なんてえこったい。こんなに未読の、いや、読んでいながら書いていない、
つまり未書の本が増えているとは。これ、ちょっと消化せんとあかんね。
とか言いながらしょっぱなから関係ないも関係ない、全く関係ない本ばかり。
碧血剣 (一) 復讐の金蛇剣 The Sword Stained with Royal Blood (へきけつけん) |
金庸 KIN YO (徳間書店 ハードカバー(A5版)) 一九九七年 初刷 |
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なるほど、武侠小説とはこういうのを言うのか。一つ学習したなあ。 つまり、青年が武門を学び世に善を成す、という話。 男だったら絶対に一度はあこがれ、夢中になって読む話。 ジャッキー・チュンとか好きな人ならもうメロメロでしょう(笑)。 という訳で、この話はSFではありません。ごめんね(笑) いや、最近あちこちの読書感想を覗いていて、 よく目についていた本ではあったんですよ。運良く後輩が持ってて、 貸しても良いと言ってくれたので奪って読みました。 このタイプの話ではよくあるパターン、の一言につきるんですけどね、いやいや、 これが面白いんですわ(笑)。そういう病気持ち(笑)にはお薦めの一冊。 あらすじ。 時代は英雄達の時代、明の頃。 主人公は徳と腕とで有名な将軍の子供である。この将軍、 多くの民と将兵に親われていたのだが、愚帝によって冤罪をかけられて殺された。 一族皆殺しの中、 なんとか心ある部下の手で救われた只一人の生き残りがこの主人公だった。 この帝の愚かなる事底抜けで、中国の国のそらもう傾く事傾く事。 農民は仲間の死体を食ってでも飢え死を凌ぐか、 盗賊へと身を変えるしかない有り様である。おまけに外敵の侵略さえ、 いつあってもおかしくない政情。ついに反乱軍が市井の中から立ち、 大きく勢力を伸ばしていった。 主人公は軍の立った頃まだ子供である。 追われ救われと流浪の運命を繰りかえすうちに、 仙人と名高い拳法家の元に身をよせて精進する事とあいなった。 多くを学ぶ中、ある日山の洞窟でミイラに出くわす。 これが金蛇郎君と名高い武芸家の死体だった。そこには金蛇剣という銘刀と、 その拳法の極意書が。 主人公はそれをも学びとり、強きを挫き弱きを助ける為、また、 大儀と仇とに暗君を討つ為に、山を降りて街へと姿を現した…… ね? よくあるタイプの話でしょ? この主人公、もー中国文化の鏡ってな奴で、 目上に礼は惜しまない、争い事はとにかく起こさない、 師匠や兄の言葉といいつけは絶対守る。もう、忠犬みたいな奴(笑)。 まあ、その思考のパターンや、悪役達の行動形式、 そのあたりには現代中国の影が感じられます。利と煩悩に忠実と言うか、 現代っ子と言うか。 そうそう、タイトルは「へきけつけん」と読みます。どうしてもおいらこれを 「こんけつけん」と繰り返し読んじゃって。 だからふり仮名つけときました(笑)。 さて、このお話への「愛」を、ひたすらにけなす事で表現してみようか(笑)。 諸手をあげて人に薦めるにはちと一息だが、 屈折した形では応援したくなる本です(笑)。 まず、中国のこの手の話で俺の読んだものというと、 「風よ、万里を駆けよ」 という田中芳樹の本を思い出します。あれはよかった。 あれを読んでたせいかな、某登場人物が出てきた時には「あ、これはアレだな」 と一発でピンと来ました(笑)。とっとと気がつけよな、主人公(笑)。 まーそーいう、お約束な所がきちんと散りばめてあって楽しいです。 ただ、なんですかね、これは翻訳が固いのでしょうか、時々間が取りにくい時とか、 何を感じながらの人物達の行動なのかがよく判らない所がありましたね。 作者は「おまえらこれはお約束だからこれだけで判れよ」ってなもんでしょう。 まあ、外国の小説であれば仕方のない事か。中国人にいきなり 「義理と人情秤にかけりゃあ……」 なんて映画を見せても理屈や道理が判らんだろうってのと一緒だね。 文化的な所でも、おそらく同様の「俺(読者)には通じてねえよ」という、 なんらかの含意のある行動、というのもあったと思います。中国じゃあ、 結婚を誓った相手とはなんとかっつう餅を食べあうとか、 輪状の飾りものを半々にして、お互いに片方を持つとか、 そういう風習があると聞いた事があります。相手に笛を聞かすとか、 特別な料理を供すとか、自分の庭に通すとか、詞(うた)を交わすとかにも、 そういう特別な意味、というか、文化独特のやりとりってのがあるんでしょうかね。 そういう所、判ってないので、ちょっち判断に苦しむというか、 損して読んでると思う所あります。 あれだね、これは翻訳者なんかが悪いね。