Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 27
フェナとフィオはモニターに写っている「異形の者」をみていた。
無数とも言える触手、天使と悪魔と思わせる翼。
そしてその上空に浮く天使の輪。
防御は完璧だった。
Tran-DSzはいま、安全圏といえる上空にいた。
攻略方法を考えていたのである。
「ねぇ、あの胸にある光…」
「うん、狙ってくださいといっているようなものね」
RRは今大気圏突入をしており、到着までしばらく時間がかかる。
プラズマソードしかないものではあの要塞は攻略できない。
いや、可能だったかも知れない。
フェナがあの体のままだったら。
しかし今は人間そのもの。
Gに耐えることは不可能である。
飛び道具がないことには、無理な相談であった。
だが、このまま放っておくわけにもいかない。
-Uhm-
Calamiteがなにかいいたげそうにいう。
「なに?」
-Why not attack from the top?-
(真上から攻撃してみては?)
「なんでそう思うの?」
-The Tendrils attack the ones that guy ccan only see. Apparently, he does not pay attention to what is above him-
(触手はあいつが見えるものしか攻撃しません。どうやら彼は上空のものを気にしないようです)
うんな馬鹿な、とフェナとフィオは思った。
しかし、それがもし本当なら。
「えと」
「そうだね」
二人は同時にため息をついた。
その心を察したのか、シルフィードはく〜んと鳴く。
そこでフェナは真沙緒へ通信回路を開いた。
『フェナ、大丈夫なの?』
「いまのところはね」
「お姉ちゃん、やっほ〜」
『フィ、フィオ!無事だったの?!』
「心配かけてごめんなさい」
『よかったぁ』
本心から真沙緒は嬉しそうに答えた。
そして本題へ切り出す。
『あの要塞の弱点が…』
「わかったんでしょう?」
『ええ』
「そこで、相談なんだけど」
フェナはフィオと一緒に考えてことを言った。
真沙緒はそれを聞くと目を丸くした。
『で、でも!!それじゃ』
「大丈夫よ」
『はぁ・・・。まあこちらも同じようなことを考えていたけどね』
「でしょう?」
こんな情況の中で二人はくすくすと笑った。
フィオもつられて笑った。
こんな情況で何故この二人は笑えるのだろう?
「DDは任せて」
『DD?』
「自分で考えてよ、それぐらい」
『了解』
「真撃ちは?」
『この二人』
真沙緒がいうと同時に通信ウインドーに新たに二つの顔が現れた。
『私達です』
クリスがいう。
ロイスはただ、無言に真剣な眼差しでフェナを見ていた。
「たのんだわよ」
涼しい声でフェナはいう。
了解と二人は静かに答えた。
その雰囲気は少しさびしそうであった。
『ところで…』
「?」
『その格好どうしたの?』
「うん…」
フェナの体はまだ真っ赤になったままだった。
なにか悪いことを聞いてしまったのかと真沙緒はばつ悪そうな顔した。
気にしなくていい、とフェナはいう。
真沙緒はそれ以上追求するのは止めた。
今はそれを気にしているときではなかった。
「こちらはRRが到着しだい、攻撃を開始するから。それを合図に攻撃を開始して」
『わかったわ』
通信はそこで途絶えた。
フェナは母親の死を思い出してしまい、静かに涙を流した。
フィオはそれを指して優しくフェナを抱いた。
後ろの席からだったので、完全なものにはならなかったが、それでも。
自分がマザーを失った時の悲しみをやわらげようと以前フェナがしたように。
○
「ふう」
真沙緒は一つため息をすると水が入ったカンをとった。
生ぬるい水が喉を通り、喉を乾きを満たしていく。
要塞はゆっくりとだが、進行していた。
だが、あれだけの巨大なものだ。
移動に時間がかかる。
その時間を利用して生き残った艦隊は出来るだけ後退していた。
まだ戦える戦艦は後ろへ配置を取った。
理由は簡単。
TAだけではあれを攻略することができないからである。
と、いうわけで艦隊は後方から艦砲射撃で真沙緒達を援護することになった。
それだけではない。
物干し竿を装備したスターレイピアが待機していた。
そして戦艦の甲板には動ける、いや、立てるTran-ZSがいる。
長距離砲撃装備をしてだ。
作戦はこうである。
フェナが上から攻撃することで触手をある程度、いやもしかしたらすべて引きうけさせる。
そして艦砲射撃、Tran-ZSの攻撃を利用して、出来るだけ「異形の者」の胸にある宝珠への道を開ける。
そこに真沙緒達が突っ込むということである。
スターレイピアはその護衛。
ただ、護衛とはいっても、艦砲射撃が至らないところをカバーするところだが。
艦砲射撃は「異形の者」のシールドが塞ぐさかもしれないが、その時に発生する光と衝撃が目くらましになるかもしれない。
