Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 9
エルファ星の上空、低衛生軌道上で光が一つ急速で走っていた。
「大気圏再突入まで後どれぐらい?」
1 minute
(一分)
Calamiteの答えにフェナは頷くとシステムの最終チェックに入った。
ちらっとセンサーの方に目を向けるとブレスレットから発信信号の位置が記されていた。
普通にエルファ星の上空をたどっていたら、その場所までには半日はかかる。
それではかかりすぎるので、フェナはTran-Dの宇宙型のTran-DSZの性能を生かし、宇宙に一度出て再突入することにした。
RRという翼がついているため、機体が突入の際生じる摩擦をシールドで遮ることが可能になった。
そのおかげで、戦場には一時間でいける。
30 seconds to Atmospheric Reentry
(大気圏突入まで後30秒)
Calamiteの報告と同時にフェナが独自にやっていたシステムチェックが終了した。
そして、Tran-DSzは突入角度に入りスラスターを光らせ、大気圏へ突入した。
大気圏突入でブラックアウト状態(電源切断)に入る前にフェナは後方から近づいてくるもう一つの光を見た。
「さすがね」
真沙緒であろうその光にいうとコクピットは真っ暗になった。
そのころ、真沙緒は忙しくシステムチェックを行っていた。
「ううううう・・・」
泣きたい気分でいた彼女は必死に軌道修正と突入角度を計算していた。
幸い、自分の機体についている飛行パーツにも優れたコンピューターが搭載されていたので、思っていたほど計算は難しくない。
しかし、タイムリミットがあることで、初めてこの機体でこんなことをする真沙緒には大きなプレッシャーがかかっていた。
「あああ!もう!これでいくわよ!」
と大声で叫び真沙緒は計算の最終チェックをせずにコマンドを入力した。
機体はそれに軌道と体制の修正を行った。
そして真沙緒の機体はフェナの後を追い大気圏に突入した。
そのころ、エルファの衛生軌道上まではいかない高度で、別な悲鳴が上がっていた。
「ちきしょう!パターン入力のタイミングが!!」
「お兄ちゃん!落ち着いて!!」
戦場に到着する前にアーリーは自分の機体に慣れようとシミュレーションを続けていた。
だが・・・・
「なんという物を作るんだ、あの人は!!」
アーリーはコクピットを開き、一休みすることにした。
戦場まであと3時間、アーリーに焦りによるストレスが溜まっていた。
何度も新E−Tronに慣れようとしているのだがうまくいかない。
「ふう・・」
「はい、水」
ミアがアーリーにミネルウォーターのボトルを差しただした。
アーリーはそれを受け取るち喉を鳴らしながら飲み干す。
「早すぎる・・・」
「え?」
「だからパターンの処理速度が早すぎるんだよ」
どうやら、新E−Tronによりパターンから実行のタイムラグをかなり短くなっているようだった。
タイムラグがあることをアーリーの体が覚えてしまっている。
それを短時間に新しいシステムに慣れようとするのは無理といっても過言ではない。
「ミアもこの新システムに関わったんだろう?パイロットのことを考えていなかったのか?」
「う〜ん。フェナさんも真沙緒さんも使えたし、それだったら、お兄ちゃんも使えると思っていたから」
そういわれてもとアーリーは思った。
前はちょっとした遅れが生じるため、キャンセルでの攻撃ができた。
しかし、新しいE−tronの処理速度は半端ではない。
古いコンピューターに新しいオペレーティングシステムをいれても遅くなるのが落ちである。
フェナが作ったE−Tronはそれを関係なく処理するのである。
いままで、OSを作って来た者が夢に思ったこともあるかもしれない。
フェナがそれを可能にしたのはE−Tronがもともとよく作られていたからかも知れない。
「ふう・・・」
アーリーは一息つくともう一度コクピットに戻った。
閉じられたコクピットの中で腕を組みを目を閉じた。
しばらくの沈黙の後、アーリーはもう一度シミュレーションを開始した。
そして彼と彼の相棒を乗せている輸送機は確実に戦場に近づいていった。
○
暗い通路をどれぐらい歩いたか。
ロイスはその先に出口らしいものを見つけた。
歩き出してどれぐらいたったのであろうか?
