Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 29

暖かい。
自分を包んである暖かさが心地よい。
自分がほしかったのはこれだった。
この柔らかい、暖かい気持ちだった。
まるで、ブランケットのように自分を包めるような。
そんな安心する暖かさである。
それをもっと自分に当てようと掴もうとする。
そして掴む。
いや、向こうから自分の手を掴む。
そして優しく自分を包む。
頭はやさしくなでられている。
そしてやさしく自分に一言いう声。

「ご苦労様」

その声でフィオは跳ね起きた。

「え?!あ・・・」

「気が付いた?」

フィオは今いる情況を確認しようと頭を降りまわした。
Tran-DSzのコクピット。
ハードポイントはすべて新しく設定されている。
ミサイルポッドを二つ。
レールガンを二つ。
バックパックはそのまま、あの兵器を使ったもの。
ガトリング砲二つ。
背中には大剣が収められている。
そして、ファンネルが腰に。
完璧な装備である。
そしていま自分がいるのは操縦席。
それも・・・フェナの足の上に。

「ママぁ・・」

泣きそうな声でフィオはフェナに抱きついた。
フェナは彼女に対し、力強く抱いてあげる。
フィオをフェナの胸にこすりつける。
よしよしとあやすように、フェナはそれに答える。
二人の間にはしばらく沈黙が訪れ、Tran-DSzのエンジン音しかコクピットに響かない。
だが、その沈黙は長くはゆるされないとフィオは分かっていた。
自分から離れる。

「ご苦労様、後はわたしに任せて」

「大丈夫なの?」

「シルフィードとあなたのおかげでなんとか」

「うん・・・」

フィオはもう一度フェナに抱きつき、思いっきり抱きつくと、コクピットハッチを開いた。
そして、後部の席に写る。
シルフィードがおかえりなさいというように、フィオの顔をなめた。

「くすぐったいよ、シル・・」

「ところで…」

「え?」

「ファンネルが半分なくなっているたけど・・・」

「え、あ、それは…」

-It was my decision-
(僕の判断でした)

あの時、触手が攻撃したときに、Calamiteはフェナから言いつけられた通りフィオと機体を守った。
腰についているファンネルが入った装甲を切り離し、それを触手に投げつけたである。
フェンネルにもエネルギーが充填されており、その遊爆で派手な爆発が起こったのである。
その衝撃でフィオは気を失い、Tran-DSzは制御をする者がいなくなった。
Calamiteはそこで、やられた振りをし、そのまま残骸の振りをしたのである。
器用なことをとフェナは思った。

「ありがとう」

-No Problem-

「Calamite!それって私だけが悪いように聞こえるじゃない!」

フィオは突っ込んだ。

-Of Course. You are the one that didn't  realize that we were being lured-
(当然です。おびき寄せられていることに気がつかなかったのがあなたですから)

「気付いていたなら、いってくれればよかったのに!」

-You were having too much fun to listen  to what I was saying-
(あなたは私の言うことが聞けないほど楽しんでましたから)

「ちょ、ちょっとぉ」

「本当なの?」

「だ、だって〜。攻撃を避けるに必死だったので」

-Yeah, Right!-
(はいはい)

「こ、この!!」

「はぁ、二人ともやめなさい。そういうときじゃないでしょう?」

フェナの一言で二人は押し黙った。
この情況で漫才をやっている二人の神経が問わられる。
でもフェナはなにもいわない。
ただ、頭が痛そうに額を押さえるだけであった。
Calamiteの人格を自由にしすぎたかな?とフェナは思ったぐらいである。
でも…・

「二人ともありがとう。後は私がやるから。Calamite、通常モードに移行!」

-Roger-

「しっかりと体を固定してね」

「う、うん」

「それじゃ、あれから行きますか」

Tran-DSzはその言葉で砂漠の上から跳ぶ。
RRが拾い、一体となった2機は決着をつけるため飛び立った。







「うう!このぉ!」

真沙緒は襲ってくる触手をなんとか交わし、ライフルでそれを破壊する。
しかし、情況は悪い。
ライフルの残弾が少なくなっている。
プラズマソードの接近戦では触手が切り落とした後にどうしても隙が生まれてしまう。
触手の格好の餌食になってしまうのだ。
それだけは出来ない。
だが…。
真沙緒はチラッとアーリーとグレナディアの機体を見る。
彼らは常に接近戦を行っていた。
グラプリングで鍛えたその腕はさすがといえる。

