Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 31
白いまぶゆい光が収まりつつあった。
ゆっくりと消えていく光。
そこから「異形の者」がその姿は現していく。
しかし、それはもうすでに恐怖のものではなくなっていた。
薄れて行く光の中から姿を見せるものは黒いものとなっていた。
まるで、光熱で焼かれた木、木炭のように真っ黒になっている。
光が完全に消える。
異形の者は固まったまま動かない。
その姿は焼け死んだ人間が助けを求めるようにもがき死んだものと同じだった。
そして、その黒い塊となったそれは、音もなく地上へとゆっくりと落ちる。
大地を揺らせ、砂埃を立たせ地面にめり込んだ。
その反動で、その黒い塊は小さな破片を巻き散らせ始める。
黒い雪と思わせるように、ちらちらと黒いものが地上へ降り始めた。
それに合わせ、本体がゆっくりと崩れていく。
まずは天へ伸ばした手が。
そして腕。
やがて頭部、肩、胸、腰。
それがすべて音を立てずに崩れていく。
ついに、異形の者の「根」となった島全体が崩れていった。
いくら時間たったのか、そこに残ったのは黒い焼け後のようなものだった。
人の形も島の形もなく、ただ黒い墨の山となった。
しかし、戦いは終わっていない。
「な、なにこれ!」
真沙緒は自分の計器をみて声出した。
見る見る内にリアクターのパワーが上がっていくのである。
モニターにはD-MODEという文字が点滅している。
「まさか…」
アーリーは小さな声でいう。
前にこういうことがあった。
そしてその時は。
「アーリー君?」
「気をつけてください、これが出るってことは…」
「まさか…」
『そのまさかですよ』
その言葉と共に三機の上空に白い光が現れる。
そしてその中から、銀色の機体が姿を見せる。
それをみてアーリーの脳裏にあの模擬戦の時の風景がよみがえった。
ふわりとその機体、いや、キラードールが地上に舞い降りた。
「そんな…」
『何故、私が生きているか驚かれているようですね』
「…」
『ふふ、あなた達を、いえ、人間をすべて消すまで私は死ぬわけには行きません!この星を再び我々の手にするまで!!』
そういって銀色のキラードールがしかけた。
本能的に距離を取るアーリー、真沙緒とフェナ。
だが、そのキラードール「ルーン・デ・フォルチュン」の矢先は三人ではなく、上に向けられた。
その矢先にある戦艦がPDSとミサイルで弾幕を張る。
でも、それらは意とも簡単によけられ、次々と戦艦が落ちる。
「これ以上、やらせるものですか!」
真沙緒が彼を追って飛ぶ。
アーリーも同様飛び立つ。
その間にいくつかの戦艦のブリッジがつぶされていた。
ライフルを乱射する真沙緒とアーリー。
DMODEという謎の文字のおかげなのか、ライフルの光がいつものの数倍になっている。
その上何故か、切れ掛けていたエネルギーが回復していた。
しかし、攻撃はいとも簡単によけられる。
近づこうと真沙緒とアーリーが動く。
その反応速度が良くなっていることから、二人は驚きながらもステファンを狙う。
だが、いくら攻撃しても簡単によけられる。
「なんてすばやさなの!?」
『ふふふ、どうしました?』
長距離兵器では意味がないと判断した真沙緒はライフルを捨てる。
プラズマソードを構える。
格闘戦に持ちこむ。
プラズマソードを思いっきり振り上げ、Tran-ZSSはそのまま振り下ろした。
しかし、それはいとも簡単に止められてしまう。
そしてその真沙緒に意気に答えるように、「ルーン・デ・フォルチュン」は動いた。
プラズマソードを構えたTran-ZSSの腕を取り、後ろに周り比ね上げる。
警報が鳴り、真沙緒は動こうとするが反応はない。
「この!!」
真沙緒はそこでTran-ZSSの首を180度回した。