長いようであり、短いようでもあった。
次第に駆け足になり、パルス銃を握る手に自然と力が入る。
出口に差し掛かったロイスは眩しい光に包まれた。
光が収まったそのとき。
「ようこそ、ロイス君」
あの男の声が響いた。
「ステファン!!」
ロイスは本能的に銃を構えた。
しかし、銃口の先に目的の彼はいない。
「こっちですよ・・」
声は彼の後ろからした。
ロイスは反射的に離れるため飛び、銃を再び構えた。
慌てた動作はない。
あくまでも冷静にロイスは動いた。
「ご挨拶ですね。久しぶりにあった友人に銃を向けるなど」
「・・・・・・・」
「あなたのその無口のところも相変わらずですか」
ステファンは小さく笑いながら歩きだした。
二人がいるところはまた大きな空洞の中であった。
密かに機械音がなり、小さな光があっちこっちでちらついている。
そして、ロイスにとっては懐かしいと同時にいやな香りがかすかに漂っていた。
そのあまい香りに取り込まれないよう、ロイスは小さく息をしている。
「ふふふふ。懐かしい香りでしょう?昔を思い出しませんか?」
「昔は捨てた」
ロイスの答えに対して、ステファンはふんっと鼻で笑った。
そして、あるパネルに着く。
キーをいくつか押す。
それに対し、ホログラフィック・スクリーンが現れた。
そこに戦艦、TAとキラードールの戦闘の画像が表示されていた。
「くっくっくっく、無駄なあがきを」
ロイスの手に次第に力が入る。
今ロイスに目を向けていない。
いまこそやるチャンスだ。
ロイスは引き金を引く指にゆっくりと力が入りはじめた。
「あ、そうそう!そろそろ、あなたの恋人がきますよ」
「!?」
いまこそ、ステファンを殺ろうとした時に発せられたその言葉でロイスの動きが一瞬とまった。
隙を見逃さず、ステファンは隠し持っていた銃を撃った。
ロイスの銃ははじかれた。
固い床の上を数回転がるとそれはある人物の足元でとまった。
「ろ・・い・・」
銃を追っていた目にそこでぼろぼろになっているクリスの姿が入った。
「く、クリス!!」
ロイスはクリスへと駆け出したが、彼女の後ろに立っていた人影がそれを許さなかった。
乾いた爆発音がし、ロイスの肩に激痛が走った。
衝撃で体は床に叩き付けられた。
「ロイス!!・・・は、はなして!!」
ロイスの側に行こうとクリスは動こうとした。
しかし、自分の後ろに立っている人物がそれを許さない。
「ふふふふ・・・・本当に馬鹿ですよねぇ、あなたたちは」
「きさま・・・!!」
「あなたがたはあの方より私を殺そうといわれてきたんでしょうけど・・・。本当はですね」
その言葉とともに部屋の奥から足音が二つが響き始めた。
いや、それだけではない。
なにかが引きずられる音もした。
「−−−−!!!」
ロイスとクリスは声にならない悲鳴をあげた。
そこにはぼろぼろにされたエンジェランとカオスが引きずり込まれた。
引きずって一体真っ黒のキラードール。
そしてもう一機は黒い獣の形をしていた。
二機は同時にエンジェランとカオスを放り出した。
ガラスが砕ける音を立てながら二機はその場に崩れた。
「本当はですね、この二機を私に送り届けるということだったんですよ。そしてもう一つ・・」
くくくくとステファンは笑いながら銃をロイスに向けた。
「志を失ったあなたたちを始末するためにね」
「・・・!!あの「二人」をどうするつもりだ?!」
「ふふふふ・・・そうですね。死ぬあなたには見せてもいいですか。やっちゃってください。」
ステファンはそういうとキラードールはエンジェランを頭部から引き上げた。
そしてもう片手でエンジェランの背中を突いた。
めきめき、ばきばきとまるで人の骨が砕ける音が聞こえる。
エンジェランはまだ抵抗しようと動いたが無駄であった。
その姿を見てクリスは悲鳴をあげた。
「やめてー!」
と叫んだとき、キラードールの腕が何かをつかんだのか、腕を回した。
エンジェランはびくっと!体を震わすと動きを止めた。
いや、止められた。
キラードールはなにかを引きずり出した。
エンジェランはそのまま無造作にその場で落とされた。
再びなにかが砕ける音がし、そのまま動かなくなった。
「やああああああ!!!」
クリスはエンジェランに駆け寄ろうとするが、彼女の後ろにいる女性が押さえる。
「さあ、次はカオスですね・・・」
その言葉を合図に獣の形をしたキラードールはその牙をさらし、カオスの背中にそれを突き刺した。
めきめきめきという再び骨が砕けるような音と共に、配線などがひきずり出された。
さらにキラードールは食い込み、また配線をひきずりだす。
まるで、獣が獲物の内臓を引き出すような光景がそこにあった。
まき散らされる黒い液体は、カオスの血に見えた。
そして探し求めたものに辿り着くとさきほどのキラードールと同じように何かを抉り出した。
カオスは一瞬起きようと動いたがそれも一瞬たけで手は静かにとまった。
「うおおおおおおお!!」
その出来事をみてロイスを咆哮をあげ、ステファンに飛びかかった。