「もういいかげんに…!!」

またしても襲ってくる触手に真沙緒は叫んだ。
ライフルは間に合わない。
真沙緒は距離をとりながら、バルカン砲を撃つ。
触手は蜂の巣にされる。
だが、今度は後ろからの攻撃。
プラズマソードを引きぬき、攻撃をかわすと真沙緒は突っ込む。
触手は切られ、痙攣しならがおちていく。
次の攻撃を予測しようと真沙緒は自機を派手に動かす。
しかし、攻撃は来ない。
おかしいという気持ちが合った瞬間、大きな衝撃が機体を襲う。
倒したはずの触手が動き、そのままムチのように体当たりをしてきたのである。

「しまった!!」

警報が鳴り響く中、真沙緒は叫んだ。
次になにが起こるか分かっていたからである。
「異形の者」の首が空へと向けられ、その口から光の柱が放たれる。
上空に浮かんでいる輪に向かって。
そこで、拡散され、自分を貫くんだ。
そして自分は…。
そう確信し、真沙緒は来るべき衝撃を待った。
しかし・・・。

「?」

衝撃はいつまでもこない。
すぐに体制を治し、輪のほうに目をやる。
そこには、輪の中心をただ突きぬける光の柱があった。
光の柱が消えると輪が稲妻を放ち、崩壊した。
夜の空を照らす爆発の光の中を一つの点、赤い機体が現れた。







「このぉおお!!」

天使の輪を破壊した後、フェナはTran-DSzにすごいスピードで「異形の者」へと向かわせていた。
いや、突っ込ませていった。
その動きに気が付いた触手が攻撃を仕掛ける。
Tran-DSzはその攻撃を特別によけようとせず、そのまま触手の森へと突っ込んでいく。

「フィ、フィオ!」

無茶な動きを見せるTran-DSzに対し、真沙緒は通信をつなげた。
しかし、操縦席にはフィオではなく、フェナをみたとき、真沙緒は小さく苦笑した。
Tran-DSzの動きが速すぎるために、触手は対応出来ず、Tran-DSzがすでに通りすぎた空間を攻撃をしていた。
そして狙われていたTran-DSzはすでに触手の根元に到達していた。
爆発が起こると真沙緒はまっていたが、Tran−DSzはなにもせずにただ、触手の森を通りすぎる。
そして次の「群れ」へと向かう。

「なにぼやぼやしているの!早く胸を攻撃しなさい!」

「う、うん・・・でも・・」

触手がと言いたかったその時だ、Tran-DSzが通りすぎていった触手の動きがとまったのである。
そして、丁度Tran-DSzが通りすぎたところで触手がずれはじめた。
角度のある傷口がはっきりと見えた時にはすでに触手達は爆発を起こしていた。
それも同時に。
通りすぎていった瞬間にどうやってか、Tran-DSzは触手を切っていたのである。
それもメスのような切り口で。
次々と触手を倒すフェナは真沙緒が動かないことに苛立ちを感じる。

「はやく!!」

「わかった!ロイス!クリス!」

それに答え、ロイスとクリス機が再び目的の宝珠へと向かっていく。
真沙緒、グレナディア、アーリーは彼らの左右に付き、襲ってくる触手に応戦する。
時にはライフル、時にはプラズマソードで。
撃退した確認はせず、ただ、胸に向かっていく。
その間にTran-DSzは急激な上昇をかけた。
異形の者の上空に到達すると、そこから両手を前に重ねた。
そのれに答え、両肩についているレールガン発射体制に入る。

-Lock and Load!!-

Calamiteの言葉と共に、照準が異形の者の頭部へ合わされた。
次の瞬間、レールガンが連発され、ミサイルが無数に飛ぶ。
光線と光弾は頭部に直撃する。

『ごおおおおおおお!!』

咆哮みたいな声が聞こえた。
「異形の者」はその頭部の砲口をTran-DSzに向けると発射する。
動きが遅い上に、頭部が損傷していることからTran-DSzを完全にはずす。
フェナは容赦なく、連射を続ける。
だが、頭部が大きいだけに大したダメージにはならない。
目くらましになる程度だ。
その効果があるように見えた。
しかし、その時である。
巨大な影がTran-DSzを襲った。

「な?!」

本能的にフェナはコントロールボールを回した。
TVSがTran-DSzを浮かしていたスラスターの推力の方向を変える。
そのおかげでTran-DSzは後ろへさがり、巨大な影を避けた。
しかし、それを避けたと思ったらまた別の影がきた。
うなりを上げてくるその影の正体を確かめようと、フェナのそれを解析した。

