Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 2

暖かい・・・
それがフィオが今感じてことである。
まるで幸せをブランケットみたいに触れ、それを自分に巻き付けた感じであった。
自分の長い髪は何かに流されているみたいに、ゆらゆらとゆらいでいる。
前より長くなっているようであったが、フィオはそれを気にしない。
その時、左腕にちくりするものが、した。

「う!」

その痛みにフィオは耐えようとする。
始めてではない。
こんな事は度々あった。
身体になにかが流し込まれる感触がし、それが終ると身体が急になにかに伸ばされる感じがする。

「ぐ!」

それに耐えるため、フィオは身体を固めた。
痛みは時間につれ、暖かみと変わっていった。
それがやがて、フィオに快楽の世界に連れていく。

「ふあ」

身体がフィオが知らない波で覆われ、背が弾け身体がびくびくと震えた。

「くくくく・・」

フィオの様子をカプセル外から見る男が小さく笑った。

「もう少しですよ、もう少ししたら・・・・・」

なにかが楽しみをしているかのにステファン肩を震わし笑い出した。
その笑いは彼がいる所の通路の中に響き、大きな空洞へと響いた。
そして、その笑いに反応するかのように、ある物がその両目を一度光らせた。



眩しい光が目に当たっていたため、フィリスは目を覚ました。
ベッドの上だった。
白い壁、白いカーテン、白いベッド、テーブル、それらがならべられていたところである。
首を左右に動かし、誰かいるのか確認するが、だれもいなかった。
ベッドのすぐ側には部屋の白さに対抗しているのか、鮮やかな色を持っている花が薄い蒼の花瓶に飾られている。
さあという、感じで潮の香りを少し運んだ風がカーテン揺らし、部屋の中にふいてきた。
フィリスは長い眠りから起きたかのように、体をゆっくりと起こした。
痛みはなかったが、身体がものすごくだるく頭がくらくらしている。
ふう、と一つ息をすると、窓にばさ!という羽が空気を切る音がした。
それと同時にくるるるという鳥の鳴き声がした。
そちらへ顔をむいたフィリスの目に写ってのは黄色の大きな鳥だった。

「ラーズ・・・」

鳥の名前を呼ぶと、それは呼びかけに応じるかのように着陸して窓際からとっとっとと床を歩き、一度羽をはばたかせ、フィリスの寝台に上がった。
大丈夫?と聞いているか、ラーズは首を傾げ、大きな緑の目でフィリスの顔を覗き込んだ。

「ありがとう」

といいながら、フィリスはくすっと小さく笑うと指を刺しだし、ラーズのくちばしの下をなでた。
ラーズはそれを気持ちよさそうに目を閉じて、身体をフィリスの方へとよせた。
気を配っているのか、足を決してフィリスの足の上に乗せない。
ラーズをなでている間にフィリスは記憶を探った。
最後に覚えているのは、たしか黒服の男達に街中で追われてなにかがはじけた時までだった。
その後、どうなったかは知らなかった。
守られていた自分が何もできなかったことに悔しさが少し浮かんでくる。
自分は、チームサテライトのチームリーダーのくせに何もそれらしいことをしていないのかと思ってしまう。
そう思っていたためか、ラーズをなでる指が止まってしまった。
もう終わり?という顔をしてラーズは首を傾げた。

「あ、ごめんごめん」

フィリスはまた小さく微笑むとラーズをなで続けた。
今はあんまり深く考えない方がいいという決断にフィリスはたどり着いたが、ため息がでてしまう。
しばらく続いた沈黙をやぶるノックがドアでした。

「はい」

ドアの方へと見ずにフィリスは答えた。
静かに開かれた扉に男が一人入ってくる。

「お父様・・・・」

驚きが隠せず、父親を読んだところで、口はふさがらなかった。
同時にラーズをなでる指も止まる。
ラーズも来客のことに気が付き、フィリスの指が止まると同時にフィリスの寝台から離れ、一気に窓へと飛びそのまま外へと飛び続けた。
二人はそれを見届けると、同時に口を開いた。

「あの・・・」

「フィリス・・・」

二人は、同時に何かを言おうとしたことに気が付き、フィリスは小さく笑い、ジックスは苦笑した。

「気分はどうだ?」

間を与えずに切り出したのはジックスだった。
顔はいつもと同じであったが、声には微妙だが心配が入っていた。
フィリスはその父親の顔を見つめ、少し涙を目にため頭を少しさげた。