そこで、引きがねを引く。
Tran-ZSSの頭部のバルカン砲が火を吹く。
「真沙緒さん!」
アーリーがその隙を利用して突っ込んでくる。
それを待っていたかのように「ルーン・デ・フォルチュン」はバルカン砲に襲われているにもかかさず、相手いる腕を突き出す。
その手の平に光が溜まり、Tran-Dに向かって放たれる。
簡単によけられるはずだった。
しかし、放たれた光はある程度進むと拡散した。
光の雨をTran-Dはまともに受けてしまう。
「うわああ!!」
思いもしないことにアーリーはただやられる。
Tran−Dはバランスを崩し、地上へと向かって落ちる。
だが、DMODEのおかげセンサーもシャープになっているのか、機体の状態を把握した。
モニターに体制を整えさせるための姿勢制御を展示し、それを実行した。
バーニアとスラスターが火を噴き、地上へとゆっくりと着陸する。
アーリーは頭を振り、すぐにまた飛び立つ。
だが、その時にはすでに遅かった。
真沙緒のTran-ZSSの肩の関節が限界を達し、粉砕される。
ばぎ!と骨が砕かれるような音が響く。
Tran-ZSSはその反動で前に倒れる。
一瞬真沙緒の反応が遅れ、そこに「ルーン・デ・フォルチュン」は手をつきだし、再び手から光を放った。
真沙緒はとっさに残っているTran-ZSSの腕をコクピットの前かざした。
拡散した光が襲い、装甲が飛ぶ。
「きゃああ!」
真沙緒はそのまま重力に任せて自機を地上に落とす。
落ちていく、真沙緒の機体。
その変りといって感じで、赤い機体が飛び立つ。
「ステファン!!」
Tran-DSzが猛攻を掛ける。
ライフルが発射され、小さな光が飛び立つ。
『ふふふ・・・』
ステファンは待ってましたというように体制を整える。
ライフルの光をよける。
そして、襲ってくる小さな光を動かず攻撃を受ける。
傷一つつかない。
「ルーン・デ・フォルチュン」は肘に隠されているソニックブレイドをだし、襲っている小さな光に突入する。
そして、一瞬にして三つの爆発をおこした。
「ち!」
舌打ちをするフェナ。
ファンネルを落とされた。
ガトリング砲を乱射させる。
銃弾の雨が「ルーン・デ・フォルチュン」を襲う。
「このぉおお!!」
回転する銃身が目に止まらない速さで銃弾を吐き出し、その横からカートリッジが吐き出される。
どどどどどどどどどどどと重い音が続く。
Rune De Fortunは両手を前にかざし、銃弾を受ける。
いくらかして、からからからという乾いた音がした。
「た、たま切れ?!」
「やったの?!」
フィオが後ろの席で立ちあがる。
「フィオ!座ってなさい!」
とフェナが後ろへ一瞬振り向いた瞬間、煙の中からのっぺらぼうが現れた。
ガンと鈍いを音がし、Tran-DSzは体当たりを食らう。
「きゃああ!」
「きゃ!!あ!いた!うわ!!」
地上へ投げ出されるTran-DSz。
その反動で立っていたフィオが前に放り出され、フェナの上に落ちてしまう。
「う!フィ、フィオ」
とっさのことでフェナは姿勢制御が遅れる。
その隙を見逃さず、ステファンは追い討ちを入れる。
「ルーン・デ・フォルチュン」の手から光が放たれ、拡散する。
PSSがそれを止める。
しかし、衝撃がフィオを体をコクピット内で降りまわした。
「あ、きゃ!!」
彼女の手がコントロールボールを握っているフェナの手に重なり、変なパターンを入力させてしまう。
それがTVSを変な方向に動かす。
Tran-DSzがそのおかげで回転しだす。
「ううううう!!」
急なことでフェナも対応しきれない。
しかし、そのおかげなのか、次々から襲ってくる、「ルーン・デ・フォルチュン」の攻撃をTran-DSzはよける。
-What the hell are you two doing?!-
(あんたらいったいなにをやってるんだ!)
