♪春はお別れの季節です、って歌がありましたが、秋だというのに、ついにスパイダーとの別れがやって来ました。日本への帰国です。帰国にいたる事情はまた別稿に書きますけれども、とにかくアメリカを離れることになったわけです。色々思案しましたが、とてもサイフが許してくれる状況になく、共に日本の土を踏むことはできそうにありませんでした。

昨年も似たような状況になり単車を手放しましたが、今回はスパイダー。インターネットなどでしばらくは(消極的に)買い手を探しましたが、意外なほど見つかりません。いや、声はかなりかかるのですが、結局商談成立にいたらない。最大の理由はフィアットそのものの信頼性の低さと、ボディの程度でした。

フィアットの信頼性の低さはアメリカでは半ば伝説化しています。フィアット社が北米大陸という大市場を諦めたのもこの問題からでした。特に錆に弱く、ボディ下回りがぼろぼろになる例が後を絶たなかったのです。我がスパイダーも、ご多分に漏れず多少の錆はあります。年式と走行距離を考えればかなり程度のいい部類に入るのですが、それでも、フェンダー周辺の一部には錆のために塗装が浮いてしまっている部分もあるくらいです。

どうやらこれが気に入らないらしい。価格的に折り合わないという事はなく、問い合わせの大半が錆の有無の段階で話が立ち消えになり、残りは商談成立寸前で「友人からフィアットだけは止めた方がいいといわれた」という理由でした。もっとも、こちらもこれだけ愛したクルマですから、お金が欲しいわけじゃなくて好きで乗ってくれる人がいいので無理に売るくらいなら潰しちゃおうと考えているくらい。

ちなみに、現時点でのスパイダーの相場は、個人売買で$2500〜$4500といったところ。我が家のスパイダーは正札$6000を値切り倒して買ったものでしたが(笑)、今回ネット広告などには$2000で出して、いくつかの引き合いがありました。年式によって値段は大きく変り、1985-1/2年式モデルは$15,000くらい。これは、このモデル(約500台)だけがステアリングをラック&ピニオンに変更されていて、ピニンファリーナ自身の手でエンジンにも手が入った記念モデルだからなのです。まあ、一般的に衝突規制バンパー以降のモデルなら1.6〜1.8Lエンジンで$2500くらいまで、2.0Lがもうちょっと高いかな、という程度ではないでしょうか。

それはともかく、特にエンジンは絶好調ですからこのままスクラップはあまりにも惜しい。そこで、前々から話を振っていた親友・順ちゃんに、もし直したら乗る?と、声をかけてみました。順ちゃんには、以前から「ぼくが先に日本に帰るようであれば、もし嫌じゃなければスパイダーに乗ってみないか?」と聞いてはおいたのですね。順ちゃんは日本にいたときにはRX-7(FC3S/J34P)にかなり手を入れて乗っていたスポーツカー乗り。今回の白煙噴出事件を乗り切ったら、ますます「乗ってくれる人」に嫁がせてあげたくなったのです。

もちろん、乗ってもらうのですからこっちが結納金をお払いしなくちゃいけないくらい(笑)。とにかく順ちゃんみたいな、クルマ好きのマインドがわかる人に乗ってもらえるのならスパイダーも冥利に尽きるというものでしょう。そして、順ちゃんがバージニアの片田舎からやってきました。彼の自宅から我が家までは約4時間。