Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 6: The End and a New Beginning
Part 8

「全艦戦闘配置!!TAは艦隊を先行して出撃しろ!!」

フォルスリングの命令と共に艦隊の警報が鳴った。
戦艦の砲塔が動く。
PDSのカバーが開き、そのレンズが光りだした。
前線から補給のため引き上げて三日、補給、修理と乗組員に短い休息を済ませた。
みな、元気な声で出撃していく。
しかし気が重いのは変わりはない。
第一防衛線は下がって下がっていくだけで、被害も大きかった。
だが奇妙なことにキラードールの進行が思ったより遅いのだ。
7年前の戦争にフォルスリングも参加していた。
その時キラードールの進行速度に防衛軍は対応できず、殲滅され、キラードールは都市で惨殺を行った。
二度とそんなことを起こさせるわけにはいかない、フォルスリングだけではなく、ほかの戦艦の指揮官も同じ気持ちであろう。
そしてTAが発進してから数分後、生き残り艦隊の先に新しい光が生まれた。



底が見えないほど巨大な空間をカオスとエンジェランはゆっくりと落ちていった。
巨大な空虚と思わせるそこは、音がない。
ロイスとクリスはまるで奈落へおちていく気分に包まれた。
唯一の光といえば、天使の羽と思わせるエンジェランの羽である。

「ここって・・」

「どうやら巨大な格納庫かなにかだな」

ロイスはセンサーから情報を元に描き出されるその場所の形をみて答えた。
巨大なな円形の形をしているそこには音を立てるものは一つもなく、自分の機体が落ちていく事に空気が共鳴しているだけである。
そしてどれぐらい落ちたのか、両機の足は重そうな音を立てて着陸した。
それを待っていたかのようにある通路に光が入った。

「来るのをわかっていたのかしら?」

クリスは不安げにロイスに尋ねた。
ロイスはなにもいわずにその通路に目をむけ、ほかに出入り口があるかどうか探索していた。
誘われているのか?とロイスは心の中でつぶやいた。
探索の結果、出入り口はそこしかないと表示される。
ロイスはため息をするとパルスガンのエネルギーを確認した。

「クリス・・・」

「うん」

クリスにはロイスがそこから何を言おうとしているのかわかっていた。
ロイスはクリスに聞こえないように鼻で笑うとコクピットをあけた。
カオスの手が自動的にコクピットの位置に動き、ロイスが乗るとまた動き出し、通路の入り口におろした。

「気をつけてね」

「すぐにもどる、後は頼んだ」

とエンジェランのほうへ一度顔を向けるとロイスは通路の奥へと消えていった。
カオスは自分の主人が消えたあと、頭部を動かしエンジェラン、クリスを見た。
心があるのか、不安な顔をしていた。
キラードールに顔などないので表情はないに等しいが、動作でクリスはカオスの不安な気持ちが理解できた。
自分も同じ気持ちになっているのだから。

「大丈夫よ」

とクリスはカオスと自分に言い聞かせた。
あの人が負けるわけがない。
いや、カオスと自分だけではなかった、もう一人にクリスはいっていた。
彼女の手はやさしく、自分の下腹部をなでていた。
会話が途切れて、空間に沈黙が訪れたときエンジェランの後ろで赤い光が二つ現れた。
その主が咆哮をあげながらエンジェランを襲った。




グレナディアはパターンキーにコマンドを入力した。
そのパターンコードは入力されるとほぼ同時にそのデータはメインコンピューターに送られる。
そのコードをデータベースに登録されているパターンを探索し、発見すると同時にメイン
コンピューターはそのパターンの実行プログラムを実行する。
プログラムが実行され、パターンが要求される動きと現在の機体の状況を判定し一番効率のいい動きを判定した。
各間接に必要なエネルギーを計算し、最終的にE-Tronが動力炉に必要なエネルギーを要求する。
それを各間接を動かすモーターに命令が出された。
もちろんこのデータ処理は0.000001秒のうちに実行されパターンを入力した瞬間にTAはグレナディアが望んだ動きをする。
プラズマソードが収納庫から射出され、Tran-ZSの右腕に構えられ刀身が伸びた。
Tran-ZSはそれを振り上げるとすぐに振り下ろしキラードールでを半分に切り落とした。
すぐにグレナディアは自機を離れさせ、爆発するキラードールと距離をおいた。

「二十機目!!」

グレナディアは額から大量に流れる汗を手の裏でふいた。
次の瞬間警報が鳴りキラードールが腕を振り上げて襲ってきていることを教えた。
グレナディアは右腕でキラードールの腕を受けると左腕にナックルショットを装備させるとそれをすぐに放った。
キラードールの腹部に直撃したナックルショットは深くめり込み、内部で子爆発をおこした。
やがて爆発は全身にまわりキラードールは四散した。
次の標的を見つけようと機体を反転したグレナディアの耳に別な警報が聞こえた。

「く!」

リアクターがオーバーロードをおこしていることが知らされ、グレナディアは舌打ちをした。
一度帰還しないといけない。

「ランのやつ!!」

整備不良からの結果だと思い、グレナディアは歯を食いしばりながらハインラインへ戻った。
フォルスリングは顔の前に手を組んで状況を観察していた。
後退した艦隊のフユツキ艦長の報告をうけ、陣形の取り替えを行っている。
効果があるのか、キラードールは進行せず、味方にたいした被害は出ていない。
そしてもう一つ、引き上げた艦隊がみたという二つの機影。
あれが現れてからキラードールの動きは緩んだのか、前ほどの攻めがなかった。
なにか企んでいるのか、フォルスリングはそのことを見抜こうとする。
このことは司令部にも教えてあるが、返事は帰ってこない。

「くそ!」

司令部になにか考えがあるのかと思いたい。
フォルスリングはそれを信じて艦隊へ司令を出し続けていた。
はたしてこのままどれぐらいもてるのかは不安ではあるが、それを表面に出すわけにはいかない。
彼はただ厳しい表情を保ち続けるのであった。

「ラン!!」

「あ、グレナディアさん」

グレナディアはリフトがコクピットにあがるのを待たず、あがってきたランに飛びついた。

「リアクターがオーバーロードしはじめた!おまえ、私を殺す気か?!」

「ちょ、、ぐ、ぐるじい・・・・」

絞め殺そうとグレナディアはランの襟を力いっぱい引っ張った。
傍にいる整備員が慌てて二人を離そうとするが、彼女はなかなか離さない。

「し・・・しらべますから、ちょ、ちょっと待ってくだ・・さい」

なんとか発したランの言葉を聞くとグレナディアは乱暴に彼をリフトの上に叩き落とした。
やっと空気を据えるようになったランははげしくせき込み、なんとか体を起こすとコクピットに向かった。
傍にある蓋を開き、手にしている配線をそこにある二つの穴に接続する。
結果はすぐに出た。
それをみるとランは大きくため息をした。

「グレナディアさん・・・ちょっとこれをみてください」

グレナディアはそれを手に取ると内容をすばやく読んだ。
顔が歪む。
グレナディアはランと同じように大きくため息をだした。

「すまん・・・」

「いいですよ、別に。グレナディアさんの腕にこの機体がついていけないだけです」

「すぐに出せる?」

「ええと・・・30分ほど待ってくれれば・・」

「15分だ」

「わ、わかりました」

反対しても無駄だとランはわかっていたため、無言に頷くと整備員を数人引っ張り整備に取りかかった。

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