■ イランとの戦争
フセイン大統領は隣国イランで革命が発生した事にずいぶん気をもみました。なぜなら、国内にはイランと同じシーア派の住民が多数いたからです。
彼らがホメイニ師の言葉にのって国内で革命を発生させえないと考えたのです。もちろん、そう考えたのはフセイン大統領のみならず中東諸国は皆一様に同じ意見でした。
フセイン大統領は中東最強のイラン帝国軍が、革命の粛清で弱体化していると知り、イスラーム原理主義を潰すため、ついにイランに攻め込みました。イラン・イラク戦争の始まりです。この戦争についてはこちら
戦争が始まれば優先されるのは兵器の開発です。そう、核を含む兵器です。イラクは核を開発していました。もちろんそれはイスラエルに向けて使うためです。ところがイランと戦争になってしまい、こんどはテヘランに撃ち込むために開発が急がれました。そして、フランスから原子炉を購入する契約までこぎつけたのです。
これに反対するものはいませんでした。イスラエルとイランをのぞいて・・・。1979年4月6日、イラクが契約していた原子炉が何者かによって爆破されました。世界中の人間は犯人が誰であるかわかっていたでしょう・・・。そう、モサドの破壊工作班です。
この爆破は失敗したわけではありませんが、粉みじんに吹き飛んだわけでもありません。そして原子炉オシリス(エジプト神話の冥界の神)はイラクへ送られていったのです。
イラクで原子炉が完成したのちの1980年9月、イランが戦闘機で爆撃を敢行して来ました。当然イラクでもかなり重防御のこの施設を狙ったのは、核ミサイルを製造されると困るからです。しかし、攻撃は失敗でした。ターゲットをミスし、原子炉になんら被害は及ばなかったのです。
ところがイランの攻撃はお粗末でしたが、イスラエルのそれは違いました。イランが失敗した事を知ると、今度はイスラエルが爆撃に来襲したのです。敵国とはいえ戦争状態にある訳でもないのに、爆撃するとは。さすがにイスラエルの爆撃では原子炉施設に重大な被害が出ました。このイスラエルのバビロン作戦についてはここをクリック
フセイン大統領はこれでも諦めなかったのです。原子炉を使わない方法で核爆弾を製造する事は出来ます。原料の完成品を買う事も出来ます。そのため交渉人が再びフランスに飛びました。しかし、一度は完成原料を売却する事にOKしたフランスですが、アメリカからの圧力で白紙に戻されました。しかも、交渉人はパリで暗殺される始末です。
イスラエルはこの後も、かなり強く警告を発して来るのです。何人もの科学者が暗殺されました。そして、計画は頓挫したのです。
■ 毒ガス
フセイン大統領は、核爆弾が無理となるともうひとつの核爆弾である化学兵器の製造を指示します。こちらは核爆弾と比べると製造も容易です。イスラエルからの妨害を除けば・・・。
何はともあれ、毒ガスは完成し実験も終了しました。イペリットはもちろんサリンやVXガスが製造されました。そして、これらはイランに対して使用され、イラクはイランに対し有利に戦闘を進めることが出来たのです。
■ 湾岸戦争
湾岸戦争はイラクがクウェートに侵攻したことから始まった戦争です。詳しくはここをクリック
この戦争で敗北を喫したフセイン大統領でしたが、政権は潰れずにすみました。暴動が起こり一度は危険状態になったのですが、鎮圧されたのです。
国連は戦争の後、イラクに飛行禁止区域を設定し実質的に保護しました。そこはクルド人地区だったのです。クルド人は独立したわけではありませんが、一応の保護を得られました。
■ 娘婿亡命 1995年8月
フセイン大統領の娘2人とその夫が突如、ヨルダンに亡命しました。理由はフセイン大統領の長男ウダイ氏との確執だったようです。特にフセイン大統領の従弟であり娘婿のフセイン・カミール中将は元秘密警察SSOと軍事工業省の大臣でした。すなわち、核、生物、化学兵器の総元締めであり、それはそれはアメリカにとって貴重な情報源となったのです。
しかし、何を思ったか、このフセイン・カミール氏はイラクへ帰国し、粛清されてしまいます。帰国すればどうなるかは分かっていたと思いますが、ヨルダンに潜入しているムハバラート(情報部)に脅迫でもされたのでしょう・・・。
■ 長男 暗殺未遂 1996年12月
フセイン大統領の長男であるフセイン・ウダイ氏が銃撃に合い、重症を負います。ウダイ氏はこの暗殺未遂で足が不自由となり、後継者争いから外れてしまいます。
■ 次男 暗殺未遂 2002年8月
フセイン大統領の次男で後継者筆頭の大統領特別警護隊指揮官クサイ氏を反体制組織イラク国民会議が銃撃、クサイ氏は負傷したものの無事でした。
フセイン大統領は支持率ほぼ100%なので、イラクは経済制裁さえなければ豊かで平和な国となるように思われます。まあ、クルド人問題はなくならないでしょうけど・・・。
■ クルド人
クルド人はアラブ人でもなくトルコ人でもなくペルシャ人でもありません。れっきとした単一民族です。そのため独立したがっているのですが、まだ国を持っていません。
彼らはトルコ、イラン、イラク周辺に散らばって暮らしています。まー、大体独立したいがために反体制です。彼ら実は世界最大の国無き民なのです。最大の民族がまだ持っていないのです。
イラクではアメリカが支援し利用しています。将来彼らもイラクやアル・カイダと同じようにアメリカから攻撃されるのでしょうか・・・。 |