「私たちが望んでいたことはみんなダメになってしまいました。なぜ私たちなの? なぜセドリックなの?」――ビアンカ・ミラー


 ブラド・ミンズ陸軍軍曹は、PBを摂取しなかったことにはかなりの確信があるが、イラクが細菌戦に打って出たときに生命を守るためというワクチンは受けている。ミンズは、この投薬によって慢性疲労が引き起こされた――そして湾岸戦争への従軍によって最終的に自分の子供の生命が根こそぎ断ち切られた――のではないかと心配している。

メリーランド州フォート・ミードのバンガローで、ブラドと妻のマリリンは、息子の苦悩を列挙してみせた。ケイシーは頭と脊髄のゆがみがみられるゴールデンハー症候群で生まれた。左の耳は失われ、消化管はつながっていない。ごちゃごちゃになった内臓を修復しようとして、陸軍医学センターの軍医ウォルター・リードは、声帯と結腸を傷つけてしまった、とブラドとマリリンは語る(ウォルター・リードの代弁者、ベン・スミスは、「あの家族から訴訟請求があったが、その件については決定以前に弁護士の手にゆだねられたのだ」と述べている)。現在2歳2か月のケイシーは、身振りで話す。両親は食事を与え、腹の中の穴から汚物を取り除く。それ以外にはケイシーはふつうの子供で、飾り気のない部屋で泣き、裂け目にペンや本や紙切れを口に押し込もうとする。マリリンはついていってそれを取り戻すのだ。

「この子は小さな恐怖なんです」と、ブラドは苦笑する。

 主にサウジ・アラビア飛行場に配置された憲兵であるブラドは、15万人のアメリカ兵とともに――司令官の命令で――炭素病兵器に対するワクチンを受けた。第2のワクチンはボツリヌス菌中毒に対するもので、8000人の兵士に投与された。

 復員兵問題に関する上院委員会が昨年(1994年)12月に出した委員会報告では、「ペルシャ湾岸からの復員兵は、……第15条つまり軍法会議の脅しのもとで、ワクチン接種についてはだれにも話さないように命じられた。それは、ワクチンの副作用を扱うために医学の専門家に情報を与える必要があるときでさえもである」と結論づけている。

 上院レポートは、特有のボツリヌス菌変性毒素が与えられたのは「FDAに承認されていなかった」ことを注記している。この調査の別の部分にはこうある。炭疸病ワクチンを接種した服役軍人回答者の85パーセントは拒否できないと告げられており、43パーセントは直後に副作用を経験した。投与された女性の4分の1しか、妊娠にあたって何らかの危険があることを告げられていない。対ボツリヌス薬を投与された全回答者の88パーセントが拒絶しないように告げられ、35パーセントが副作用を受けた。ボツリヌス菌変性毒素を与えられた女性は、だれ一人として妊娠に対する危険を告げられていない。「炭疸病ワクチンは、ペルシャ湾岸軍事関係者の原因不明の病気の潜在的原因と見なされていくべきである」と、報告書は要約部分で述べている。そしてまた、こうも述べている。「(ボツリヌス菌中毒ワクチンの)安全性についてはなお不明である」。

セドリック
5歳の姉ラリッサは、
セドリックと一緒に遊ぶときには
注意深くしなければならない。
転べば、頭の中の血が逆流して
脳にダメージを
与えてしまうからだ。
セドリックの
ハンディキャップのため、
両親のスティーブとビアンカは、
さらに子供をもうけることを
怖れるようになってしまった。

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