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Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 4: Ragnus Heavy Industries
part3
ピアノ曲が照明が暗いバーの中で響く。
「As the day goes by・・・・」
真沙緒が好きな曲である。
赤いカクテルに口をつけながら、彼女は目を瞑り音楽を聞き続ける。
地球にいたころの思い出がなぜか浮かんで来た。
この曲を聞いたのもこんなところであったと思い出す。
つい、一緒に鼻笛を鳴らした。
やがて曲が終わる。
客が少ないのかピアノ弾きに拍手を送る人は少ない。
拍手が止まると次の曲が始まる。
「トリエスタにこんなところがあったなんて」
信じられないと真沙緒は思った。
ある映画のバーをそのまま再現しているかのように作られたそこはノスタルジックな雰囲気を持っていた。
その彼女のとなりに座っているリックは見とれていた。
これほど、この風景に自然に溶け込むような女性を、見たのはリックは初めてであった。
「君みたいな女性に会ったのは初めてだよ」
彼は正直に言う。
何回も使った口説きせりふであったが今回は本心であった。
前にも聞いたことがあるかのようにくすっと真沙緒は笑ってしまう。
二人はしばらく黙って酒を飲んでいる。
誘われた時は少々驚いたがなぜかその誘いに真沙緒は乗った。
薫が機嫌を悪くしたのは言うまでもなかったが。
「で・・・・君はなぜトールドアーマーに?」
真沙緒はその質問にはすぐに答えず、グラスに入っているセロリーでカクテルをかき混ぜた。
グラスに当たる氷の音がしばらく続く。
だれかが吸っている煙草の紫の煙が照明の筋を現した。
「少し死に急いでいたからかな・・・」
と、とんでもないことを真沙緒はいう。
リックの表情が同時に険しくなった。
「貴方みたいな男に引っかかって・・・・ま、そういうこと。でもそのうちばかばかしくなって」
ぐさ!と何かに刺されたかのようにリックは胸に手を当てる。
その反応を見て真沙緒は再びくすっと笑ってしまう。
下心をもっていたのかリックは罪悪感を感じてしまった。
まいったな、とか言うようにリックは頭を掻いた。
「いまは楽しいからかな。体を押し付けるG、兵器を撃つ時に生まれる衝動・・・好きな。ふふ、ちょっと危ない女かも」
ほれそうだった、リックは初めて本気になりそうでやばいと思ってしまう。
リックは自分のなかに沸き上がってくる気持ちを押さえよう顔を背いた。
「だめよ」
ちっちっちと、指を動かせながら真沙緒はリックの心理を見抜いた。
ちょうどピアノの曲が終わると真沙緒は飲み物を飲み干した。
「ごちそうさま、今夜はどうもありがとう」
リックの頬に軽く口を当てると真沙緒は出口へと向かい始める。
あ、とか言うようにリックは手を出すが届かない。
からんからんという音ともに真沙緒は店を後にする。
「おやじ、きついのを一つ頼む」
その注文にふふと笑いながら彼はリックの注文通りきついカクテルを作った。
リックはそれを一気飲みすると、初めての敗北を深く味わった。
○
夢?
彼女はそうおもいながら自分の体を見た。
「???・・・・・・!!!!!!!」
胸から下がなかった。
かぼ!!!!!
