Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 21

蒼い空を見ている。
なにやら、グレナディアにとって開放感を感じていた。
しかし、それは長く続かない。

「攻撃を受けている?!」

グレナディアは彼方に見える戦艦とその周りに飛ぶ光を観測した。
艦隊は高度を上げているようだ。
このままだと回収されないかもしれない。
目を自分が今持っているコンテナへ向けた。
生命反応はちゃんと二つあるが、一つはかなり弱ってきていることが分かる。
焦る気持ちが高鳴り、グレナディアは敵に傍受されてもいいと思い、回線を開いた。

『グレナディアさん?!無事だったんですか?』

「私がやられるとでも思ったのかい?」

『い、いえ』

「こちらには負傷者が二人いる!収容したい!」

『しょ、少々お待ちください!!』

ハインラインの通信士はいったん回線を切った。
おそらく艦長と交渉しているのであろう。

『許可下りました。現在位置、判明。護衛として一機を送ります!』

グレナディアは正直、このことに驚いた。
現在艦隊の状況は良くない。
普通なら、自分を見捨ててでも引き上げるのだろうと思った。

(大した人物なんだね、あの艦長は)

内心そう囁く。

「了解!こちらも動く!そちらでフォローしてくれ!」

『わかりました』

通信はそれで切れた。
コンテナを大事そうに抱え、グレナディアは艦隊へ向けて飛んでいった。



「え?!護衛?」

この忙しい時に!と真沙緒は叫びたかった。
次々から襲ってくる銀色のキラードール。
特別部隊ということがわかる。

「この!」

プラズマソードと絡みあいになっていた真沙緒は大きく相手に押し返す。
パワーに負けたキラードールはひるみ、真沙緒はそこに頭部のバルカン砲を唸らせた。
コクピット部分を蜂の巣にされ、キラードールは沈黙した。

「アーリー!ここは任せる!」

『ま、真沙緒さん!』

「仲間を一人救わなければいけないの!」

『そういうことでしたらいってください!俺は大丈夫です!』

「慣れていないかもしれないけど、敵にあまり近づかないように!」

『了解ぃ!』

「ハインラインこれより、グレナディア機の援護に向かいます!」

『了解!』

真沙緒は通信と閉じると、テールバインダーを展開し、全開でグレナディアのポジションに向かっていった。
ジャンプをし、テールバインダーを展開した。
推力を全開にする。
それに答え、テールバインダーについているスラスターが火を吹いた。
真沙尾のTran-ZSSはそれに応じて飛び始めた。
グレナディアはすぐに見つけた。

「グレナディアさん!」

『おー、真沙緒かい。あの艦長もしっかりとした者を送ってくれたものだな』

「それですか?」

『ああ、ここに相手のエネルギー中心というところで二人を見つけた』

「え?!」

『なんだ?文句あるのか?』

「い、いえ。ただだれもいったことがない島の中に・・』

『零しょう・い。一つ聞くぞ』

「は、はぁ」

『あんたは人間か?それとも軍人か?』

「え?」

『だから!傷ついているものが、敵でも味方でも助けるかって聞いているんだよ』

この問いにさすがに、真沙緒も戸惑った。
敵でも味方でも関係ない。
そうなのか?
敵だったら、治しても何かするかもしれない。
その恐れがあった。
しかし…。
その答えは簡単だった。

「私は人間のつもりです」

『よし、ならこの二人を…』

「ええ、助けます」

『分かった』

真沙緒は答えると同時にグレナディア機の後ろについた。

『おい・・』

「このほうが早いです。ライフルを預けます。おねがいします」

『ああ、わかった』

真沙緒はそれで推力を再び全力にした。
グレナディアもそれに対し、推力を全力にした。
真沙緒のTran-ZSSはグレナディアのTran-ZSを抱える形としてハインラインへと向かう。
しかし、それをみすみす見逃す敵ではない。
数機のキラードールがまるで無防備のこの2機に気付き、しかけてきた。

「「ち!」」

真沙緒とグレナディアは同時に舌打ちをした。
応戦をライフルとレールガンでするが、簡単によけられる。

「接近戦に?!」

数機の目論見が発覚し、真沙緒とグレナディアは焦った。
真沙緒はグレナディア機を支え飛行。
グレナディアはコンテナをもっているおり、ライフルをもっているとしても、格闘戦は無理。
グレナディアはそれでもなんとか使用とライフルを発射するが、やはりよけられてしまう。
その隙を狙ってキラードールが大きく振りかぶって襲ってきた。
真沙緒は落ち着いてその攻撃をよけるが、次の攻撃が襲ってきた。

