Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 18
格納庫はひっくり返っていた。
いや、そう見えたといえる。
あらゆるパーツ、ホーズ、人、兵器、弾薬でいっぱいになっていた。
蒸し風呂のようだ。
汗と油と焼かれる鉄の匂いが充満している。
そんな中を真沙緒は自分で弾薬つみこみとメンテをやっていた。
時間がないこともあるので、大幅のチェックしかできない。
「アーリー、いいわよ!」
ハードポイントの設定を確認し、アーリーに叫ぶ。
「了解です!」
コクピット開けた状態でアーリーは返事をした。
Tran-Dが両手に抱えているレールガンがハードポイントに嵌められる。
細かいギアが働きハードポイントが伸び、それを掴み、固定ポジションへと移動させた。
ハードポイントの接触ポイントが開き、配線が伸びてレールガンと位置が合うものがつなげられた。
ぴ!
接続が完了という合図が出ると同時に装備のウインドーに左肩のラベルがNothingからRail Gunに変った。
エネルギー消費率が計算され、リアクターへの負担が表示された。
これで装備の準備は終わった。
こういう情況ではなかったらシャワーを浴びたいところだ。
ひゅーぉひゅ!!
だれかが口笛を吹いた。
どうやら最後のパーツをつける準備が出来たようだ。
Tran-ZSSを一歩下がらせると、クレーンが動き上から何かを降ろしてきた。
重そうなバックパックである。
しかし、通常のものとは違い細い翼がついていた。
テールバインダーというものらしい。
通常のTAは飛ぶことが出来ない。
ジャンプ力を使いそれで一時的空中にいることができるが、人の形をしていることが重に原因だ。
もちろんそれだけではない。
通常のバックパックでは推力が機体を長時間もてないのである。
だが、それが必要になるときがある。
そのためにこのテールバインダーの登場である。
追加エンジンと翼のおかげで普通より長く空中にいられるのである。
またある程度の高度まで機体を上げることも可能だ。
「これで少しはまともに動けるわね」
(Tran-DSzまではいかないけど)
自分に突っ込みを入れながら、最終調整に入る。
その作業もすぐに終わり、一度背伸びをするためにコクピットを出た。
「うーん!」
「ま、真沙緒さん!!」
「な、なによ?」
テールバインダーをチェックしていたランが口元を押さえて目を背けさせていた。
「うん?」
気が付くと格納庫はシンと静まっていた。
そしてすべての視線が彼女の方に向けられていた。
「あ・・・」
真沙緒は自分がどんな格好をしていたのか思い出した。
暑いのでパイロット―スーツの上半身を脱いでいたのだ。
髪を鬱陶しいので無造作に頭の後ろにまとめられていた。
上は胸を隠す黒のスポーツブラしかない。
その上、汗がなにかしら白い肌は光らせ、美しさを引きだてている。
そして止めに髪を結い上げているためにうなじが…。
だれもかれも作業を止めてしまうのは無理もないかもしれない。
真沙緒は胸元を隠しながらコクピットへ戻った。
『全艦警戒体制、全艦警戒体制。回収部隊出撃してください』
薫の声が格納庫の中で響いた。
そのおかげで呪縛が溶けたのかみな作業に戻る。
(穴があったら入りたい…)
真沙緒は熱くなっている顔を両手で隠した。
『あの、真沙緒さん・・・』
「な、なに?」
『俺達も回収部隊なんですが』
「あ、そ、そうね」
直視できないのか、アーリー音声で通信を送ってきた。
真沙緒は気分を取りなおしてパイロットスーツを着なおした。
テールバインダーには問題がないようなので、シールドを拾い、Tran-ZSSはカタパルトデッキに出て周辺を警戒した後降下した。
『零少尉、チャーリーが近くにいるはずです。警護をお願いします』
冷たい、なにか怒った声が通信機からした。
「了解」
『ばか…』
最後の一言になにか反応する前に、通信はすでに切られた。
「はぁ…」
頭を抱え、ため息を出す真沙緒。
それを見ていたアーリーは一生懸命笑わないようにがんばった。
これから起こる戦いの前にちょっと気分が和らぐ一時であった。
○
怖い。
これほど恐怖を味わったのはいままではなかった。
目の前に迫ってくる赤いTAに対し、フィオは手も足も出せなかった。
攻撃しても簡単に受け流される。
そしてその倍返しとでもいうように鋭い攻撃が襲う。
「く!!」
一見むちゃくちゃにソードを降りまわしているように見えるTran-DSzではあったが、一撃一撃が鋭く、正確に自分を狙っていた。
フィオは下がることしか出来ない。
冷たい殺気。
それがガンガン自分に向けられていた。
「へへ・・・本性を現したね」
『??』
無言だったが今の発言に反応したことは一瞬とまったTran-DSzの動きで分かった。
「そうよ!本性よ!兵器として生まれたあなたの本性よ」
『ッ…』
沈黙が二人の間を包んだ。
だがそれは…。
ドガ!!という重々しい音で割れた。
Tran-DSzの拳が深く壁にめり込んでいたのである。
フィオはびくっと体を振るわせた。
怖い。
しかし、この感覚が溜まらなかった。
鳥肌が立つほど。
でも自分でいったさっきの一言。
なにかが自分の中で引っかかった。
兵器。
兵器として生まれたあなた。
兵器。
兵器として生まれたのは私?
