Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 7

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Password Accepted

Initiating Start Sequence...

Evetoll 012 "Tran-DS Zwei"
Fairlance[E_tron]System Activated
"Calamite" AI Support System Activated
"Silpheed" Sub Weapon Support System Activated

Reactor................Online
Life Support...........Online
Sensors................Online
Weapons................Online
"RR"Docking System.....Online
All Systems Nominal

Loading Weapon and Attack Pattern Data...Complete
前より長くなった起動シークエンスを終えたTRAN-DSzは鈍い音を発しはじめた。
音が違うのはすぐにわかる。
普通ならうるさいエンジンのスタート音が格納庫の空気を揺るがすはずだが、TRAN-DSzのは揺るがすというより穏やかな波を発したという感じある。
エンジンが暖まった時点でTran-DSzにセンサーに光が入った。
TAベッドから動き出したTran-DSzはエレベーターのところまで歩んだ。
そこには先客がいた。
Tran-DSzと同じように黒と赤に塗装されていたそれには翼がついていた。
強力なエンジンが二期搭載されており、そのほかに突き出ている兵器が見える。
しかしこの機体の一番大きな特徴といえばそのしたにある二つの収納庫であろう。
そしてその間にあるぽっかりと開いている空間。
なにかが足りないという感じである。

「わん!」

はやく行こうよ、とでもいっているのかシルフィードが吠えた。

「はいはい、おとなしくそこにいてね」

フェナは後部席に見えるところへ振り替えながらいった。

-Opening Outer Doors-

Willが隔壁を開けると報告した。
重々しい音ともに、Tran-DSZの頭上にある屋根がゆっくりと開いていった。
月明かりが差込、Tran-DSzを銀色の光で照らした。
そこからエレベーターがあがろうとしたときであった、

「フェナさん!」

フィリスの声が格納庫で響いたのである。
Tran-DSZの頭部は少し動き、彼女をその目で見ろおろした。
フィリスだけではない、アーリー、ミア、真沙緒、リックまでいた。

「どこへいくの?という馬鹿な質問はしないけど・・・」

真沙緒は腕を組みあきれた様子でTran-DSZを見上げた。

「一人でってのはひどいんじゃない?」

怒っている。
目をみればすぐにわかる。
彼女はすでにパイロットスーツに着替えており、すぐにでも出撃できる用意をすましていた。
アーリーも着替えており、フィリス、ミア、リックはTeam Satelliteの作業服に着替えていた。

「黙っていく分けではなかったけど?」

フェナはちょっと飽きれぎみで答えた。

「これがどこの黙っていかないよ!」

真沙緒は一つの液晶メッセージパレットを放り投げた。

「あたしたちはあなたにとってなんなの?!Tran-Dというものに関わりはじめてから私たちは危険な目に会うばかりじゃない!いいかげん説明してほしいわよ。関係ない人も何人も・・・!!」

「真沙緒さん・・・」

本気で切れかけて、いや切れた真沙緒の言葉をフィリスが遮った。

「お姉様・・・あなたが乗っている機体・・・Tran-Dの元になったものを改良したものですね?」

フィリスの言葉にみんな目を丸くした。
Tran-Dのことではなく、フィリスとフェナが血縁のものであることについてだろう。

「ちがうわ。私が再設計したものよ。でもTran-Dの元になったといったらまちがいなわね・・キラードールが」

そこにいる人物は再び驚かされた。
TAの元素になったがキラードール。

「そんな、では・・!!」

「その答えはあの男が一番よくわかっているはずよ。彼にきけば?」

フェナの言葉にある程度憎しみがこもった声で答える。
フィリスもその口調にむっとする。
誰をさしているのかフィリスにはわかったが、「あの男」といわれたのが気に入らない。
しかし、フィリスがなにか言う前にフェナはRRに命令をだした。
巨大な翼についている強力なスラスターが吹き出した。
ゆっくりとそれがあがるといっきに高度をあげた。