「まずい!!」

避けきれない。
真沙緒とグレナディアは襲ってくるキラードールをスローモーションでみた。
多きく振りかぶるキラードール。
その次にくる衝撃に対して真沙緒とグレナディアは目を硬く閉じた。
だが、そのキラードールは振りかざした腕を振り下ろすことはできなった。
なぜなら、そのキラードールは…。

『真沙緒さん!グレナディア!!』

突っ込んできたTran-Dのナックルショットで粉砕されたからである。

「あ、アーリー君?!」

『むちゃです!』

「ふん、だからおまえに頼んだんだろう?」

『意地悪ですね』

「あははは」

真沙緒はグレナディアの一言に笑ってしまった。
やっぱり頼りになる男である、アーリーは。

『後は任せて、負傷者を収容してください!』

「分かった!」

それで、真沙緒とグレナディアは上昇するハインラインに向かった。
カタパルトデッキは大混乱中であった。

「ラン君!道をあけて!!」

『そ、そんなむちゃです!こちらはもうめちゃくちゃなんですよ?!』

「こちらには放射能の患者がいるの!!」

『そんなこといわれてもこちらも怪我人で多いんです!』

真沙緒は大きくため息をした。
あたり前の状態だ。
潜入部隊はほぼ全滅。
それで生き残ったものはその後まともな人生を生きていけるのかもわからない。
ハインラインの医療スタッフにとっては限界だった。

『手が空いている戦艦は?!』

グレナディアは大声で叫ぶ。

『どの戦艦もかなりのダメージをうけていまして・・・。あ、いや、フユヅキがまだ大丈夫のようです!』

「その位置は?!」

『艦隊の左翼です!!』

『わかった!!』

それを聞くと真沙緒は再びグレナディアを抱えて飛び立った。
船から船の間をジャンプし目標の船の向かう。

「こちら、ハインライン所属、零真沙緒です!そちらの・・・!?」

『話しは聞いている!着艦をしたまえ!すでに医療スタッフは準備している!!』

「は、はい!」

指示に従い真沙緒はフユヅキのカタパルトデッキに機体をおろした。
救護班がすぐにかけつけ、グレナディアが持っている箱の中にいる人物を医療室へ運んだ。

「「ふぅう」」

グレナディアと真沙緒は同時に安心の息を漏らした。
しかし、二人の視線はすぐにくり広げられている戦場へ向けられた。

「私はすぐに向かうけど、あなたはどうします?」

『がたがたの機体なんだ。支援には・・・』

ピーピーピー。

検討しているときに通信が入ってきた。

『艦長の水谷だ。グレナディア機はこちらで補給を行う。真沙緒機はすぐに味方の助太刀をしてください』

「え?でも?」

『こちらにはパイロットはもういません。残っているものであなた方を支援させていただきますよ』

「あ、ありがとうございます」

そういう間に整備ロボットが取りつき、弾薬、軽い損傷の部分を修復していく。
グレナディアのTran-ZSに新しいライフルとシ−ルドが渡され、準備は万全だった。
しかし・・・・。

