Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 16

がらがらがら…。

グレナディアは何かが崩れる音で意識を取り戻した。

「うん…」

頭を二、三回降ると目を計器にやった。
異常なし。
奇跡と言えるしかない。
グレナディアのTran-ZSは没落に巻きこまれなかった。
とっさに本能が働き、無意識に体が機体を動かしたのだろう。
自分でやったこととはいえ、グレナディアは驚きを隠せなかった。
でも、それも一瞬。
彼女はすぐに苦笑した。

(ガルトスの閃光がここで終わってはお笑いだな)

と自分に言い聞かせた。
情況を確認するためにセンサーを働かせる。
自分の部隊のものの無事を祈って。
しかし、反応はなし、無線の応答もない。
地上とも連絡がつかない。
おそらく、先ほど起きた振動のせい。
原因は容易に検討が着いた。
恐らく味方の部隊が一つやられたのだろう。
そしてキラードールは誤ってか、わざとMKVI弾頭を撃ち抜いた。
どのような効果があったのかはわからない。

「ふぅ」

高鳴る胸を押さえ、一息をはくとグレナディアは気を引き締めた。
敵がまだ潜んでいる。
出口も見つけねばならない。
とはいっても、いままで通った通路しか記録されてない。
グレナディアはため息をつくと真っ暗な通路を進みはじめた。



「いまのは…」

降下中に突然機体を襲ったもの。
アーリーはそれがなんなのか十分にわかっていた。
7年前、前線にいたものならだれでも分かる。
核爆発に生じる電磁波。
Tran-Dにはどうやら対電磁波処理が施されている。
稲妻が機体の周りを走り、警報が少し鳴っただけであった。
周りには煙りを出しながら落ちていく残骸が多かった。
そしてそれを避けようとする戦闘機。
このまま落ちるにしても拉致があかないので、アーリーは近く戦艦に降りることにした。
逆噴射をかけてカタパルトデッキが二基ある戦艦に機体を立たせた。

『なんだ貴様は?!』

着陸した瞬間通信機から怒鳴り声が聞こえた。

「ラグナス重工実験機Tran-Dならびにテストパイロット、アーリー・ラグフォードです」

『と、Tran-Dだと?!』

「はい」

さすがに軍にいたことがあっただけ、アーリーは戸惑いもせずに答えた。

『ちょっとまて!』

通信がいったん切れるとすぐに別の通信がはいった。

『私がエルファ防衛軍所属ハインラインの艦長フォルスリングだ。ラグフォード元軍曹だったな』

「な、なぜそれを」

アーリーは驚きを隠せなかった。
自分がかつて軍曹だったってことはあんまり話していない。
軍には入っていたとしても階級まで知っているのは妹、ミアだけのはずだった。
アーリーの驚きを無視するようにフォルスリングは続けた。

『いまから我々潜入部隊を回収のためこれより艦体の高度を下げる。君には護衛を頼みたい』

「わかりました。でもその前に上空に待機した輸送機の安全を確保してください」

『そのことはすでに戦闘機を護衛に回した』

「ありがとうございます」

『では頼んだぞ』

「了解・・・、あの・・・」

『うん?』

「フェアランス少尉は・・・?」

そのことを聞いたのがまずかったのか、フォルスリングが一瞬表情を変えたことをアーリーは見逃さなかった。

『彼女とは連絡がつかない・・・』

「え?ちょ、ちょっと!」

通信はそこで切れた。
それと同時に鈍い振動が機体を襲った。
艦隊が降下し始めたのである。
幸いにして、いまは艦隊を襲うものがない。
島に静けさが戻っていた。
アーリーはその静けさが気味悪かった。
これだけの島だ。
あれ一発で終わるはずがない。

「これはまるで・・・・嵐の前の・・・」



島の中央に立つ塔を目指し、推力を全力にして向かっていた。
さきほどの爆発で抵抗は一切止まっている。
だが、フェナは分かっていた。
あの男はやられたふりをしているのだ。
この静かさを利用して艦隊が安心するところを狙っていることが分かる。
分かっていることだが、今の彼女にとってはそれはどうでもいいことだった。