こういう話にこそ、 解説や訳注を沢山入れて欲しいのに、一言もありゃしねえ。全く。 歴史や血、師弟の系譜についてつらつら書かれてるのも重いです。 これも又文化から来てるのでしょうが。歴史を尊び、目上を大事にする。 親に遡っての仲間や兄弟、いや、それは嬉しいんだけど、やっぱり「だるい」 という感覚が先に立つんだよなあ。「三国誌〜」とか「〜演義」とかいう タイトルの小説、カタッパシから私が挫折しているのには、 一つにこれがあるんでしょう。 この話は全三巻で完結との事。 すわて、続きも後輩からかっぱらってくるか 尚、私にこの作品を読ませるきっかけとなった こ こ とかも記しておきます。 |
碧血剣 (二) ホンタイジ暗殺 The Sword Stained with Royal Blood (へきけつけん) |
金庸 KIN YO (徳間書店 ハードカバー(A5版)) 一九九七年 初刷 |
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さあ、第二巻だ。武侠小説だ。第一巻を読んでから、 実は二カ月ぐらいが過ぎています。これまた後輩を脅して借り受けました。 大丈夫、三巻もすぐに読みます、書きます。もう借りてますから。 ……その前に仕事しないといけないかな? あらすじ。 金蛇郎君との縁は深い。山を降りてすぐに、 彼は色々なやっかい事に巻き込まれていたのだが、なんだかんだで結局、 金蛇郎君の因縁を引き受ける形になってしまった。ウヨキョクセツを繰り返し、 金蛇郎君の子、青青と共に旅を続ける事になったのが前回まで。 今回も、短気で血のケの多い青青やら、 会った人には誰でも優しい自分自身の優柔不断やらから、 あれやこれやのイベントにひきずり回される。そして、 そのイベントの裏にもこれまた金蛇郎君の因縁が。 まあ、あんまり詳しくは言わないが、そこかしこで立ち回りを演ずるうちに、 彼はあちこちで武に優れた人を助け、金蛇郎君の残した財宝を手に入れ、 それを手に反乱軍を援護するつもりでいるうちに、付近の盗賊七軍をまとめた 新部隊を造り上げ、その部隊の大将に名指しされ、でもって攻めてくる外敵、 清のホンタイジ(ヌルハチの子供だよ)の暗殺の為、 金蛇剣と己を腕のみで敵陣へと潜入する。 そして、ホンタイジへと切りかかった時、思わぬ強敵と対峙した! ……と、そこで、そんな所で終るのである!!(笑) 忙しい人やねえ(笑)。 ほんま、いいこちゃんはなにかと大変である。 目にする不正全てにとりあえず顔を突っ込むし、きちんと責任とりたがるし、 敵が目上だったら礼儀を守りながらも攻めねばならないし。 又それが出来るぐらい腕の達者な所がなんともはや。美人沢山出てくるし、 それにまたなびかない、というか、どうくどいていいのか判らないらしいし、 そもそもくどくのが下品とかって自分を戒めてるし。 読んでて、チぎれてて笑えるのは青青。こいつの言動はメチャクチャの一言。 よくも主人公も一緒に旅をしたり、兄弟だの恋人だの言えたりするもんである。 俺はちょっと、許せる自信ないなあ。 今回はこれまで。ってのは、最後の本当に数ページで、 ものすごくヒく終り方をしてくれたのだこの第二巻は。 こんなの書いてる場合でなく、すぐに次の本に手をつけたい。 って訳で、書き殴りで失礼して次を読むのだ。 失礼。 |
碧血剣 (三) 北京落城 The Sword Stained with Royal Blood (へきけつけん) |
金庸 KIN YO (徳間書店 ハードカバー(A5版)) 一九九七年 初刷 |
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諸行無常の響きあり。 かくして、碧血剣全三巻は終りである。 今回は色々とどんでん返しがあって面白かったです。 あらすじ。 主人公は敵国ホンタイジの暗殺に失敗。が、彼が手を下すまでもなく、 ホンタイジもまた内側のムホンによってすぐに倒れたのである。 優れた王としての資質を見せていたホンタイジに、 主人公は複雑な思いを抱くのだった。 とりあえず一向は首都へ。 そして、この巻でも新たに金蛇郎君の因縁が爆発するのである。 彼は五毒教という毒手の宗派とも悶着を起こしていたのだ。その血筋として、 そして弟子として、仇にされて追われ闘いする主人公パーティー。 この教主というのが、また一見の価値ありな人物であるとは言っておこう。 その闘いもようやく一件落着を見る頃、ついに反乱軍も都へと攻め寄せる。 そして、暗君は倒されたのだった。 