『全艦撤退の命令が下された。お二人には申し訳ないが…』

「そ、そんな!まだあそこには!」

『分かっている!しかし…』

「これだから、お偉い方は!!!!」

真沙緒の叫びは水谷艦長もしみじみ感じていた。
しかし、いまの指令を聞いたからには。

『エルファ防衛軍からの直属の命令だ』

「なんだそりゃーーー!!」

グレナディアは切れ掛けていた。

『月が最強兵器を使うそうだ。全艦隊の引き上げ命令が下された』

「私はそれでも行きますよ!」

真沙緒は叫んだ。
しかし、その隙に整備ロボが取りつき、行動不能にしてしまう。

「艦長!!!!!」

涙が流れ始めて真沙緒は叫んだ。
こんなところで、フェナを・・・。

『もうしわけない。しかし、これはエルファのためだ!』

「く・・・!」

真沙緒は思いきりコンソ−ルを叩いた。

「フェナ!」

自分ではどうしようもない。
真沙緒はそれが悔しかった。

「おねがい!彼女がどうか無事であることを!」

神にお願いをしたことがない、彼女は必死に人知を超えた存在に願いをぶつけた。
しかし、それは…。



「なんですと?!」

フォルスリングは艦長席から立ち、スクリーンに映っている老人をにらんだ。

『もう一度だけ言う。これから十分後にルナキャノンを発射する。その前に退去したまえ』

「し、しかし!!!」

『君は何人ものの兵士を道連れにするつもりかね?』

「く!しかし!あそこにいるのはあなたの孫ですよ!?彼女を!!」

『私とてそれはつらい!しかし、エルファ全人類のためには仕方がない!これは私ではなく、地球政府からの命令だ!私には…』

フォルスリングは絶叫したくなった。
しかし、艦長として士気を保つためにそれは出来ない。
愛した女性の娘・・・。
守りたかった。
しかし・・・。

「全艦安全空域まで離脱!」

「艦長!!!」

「分かっている!!」

拳を血が出るほど握りつぶし、艦長席に座りなおした。

「わかっている・・・・」

フォルスリングの目は熱くなっていた。
涙がぽろぽろと流れた。
それを察し、クルーは自分の持ち場に戻った。

「りょ、了解。発令・・・全艦離脱」

「180°回頭・・・全開離脱します」

「くっそ!」

なにも出来ない自分にフォルスリングは悔しかった。
そのときである。
島が異常な動きをし始めたのは。



「う・・・」

フェナは気がついた。
自分の周りを確認する。
赤い光と暖かい液体が自分を包んでいた。
目の前にステファンがいた。

「どうです?本当の体に戻った気分は」

重い。
それが最初の感想だった。

「重いでしょう?」

「!!」

「それはそうですよ。あなたの体は人間のものです」

フェナは改めて自分の体を改めた。
7年前の傷はない。
そして髪は銀色でなく、金髪。
大した変りではないかもしれないだ、フェナにはその違いがはっきりと見えた。
そして・・・もう一つ目の前にあったものがある。
自分が今までいた体が・・・。

「ひあ・・・」

「ふふふふ。この体にはあなたの経歴が残っている。使わしてもらいますよ」

フェナはどうしようもなかった。
自分が入っているカプセルのガラスは強く、いくら殴ってもびくともしない。
このままでは・・・、Tran-DSzの技術も奪われてしまう。

「おっとその前にいいものを見せましょう」

ステファンはにやりと笑うと、パネルを操作した。
そこにホログラムのウインドーが開き、外の様子が現れた。

「おや?艦隊が引きますねぇ?いったいどうしたのでしょう?」

答えを分かっている。
そんな顔を彼はしていた。
さらにパネルを操作し、別のウインドーが開かれ、そこには月の映像が映し出された。
高い塔。
それが月の表面に突き出ていた。
そしてその周りには無数と言える太陽電池。

「くくく、こんなものをつくるとはね。しかし・・・無駄です」

ステファンが再びパネルを操作する。
そして・・・島の全体が震えはじめた。
振動のせいで、島の「外壁」がどんどん落されていく。
その下に黒い塊が姿を現していく。

「な、なんだ??!!」

フォルスリングはその崩れていく島の姿を見、驚きの表情し見せられない。
どんどん崩れていく。
そしてその下の黒い物体が現れる。
そこには・・・。
無数のミサイルと見える刺と無数に見える砲台が姿を現した。
そして、島の中心にあった塔は・・・。

「な、なに!?」

塔は外の殻をはずし、その姿を巨大な砲へと姿を変えた。
その大きさハインラインの数倍。
そして、その塔周辺から四つのあるものが飛び立って空へと飛び立っていった。

「くくくくく」

ステファンが笑う中、フェナは彼を止めることが出来ないことを悔やんだ。



その数分前…。

「冷却システム始動!」

「充填85%!後5分発射可能です!」

「発射進路、及び周辺に味方はいません!」

「ターゲットロック!全員対ショック、対閃光防御!」

「発射準備よし!」

シュターン提督はうなづいた。
スクリーンには大きな点としてその姿を変えた島の姿があった。
それに照準のマークが指定され、その周りに数字が色々と表示されていく。
表面では落ちついてはいたが、内心、彼は悔やんでいた。