ピーピーピーピー

先ほどから通信音が鳴っていた。
フェナはそれを無視していたが、塔に近づいてきたためやっとそれに答えた。

『フェナ!ザザ・・・どこに・・ザザ・・?!』

真沙緒である。
雑音が入っているのは先ほどの電磁波で通信機能がまだ回復していないからであろう。

「あなたはもどりなさい」

落ちついた、感情がない声でフェナは答える。

『え?それって』

「あの男がこのままだまっているわけがないわ。あなたは戻って艦隊を守って」

『でもあなた・・では!』

大丈夫と答えるとフェナは通信を切った。
塔は目の前に迫っている。
そこで背中に収めている大剣をTran-DSzに構えさせた。
大きく振りかぶりそれを振り下ろすと同時に塔に突っ込んだ。
光で覆われている剣はいともたやすく塔に吸いこまれた。
フェナはそのまま強引に円を描いた。
火花が飛び、剣に焼かれた塔の材質はまるでバターのように溶けていく。
剣を引きぬき円の中心を殴るといとも簡単に穴ができた。
フェナはそこにTran−DSzをもぐりこませると一瞬にして闇に覆われた。
そしてTran-DSzはその闇の中をおちていった。
フェナは慌てず、センサーを赤外線使用に切り替えた。
落下はあえてとめず、そのまま重力に任せて落ちていく。

(しずかすぎる)

これが彼女最初の印象だった。
本拠地とも言える場所に進入したのだ。
侵入者にたいしてなにかが攻撃するはず。

「Calamite・・・どうなの?」

-I don't liiiiike thiiiiiis-

こんな情況でもCalamiteはおちゃめた返事を返した。

-Detecting large amounts of energy flowwing through conduits-

「中心は?」

-The Bottom of this tower-

大量のエネルギーがこの塔の下に集中されている。
フェナはいやな予感がした。

(まさか・・・)

と思った瞬間、後ろの方からなにかが光った。

PDSが働き、光を塞ぐ。
しかし、そ衝撃のため機体のバランスが崩れる。

「く!!」

フェナはTVSを利用し、バランスを修正する。
そして頭部のバルカン砲をその光の場所放った。
手応えは無かった。
また別のところから光が放たれる。
フェナはそれをよけ、今度はファンネルを飛ばした。
ファンネルの攻撃の光がし、なにかが爆発した。
しかし、これも手応えがない。

「・・・きたわね。Calamite!!」

-Unable to identify target-

塔に流れているエネルギーが大きすぎる。
そのため襲ってきている相手が放出しているエネルギーがマスクされているのだ。
フェナは襲ってくる光を交わしながら反撃を試みるが効果はなかった。
次第に彼女は苛立ち、バルカン砲を放った。
火花が飛び、その瞬間に回りが照らされるが、なにも見えない。

『うふふ、どうしたのぉ?』

「…」

『慌てちゃってさ…。怖いの?』

「…」

この声が誰のものなのかフェナは分かっていた。
ちょっと深くなったあの声。
フェナはちょっと前にそれを聞いたのである。
ちらっとあるウインドーに目をやるとそこに反応があった。

『のこのこやってきちゃってさ』

「…」

反応は常に動いていた。
まるで自分が落ちる速度に合わせるように飛びあっちこっち飛んでいた。
フェナはその情報をメインモニターに写っている画像に組み合わせる。

『あなたをやれば、私は幸せになる』

「…」

『だから…』

位置特定。

『だからね、フェナ』

ファンネル、ターゲットロック。

『死んでよ!!』

光が発せられた時、フェナはその位置にバルカン砲を叩きこむと同時にファンネルを放った。
フラッシュの中、バルカン砲とファンネルはたしかになにかを捕らえた。
しかし、火花が飛ぶだけで効果はたいして無い。

『やってくれるじゃない…』

「もうやめなさい」

『アハハハ!ヤメル?コンナタノシイコトヲナンデヤメナケレバイケナイノ?』

「怒るわよ」

『感情がないあなたが怒るわけないじゃない。それにあなたには出来ないわ』

「…」

『自分の可愛い娘を撃つ事なんて』

ぎり…。
フェナは歯を砕けるのではないかというほどにかみ締めた。
憎しみが高まる。

『でもね、「おかあさん」。私はあなたを撃てるのよ』

(ステファン!!)

『私を捨てたあなたをね!!』

その声とともに影がTran-DSzを襲った。
反動でTran-DSzは塔の壁に叩きこまれた。

「あう!」

ビービ―ビー!!

重力に引っ張られ、壁との抹殺で激しい振動がTran-DSzを襲う。
その弾みで背中の大剣ははじき飛ばされた。

『あはははは!』

笑いとともにフェナの目には黒い豹がその手を振り上げている姿映されていた。

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