Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 6
放たれた槍は空を駆け巡った。
まばゆい光を放つそれはまるで神が愚民へと向けた物と見える。
そして、その姿に答えるように槍は定められた標的に命中した。
防御するはずだったシールドはなかったかのように槍は突き抜け、エクセル級の戦艦のブリッジに直撃した。
しかし、光はそこで止まらず、そのまま後方の空へと消えていった。
ブリッジを撃ち抜かれ、制御を失ったエクセル級の戦艦はゆっくりと砂漠へと落ち、砂の中へとその身をうずめた。
だが、キラードールはそこで攻撃を止めず、追い討ちを放った。
放たれた光は船体へと吸い込まれていき、船内から爆発が起こったのか船体は風船のごとく破裂した。
「メルビル撃沈されました!!」
旗艦であるアインシュタイン級の戦艦のブリッジでオペレーターの悲鳴に近い報告が響いた。
艦長席に座っている男はぐっと拳を握り、それを振り落とすしかできない。
おそらくブリッジのほかの人間も同じ想いであったろう。
押される艦隊はゆっくりと引いていくにつれ、キラードールの群れが攻め込んでくる。
戦艦の艦砲射撃、キラードールのフェイスキャノンとTAが発射するライフルのビームのせいで砂漠の砂の上には無数とも言える光が駆け巡っていた。
キラードール、戦艦、TAが次々と破壊されていく。
しかし、キラードールはその中に突っ込んでいき、とうとう指揮艦にたどりつく。
懐に入るとジャンプをし、その一体はブリッジに向かってフィエスキャノンを放った。
その動きにPDSがついていかず、ブリッジの乗組員は悲鳴を上げる前にこの世から消された。
制御を失った戦艦はゆっくりと地上に落ちる。
爆発はせずともPDSは撃ちつづけ、キラードールを蜂の巣にした。
「旗艦アリゾナが撃沈されました!!指揮はこちらにまわされます!」
駆逐艦フユツキのブリッジではその報告と共に重い空気の上にさらにプレッシャーがかかった。
残された戦艦はただ生き残ることを考え、TAを自分の周りに配置しがむしゃらに主砲をうっている。
フユツキの艦長は親指の爪を噛みながらどうするか迷っていた。
彼の目の前ではキラードールが迫っており、味方のTAは次々と破壊されていく。
この戦場にいても、退いてもどのみち、キラードールはせめてくるだろう。
どちらをとる?
援軍をまって、このままやられるか、退いて少しだけ生き延びるか。
答えは決まっている。
市民を巻き込むわけにはいかない。
軍は市民を守るためにある。
生き延びるためとはいえ、その守るべき市民を巻き込むわけにはいかない。
それなら自分たちが盾になるしかない。
「全艦に告ぐ!!デルタフォーメーションを組みTAは各艦の防衛にあたれ!我が艦隊はキラードールの進行をなんとしても止めるのだ!」
重くつめられた空気にはげしい風が拭き、新しい空気と入れ替えたのか艦隊とTAの応対は効率よく陣形を組んだ。
そのため、戦艦の砲塔とTAに発射されるビームの範囲が狭くなっていった。
自分の類以外のものはすべて敵であるということを組込まれているキラードールはそのままその陣形に突っ込んでいき撃退されていった。
しかし現れてから撃退されたものの変わりの者が現れ、それはさらに状況に応じるものが生まれていく。
撃退するにつれ、次に現れ陣形に対する対応が変わっていった。
フユツキの艦長はキラードールの対応の仕方に気がついていた。
それで、キラードールが状況に応じ初めていることがわかると艦隊の陣形を変えた。
時間はこれである程度かせげたが、次の問題が出た。
長時間の戦闘で乗組員およびTAのパイロットに負担をかけはじめていた。
フユツキの艦長もそれを身を感じとった。
しかし、ブリッジクルーを変えてもこの状況で自分が休むわけにはいかなかった。
そしてキラードールの対応。
