Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 5
「く〜ん」
ミアが入ってきたとき、シルフィードは小さな声をあげた。
体中は包帯で巻かれており、ほとんど身動きが取れない。
全身に火傷を負ってしまったので、それは無理もなかった。
フェイスキャノンのため、彼の出入り口がふさがれ、出る出られなった彼を開放したのはミアとCalamiteが搭載されているTran-DSZであった。
Calamiteは指先にあった、レーザーでもろくなった装甲を切りだし、ミアがシルフィードを開放した。
そのときのシルフィードには毛はなく、裸も同然ではあったが、肌が赤く焼かれていたため、ミアが彼に触れた瞬間悲鳴を上げた。
しかし、放っておくわけにはいかず、ミアは大至急シルフィードを治療室につれていったのである。
それに人間を治療する治療室の人が悲鳴をあげたに違いないが、最善を尽くしてくれた。
「気分・・どう?」
ミアは恐る恐るシルフィードにたずねた。
「く〜ん」
目だけをミアに向け、シルフィードはまた声をあげた。
可愛そうにとミアは思うが、それは傷だけのためではない。
残骸の中にフィオはいなかった。
彼女の存在を確認するもなかった。
つまり、行方不明である。
跡形もなく、消されたという可能性はあるが、それを立証する証拠がない。
そうなると、ほかに可能性はでてくるがミアはそれを考えたくなかった。
シルフィードはそのために元気がないんであろう。
そんなときどうしたらいいんだろう?とミアは思う。
「どうだ?」
声に反応し、振りかえったミアの前にアーリーがいた。
寝ていないのか、目の下に熊ができている。
その顔がおかしいのか、ミアはくすくすと笑い出した。
「おいおい」
「だあってぇ」
ミアはそのままもう少し笑いつづけたが、すぐに止める。
笑える状況ではないとわかっていたからである。
「寝てないの?」
ミアの問いにアーリーはため息で答えた。
どうやら、シュミレーターの中で夜をすごしたようだ。
「どうしても勝てないんだ・・・」
そういいながら、アーリーは壁にもたれかかると目をつぶった。
「うん・・・」
何をさしているのか、ミアはわかっていてそれしか言えない。
最悪の状態といえばこんなことだろうかと、二人は同時におもう。
キラードールがある地域で多発に現れている。
対応できる自分に使える機体はなく、フェナ、真沙緒、フィリスは絶対安静の命が下されていた。
腹立だしいことではあるが、いまできることはただ待つのみ。
「艦隊がいくつが月から発進したそうだ」
アーリーは目を瞑ったままミアにいう。
なんのために?と聞くほどミアは馬鹿ではない。
しかし、それで持つ<だろうか?という質問を聞いてしまう自分がいやになるとミアは心の中でつぶやいた。
「どうするの?」
ミアの質問にアーリーは一度目をあけた。
「待つしかないだろう?眠り姫がおきるのを」
○
暗い部屋の窓の向こうに数日前にはで壊された町並みが見えていた。
男は静かにそれを眺めていたが、目は笑っていた。
まるで、あざ笑っているのかようで、普通の人がみたら怒るだろう。
しかし、ここでは怒る人はいない、いや、許されていないといったほうがいいだろうか。
チャイムがなり、部屋のドアが静かに開き、二人の男女が入室した。
「お呼びでしょうか?」
女性の声がまず部屋の中に響いた。
窓のそばに立っていた男はゆっくりと二人の方へと向き直ると口を開いた。
「ああ、おまえたちにはちょっとやってもらいたいことが」
なんでしょうか?いう顔をする二人だが、あんまりうれしそうな顔ではない。
それを読み取ったのか男は苦笑し、机にすわりラップトップを操作した。
瞬時に映像が空中に浮かび上がり、二人にある人物の画像が現れた。
「こいつを始末してもらいたい」
二人はその映像をみてナにも言わない。
重い沈黙がしばらく、部屋を支配した。
「よろしいんですか?」
女性が男に尋ねる。
「ああ、こいつは後先を考えずにことを急ぎすぎた。それにわれわれのことが公になる可能性もある」
その言葉に女性と一緒にはいってきた男が鼻で笑った。
なにか不服かね?という顔で男はもう一人に視線を移した。
しかし、男はなにもいわず、その視線を跳ね返した。
「わかりました・・・」
と女性は観念したようにいう。
この仕事をやりたくないことが声でわかる。
「まあ、そんな顔をするな。カオスとエンジェランの使用を許可する。すみやかに始末してくれ」
そういうと机の男は映像を消した。
「それだけか?」
と立っている男は尋ねた。
「うん?」
「彼だけの始末でいいのか?俺から見たら、あちらさんの方が脅威だと思うが?」
その言葉に机の男は再び苦笑を上げた。
「いや、そちらの方は君が心配する必要はない」
「そうですか」