「フェナ!」

真沙緒は発進しようとするフェナに叫んだ。

「まだ質問に答えてもらってないわよ!!」

「答えは前からだしているのに・・・Willみせてあげて」

その言葉に格納庫のもう一つの扉が開いた。
そこには、フェナのほどの大きさではないが翼が一機とTAが二機あった。

「こ、これは!!」

アーリーは姿を変えた自分の機体をみて驚いた。
真沙緒も驚いていた。

「先にいっているわよ」

フェナはそういうとTran-DSzをかがめさせ、いっきにジャンプさせた。
ラグナス・セカンドファクトリーの上空に待機していたRRはその行動に対し設定された動きをし、ある赤い光を発した。
Tran-DSZのメインセンサーがそれを捕らえ、推力の方向をTVS(Thrust Vectoring System)で姿勢を変えた。
やがて翼とTran-DSZは合体した。

-Docking Complete-
(ドッキング完了)

Calamiteの報告とともに操縦系統はすべてフェナにまわされた。
ブレスレットから発せられている信号から指定された場所の位置を確認するとフェナは推力を全開にいれた。
RRのエンジンが強力な推力を発し、Tran-DSZともどもその姿をトリエスタの夜空から消した。



フェナが発進した直後、真沙緒はすぐに自分の機体に滑り込み、起動させていた。
それに答え、Tran-DSzの翼の設計テストに使われたスターレイピアを改良した翼は下方のスラスターに火を入れた。
「真沙緒さん!!」

フィリスは真沙緒のTran-ZSに叫んだ。

「私はフェナを追うわ。フィリスさんはその後にきてください」

「しかし!!」

「フェナはすべてを考えた後、このようにしたのよ」

「え?」

「第一陣は彼女、それから私、そして最後にアーリー君・・」

真沙緒はフェナがいかにも自分より一歩さきに考えていることを感じ取った。

「それじゃ、先に行きます、アーリー君?」

「あ、は、はい」

アーリーは生まれ変わった自分の機体を理解するために混乱していた。

「まってるわよ」

「はい」

その返事とともに真沙緒はフェナと同じように発進した。
合体をすませ、フェナと同様夜空に姿を消した。
それを見届けた後、フィリスはなにか決心したのか拳に力を入れた。
フェナと真沙緒の後を追うには、ライズのような地上で移動するTAキャリアではだめであることはわかっていた。
となるとTA輸送ヘリか、ライズほどでもなくてもTAを運べる高速輸送機が必要だ。
たしかそれを一度みた覚えがあった。
ライズがとまっている格納庫の側にあった少々不格好な飛行機。

「リックさん、ちょっといっしょにきていただけませんか?」

「ああ・・」

何をしようとしているのか理解したのか、リックは素直にフィリスの後についていった。
取り残されたミアはアーリーの機体Tran-Dに近づいた。
ちょっと無理な改造を施したように見える。
各部にバーニアが追加され、スラスターも少し強力なものに変わっていた。
それだけではなく、スラスターには小さな翼みたいなものが追加されていた。

(これを扱えるの?おにいちゃん)

ミアはそのことが気になり、リフトを使って、Tran-Dのコクピットへあがった。

「どう?」

コクピットハッチから覗き込み兄を様子を伺う。

「動かしてみないとわからないな。操縦系統、パターンの入力はそのままだけど。なにが変わったのかよくわからないんだ」

といいつつ、アーリーはTran-Dのマニュアルを呼び出して前と比べてなにか変わったところがあるかどうかみていた。

(起動してみるか)

アーリーは起動スイッチを入れた。

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スクリーンに以前のようにパスワードを要求された。
順序が変わったことにアーリーは気がつく。
前はTran-Dの情報が現れてからパスワードをいれたものであった。

「Tran-D起動!」

いま思うとちょっとはずかしいせりふだとアーリーは感じた。

Password Accepted

Initiating Start Sequence

Evetoll 01 "Tran-D.α"
Fairlance [E_TRON] System Activated
Checking Systems........All Green
Stand Up System "emeralda" start



Life Support.......Online
Sensors............Online
Weapons............Online
All Systems Nominal