これが想像以上に早かった。
陣形を変えてもキラードールはすぐに対応してきた。
「ぐ!」
またも衝撃がブリッジをゆるがし、TAまたは戦艦が落とされたことを伝えた。
キラードールの対応、乗組員およびパイロットの疲労が陣形を乱し始めた。
そのせいで隙が生じ、それをキラードールが逃すさず、一機が突っ込んできた。
そしてフユツキのブリッジに迫った。
ブリッジクルーが悲鳴をあげ、終わりが来たと悟ったときであった。
目の前に迫ってきているキラードールは眩しい光に飲み込まれて消えたのである。
「な、なんだ?!」
と叫んだとき、視界は再び眩しい光に襲われた。
無数の小さな矢が雨のようにキラードールの群れに襲い掛かり一斉に破壊した。
しかし、味方の戦艦とTAに被害はない。
なにがおこったのかわからず、うろたえている艦隊の上に二つの影が現れた。
「ふん、よくがんばったといいたいところだな」
「そうね、でもよく彼らを巻き込まずキラードールをやったわね」
まるで悪魔に見える真っ黒の機体のそばに天使のように羽を伸ばした機体が艦隊を見下ろしている。
「ロイス、本当にこれで終わりだよね?」
白い羽を伸ばした機体、エンジェランのパイロットは彼女の機体のそばにいる黒い翼を伸ばしているカオスの機体のパイロットに小さな声で聞いた。
「ああ、終わりさ。いや、俺が終わらせる。クリス、そんなにおれを信じられないのか?」
クリスと呼ばれたエンジェランのパイロットはゆっくりと首を、いやエンジェランの首を左右に振った。
それに答え、カオスの首が小さく縦に動くと背中に搭載されている羽を広げ、巨大なスラスターを吹かしキラードールの群れに突っ込んでいった。
エンジェランもその羽を伸ばし、カオスの後をおう。
次の瞬間砂漠の上で無数のオレンジ色の花が咲いた。
○
「ふふふ・・・」
『上』で行われている戦闘をステファンは肩を震わしながら笑って見ていた。
スクリーンに現れていたのは黒と白い機影だった。
「予定通りきてくれましたか、あの方もお人が悪い」
笑いがとまらないのか、ステファンはさらにはげしく肩を震わし、声が大きくなっていった。
その時、一つの人影が彼の背後に現れた。
「なにがそんなにおかしい?」
深い澄んだ、しかし幼さを感じさせる声が発せられた。
「ふふふふ・・・この状況だよ。面白いじゃないか。私の計画どおりにことは進んでいる」
ステファンはそういいながら人影に向き直るとその人物の髪に手を伸ばした。
「私は関係ない・・・。私は・・・」
「ふふ、わかっているよ」
といいながらステファンはその女性を引き寄せた。
「あ・・・」
そしていきなり唇を押し付ける。
「ん、んん!!」
女性は抵抗をするが、それも一瞬、すぐに進入しようとする彼の舌を受け入れ、自らの舌を絡ませた。
ステファンの手は彼女の長い髪をもてあそび、次第に彼女の体をなではじめた。
唇を開放し、ステファンはすぐにそれを彼女の首に滑らせた。
「あ・・ああ・・・」
声をあげないように女性は下唇を噛んだ。
体をしびれさせる快感のせいで、彼女はステファンにしがみついた。
ステファンの片手は彼女の胸をもみ、もう片方は下へ下へと滑っていった。
「は、はぁ・・はぁ」
体を襲う波のせいで女性の息は次第にはげしくなっていく、ステファンにしがみ付く指に力がこもる。
その反応を楽しんでいるのかステファンは彼女の弱点をせめていった。
「あ、い、いや・・・」
抵抗の声をあげてもそれはそうではなく、彼女の腕はステファンの頭を押さえつけた。
やがて、奈落に落ちる悲鳴が暗い通路の中で響いた。
○
フェナはまた悲鳴をあげながら飛びおきた。
体に悪感が走る。
自分の体を抱き、震えを押さえようとするが体がそれを許さない。
「おねがい・・とまって・・・」
時間が過ぎるにつれ、震えはとまっていったがいやな感触が体にのこされていた。
