Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 13
オレンジの髪をした少女が黒い豹の頭部に立っていた。
「フィオ…?」
フェナはそう呼んだ。
しかし、今彼女の目に写っている少女はなにかが違った。
面影はある。
でも雰囲気はぜんぜん違う。
まるで。
そうまるで、七年前の自分にそっくりなのだ。
体つき、髪のスタイルもすべて七年前、いや今の自分にそっくりなのだ。
フェナは最悪のことのを想像した。
そしていてもたってもいられず、コクピットを開き飛び出した。
フィオと思われる女性を見上げると彼女の緑の瞳が自分を見つめていた。
しかし、それはフェナが知っているものではなく、ものすごく冷たいものであった。
「フィオ?」
フェナはもう一度優しく彼女に呼びかけた。
それにたいして相手はどうじずただ、自分を睨み返すだけであった。
「失望したわ…」
「え?」
「ステファンが恐れている人物がこんな程度とはね…」
少女の顔にいやらしい笑みが現れた。
フェナはその顔を見た瞬間体に悪寒を感じた。
あの男がする顔と同じだったのである。
「フィオ…あなた…」
「その名前で呼ぶな!!私を見捨てた人にそんな権利はない!!」
乾いた銃の音がした。
フェナは肩に激痛を感じ、衝撃のため、Tran-DSzの上に倒れた。
少女はTran-DSzに飛び移る。
フェナの傍により髪を鷲掴みにして、フェナの顔を持ち上げた。
「あなたにはこの機体が一番大事だった!私なんか眼中になかった!!」
「……!!」
「それを証拠にあなたはシルフィードを使っているじゃない!!私を利用しただけなのよ!」
フェナはなにがどうなっているのか分からないでもなかった。
たしかに自分はこのTran-DSzを作るためにフィオとの時間を削ったのは事実であった。
しかし、フィオはそれを分かっていたのか、笑顔で許していた。
そのはず…だった。
「私は何回泣き寝入りしたと思う?ねえ?お・か・あ・さ・ん?」
ぼく!という鈍い音がし、少女、いやフィオはフェナの腹を銃の束で殴った。
腹の液体が逆流し、フェナの口の中に苦いものが広がった。
「私は今とっても幸せなの。あの人はあなたと違っていつも傍にいてくれるの」
(だめ…)
「あの人の傍にいるととても暖かくて気持ちがいいの」
(だめ!)
「だから…」
(今のあなたは……)
「あなたを連れて来いといわれていたけど…」
(今のあなたは昔の…)
「ここで殺してあげる」
(昔の私にそっくりなの!!)
フェナは心な中で叫んででいた。
しかし、それは口からでなかった、いや、出せなかった。
フェナはまさしく昔の自分を見ているように感じた。
研究に没頭した母親、そしてそれに反発した自分。
そのせいで今の自分がいる。
そんなことを繰り返してはならないとフェナは心の中で訴えた。
責められても仕方ないかもしれない。
しかし、フェナは自分をもう一人作ってはいけないと思った。
最初の一歩を間違えていたとしても、これからそれが取り返せるとも思った。
それをフィオに伝えなければならない。
だが・・・どうやって?
フィオは乱暴にフェナを離すと銃を向けた。
腹と肩の痛みでフェナは立てなかった。
「ふふ、ざまぁないわね…いい気味。さあ…死んで…」
銃の引き金を引こうと、フィオは指に力を入れた。
しかしそれは許されなかった。
「がう!!」
銀色の影がフィオを襲った。
フィオも驚いてなにもできないまま、押し倒される。
その際、銃がフィオの手から離れた。
「わん!!ぐるるるる!!」
シルフィードの巨体がフィオを押さえつけた。
「シ、シルフィード?!なんで?!おまえは確か…」
「くーん・・」
シルフィードはフィオの上でなにかを訴えるように鳴いた。
フィオも驚きを隠せず、彼を見た。
「わん!わん!わん!」
「な、なにをいっているの!?この人は…」
「ぐるるるるる!!!」
まるでシルフィードがフィオを叱っているように見える。
フィオが反論しようとするとシルフィードが吠え、それにまた反論していた。
「あなたまで…。あなたまで私を裏切るのね!!」
フィオは思いっきりシルフィードを跳ね飛ばした。
その力は常人のものではなかった。
おそらくステファンは7年前、フェナにしたようにフィオの体を改造したのだろう。
突き飛ばされた銃を拾うとフィオはもう一度銃口をフェナに向けた。
「さよなら…」
といいながらフィオは再び指に力を入れた。
そのとき、なにかが三人の頭上を翔け抜けた。
衝撃波でフィオはバランスを崩した。
フェナはその隙を見逃さず、いたんでいる体をおこしてフィオの上に倒れこんだ。
「フェナ?!」
真沙緒は今見た機体に目をもう一度向けた。
そこには倒れたTran-DSz、その上に立っている黒い機体とTran−DSzの上に三つの影があった。
やっと見つけた!と真沙緒は言いたかったが、現在二機の虫に追いかけられていた。
攻撃を交わすのにせいっぱいでどうすることも出来ない。
「フィオ・・・いえ、フィオリ−ナ・・・ごめんなさい・・・」
涙をぽろぽろ流しながら、フェナはフィオの顔をのぞきこみ、あやまった。
何度も何度もフェナはごめんなさいといいつづけた。
「でも、分かってあなたをほったらかしていたわけではないのよ・・・。この機体だってあなたを・・・」
「いまさらなにをいっているのよ!!」
フィオはフェナを跳ね飛ばした。
「この機体!この機体!!この機体!!!あなたの頭にはそれしかなかった!!」