空はすでに暗くなったいた。
もう何時間戦っているのか真沙緒はわからなかった。
体がべたべたしてシャワーを浴びたいところだった。
ハインラインへ一度戻ったときは自機の装備の準備でゆっくり休むこともできなかった。
つかれた、というのが正直な気持ちだった。
そう思うと真沙緒は医療パケットを開けた。
そこにある箱を取り出し、中身を取り出した。
カプセルがいくつか手の平に落ちた。
それを水で体に流しこんだ。
だが、これはあくまでも体力の補充となっただけで、精神的な回復をしてくれない。
「うぐ・・・」
まずいものを飲みこむように真沙緒は我慢してカプセルを飲んだ。
早く柔らかいベッドで眠りたい。
コクピットではいくらなんでも疲れる。
それは誰だって思っているのかもしれない。
音を上げないのは、それが許される情況ではないからだった。
薬を飲んだ後、真沙緒は目をつぶった。
出来るだけ休もうと思ったからであろう。
フェナはRRと合流したのだろう。
しかし、攻撃をする気配を見せない。
恐らく自分と同じ状態なのだろう。
だが、それはちょっと違っていた。
「えーん!むずかしいよう!」
声はフィオのものであった。
「大丈夫。あなたならできるはずよ」
フェナがいう。
その声はフィオの後ろから聞こえていた。
何故なら、いま操縦席に座っているのはフィオだからだ。
フィオとフェナは席を入れ替えたのだ。
理由はフェナの体に疲れがどっとおそったからである。
7年も動いていなかった体だ。
急に動いてことから、フェナの体中の筋肉は悲鳴を上げていた。
それではまともに機体を動かせない。
そこで、フェナはフィオと位置を変えたのである。
もちろん一時的である。
とりあえず、最初の攻撃をフィオに任せることにしたフェナであった。
フィオの体が今の情況にあっていたからである。
奇襲をかけるなら、かなりの反応速度が必要となる。
今のフェナにそれはなかった。
シルフィードにナノマシンを注入してもらい、なんとかまともに動かせるようにしてもらうことにした。
しかし、それを待っているわけも行かない。
Tran-DSzはすでにRRと合流しており、各ハードポイントに装備を済ませていた。
レールガン、ミサイルポッド、ライフル。
これだけつけると機体はかなり重くなった。
Calamiteも反対した。
これだけの重装備だと回避が遅くなるからだ。
PSSが効かない触手の攻撃だと機動性に任せるしかない。
それで、いきなりフィオにTVSの使用と兵器の使い方をフィオに教えたのである。
始めはフィオは喜んで引きうけた。
しかし、シミュレーションをいくつか試した後、音を上げた。
無理もないのだが。
だが、時間がなかった。
フィオの判断に任せるしかない。
だから、今のTran-DSzはパターンをすべて排除した形動くことになった。
パターン入力は音声ですること、またはCalamiteの判断に任せることにした。
そこで、フィオとCalamiteの相性悪さが露見したのである。
フィオの動きが無茶と思えるものをCalamiteが排除していったのである。
もちろん「二人」の間で口論が起こる。
それを収めようとフェナも必死に働いた。
そして、こう決めたである。
本当に機体に危険が及んだときにCalamiteが動くと。
それで、フィオをシミュレーションを繰り返したのである。
真ん丸い月が夜空を照らしたときにそれがやっとまともになった。
「これでいくしかない…。フィオ、頼んだわよ」
「う、うん」
ちょっと顔を引きつられせたフィオが返事した。
顔はモニターをにらみつけたままである。
「少しの間だけだから…」
そういってフェナは急に襲ってきた睡魔に身を任せた。
フィオはため息をつくしかなかった。
たしかに任されるのは嬉しい。
しかし、シルフィードを使っていたときとはまったく別なシステムである。
不安がないことはない。
しばらく深呼吸をしてフィオは真沙緒に連絡をいれた。
『ふぃ、フィオ?!』
「これから攻撃を始めるので・・・」
『フェナはどうしたの?』
「寝てる・・・」
目を丸くした真沙緒。
それも無理もない。
説明してやりたかったが、その時間はなかった。
「フォローをよろしく!!」
『あ、ちょ、ちょっと!』
真沙緒が反論しようと手を伸ばしたが、フィオは通信を切った。
そして、大きく息を吸う。
「よし」
気を引き締め、コントロールステッキを握る。
「Calamite、よろしく!」
-Roger-
Calamiteの返事の声がした瞬間Tran-DSzはRRから切り離され、急降下で「異形の者」の頭部へと向かった。
数秒後、真っ暗な夜の空に無数の光が生まれた。
それは、最後の戦いへの狼煙と真沙緒に見えた。
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