ふいと、フェナの視線は隣に向けられた。
しかし、そこにねているはずのフィオの姿はない。
彼女が行方不明になってからどれぐらいだったのだろうかとフェナはフィオの「場所」を見つめた。
もうかなりの時間がたっているかのように感じ、フェナの胸になにかぽっくり空いた感覚を覚えていた。
胸を押さえ、流れだしそうな涙を押さえる。
狂わしいほどに不安が生まれ、最近みる夢のせいでそれがさらに不安を掻き立てる。
この前自分が直りかけていないのに、格納庫に向かおうとしたことが不安によるものだとフェナは自覚していた。
その不安を押さえるため、疲れ果てるほどTRAN-DSZの調整していたのである。
しかし、夢は毎晩のように襲ってきた。
「フィオ・・・」
フェナは冷たい、フィオの場所をなでると目を細めた。
そして、起き上がると体をいじってみる。
痛みは感じず、完治したことを確認すると、彼女は寝間着の紐をゆるめた。
パサっというやらわかい音を発しながら寝間着は床におちた。
フェナは部屋のクローゼットに向かい開けるとパイロットスーツを取り出し、着用しはじめた。
「Will, Calamite,準備いいわね?」
髪をまとめながらフェナは二つのAIに語りかけた。
-Yes-
(はい)
-But Of Course-
(当たり前だ)
女性と男性の合成声が返事をする。
-There is only one problem-
(問題が一つ残ってます)
Willが切り出した。
なに?とフェナはパイロットスーツの手袋をしながら問い返した。
-The Tactical Weapon is very unstable. I advise a little more time for adjustments-
(戦術兵器が非常に不安定です。調整のためにもう少し時間をかけることを勧めます)
Willは落ち着いた声で報告した。
それに対してフェナはなにもいわず、ほかには?としか聞かない。
ほかのシステムには異常なしと答えられる。
本当ならもう少し時間をかけたいが、体がそれを許さない。
なにか悪い予感を感じ、フェナはすぐにフィオを探しにいきたかったのである。
幸い、Willがフェナの腕に付いているブレスレットを解析し、それを探知器として使えるようにTRAN-DSZのセンサーを調整したのだ。
フィオの場所はもうすでにわかっていた。
しかし、そこはいま防衛軍とキラードールが戦闘をしている場所でもある。
それが、フェナに悪い予感を感じさせていたのであった。
とにかく行くしかない、そしていますぐに。
パイロットスーツの最後の体あわせをすませるとフェナはもう一つのものをクローゼットから取り出した。
黒い、実弾を発射させる、銃である。
かつて、母親が自分を守るために使ったものだ。
弾薬を確認し、セフティーを掛けるとフェナはそれを腰についているホルスターに収めた。
部屋の扉をあけ、出るが一度フェナはその部屋の中を最後に見渡した。
この一月以上自分がいたところである。
果たしてここに戻ってくるのだろうか?という質問が脳裏を突き抜けたが、フェナはその答えを出さずに扉をしめた。
「くーん」
という犬の声が扉を出たフェナを迎えた。
「シルフィード・・・・」
フェナは別に驚きもせず、方膝つくと彼をやさしくなでた。
彼もすっかり回復し、毛も前ように元にもどっているかのように見えたがところどころはげたところが残っている。
「いこっか?」
彼をつれていかないでフィオなんか救いだせないとフェナはわかっていた。
いや、連れていかなかったらフィオが怒るだろう。
「わん!」
とシルフィードは吠えるとフェナを先立って格納庫へ向かった。
フェナはもう一度さっきしめた扉をみると駆け足でシルフィードの後を追った。
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