いままで黙っていたCalamiteが飽きれ、姿勢制御を行う。
バーニアとTVSの連携でTran−DSzはなんとか荒々しく地上に着陸した。
そこで、すべての動きが止まった。
「フィオ!」
「ご、ごめん!!」
二人はもつれ合い、なんとかフィオを起こす。
結果として、フィオはフェナの膝の上に座ることになった。
そして、フィオはそこから動こうとしない。
代わりに、フェナの腰の上にちゃっかり座る。
「ちょっと…」
「いやだ」
後ろへ戻りなさいとフェナは言いたいんだろうが、フィオはそれを拒否した。
「フィオ!そんなわがまま!」
「私も戦いたいもん!」
「もう!戻りなさい!」
「いやだ!一緒にいるの!」
コクピットでは一緒にいることになるだろう。
とフェナは言いたかった。
「フィ…」
いいかげんにしなさい!と叫ぼうとしたときである。
フィオはいきなり、自分の手をフェナの手に重ね、動かす。
フェナが反応する前にフィオはパターンを入力していた。
Tran-DSzが背中に装備していた大剣を引きぬく。
そして次の瞬間、眩しい光と衝撃がTran-DSzが襲う。
ばりばりと稲妻が走る。
その先に、「ルーン・デ・フォルチュン」が立っていた。
ソードを振り降ろした体制で。
『こんなときに二人でなにをやっているんですか?』
冷たい声がする。
「この!」
フィオはコントロールステッキを前に倒そうとする。
Tran-DSzがそれに答え、「ルーン・デ・フォルチュン」のソードを押し戻す。
押し合いになり、大剣を覆う光が「ルーン・デ・フォルチュン」のソードの光とぶつかり合う。
ぎしぎしと二機の押し合いが続く。
どれぐらいそれが続いたかわからない。
ビームの反発力が限界を足したのか、両機がその威力に放される。
フェナはその隙を利用して距離を取った。
フィオに立たせ、自分の体を縛っているベルトをはずす。
それをめいっぱい伸ばすとフィオに座らせ、二人を縛る。
そして無言にコントロールを握る。
フィオは驚き、どうしようかとあたふたしていた。
その顔にはもちろん笑顔がある。
「ほら!さっさと手を重ねる!」
「う、うん」
それ以上二人は言わない。
いう必要がないのだろう。
一緒に戦いたいというフィオの言葉にこれが正解なのだろう。
ちょっとフェナに苦しい体制だが。
うまく行くかもしれないとフェナは思った。
ちょっと頭が痛くなったが。
しかし、それも一瞬、すぐに目を敵に向けた。
相手も動かない。
「真沙緒、アーリー、聞こえる?」
『なんとか…』
『はい』
ちょっと離れたところで、二人の機体が見える。
真沙緒のTran-ZSSは腕を一本無くしており、装甲があちこち剥ぎ取られていた。
アーリーのTran-Dのほうは装甲がないところはあったが、きわめて無事のほうである。
「アーリー、真沙緒を連れて離れなさい」
『え?』
『フェナ!まさか一人で!』
「いまのあなた達には満足に戦えるわけがないわ」
『でも!』
『私はいやだからね!』
まったくこの二人は。
フェナは心の中でそう思った。
「かってにしなさい」
『させてもらいます』
『させてもらうね』
責任はもたないからね、とフェナは言わなかった。
フィオはくすくすと笑った。
こんな情況で、なんでこんなにみんな緊張感がないのだろう。
そう思ってしまう。
いや、あるからこそ、軽いことがいえるのだろうか?
フェナは視線を目の前の敵に目を戻した。
彼はこっちからの攻撃を待っているのか、ソードを構えたまま立っている。
いままで彼の行動からみて信じられないことではあったが、今はそれを気にしているわけではない。
次に目を上に向かせる。
生き残った戦艦は引き上げていた。
いったい何をしにきたんだろう、と聞きたくなる。
もしかしたら、この戦いの結末を待ってそれから、生き残ったどちらを捕獲するつもりなのだろう。
でもフェナにはステファンに負けるつもりも、上に艦隊につかまるつもりもない。
ただ・・・・。
『いつまで待たせるつもりですか?』
「ふん、あなたらしくもない」
『ふふふ、これでも私は一応紳士ですから』
なにが!とフィオは叫んだが、それは相手に通じなかった。
フェナはそこであるパターンを入力し始めた。
長距離兵器は当たらない。
ならば。
フェナはハードポイントを排除するパターンを入力する。
ばん!と火薬の音に似たものがし、すべてハードポイントに装備されていた兵器がはずされた。
空になったガトリング砲、中身がなくなりただいらぬ重量となっているフェンネルを収めていた装甲が地面に放り出された。
それらが地面に落ちたとき、それがまるで最後のラウンドのゴング音として三機のTAが一機のキラードールが動いた。
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