Loading Weapon and Attack Pattern Data...Complete
「ねえ、お兄ちゃん・・・」

ミアは今の起動シークエンスを聞いてなにか気がついた。

「なんだ?」

「今の声・・フィリスさんじゃない?」

ごほ!アーリーはそれを聞いてむせた。

「うんなわけないだろう!」

ちょっと顔を赤くしながらアーリーはそれを否定した。
そのためか、手に力が入ってしまい、Tran-Dが一歩前へ進んだ。

「きゃあ!」

いきなり動いたので、ミアは体制を崩しコクピットの中へ転がり込む。

「どわ!!」

いきなりのことでアーリーもちょっと変な声を出した。

「いきなり動かさないでよ!」

ミアは体制を直そうとするが、狭いコクピットの中でこれがなかなかうまくいかない。
そのとき、いきなりアーリーの手がミアの胸の鷲つかみにした。

「きゃ!ちょっとどこ触っているのよ!」

柔らかい感触がアーリの手に伝わるが彼は別になんともおもわない、いや、この状況だと思えないのだろう。

「ばかぁあ!」

ばき!という音とともにミアの靴底がアーリーの顔に炸裂した。

「いってぇえ!なにするんだ!抱き起こそうとしているだけなんだぞ!」

「触るところを確認してやってよ!」

言い合いが続くなか、二人はミアの体制を直そうとした。
その時、ミアの手がパターンキーに触れる。

Arming Knuckle Shot

それがナックルショットの入力コマンドだったらしく、Tran-Dの腕が動きナックルショットが装備された。
さらに、実行キーが押され、敵のない空間でTran-Dは移動しナックルショットを放った。
それはそばにおいてあるリフトに直撃し、完全に破壊してした。

「「あ・・・」」

二人は同時におなじ声を発した。
そこで、空間が凍結したのか、二人は動きを止めた。

「ゆ、ゆっくり行こう・・」

リフトですんでよかったという口調でアーリーはミアにいい、ミアはそれに素直にうん、と答えた。
ミアの体を回転させ、うまい具合に上半しをおこし、アーリーの肩にのっていた足をおろした。
そこで一度落ち着くと二人は笑い出した。
思いっきり笑ったのち、ミアはコクピットから這い出た。

「あ、まだ装備したままだった。いきなり戦闘モードに入っているよ」

戦闘モードを整備モードにかえる。

Switching from Combat mode to Maintenance Mode

「ほらやっぱりフィリスさんの声だ」

ミアは確信したように拳を握った。
たいしてアーリーは頭を抱える。

「フェナさーん・・・・」

ちょっとうれしいが、また迷惑な行為にアーリーはフェナの名を唸った。



アーリーとミアがTran-Dの中でもみ合っているとき、フィリスはライズが収納されている格納庫へむかっていた。
目的はライズの側にあったTA輸送機を手に入れるためである。
それももちろん許可なしにである。
その後をリックが腕を頭の後ろに組みながらゆっくりとついていった。
格納庫の扉につくとフィリスはパスコードを入力し、クリアされるとすぐに入った。
格納庫にはライズともう一機、ライズより巨大でその翼を畳んだ形でそれは静かに格納庫のすみに眠っていた。
フィリスの足はまっすぐその機体に向かって進んだ。