「く!」

驚きの声ではない。
何故気がつかなかったのか、自分を呪う声である。

「真沙緒!気をつけてこいつ・・!」

「え?」

『きしゃあああ!!!』

また影が襲う。
人の手の形をした影が。
「異形の者」の手だ。
それはTran-DSzを掴もうとその手を振り回していた。
いままでは、島の中に収められていたのであろう。
Tran-DSzが触手をほとんど破壊したので、出てきたのだ。
巨大な物のはずなのに、腕はすばやく動く上にその大きさのため、攻撃してもなんの効果もない。

「こんなときに・・・・」

戦艦がいたらといいたかった。
しかし、戦艦はフィオから聞いた話で先ほど、全滅した。
したはずだった。
いや、生き残っていたとしても島のシールドが塞ぐだろう。

「く!」

その時、無数の光が襲ってきた。
異形の者の白い翼が攻撃してきたのである。
PSSが攻撃を塞ぐが、これだけの数を長く押さえることは出来ない。
上昇をかけ、その範囲から脱出する。
しかし、今度は黒い翼が球体を発射する。
一つ一つがミニブラックホールとも思えるほどの吸引力でTran-DSzを引きつける。
そのため、Tran-DSzの動きが鈍くなる。

「真沙緒!まだなの!?」

フェナは悲痛の叫びをあげながら、各武器で球体を破壊していった。
しかし、その隙に腕が振り下ろされた、
ばきゃん!
まるで、撃ち落された蝿のようにTran-DSzに巨大な衝撃が襲った。
Tran-DSzがはげしく回転し、地上へと投げ出された。
警報が鳴り響き、衝撃で発生された力にフェナは意識を一瞬飛ばされた。
フィオも悲鳴を上げることができなかった。
そして、大きな砂埃をあげ、Tran-DSzは地面にたたきつけられた。

「フェナぁ!!」

それを見た真沙緒は悲鳴を上げた。
しかし、今は自分の動きは止められない。
もう少しで目的の胸に到達するのである。
ロイスとクリス機はプラズマソードを構え攻撃体制に入っていた。
そして宝珠がもうすこしというところに到達したときだった。
グレナディアの機体が消えたのである。

「うわああああああああああ!!!」

Tran-DSzと同じように叩かれたのである。
彼女の機体も回転しながら地面へと向かっていった。
TAの腕、足、装甲を飛ばしながら。
そして、島から離れたところで砂埃を上げて地面に叩きつけられた。

「グレナディア!!!クリス!ロイス!引いて!!」

そう叫んだ真沙緒だが、クリスとロイスは方向を変えずにそのまま、異形の者へと向かっていった。
そして、二人が腰当たりにくると急上昇をかける。
一気に胸のところに到達し、二人は同時にプラズマソードを構えた。
それを異形の者の頭部がどうしようもなく見ている。
口砲を発射する準備がされる。

「二人ともにげて!!」

しかし、二人はすでに定められてい宝珠へと向かっていた。
そして、口砲がから光が生まれようとしたその瞬間、そこに光の矢が直撃した。
大爆発が起こる。
そこにさらに光が直撃していく。
溜まっていたエネルギーが遊爆し、異形のもの頭部は破壊された。
真沙緒はその矢が発射されたところを見た。
そこにはあらゆる所をひしゃまげたTran-DSzが立っていた。
その後方に戦艦が数隻とスターレイピアがいる。
彼らは容赦なく、連射と続けた。
その矢先が異形の者のあらゆるところに着弾する。

『ぐおおおお!』

異形の者は咆哮をあげ、艦隊に攻撃を加える。
次々と戦艦が沈んでいく。
しかし、その砲台だけは攻撃をし続けていった。
Tran-DSzもレールガンの銃口が焼かれるほど、攻撃をしつづける。
スターレイピアは独自に攻撃をし、ミサイルを無数に発射させる。
小さな爆発が「異形の者」を襲う。
それがうっとおしいのか、それは腕を振りつづける。
その結果スターレイピアがいくつか落とされたが、攻撃はやまない。
そして、その隙を利用してロイスとクリスは…。

「カオス!!」

「エンジェラン・・御免!!」

お互いのプラズマソードを構え、宝珠へと突っ込んだ。
その剣先が同時に黒と白の宝珠へと吸いこまれた。
稲妻がはしる。

「うおおおおおおおお!!!!」

「・・・・・・・!!」

深く突き刺さるプラズマソード。
その反動でロイスとクリスのTAの腕が消滅していく。
しかし、それと同時に宝珠にひびが広がっていった。
そして。
まぶゆい光が「異形の者」の胸で広がっていった。

『きしゃああああああああ!!!』

異形の者は苦しそうにもがき、腕を降りまわしす。
しかし、どうしようと胸から発せられた光は広がっていった。
やがて、砂漠の夜に太陽が現れた。


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