だが…… 惚れられる青青、前巻で登場していた阿九の正体、 そしてホンタイジ暗殺を阻止した手だれの素性…… ミーハーな所でも見所てんこもりの、最終巻らしい怒涛の展開である。 これを貸してくれた後輩は、 「最後の最後になってまだあんな濃いいキャラ(教主)を出してくるあたり、 最高でしょ」とか言っていた。 賛成とも反対ともつかないが、こう、読んでる最中の盛り上がりに比して、 あの終り方はないんでないというのがあったりした。 これも後輩が反論していわく、「歴史小説」としての影を忍ばせるならば、 それもまた当然の帰結であったのだ、という。 そういえば、二巻でもポルトガルの干渉などについて、 ちらりと触れるエピソードがあった。ホンタイジ暗殺や、暗君の死、 更にはそれを行なった反乱軍や武将の顛末など。 これらを書き記す為に作られたものだと言われれば、この「納得いかない、 なんでいい奴が死なないといけないんだ」も、「それが史実だからだ、 それを伝える為に書いたんだ」と言われれば、なるほどの納得なのだ。 そして、無情の風を感じるのだった。 手放しで、とは言わないが、それでも三冊まとめて読んでも、 損ではなかったと思わせる本でした。 そうそう、余談。阿九は、後の本の中でちらりとでてくるそうです。 そうくるなら、導師が旅先であった碁の相手の話とかも、 シェアワールド物って事で、何処かで出てきそうだなあ、と思ったり(笑)。 訳されてくるのが楽しみです。 |
神々の角笛 《ハロルド・シェイ 1》 THE ROARING TRUMPET |
L・S・ディ・キャンプ & F・プラット L.S.De Camp & Fletcher Pratt 昭和56年発行 1940 |
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さて、元祖アンチ・ヒーローものの登場である。 アンチ・ヒーロー、すなわち、 およそヒーローらしくない人物が主人公を張って頑張る、 という形式のもので、そういう形式の始祖にあたる作品、 ならしい。 私はこれを約2名の方に勧めて貰っていたのだが、 既に廃刊の浮き目になっているとの事で、どうにも読めなくて困っていた。 今回、推薦してくれてたJさんが、「どうしても読め」 と貸出までしてくれた事により、 ようやく日の目を見たといういわくつき。全4巻、かなり素早く目を通しました。 あらすじ。 ヒーロー、と呼ぶにはちょっとためらいのある、 おっちょこちょいで調子外れの心理学者、ハロルド・シェイ。 今日も今日とてプリプリしながらのお勤めである。 さて、そのお仕事であるが。 上司が精神病患者の研究をするうちに打ち立てた「認識論」の議論は、 どうもとんでもない結論を導き始めていた。 世界=目に映り認識してる物達、 は各個人の思い込みあって始めて認識されている。 では、その「思い込み」を、 理性でねじ曲げてしまえばどうなるか? おそらく「魔法の国、神話の国」 へと精神的な意味で、ついで物質的な意味ででも、旅が出来るのではないのか? オハイオ州の日常にアキアキしていた彼は、 勝手に自分でこの理論を試してみる事にしてしまった。 道具は、紙と鉛筆で書いた一連の論理式。そう、自分の「思い込み」を正すだけ。 論理式を睨みながら一心に唱えると、ふと世界が灰色に、そして次の瞬間、 彼は書斎から荒野へと転じていた! いざゆかん冒険を求めて。ようこそ魔法の国へ! さて、感想ですが。 軽〜いタイプのファンタジーである事をまず述べときましょう。 ひっくり返っても真面目なタイプの話ではありません。 「マジカル・ランド」 系列の波長ですね。ふざけてるって感じの奴で、 読後に感動とか求めてはいけない系列です(笑)。 その伝では面白い本です。うん。ただ私、これ、「さあ読むぞ!」って、 かなり構えて読んだんですよ、沢山の人の推薦がありましたからね。 だもんで読みながら「うむむ、きっとこれには偉大な伏線が」とか 「ここで人生論的な蘊蓄があってこそ」とか「主人公大ぴぃ〜んち!」とか 妄想をたくましくしながら読んだもんで「……え、もう終り? それでいいの?」 とか思ったりしちゃって。読む時の姿勢として、失敗しました。くそお。 だから言いますよ、この本は、「だはははは、馬鹿ぁ」 「又だ、又やってるよこの人はあ」「墓穴掘りだねえ、主人公」 とかいう視点でしか読んじゃ駄目ですからね(笑)。 その方向で読めば、結構いける本です。 |
妖精郷の騎士 《ハロルド・シェイ 2》 THE MATHMATICS OF MAGIC |
L・S・ディ・キャンプ & F・プラット L.S.De Camp & Fletcher Pratt 昭和57年発行 1940 |
