Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 9
大気圏突入を終えたRRとドッキングしているTran-DSzはそのまま落下を続けていた。
落下速度がすごいので、RRの翼に水蒸気が現れている。
ピピー!
Atmospheric Reentry Complete.
(大気圏突入完了)
Calamiteの報告と同時にコクピットの中で鈍い起動音が響いた。
計器に光が生まれ、真っ暗だったスクリーンに雲平原が映し出された。
フェナは閉じていた目を開き、右手に丸い半球体であるコントロールボールを握った。
左手はしっかりともう一つのコントロールステッキを握る。
ゆっくりと近づいてくる雲の面を見つめながら、フェナは早くなっている自分の鼓動を感じた。
この雲の下にフィオがいる。
そのことがフェナの心を焦らせた。
「クーン」
シルフィードが同じことを感じて声をあげた。
フェナは彼に無言に頷き、頭をなでた。
視線を前にもどす。
深呼吸をしながら、もう一度目を閉じた。
決心したのか、フェナは目を開けると同時にスロットルを全開に入れた。
眠っていたRRのスラスターが青い火を発した。
一瞬にしてRRは雲の平原へと降りていった。
その時、警報が鳴り響いた。
「なに!?」
Shockwave Approaching. Contact in 3 seconds.
(衝撃波きます。接触まで後3秒)
「衝撃波?げん・・・!」
言いおわる前に機体は見えない壁にぶつかった。
シールドを展開していなかったため、稲妻がTran−DSzを襲う。
スクリーンが一時ぶれ、Tran-DSzの姿勢が崩れる。
「わん!」
「く!!」
フェナは右手のコントロールボールをまわす。
それに従い、Tran-DSzのTVSが展開し、機体を安定させる。
No Damage
(被害なし)
ことが収まった時、Calamiteが報告してきた。
Tran-DSzの装甲がうまく電磁波を押さえることができたようだ。
そのことにフェナは小さく微笑んだ。
自分で作ったとはいえ、よくできていると思う。
普通だったら、電気系統がいかれたかも知れない。
通常のTAであったなら、ここで爆発していたかもしれない。
「原因はわかる?」
Multiple Reactor Blasts are the likely reason.
(多数のリアクターの爆発が原因かと)
(リアクター暴走?)
答えは一つしか思い付かない。
唇をかむとフェナは降下を再開した。
PSS(ポイント・シールド・システム)を展開させると、薄い四つの六角形が機体を包む。
そして雲を突き抜けた時、フェナは目を大きくした。
黒いものが空に浮いていた。
大きさはどういういえばいいのだろう。
小さな島ほど巨大なものがそこに姿を見せていた。
そして、その周りに鉄屑に見えるものが動いている。
『フェナ!あれは?!』
フェナと同じく、大気圏突入を終えた真沙緒の通信が入った。
しかし、フェナの耳に真沙緒の声は届いていなかった。
コントロールステッキを握り潰すど、手に力が入った。
唇を噛む力が入りすぎ、口の中に血の味がかすかにする。
フェナにあれがなんのかわかった。
七年前彼女があの男に攫われ、つれてこられた場所。
屈辱を受けた場所。
いいようにあの男にもてあそばれた場所。
味方を倒すためにいろいろ改造された場所。
自分を失った場所。
そして、今フィオがいる場所。
『フェナ?!聞こえている?』
真沙緒に返事をせずに、フェナは機体を「島」に向け、突っ込んでいった。
○
ハインラインのブリッジではエンジンの音しか静かに響いていた。
目の前にある黒いものを見て、誰一人声をあげられない。
先ほど、前列の戦艦が数隻、いきなり爆発消滅した。
反応炉が融爆し、視界が一瞬真っ白になった。
シールドがなんとか戦艦を守った。
しかし、視界が元にもどったとき、目の前にあの黒いものがあった。
まるで、その部分が地面から抉り取られたみたいに、地がはりついている。
そしてその地の割れ目からは不思議な光を発する黒々とした壁が除いていた。
「なんだ・・・あれは・・」
フォルスリングの口からやっと出たこの言葉にだれも答えることはできなかった。
次の瞬間、光が島から発せられた。
瞬時にハインラインの隣にいた戦艦が爆発した。
「レクシングトン轟沈!」
「全艦、後退しつつ!応戦!!」
報告と命令が同時に上がり、艦隊は慌ただしく動きはじめた。
回転をする船があれば、そのまま下がりながら発砲する船もあった。
戦艦にとりついていたTAは格納庫へ戻ろうとするものもいれば、船の上から攻撃するものいた。
しかし、島に攻撃は届かない。
あたる寸前に見えない壁に止められてしまう。
「く!あんなものにシールドだと?!」
止められるとわかっても艦隊は撃ち続けた。
そしてそれに答えるように、島からも光が走り次々と戦艦が沈められていった。
それでも、艦隊は応戦を続けた。
無駄とわかっても、ここで、これを止めないとどうなるか、みなわかっていたからだ。
カタパルトから、砲台の側から、どこからでもTAも弾とエネルギーが続く限り打ち続けていた。
しかし、島のシールドはたやすくそれをすべて止めていた。
ある戦艦がミサイルを打ち出した。
それに習いほかの戦艦を実弾であるミサイルを放つ。
無数の小さな光が島へと向かっていく。
だかそれらは、もう一つ島から発せられる小さな光に狙撃されていった。
その姿はまるで・・・
「PDSだと?!」
それに気づいた瞬間、再び一隻が鉄の塊に姿を変えられた。
手も足も出ない。
その時通信が入る。
『フォルスリング・・・』
「て、提督!」
『現在、すべての艦隊をそちらに向かわせている。そしてあれの準備もな』
「え?し、しかし、あれを使ったら?!」
『わかっている。しかしこのままでは・・・』
「私は反対です!」
『いまは君がどうこういえるものではない・・・。ポイント103で艦隊を再編成し、後続部隊をまて』
「・・・・・・」
『わかったな・・・』
「はい・・・」
消え去りそうな声でふぉロスリングは顔を下に向けたまま返事をした。
(あれを使うなど・・・。そんなことしたら、この星は・・・)
爪が手に食い込み、血がにじみ出始めていた。
どうすることもできないのか?!
