
そして部屋を出ようととしたときである。

『うん・・・・お母さん?』

振り向くとフィオが半目を開きこちらを見ている。

『どこかに行くの?』

「ええ、すぐ戻ってくるからおとなしくねていなさい」

『はーい』

フェナが対応するとフィオは再び眠りに着いた。
二人は静かに部屋をあとにすると 塔の最上階にいき、雲が流れる中月を眺めた。

「話というのは?」

「大体察しているんじゃないの?あなたのことよ」

-やはり-

こうなる事は自分でもフェナはわかっていた。

「どこから始めましょうか?」

隠す物はないようにフェナから切り出してくる。
真沙緒は少々自己嫌悪を感じていた。
しかし自分を含めてだがTran-DSのために犠牲者が多すぎるとも感じた彼女は聞かない分けにはいかなかった。
幸い今は動けず、おたがいの機体が出来上がるまでは時間がたっぷりあった。

「わからない事が多すぎるから、まず貴方自身のことから・・・お願い」

真沙緒の申し出にフェナは小さく頷いた。

そして服を脱がし始める。

「?!」

いきなりの行動に真沙緒は思わず顔を手で覆う。
しかしそれは一瞬だけですぐに手をおろし、フェナを見た。
服といっても黒のドレスと下のボディースーツだけだったので、フェナはすぐに脱ぎ終える。
そして、何も隠さず月明かりの中に立った。
月の光が彼女の白銀の髪の色を引き出し、普通より白いその肌は綺麗にその光を反射する。

「??!」

真沙緒の目はフェナの腹にある大きな傷を見て丸くなった。
フェナは手を頭の上に上げ、体を一回転させた。
傷は腹部から胸に向かって斜めに走り続いている。
背中に続き、再び同じ腹部に戻っていた。
一つの傷・・・・としか言えない物であった。

「私は・・・7年前一度死んだ者なの」

フェナは顔を背けながらその一言から話を始めた。

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