「ご心配をかけました」
泣き声ではなかったが、泣き出す寸前であった。

「質問の答えになっていないぞ」

態度は相変わらずである。

「はい、もう大丈夫かと思います」

うつむきながフィリスは答えた。
そうか、とジックスはいうと後ろに隠していた手を動かした。

「見舞いだ・・」

ばさ、という音と共にフィリスの目の頭の前に見事な花束が現れた。
それは彼女が好きな花のものであった。
うれしさが沸き上がり、フィリスはまぶしそうな笑顔を見せた。

「ありがとうございます」

花束を受け取り、フィリスは花の香りを舁いた。
照れたのか、ジックスは口に手を当てた。
そのしぐさがあまりにもだれかに似ていたからだろうか。

「無事ならそれでいい」

というとジックスはフィリスに背を向け、ドアの方へと進んだ。
それを止めようとフィリスは手を動かすが、届かない。
もうちょっと側にてほしいと思ったのだろうか、フィリスは自分でも何故を手をだそうとしたのかわからなかった。

「側にいてくれる男なら、いるだろう?」

フィリスが手を出したことを感づいたのかジックスは背を向けたままいった。
だれのこと言っているのか、フィリスはすぐに理解し顔を少し赤くした。

「その顔を彼に見せればいい」

そういうと時ジックスはドアに手をかけ、部屋から出ようとした。

「あ、あの!」

「なんだ」

「真沙緒さんとフェナさんは?」

思い出したかのようにフィリスは自分意外に怪我した二人のことを聞いた。
二人は自分より重傷のはずだったから。

「零少尉は明日、医療ベッドから部屋に移される。おまえの姉には治療はしたが、原因不明な理由で身体が弱まり続けているため、目が離せない状態であった」

そういうとジックスはドアを開け、部屋からさっさと出ていった。

「え?」

今、父親が妙なことを行ったことに気が付いたのは彼が部屋を出て一、二秒がすぎたあとであった。

「私の姉?・・・どういうこと?フェナさんが・・・?私の?」

困惑がフィリスの心を支配始めた。
どういうこと?と質問が何回何回も頭の中をめぐる。
後を追って、聞かなきゃと思うと、フィリスはベッドから降り、ドアの方へと進もうとした。
しかし頭が急にぐるぐる回転しだし、足に力が入らずそこへ倒れはじめた。

「あ・・・・」

どうしようもなく、腕は花束を持っているため止めるに止められない。
いや、止められるだろうが起きたばっかりのフィリスに思考回路がまだはっきりとしていないから、身体が反応しないのだ。
身体を固くし、床に叩き付けられることをフィリスは覚悟した。
その時、彼女の身体を受け止めた人物が現れた。

「おっととと、・・ふぃ、フィリスさん、だめですよ。まだ寝ていなくては」

その声の主がだれなのかすぐにはわからなかったが、フィリスが顔を上げた瞬間彼の顔が目の中に飛び込んできた。

「アー・・・りーさん」

「まだ起きてはだめですよ、医療カプセルから出た後、一日は安静が必要なんですから」

アーリーはそう言うと左腕をフィリスの肩に回し、身体を倒して右腕を膝の所にもっていき簡単にフィリスを抱え上げた。

「え?」

と思った次の瞬間、フィリスはやさしくベッドの上に下ろされた。
次にやさしく、布団をかけられる。

「今、支社長とすれ違いましたが、お見舞いにでも?」

とアーリーが聞いてきた。
その言葉にフィリスはびくっと反応し、うつむいた。

「フィリスさん?」

やさしい声が聞いてくる。
込み上げてくる何かをフィリスは押さえ切れず、アーリーに抱き着いた。

「え?あ、あの?フィリスさん?」

なにがどうなっているのかわからなくなった、アーリーはおどおどするしかなかった。

「おねがい、ちょっとだけでいいですから、こ、このままにさせてください」

自分にきつく抱き着いている、フィリスをアーリーは否定するわけにいかなく、やさしく彼女の背中に腕を回した。
柔らかい感触に本能が暴走しそうな自分をできるだけ抑え、鼻の下が伸びないように顔を上にむけた。
ちょっとだけでいいから、時が止まってほしいなとアーリーは思ってしまうのだった。

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