「そんな…」
「フェナはいつも冷たかった!!一緒に寝たこともなかった。いつも私冷たい目でみていた!!……っつ!!」
ふいにフィオは頭を抱えた。
「!?」
「フェナのうそつきだいっきらい!フィオのことなんてどうでもいいんだ!!」
「え?」
「だから、殺すの!」
銃声がもう一度鳴った。
しかしあたらない。
「あ、あれ?」
「……」
フィオはもう一度引きがねを引いた。
しかし、これもあたらない。
フィオは何度も引きがねをひく。
だが一発もフェナにあたらない。
「フィオ…あなた…」
「う、ううう…」
フィオはまた頭を抱えながら膝付いた。
フェナはすぐに彼女の傍にかけよろうとしたが、フィオはすぐにまた銃口を向けた。
「く!絶対に…」
苦しそうに頭を抱えるフィオは銃口をフェナに向けたまま離れた。
そしてなんとか黒い豹に戻るとコクピットの中へと消えていった。
「フィオ!だめ、あの男のところには!!」
フェナはフィオに訴えたがそれは聞き入れられなかった。
変わりに豹の口が向けられた。
その中になる銃口が赤く光だした。
発射されようとしているのに、フェナは動こうとしなかった。
「くーん!」
シルフィードはフェナの袖を引っ張っていたが、フェナはなにもせずに黒豹の目を見え返していた。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
それを見たフィオは一瞬引きがねを引くのをためらった。
いや、なにかが止めているのだ。
「く!なんで?!」
その時であった。
甲高いエンジンの音がしたのである。
「フェナ!!!」
真沙緒はビルの間を高速で飛んでいた。
その後ろにまだ真沙緒の機体を追いかける虫がいる。
真沙緒はタイミングを決めると、飛行パ−ツを切り離した。
虫はそのまま飛行パーツだけを追った。
突っ込んでくる、飛行パーツにフィオはよけることが出来ず、そのままチャージしてあった砲の引きがねを引いた。
赤い光が伸び、それは飛行パーツを貫き、追っている虫にも直撃した。
しかし、目の前で破壊したため、黒い豹も爆発に巻き込まれた。
その隙に真沙緒はTran-DSzの前に着地し、ライフルを構えた。
しばらくの間、動いているものはなかった。
やがて煙が晴れた。
そしてそこには平然と豹がたっていた。
「やっぱり、そううまくいくわけないっか」
真沙緒は照準を豹に合わせたまま動かない。
また時間がすぎていった。
最初に動いたのは豹だった。
しかし攻撃するより一歩下がるとすばやくその場を退散した。
「フィオ!だめ!!」
フェナは彼女によびかけたが、その声はフィオには届かなかった。
○
「全艦、浮遊大陸の上空に到達しました!」
「よし!TA部隊降下!!」
フォルスリングの命令と同時に格納庫では警報がなった。
整備員達が急いで、TAの足元から離れていく。
グレナディアは親指をランに向けてあげるとコクピットハッチを閉じた。
すでに起動しているので、グレナディアはすぐに武器の確認をする。
その中でMKVI Warheadというものがあった。
それを見てグレナディアは目を細めた。
「うまく、いくのかな」
もちろんそれは今から開始される作戦についてのことである。
システムチェックが終了するとTran-ZSの目が光る。
彼女の機体だけではなく、周りにいる数機も同時に目を光らせた。
それを合図にカウントダウンが表示された。
そして、格納庫の中で重たい音が響き、TAの足の下にある床が動きだした。
下にはまた扉があり、それが続いて開いていった。
やがて、通路ができあがり、その先には戦闘機が飛びまわる下界が現れる。
フラック砲の爆発が鳴り響き、シールドが時々光を放っていた。
「ドロップドア開きました!」
「よし、5秒後に落せ!」
ビービービービービー!!!
「よし!!」
警報がもう一度なると同時に、TAを固定していた装置がはずされた。
そのため、TAは重力に引っ張られ始め、ドロップドアという通路から島へ「落ちて」いった。
扉をクリアしたTAは大きく手を広げ、降下の安定を保つ。
フラックの爆発の中で周りの戦艦からも同じように降下すいるTAが見える。
Firing Retro Rockets
(逆噴射ロケット発射)
地上にある程度近づいた時点で、コンピューターの報告と共にTAの自動制御プログラムが自動的に動いた。
逆噴射が行われ、TAは次々と着地していった。
「全員着地しました!」
「よし!オペレーション・ファイアクラッカー開始!!各部隊、島に進入しMKVI弾頭を設置せよ!」
フォルスリングは少々無謀といえる作戦の開始を宣言した。
降下した部隊は残存TAをかき集め、5機で結成されたTA10部隊。
その部隊ひとつのTAにMKVIという核弾頭を装備している。
作戦というのは島の中に進入し、それを設置してから爆破させるということである。
7年前に使用された核を簡単に凌ぐ核弾頭をもったTAのパイロットとしてはとんでもない作戦である。
しかし、フォルスリングにとっては「あれ」を使うよりましだと判断しての作戦であった。
どちらにせよ、このままやられるだけである。
「了解!」
グレナディアはすぐにスキャンを開始した。
さきほど、赤と黒のTAと戦ったキラードールはどこからか出てきたはずである。
それを発見し、進入するという、無茶な作戦だ。
無茶であったはずである。
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