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さて、元祖アンチ・ヒーローものの第二段。 ところでですね、主人公ハロルドは、 果たしてアンチ・ヒーローなのでしょうか。 私は、実は彼は結構ヒーローの資質を満たしていると考えるのですが。 そう思うのは、 「ルパン三世」 に代表される、三枚目ヒーローに慣れ親しんだ日本国民だから(笑) 思うだけなのかなあ。 あらすじ。 前回、命からがら北欧神話の世界から現代世界に帰って来れた 我らの三枚目ヒーロー、ハロルド・シェイ。土産話を聞かせるうち、 今度はこの世界渡り理論の創始者であり上司であるリチャード・チャーマーズ 博士が「私も行きたい」と言いだした! 結局、いそいそと積極的に(笑)言いくるめられて旅立つはザナドゥの世界。 「ねじ曲げ理論」から発生する諸技術を利用して、「にわか魔法使い」 二人の冒険が又も始まった。 そして、出会った美女にいきなり一目惚れしてしまう博士。 それをいさめていた主人公も、これまた別の美人にメロメロになっちゃって…… 二人の明日は果たしてどっちだ(笑) 今回の見所は、「ヒロイン」が現れた事でしょうか。それに合わせて、 主人公がまさしく「男前」たらんとしはじめます。ここで、 彼がフェンシングの技術を身につけているあたり、 やっぱりヒーローだと思うんですけどねえ。 |
鋼鉄城の勇士 《ハロルド・シェイ 3》 THE CASTLE OF IRON |
L・S・ディ・キャンプ & F・プラット L.S.De Camp & Fletcher Pratt 昭和58年発行 1941 |
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さて、元祖アンチ・ヒーローもの第三段。 文や設定もこなれてきていい感じ。登場人物も毎回増えて、 なかなか楽しくなってきてます。 あらすじ。 見事前回の難問乗り越えて、 夫婦として仲良く暮らす我らの主人公ハロルドとベルフィービー。 その彼女が突然消えた。 どうやら、何者かにより別世界に召喚されたらしい。 ハロルドはそう訴えるのだが、当然そんなキ印な話など誰も信用しない。 警察では「ハロルドが殺したのではないのか?」とまで言い出す始末で、 すっかり苦っている所に、彼まで召喚されてしまった! 召喚したのは、異世界に留まってた博士! 「すまんが、ちょっと助けてくれんか? なんか面倒な事態になってしまっててなぁ……」 博士を助け、嫁さんを助け、巻き込まれた同僚を助け…… ヒーローハロルドの活躍は続く。 今回は、ヒロインが記憶喪失に、 更には、別の人へと思いをよせていたりする所がメインでしょうか。 でも、特にメインって訳でもない。 このあたり、ライトファンタジーの限界って所、かな? |
英雄たちの帰還 《ハロルド・シェイ 4》 WALL OF SERPENTS THE GREEN MAGICIAN |
L・S・ディ・キャンプ & F・プラット L.S.De Camp & Fletcher Pratt 昭和58年発行 1953, 1954 |
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さて、元祖アンチ・ヒーローものは、これをもって完結、又は未完となる。 もともと各話完結型の、いつ終っても、そしていつまでも続いても 不思議のない話だったのだが。その決着の原因とは、作者のうちの一人の死 である。もう一人は、二人でこそ書けた物語を一人で書き続ける気はない、 と言う。それはそれでアッパレである。 なかなかに、各人物達に深みが出てきた所だったので、惜しい気もする。 それとも、パターンにはまってつまらなくなる前に終ってよかったのかも。 あらすじ。 さて、決着がついたかに見えてた前回の結末だが。実は問題が残っていた。 巻き込んでしまっていた同僚と警官を、異世界におきざりにしていたのだ。 彼らを救出に向かわねばならない。 でないと、以前は嫁さん殺しの疑いだったが、 今度は警官殺しまで断定されかねない。だが、 その世界には障壁があるらしく、簡単にはいかなかった。何処か別の世界の、 もっと強力な力を持つ魔法使いの助けがいる。そんなおひとよしで力の強い 魔法使いのいる世界……そして、彼らはまた冒険へと赴くのだった。 そして、世界は混乱を究め、物語はまだまだ続きそうに見えながらも、 終りを迎えるのであった……ライトな話に、粗筋以上に感想をつけるのは、 結構しんどいぞ(笑)ってわけで、今日はこれまで! ごめんね、うまく書けなくて。 |
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