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Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 12


「フェナはいったいどこにいったのよ?!」

真沙緒は虫の形をしている飛行物体を撃ち落としながら愚痴った。
あのフィオの声は真沙緒にも聞こえていた。
あきらかにフェナと戦闘をしているようで、真沙緒はすぐにその現場に駆けつけたかった。
しかし、キラードールがまるで彼女をそこに行かせないように邪魔をしてきた。
起動力が高い飛行形態を切り離すわけにはいかず、真沙緒はあたらしく現れた敵に押さえられていた。
TAを背負っているだけにいくら改造されたスターレイピアとて機動性はおちていた。
真沙緒はうまく自由な腕を使用して手にしている武器を使っていた。
相手も人工知能なだけ、大きな機体としか見ていなかった。
まさかその下にTAがいるとはさすがに解析できない。
しかし、それは最初のころだけで、ゆっくりとそれに対応した攻撃をしてきた。
そうやって上と下から同時に攻撃し始めたのである。
だが、真沙緒の腕までは計算に入らなかった。

「しつこい!」

また同じパターンで攻撃してくる虫に対し、真沙緒はうまくスラスターを使った。
機体が垂直に立ち、上の敵はバルカン砲、下の敵は手にしているライフルで落した。
そのまま重力に任せて機体を「落し」、その際機首も下に向かせ重力によりえられる加速力を使う。
エンジンから火が吹きだし、真沙緒はふたたび通常の飛行体制を取り戻した。
しかし、敵も数が多い。
フェナのところに行きたくても真沙緒はつねに押さえられていた。




同時刻。
ラグナス特別輸送機。

「アーリーさん!!」

フィリスが走りながらTran-Dのそばに駆け寄った。
手に写真が一枚ある。
フィリスの声が悲鳴に近いことからアーリーはシミュレーションを止め、コクピットから出た。

「た、大変です!!」

青い顔しながらフィリスはアーリーに写真を渡した。

「なんだこれは?!」

「さきほど、軍の情報網に流れていたものです!」

どうやって軍の情報網に入ったのかまた問題ではあったが、写真に写っているものがその疑問を吹き飛ばした。
そこには巨大な島とその周辺を飛びまわる点が写っていた。
巨大な連邦戦艦もこの写真では点として見えない。

「浮遊都市?!」

「の、ようです・・・!今フェナさんと真沙緒さんがそこに!」

「く!」

くしゃとアーリーはその写真を握りつぶした。
到着にはあと30分はかかる。
アーリーは急いでコクピットに走った。

「もっと早くとべねえのか?!」

「これが限界だ!これ以上だしたらエンジンが持たない!」

リックはアーリーと同様悔しそうに答えた。
30分とはいっても、コクピットから砂漠の上を飛ぶ巨大な影ははっきりと見えた。
ピーピーという音が通信が入っていること教える。

『そこの民間輸送機!ここは戦闘空域である!直ちに進路を変えなさい』

通信は今すれ違おうとする艦隊から発せられているのであろう。
アーリーが返事をしようと口をあけたが・・

「こちらはラグナス重工所属、サテライトチームです。戦場への突入は承知の上でこの空域にきています」

格納庫からアーリーを追ってきたフィリスが答えた。

『なに?!ラグナス重工だと?!』

相手も驚いているようであった。

『なおさら、ここを通すわけにはいかない!すみやかに遍路を変えろ!』

「いやだといったら?」

『攻撃する!!』

「ほほう・・・」

リックはそういいながらチラッと戦場を離れる艦隊を見た。
ぼろぼろになっていた。
戦闘能力はないに等しい。

「こちらは軍に許可をとってこの空域にきてます。もし攻撃されるなら、それなりの覚悟があるんですね?」

『な、なに?!』

「どうします?調べてみてください。それでも攻撃するとなら、首が飛ぶことになることでしょうね」

『く!し、しばし!まて!』

アーリーは目を丸くしながらフィリスの方をみた。
許可なんかとっていない。
こちらは勝手にこの場に来たのである。
ミアも驚きを隠せない。
フィリス以外は冷や汗を掻き始めた。
もし、嘘だとわかったらどうなるかわからない。
沈黙がしばらく四人を包んだ。
永遠に感じた間は再び通信の合図で止まった。

『こちら、エルファ防衛軍所属駆逐艦フユツキ艦長水谷です。先ほど部下が失礼しました。許可はたしかに確認させていただきました。どうぞお進みください。そして健闘を祈ってます』

「あ、ありがとうございます」

安息を出しながらフィリスはその水谷にお礼を言った。

『ちょ、ちょっとまて!そんな許可はないぞ!!早くそいつらをとめろぉおお!』

ふいに後ろで誰かが騒いでいるような声が聞こえた。
しかし、それは水谷艦長の命令により止められた。

『いや、失礼。どうやら彼はなにか勘違いしているようだ』

「は、はあ・・・」

『では、後はよろしく頼みます』

そこで通信は切れた。

「どういうこと?」

「まあ、軍にはラグナスの見方と敵が両方潜んでいるってことだ」

ミアの疑問のリックは答えた。
それでもミアはなにがどうなっているのか分からず頭を傾げた。

「はぁ・・」

「フィ、フィリスさん?」

へたり込んだフィリスの傍にアーリーが駆け寄った。
フィリスは自分の体を抱いていた。
寒いのか体を両手で擦っていた。

「こ、こわかったぁ・・・。まさか本当にうまくいくとはおもいませんでした」

「「「え?」」」

「じゃ、じゃあ、許可ってのは・・?」

「もちろん嘘です」

四人の間に再び沈黙が訪れた。
しかし、フィリスの顔にはまぶしい笑顔があった。

(フィリスさんって狸なんじゃ?)

とミアは本気で思い始めたのは無理もなかった。




「だ、だれか助けて!!」

クリスは泣き声でだれもいない部屋で叫んだ。
彼女の腕に血まみれになっているロイスがいた。

『後でたっぷりとたのしませてもらいますから。彼に分かれの挨拶でもしておいてください』

ステファンにそういわれ、クリスとロイスは愛機であったカオスとエンジェランだった繭の部屋に閉じ込められていた。
ステファンを襲ったロイスはまともに腹に弾をくらっていた。
血が彼のだけではなく、クリスのパイロットスーツと手を真っ赤に染め上げていた。

「ロイス!ロイス!!しっかりして!!」

顔をぐしゃぐしゃにしながらクリスはロイスに叫んだ。
止血しようにも医療キットはエンジェランまたはカオスのコクピットの中。
仰向けに倒れた二機のコクピットにはいけない。
クリスは何度もその手で二機を動かそうとしたが、彼女、ましてや人間に到底動かせない屑に山に二機は変えられていたのである。

「クリス・・・」

ロイスは弱々しそうな声でクリスに呼びかけ、彼女の手を握った。

「ロイスぅうう」

「約束を守れなくて・・すまん」

「な、なにを」

「俺たちの子か・・・」

ロイスは耳をクリスの腹に当てた。
クリスの鼓動が聞こえる。
しかし、彼女の中にあるもうひとつの心臓がロイスには聞こえそうだった。

「おまえもごめんな・・・」

「いや!そんなことを言わないで!ロイスがいなくなったら私・・・!!」

クリスはロイスの頭を力強く抱いた。

「二人で強くいきてくれ」

ロイスはそういうと目を閉じた・・。

「ロイス?ロイス・・・?!い、いやぁ・・・」

クリスの悲鳴とそれに続く泣き声が空間を支配した。
カオスとエンジェラン魂を取りこんだ機械はただまばゆい光を放っていた。

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