七年前の悲劇が繰り返されるのか?
あれを使えば、再生しはじめたこの星は逆戻り、いやもっとひどい状況に陥る。
だが、現在の戦力では・・・。
いろいろな質問がフォルスリングの頭を駆け巡った。
どうしても答えはさきほどの命令に従うことになる。
だが、心がそれを許していない。
悩み悩んだ末、フォルスリングは命令に従うことにした。
そして命令を出そうとしたその時、聞いたことがない音がしはじめた。
キュウウウウオオオオオという、まるで異世界の生き物の声に聞こえるものであった。
「艦長上空より反応あり!・・・・こ、これは?!」
答えはすぐにその姿をあらわした。
ずばしゅ!というものすごい音をたて、それはハインラインの上を通りすぎた。
そして島へ向かった。
島は当然のごとく攻撃をする。
しかし、赤と黒に塗装された機体は簡単にそれをよける。
遍路を変えず、島にまっすぐ飛び続けシールドをいとも簡単に突き抜けた。
突き抜けた瞬間無数のミサイルが発射されると同時に翼についている砲が火を吹いた。
機体が進んだところの後ろには火球が無数に生まれた。
いままで艦隊をいとも簡単に苦しめた島の兵器はまるで見えてないようで、あらぬ方向に光を放っていた。
しかし、それはすべてよけられるか、その機体の周りをいそがしく掛けめぐる4枚の光六角形により止めれた。
その避けかたをみてフォルスリングの口から一言がでた。
「Tran−DS」
そしてその後を追う様にもう一機が艦隊の頭上を通りすぎた。
形は似ていたが色と大きさが少し小さいものである。
通信が入る。
『艦長、遅れてすみません』
「真沙緒ぉお!!」
「零少尉!」
スクリーンに現れた人物をみるとフォルスリングと岬少尉が同時に声をあげた。
フォルスリングは一度薫をにらむと目を真沙緒へ戻した。
真沙緒は笑っていた。
「まさかと思うが、あの赤と黒の機体は・・・」
『ええ・・、Tran-DSzです』
「そう・・か」
『あれは私たちでなんとかしますから、艦隊を引かせてください』
「ばかな?!たったの二機でなにをできるというのだ?!」
『・・・・・・・・ま、なんとかなるでしょう』
真沙緒はいかにものんきな答えをだした。
それを薫が見逃すわけがない。
「なにいっているのよ?!あれは小さな島ほどの大きさがあるのよ?!キラードールだっていくつもっているかわからない!シールドも戦艦なみの砲をとめるのよ!」
『そう!シールドの範囲の外なら止められるわ。でも・・・』
「シールド範囲内だったら・・・」
『さすが艦長。そういうことです』
薫は真沙緒の余裕がどこからでてくるのかわからなかった。
あのような巨大なものに恐怖を感じるのが普通だ。
しかし、真沙緒は顔色一つ変えずあれに挑んでいる。
そんな彼女をみて、薫の胸の鼓動が高くなっていった。
「よし、こちらもなんとか支援する」
「しかし、艦長!!命令は?!」
「そんなのどうでもいい。シールド内に入れば攻撃が可能とわかればわれわれはそこに入り込むだけだ!」
『では、そういうことで』
「ちょ!真沙緒!」
薫は真沙緒をとめようとしたが通信はすでに切られた。
目を島に向けると小さな光が二つとんでもない速さでその周りを駆け巡っていた。
後ろに紅花を咲かせながら。
「よし!戦闘可能な船は直ちに最大戦速でシールド内に進入!攻撃を咥える!」
フォルスリングの命令とともに警報がなる。
空気が入れ替わり、乗組員に活気がうまれた。
中波、大破された船は前線からひき、その変わりに無傷に近い船が最大戦速で島へと向かった。
兵器へいくエネルギーはエンジンとシールドにまわされ、島からくるだろう攻撃に備えた。
艦の間にかなりの距離が開けられ、高度をあげながら、艦隊はジグザグの進路をとる。
「スターレイピアの部隊はすべてだせ!」
命令に従い、物干し竿みたいに長い砲をもった戦闘機が次々と射出されていった。
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