兵器。
兵器として育てられたあなた。
兵器。
兵器として育てられたのは私?
兵器。
兵器として戦う…戦う…。
戦っているのは…。
戦っているのは…?
「うあ・・・」
いきなり息が出来なくなる。
喉がつぶされている感覚に襲われる。
強烈な頭痛が襲う。
「うぐ・・ぐあ」
(あの人を殺れば、あなたは楽になれますよ)
声が頭に響く。
兵器として生まれたの自分。
(そうですよ。 あなたは兵器です。私の大切なね。それから逃れる方法はありませんよ)
「いや・・・」
フィオは頭に流れてくる声を否定しようとする。
しかし、息苦しさとともに襲う強烈な頭痛。
耐えられない。
(やめてやめてやめて!)
自分の中にいるもう一人が叫ぶ。
「うるさい!」
そんなことを叫んでいる時衝撃が襲った。
「きゃああ!」
心の中で生じた戦いが動きを止めていたのだ。
その隙をついてフェナは容赦なく攻撃をしてきたのである。
黒豹は飛ばされ通路の壁にたたきつけられる。
(楽になりたかったら、彼女を始末することですね。そしたらあなたはもう苦しむことはありません)
あの男の囁きが頭の中で響く。
楽になれる。
その言葉が彼女を誘う。
「わあああ!」
体制を立て直し、フィオは引き金を容赦なく何回も引いた。
黒豹の口から光が連続的にに発射される。
しかし、その攻撃はたやすくPDSの遮られた。
Tran-DSzは一歩一歩近づいてきた。
それに対し、フィオは突進を掛けた。
黒豹が咆哮をあげながらTran-DSzに向かっていく。
口から棒が飛びだし、あごがそれを捕らえた。
そしてその棒の両端から光の剣が生まれる。
首を振りあげて攻撃するが、簡単に流されてしまう。
それを予想して着地と同時に首を横に回し、後ろからTran-DSzを籤差しにしようとする。
しかし、それも受け流された。
「な?!」
驚きを隠せない。
Tran−DSzの肘から刃が伸びていた。
それも両肘から。
まるで死神の鎌をとりそれを肘につけたもののようにフィオに見えた。
『あまい・・・』
深い落ち着いた声がした。
「く!」
その威力にまけないとフィオは大きく後ろに下がる。
体制を低くすると黒豹の首から無数の光が放たれる。
その光一つ一つが自分の意志をもったように動き出しTran−DSzを攻撃する。
しかし脅しに近いそれらの攻撃は再びPDSに簡単に止められる。
「きたないわよ!」
負け惜しみともいえる発言。
『・・・』
ため息のようなものが聞こえてきたようだった。
そして次の瞬間、PDSの光は消えた。
『これで文句はないはずよ』
冷たい声が響く。
まさか、本当にPDSを下げるとは思っていなかった。
しかし、これで確実にしとめるとフィオは確信し、攻撃を再開した。
Tran−DSzに無数の光が襲う。
避けられないはず・・・だった。
だが・・・。
「!?」
狭い通路の中、Tran−DSzは確実にすべての攻撃を交わしていた。
小さな動作、小さな動きですべてをぎりぎりで交わしていた。
当たったもの、いや当たったように見えたものはかすり傷にみたいなもので装甲にはなんの影響を与えない。
まるで・・・Tran−DSzが踊っているように見える。
リズム乗りですべてを交わしている。
その姿はフィオを驚かせたのは事実だが、同時に彼女の苛立たせることになった。
「いつまでも避けられると思うなぁ!」
Tran−DSzの動きを予測し、フィオは黒豹の口にある棒を発射させた。
そして同時に口砲を拡散モードで発射させた。
すべての光が通路を包む。
そして爆発。
「くくくく・・・・やった」
煙が充満し、視界ゼロの中でフィオは勝利を確信した。
しかし・・・それもつかの間。
次の瞬間猛スピードで突っ込んでくるTran−DSzの目の光が現れた。
「そ・・・!」
そんな!と叫ぶ前に黒豹は体当たりを食らった。
飛ばされそうになるがTran−DSzはその足をつかみ、壁に叩き付けた。
つぎに頭部を鷲掴みにし、床に叩き付けた。
そしてから腹への蹴りが叩き込まれる。
それに吹っ飛ばされる中、バルカン砲の攻撃である。
装甲が弱い腹が蜂の巣にされてしまう。
計器が火花を飛ばす。
そして壁との衝突。
これがメインコンピューターを物理的に損傷させる。
すべての計器が死に、フィオは闇に閉ざされた。
衝撃で体中がいたい。
「ごほ・・・」
しかしここで終わるわけにはいかず。
フィオはパルスガンを手にするとハッチをこじ開けて出た。
なんとか体を立たせた時、 影が自分覆った。
反射的に銃を構え目をその方向に向けた。
そこにはTran−DSzのライトに照らされて自分を見下ろしているフェナがいた。
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