という一言で男は部屋の扉へ向かった。
「失礼します」
女性も机の男に一礼すると扉へと向かった。
机の男はなにもいわず、二人の背中が扉の向こうに消えるまで見つづけた。
二人が出ていき、扉がしまると同時にかちゃんと重々しい音が部屋に響く。
「ふふふ。よろしく頼むよ?死神君」
廊下を出た二人は無言に進んだ。
「ねえ・・」
口をあけたのは女性のほうだった。
癖なのか、髪をいじりながら彼女は男に声をかけた。
しかし、彼は無言に進むだけである。
「ねえったら!」
どこか遠い国にいっていたのか、男はゆっくりと振り向いた。
「本当にやるの?」
「ああ」
そっけない答えに女性は頬と膨らませる。
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「私がいやだと言ったら?」
「・・・・・・」
男は黙ってしまう。
この女性に頭は上がらないのか彼は困った顔で彼女をみた。
「もういやなの・・・こんな生活。嫌いでもない人を嫌って、それで彼らを犠牲にして・・・」
彼女はうつむき、肩を震わしだした。
なにかに耐えつづけ、それに今押しつぶされる寸前まできているという感じである。
「もう、人が死んでいくのを見るのはいやなの・・・」
昔の見た光景が彼女の目に浮かび上がった。
燃えている町、そして虫みたいつぶされ錯乱している死体、なにかが焼かれているいやなにおい。
遠い昔のことのはずなのに、昨日だったように覚えている。
そんな彼女の姿を見るのがつらくなり、男は彼女を抱き寄せた。
「これが最後だ・・・」
「え?」
今彼が言ったことに驚き、女性は彼の顔を見上げた。
すぐ近くにあった、彼の顔の表情はいつもとちがい、無表情のものではなく、真剣なものであった。
「いままで、つらい想いをさせてすまない。これが終わったら、二人でどこか遠いところに行こう」
その言葉に女性の目から涙がぽろぽろと流れはじめた。
聞きたかった言葉がやっと彼から出たのであった。
うれしさのあまり、彼女は彼の首に腕をまわし強く抱きしめた。
男をはそれに答え強く抱きしめると彼女の顔を両手に収め、指で涙をぬぐい、もう一度彼女の顔を覗きこんだ。
そしてまるで自然の法則にしたがったかのように、二人はゆっくりと唇を重ねた。
○
ラグナス・セカンドファクトリー。
今は夜となり、暗くなったここにひとつの人影が廊下を進んでいた。
しかし、動きが少しおかしい。
廊下の中心を歩かず、壁に沿って、よろよろと進んでいるのである。
腰は曲がっており、足取りはふらふらしていた。
「いかなきゃ・・・・、いかなきゃ・・・」
人影はその言葉をただ続けてつぶやき進んでいく。
「フェナ・・・」
人影の後ろから彼女を呼ぶ声がした。
影の中から、ゆっくりと真沙緒が姿をあらわした。
しかし、フェナは答えず、あるところにへ向おうとする。
「どこにいくの?」
真沙尾の次の問いにもフェナは答えず、ただ独り言をつぶやきつづけていた。
まるで、真沙緒の存在に気がついていないようである。
真沙緒はフェナに近づき肩に手をおき、止めようとした。
しかし、フェナはそれをも無視、進もうとする。
「フェナ!いいかげんに・・」
「放して!!!いかなきゃ、あの子を、フィオを助けに・・」
フェナは叫びながら真沙緒の手を振りはらおうとするが、弱気っているフェナの腕にそんな力はない。
「放して・・いかなきゃ・・・」
頭を左右に揺らしながら、フェナは抵抗する。
それはまるで、中毒者が幻影を見ているように感じられる。
「フェナ、気持ちはわかるけど、今は・・・」
「うるさい!!放して!私は・・・!」
どん!とフェナはありたけの力で真沙緒を突き飛ばした。
そのため、真沙緒は背中を壁に打たせた。
「う!」
真沙尾は表情を歪まし、腕を背中へまわす。
どうやら、傷は完治していないようで、痛みが生まれた。
「今、行くからね・・まってて・・・」
フェナはまだ進もうとする、しかし真沙緒を突き飛ばしたせいなのか、体力を使ってしまい、今は廊下の上を這いずる形になっていた。
哀れな姿としか言えない。
そんな彼女を見るに耐えない真沙緒は隠し持っていた、医療スプレーを取り出した。
痛みを耐えながら、フェナに近づき真沙緒はそれをフェナの首に当てた。
「ごめんね。もう少しがまんして・・」
ぷしゅという乾いた音がし、小さなキャ二スターに入っていた液体はフェナの体の中に送りこまれた。
フェナは声もあげることができず、目を瞑り、深い眠りへと入った。
真沙緒はそれを確認すると、もうひとつ小さなものを取り出した。
「ミアちゃん、フェナを見つけたわ。うん、ファクトリーの一階の奥といったらわかるわね。そう・・・うん。あ、それと車イスは二つもってきてね・・」
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