叫ぼうとした時、声の変わりに泡が口から出たため、自分が液体の中にいることに気が付いた。
体も動かない。
髪がその筒に流れる液体により海草みたいに流され、体にいくつかの配線とパイプがつながっている。
それには赤い液体が流れ、心臓の鼓動と同調するかのようにうごめいている。
意識がうやもやしており、はっきりしていなく、液体の中に浮いているせいで視界がぼやけている。
しかしその「カプセル」の前に見覚えがある人影が見える。
その人は何かを手にし自分を見続ける。
がこん!という音と機械音共に下のほうで新しい液体と共に何かが上がって来た。
先端は赤い・・・そして白い物も見える。
しかしそれがなんのかわからない。
カプセルの前に立っている人が手に持っているものに何かをしていた。
その物はやがて胸のしたに接触するかのように上がってきた。
そして手前で止まる。
前に立っている人は頭も上に向かせた。
何かを考えているようだ。
しかしそれは一瞬のことで彼女は何か決心するかのように頭を再び自分に向かせ手にしたものに何か動作をした。
機械音が再びなり、赤い物は近づき、自分の傷口に触れた。
生暖かい物が触れると同時に電撃が体に走る。
「が!!!!」
がぼがぼと音を立たせながら痛みをこらえようとする。
目が一瞬下に向き自分に「新しい」下半身がくっつけられようとされていることに初めて気づいた。
じゅぶじゅぶという音ともに泡が発生される感触を覚える。
目をカプセルの外へ向ける。
そこから自分を見ているのは・・・・・あの女性だった。
「!!!」
目が開いた。
「は・・・、はあ、はあ」
ゆっくりと体を起こし自分がどこにいるか確認をする。
夢?・・・だったのかと思う。
しかしそれと同時に古傷が痛む。
体は汗だらけで髪が首と顔に密着していた。
頭を左右にふる。
『うーん』
少女の声が隣でした。
フィオだ。
気持ちよさそうに眠っている。
二、三度フィオの頭をなでるとフェナはベッドから降りた。
月明かりが窓から差し込んでいた。
夢のせいで眠気が吹っ飛び、フェナはそのまま部屋を出た。
照明が薄くついている通路を別に目的があるわけがなくフェナは進んだ。
ラグナスセカンドファクトリー。
ここでフェナは個室を与えられていた。
手のやけどと傷が信じられないほどの速さで回復しており、フェナは医療室からセカンドファクトリー内の寮に移された。
真沙緒の部屋のとはちょっと離れてはいたが。
気が付くと自分は工業ブロックにいた。
作業をしている者がいるわけもなく、あたりは静まり返っている。
いや、キーボードを叩く音がかすかに聞こえてきた。
足は自然にそちらへと向かった。
光が一つの部屋から漏れている。
「あああ、もうなんでこんなに複雑なの?!」
若い女性が叫んだ。
間をおいてからもう一つの声がする。
「うーーん・・・・でもこれ・・脱出装置がない」
「あ、ほんとうだ・・・・なんでだろ?」
「必要ないからよ」
扉まで着いたフェナが二人の女性の疑問を解いた。
「あなたは!!」
大きなリボンを髪に結んだ女性が声を上げながら立ち上がった。
フィリス・グリーデン、ラグナス重工エルファ支社長の一人娘である。
そしてもう一人は前にWillにデータを盗まれたTran-Dのパイロットであったアーリー・ラグフォードの妹ミア・ラグフォードであった。
「こんばんは」
フェナは簡単に挨拶し二人が使っていたコンピューターワークステーションの方へと目をやった。
Tran-DSのデータが表示されている。
どうやら二人はTran-DSのTVSをTran-Dに組み込もうととしていたようであった。
興味が少しわき、フェナはそれを見る。
TVSを組み込んだTran-DがTran-DSなのにミアは自力でシステムを理解しようとし、自分でTran-Dに組み込もうとしていたのだ。
だがバランス調整がむずかしいTVSなので機体バランスが狂っていた。
「あ、あの・・・あなたは?」
「フェナ・フェアランス・・・・Tran-DSのパイロット・・・」
フェナが返答する前にフィリスが答えた。
その声はあまり友好的なものとはいえなかった。
「よろしく」
冷たい声でフェナはミアに挨拶した。
別にわざとではなかったが。
奇麗なひとだなーとミアはフェナの髪と顔をみて思った。
しかしどこかで見た面影があった。
「TVSのこと知りたいの?」
フェナがミアに尋ねた。
「え?あ、あの・・そうです」
顔を少し赤しながらミアは素直に答えた。
そう、とか言うような顔をするとフェナはキーボード叩き始めた。
「Will、彼女にみせて上げて」
-Are you sure?-
(本当にいいんですか?)
Willが少々疑問をもちフェナに尋ねた。
フェナは無言に頷いた。
まるでそれを見ているかのようにWillはデータを公開した。
どうぞ、といいながらフェナはコンピューターから一歩下がった。
ミアは椅子に飛び込みデータを読みはじめたが・・・やっぱりギリシア語みたいなものであった。
「あ、あの説明してくれます?」
「ええ」
以前のフェナだったら断っていたかも知れない。
ただミアがやったTran-DのTVS設定のしかたはフェナにミアに興味を持たせた。
午前3時だということにも関わらずフェナはミアとフィリスにTVSについての講義をはじめた。
この講義に名前をつけるとしたらTVS Design 101である。
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