「フェリス・・・ゆるしてくれ・・・」

目をつぶり、決心を決める。
そして・・・。

「充填100%発射可能です!!」

「…発射…」

「了解。ルナキャノン発射!Now!Now!Now!」

命令が下った。
月の表面、エルファ星に向けて面の上に巨大な扉が開いた。
そしてそこには巨大な細長い砲が現れた。
ルナキャノン。
7年前に対キラードール用に開発された、月からの狙撃兵器である。
しかし、7年前は核で勝負がついたため、これは使われることはなかった。

「使うときが来たか・・・」

シュターン提督はそう呟いた。
塔の半分が紫の色に包まれる。
チカチカと光が走り、ルナキャノンは発射体制に入った。
だが発射寸前のそのとき。

「エルファ地上より、光熱源体接近中!!!」

「なにぃ!!??」

どうなっているのか確認する前に、巨大なビームが、月の表面、ルナキャノンを直撃した。
充電されていたエネルギーが遊爆し、エルファの月は真っ白な閃光に包みこまれた。

「ば、ばかな・・・・」

シュターン提督はその光を見つめることしか出来なかった。
やがて、その地点から真っ白な輪が広がっていき、月表面すべてを掛け走っていた。
残ったのは黒く焼かれた月の表面のみだった。




「月・・・本部・・・連絡途絶えました・・・。おそらく・・・」

どう言えばいいのかわからない、薫が報告した。
発狂しそうだった。
だれでもそうだった。
もういい。
ここまでだ。
エルファ防衛軍司令部は全滅。
艦隊に残っているのは、ただ20隻。
エルファ星全艦を集めても、100隻にもみたない。
TAのをかき集めて、あの島の武装には勝てない。
絶望。
それがそこにいるすべての人間を覆いつくしていた。

『うわああああああああああああああああああ!!!』

TA、スターレイピアのパイロット達が絶叫を上げながら、島、いや要塞へと突っ込んでいった。
恐らく、月に恋人、家族を残していた者達であろう。
しかし、あっけなく、撃ち落される。

「あ、あう・・」

真沙緒は恐らくその場にいる人のすべてがおもっている言葉を発した。
言葉にならない言葉。
どうすることも出来ない。
絶望感。
それが・・・そこにいる全員を包んでいた。

「全艦・・・・30歳未満のものは退艦せよ」

「艦長!!」

「これより・・・特攻を掻ける」

「しかし!!」

「なんとしてもあれを破壊しなければならないのだ!!!!!!」

しかし成功の確立は?!
あれだけの装備をもったものだ。
特攻をしても、辿りつくまえに落されるのが落ちだ。

「後方の艦隊に中和材を放出するようにいっとけ」

「フォルスリング艦長!!!」

「はは・・はははは!!!」

壊れた。
ハインラインのブリッジの人間はそう思った。
しかし、この情況で壊れないほうがおかしいかもしれない。

「どうすればいいの?真沙緒」

どうしようもない情況に薫は呟いた。




フェナは悲鳴にならない声を長々と上げた。
月の基地が消滅。

(おじいさま・・・・)

フェナは元の体に戻っていた。
何故か、子供の時代の思い出が次々と現れる。
なんでこんなことが・・・。
声を出して泣きたかった。
悲しみが一斉に押し寄せてきたのだ。

「あーはははははは!!!!」

ステファンは大声で笑い出した。

「サルのくせに我々に抵抗するからこういうことになるんですよ!!もう笑いが止まりませんね、これは!」

フェナはカプセルの中で膝付いた。

(だれか、だれか教えて!わたしは・・・どうすればいいの?!)

「くくく、さて・・次はどこにしましょうか?」

「や、やめて!」

「あ、ここにしましょう!!」

ステファンがパネルを操作をする。
そしてそれに対し、先ほ宇宙に撃ち上がれたものが答えた。
保護されていた翼が広がり、そこに、鏡が現れた。

「おねがい!!やめて!」

「はっはっはぁ!!」

実行コマンドが入力される。
島の中心にある巨大な砲台が角度の修正をする。
そしてクリスとロイスという人物に持ちこまれた、アンジェランとカオスのコアが光る。
次の瞬間…砲が発砲した。
その光線が衛星軌道上にとまっている「鏡」に当たり、角度を変えていった。
そして、指定された場所の上の「鏡」が最終調整して光線をエルファの地上へと向けた。
その光線は指定された場所…街に直撃した。
悲鳴を上げる時間も与えられず、何百万人の命が一瞬にして消された。

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