しかし、床に落ちたのは、再び撃たれたロイスであった。
「ロイス!!!!」
クリスは足を押さえている彼の傍にかけよろうとするが、後ろに立っている女性を振りほどけない。
それでも、彼女はロイスに呼び続けた。
ステファンはその様子を楽しそうに見ている。
だが、それも束の間。
彼はすぐに背を向けるとキラードールと獣へ小さく頷いた。
二機は手のひらと口を開けた。
そこには小さく青い光と赤の光を出す、ガラスの玉のようなものがあった。
「そ、それをどうする気だ。それは彼らの・・・」
「ふふふ!!そう!彼らの『魂』と呼べる物ですね。そしてこれには膨大なエネルギーが含まれています」
「まさか・・・」
ステファンはふふんと笑うと二機もう一度うなづく。
二機は向き直るとその二つの光をある球体に近づけた。
「善と悪があうとどうなるかわかりますか?」
「やめて・・・・・・」
「くっくっく・・・そう!!お互いを反発します。そしてそれはさらにすばらしいほどのエネルギー
二機はその玉をそれに設置した。
その瞬間、二つの玉はまぶしく輝き始めた。
地鳴りがなり始め、光がその装置から走りだした。
死んでいた機械が輝き出し、機械音が鳴り始める。
「くくくく!!ははははは!!わぁはははは!ついに!ついにこの時がきた!われわれがこの世を支配する時が来たのだ!!」
発狂したのかと思わせるほど、彼はさらに淫らな声をあげなら笑う。
球体の光はだんだんと強くなっていった。
「さて・・・あなたにはしんでもらいましょうか?ロイス君」
いきなり笑いを止め、銃をもう一度構えた。
ロイスはなんとか立ち上がりステファンをにらみつつクリスの方へ目を一瞬向けた。
「気に入らない目ですねぇ」
「クリスは見逃してくれ」
「ふふふふ・・・大丈夫ですよ。彼女の中にいる女の子とともに私の玩具として可愛がってあげますよ」
「な・・・に・・・?」
「これはこれは・・・。知らなかったんですか?安定期に入ったころですかねぇ?妊婦を嬲る(なぶる)のもまた楽しいでしょうねぇ」
クリスはステファンの言葉に体を震わせた。
このままではこの男に何をされるか。
自然に彼女の手が腹を押さえた。
「くすくすくす」
後ろの女性が小さく笑い声をあげていた。
彼女も楽しみにしているのだろうか?とクリスは思った。
助けを求めるようにロイスの方へと見る。
彼は下をむいており、目は長い前髪に隠されて見えない。
「ロイス・・・だめ・・・」
彼がこういう状態になるとどうなるかクリスはわかっていた。
「さあ、もういいでしょう。これから私は忙しくなるのです。彼女のことは任せてください」
「だまれ・・・」
その瞬間ロイスの姿が消えた。
「ふん・・・・」
とステファンはすべてを理解しているように笑うとしばらくそのままたっていた。
そして、後ろへと向き直った。
それと同時にロイスがステファンを襲い掛かった。
「だめぇえええ!!」
○
「な、なんだ!?」
フォルスリングは現状で起きていることを把握しようとしていた。
つい先ほどまでは、戦闘はこちらに有利に動きだしたと見え始めていたのだ。
しかし、今はどうであろうか?
地面が激しくゆれ、所々から砂が噴水のように巻き上がっている。
同じように、渦巻きが砂漠の上で発生していた。
側にある、TA、キラードールを容赦なく飲み込んでいく。
前方には巨大な砂嵐がいきなり現れている。
その上、地面が揺れているはずなのに、風が吹いていないのに、空中の戦艦までが揺らされているのである。
「正体不明エネルギーが前方より発生されています!原因はわかりません!!」
悲鳴に近い報告がブリッジに響いた。
警報がなり、船内は混乱に陥っていた。
乗組員の仮眠室ではカバーなど制服が飛び回り、食堂ではマグ、皿などが音を立てて砕けた。
「く!全艦後退!TAは地上から離れ、近くの船に飛び移れ!!」
命令が聞こえたのかどうかもあやしい。
艦隊の陣形が乱れ、TAはゆれを何とかしようとジャンプして戦艦に飛び乗る。
しかし、パニック状態で機体をうまく扱えなかった。
お互いにぶつかったり、誤って戦艦の主砲やPDSのレンズをつぶした。
フォルスリングはみなを落ちかせようとしたが、それに無駄だった。
被害は広がる一方であった。
その時である。
「艦長・・・全周波数で通信が!!」
「なに?!」
「か、回線に割り込んで来てます!」
薫の悲鳴と同時に、メインパネルに男の顔が現れた。
『われわれが目覚めるときがついに来た!!!薄汚いサルどもよ!神の力を味わうがいい!』
と、その言葉と同時に、砂嵐の中から一つの光が放たれた。
細い光は艦隊の前列に一瞬ひゅんっという感じですり抜けた。
なにも起らないと思った瞬間前列の戦艦が爆発した。
爆発は当然のごとく、反応炉に融爆をおこした。
フォルスリングが仕切る艦隊は音もなく巨大な球体に飲み込まれた。
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