「リックさん、おねがいします」

「ああ・・」

リックはなにもいわずにフィリスとともに輸送機へ向かった。
その時、翼の影から誰かが出てきた。

「どこにいくつもりですか?フィリスお嬢様」

深い声が格納庫で響いた。

「エドワード・・・」

声を震わしながらフィリスはエドワードに振り返った。
リックは頭いたそうに頭を抱えた。
沈黙が三人の間をしばらく支配した。

「もう一度聞きます、どこへいくつもりですか?」

「・・・・・今キラードールと防衛軍が戦っている戦場へ・・・」

フィリスは目をそらさず、エドワードをまっすぐ見ながら答えた。
エドワードは手を後ろに組みながら歩き出した。

「それはいけませんな。あんなところに行かせるわけにはいきません」

フィリスは拳に力をいれ、下唇を噛んだ。

「さ、屋敷にもどりますぞ」

エドワードはフィリスの側までくると手をだしてフィリスの腕をつかんだ。
フィリスは反射的にそれを振りほどこうとするが、老人とは思えない力がそれをゆるさなかった。

「いやです!」

フィリスはエドワードの手をはなそうとするが、エドワードは力をゆるめない。

「あなたはラグナス重工エルファの社長令嬢ですぞ。あのようなものたちがどうなろうと関係ありません!」

「関係なくありません!私は、私は社長令嬢だけで、形だけのチームリーダーもうなんかいやなんです!」

フィリスはあのキラードールがTran-Dのデモの時から感じていた不満を吐き出した。
立場だけをもっており、実際はなにもやっていない。
人形みたいにただ笑みを保のがいやになったのだ。
自分もなにかやりたい、その想いがミアといっしょにフェナのTA設計の講義に参加させた。
最初はなにがどうなっているのかわけわからなかったが、フェナはそれを理解しできるだけ簡単に説明してくれたのだ。
そして、Tran-DSz開発にも参加することができた。
しかし、その彼女を動かしていたのは自分の立場の否定からくる感情だけではなかった。
仲間といえる人がいると確信できた上に、自分が好きな人の役に立てる力を得たいというもう一つの感情が彼女を動かしたのである。

「私はフィリス様の身を案じていっているのですぞ!もしもなにかあったら・・」

「それぐらいの覚悟がないと、人の上に立つことはできません」

エドワードはその一言で目を丸くした
数ヶ月前まではまだ子どもに思えた彼女がこのようなことがいえるになったのである。

「それに私がいくのは我が社が新しく開発したTAの実戦テストをチームリーダーとして見物しに行くのです」

この言葉にリックも驚いた。
フェナの出撃はテスト飛行だとフィリスはいったのである。
しかし、リックは別に口を出さずにエドワードに気がつかれないよう、輸送機のそばに近づいた。

「あれは我が社のものではありません。どうなろうと知ったことではありません」

「そうでしょうか、Tran-Dの元になったものを再設計、改良したものです。我が社に利益にならないとはいえないのでは?」

リックは輸送機の扉のコードをいじりながら笑いを必死に押さえた。
フィリスはさきほどフェナから聞いた話をそのまま使っているのだ。
ただ者ではできない芸当である。
その言葉がエドワードにとどめをさしたのか、彼の手の力が一瞬緩んだ。
フィリスはそのときを見逃さずエドワードの手を振りほどきリックの側に走った。
さすがりっくというべきか、すでにロックを解除し扉をあけていた。

「輸送機に乗り込んでも格納庫は開きませんぞ」

エドワードは少々苛立った口調で輸送機に近づいた。
リックとフィリスはすぐに輸送機に乗り込み、扉をしめた。
操縦席に座り、リックはエンジンをまわした。
甲高い音が格納庫の中で響き始め、エンジンが空気を取り入れはじめる。
だが、いくらエンジンに火が入ったとしても格納庫のハッチが閉まっていれとなると発進はできない。
いくらハッチの開閉スイッチを押してもひらかないのである。
どうやらエドワードがここまでのことをよそうしてロックを施したのであろう。

「あきらめてくれませんか、フィリス様」

勝利を確信たのか、エドワードはゆっくりと輸送機のほうへと歩んでいった。
ここまできてとフィリスは歯を食いしばった。
リックは自分がもつすべての裏わざを使ってロックを解除しようとするがうまくいかない。
ほかの手段はないのかとフィリスは考えた。
しかし時間はない。
なにかないか、なにかないか、その言葉がフィリスの頭を巡った。
そして・・・・

「Will、おねがいします」

フェナがいつも呼び、不可能を可能にする彼女相棒をフィリスは同じように呼んだ。
だめもとで、フィリスはWillをよんだのだ。
沈黙の数秒がすぎた。
だめなのかとフィリスがあきらめかけた時、重そうな音と共に格納庫のハッチが開らきはじめた。

-Sorry for the Delay-
(遅れてすみませんでした)

エドワードは驚きを隠せなかった。

「お嬢様!!」

エンジンの推力を入った輸送機はゆっくりと高度をあげてハッチからすりぬけていく。

『わたしは姉を見捨てるわけにはいきません』

フィリスは最後にその言葉を発した。
いや、それが最後ではなかった。

「あれはうそですからね・・」

フィリスはなにか叫んでいるエドワードを見ながらぼそっといった。
リックはそれに対して苦笑をしながら、アーリーとミアが待つ格納庫へと輸送機を向けた。

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