私には少々「つらい」作品でした。
真剣な芝居です。扱うテーマは「家族」です。
舞台装置がイカしてました。
客席を狭くしてでも作った奥行きのたっぷりとあるその舞台。
廊下に囲まれた、大きな田舎家の典型的な部屋です。
私も、自分の田舎の家を思い出しました。
そして、時にスクリーンにもなる、縁側にかけられた簾。これがいい。
ナイスアイデア。
舞台暗転した時には、あちこちに貼られた蛍光テープが蛍の色を発し、
夏の夜を見せてくれました……
って、実はあれ、役者さんへの目印テープ兼用だったんだな、きっと。
かしこい! かしこい! うまいぜ、ナイスアイデア!
舞台装置へのこういう凝り方、に、私は絶賛です。
さて、「つらい」と言った舞台の中身。
3人の姉妹のみによる会話中心の劇です。
3人はそれぞれに家を出て、ケーキ職人見習い、専門学校生、
OLとして働いています。
家には父が、そしてその父とうまく行かず、かつぼけ始めている祖母が、
祖母の実子である母が居ました。
その母が、突然の事故死をしたのです。
盆にも帰らず、正月にすらひょっとしたら帰らなくなっていた姉妹が、
久しぶりに集い、そして、通夜が始まります。
そして、その通夜を中心とした舞台が始まるのです。
どこにでもある「家族」です。
表面的には普通でも、内側にうまくいかない、
「どろどろ」を持った家族です。
言わないけれどそれぞれに感じている「コンプレックス」
を抱えている姉妹です。
そんな黒いものが、全て悪いベクトルの方で解放されます。
相手を攻める、攻める、つッぱねる言葉で一気に全て紡がれます。
おばあさんのおむつは誰が世話する、
晩御飯が口に合わないとぐちるアレをどうする、
父と祖母の冷たい喧嘩は、間に入る人間はすり切れる、
じいさんは施設に入れてぼけて死んだ、おじさんは金を借りにくる、
母は姉だけをえこひいきしていた、すねて仮病をした思い出、
正論だけど正論だけでは無理、では誰がその嫌な決断を下す、
下したくて下したのじゃないそれを、下す決断を放棄した誰かが攻める……
ほらあ、心あたりが沢山。(笑)
これは笑えない。
作者や役者が笑わせようとしてない(のだろう)だけに、なおさら笑えない。
全員が背負う十字架としてそれを抱えていこうという思いのないものに、
つらいもの、おもいものから逃げたいと思うものに、
家に、祖母に、親戚に、田舎に、
そんなものに暗さしか感じれなくなったものに。
ああ、つれえ。
誰もが我儘です。
誰もが自分が泥をかぶるのはいやがります。
姉妹でも、押しつけ合います。
共同してあたるのではないのです。
特に三女は、世の全てに刺を持って対応していました。
あれ、演技? ならいいけど。普段からそうなら、
あんた、背中がすすけてるぜ?(笑)
特に二女は、ゴーイング・マイウエイでした。
特に長女は、ええかっこしいの世話焼きでした。
そして、ばあさん。
舞台には出なかった、三人の言葉だけで語られるばあさん……
うちのばあさんも、今は天です。
ぼけて、ハイカイして、だあ、心あたりがありすぎる。
あかん。つらい。見れん。
救いは?
結論は?
……私の理解できた範囲で、この芝居で、これらの感情、問題に、
全て答えは出ていませんでした。
もうすぐ祖母は死ぬだろう、というのが、ひょっとしたら救いなのですか?
問題解決方法なのですか?
あれだけの黒い部分を放出しておいて、
それら全てを解決するのではなくチャイにして、
手をつないで和解して終るのですか?
次こそは、同じ過ちをしない。
既にした過ちをいかにして自分らはつぐなう。
その、答えは何処ですか?
全てを許せるのが、というか、無許可で共に居れるのが家族だ、
とは思います。
でも、この芝居はそれが結論じゃないです。
その特性を利用して結論をうやむやにしちゃった話です。
それを結論にするなら、もっと家族の「楽しい面」を、
普段からの会話にひそむ「敵意」だけじゃない、その逆ベクトルを、
もっともっとひそませるベきです。
あるいは、あれですか? 単に役者が下手で、
会話のノリがまずかっただけですか?
会話の間に、「あ、いま台詞を思い出そうとしてるのかな?」
と思わせる空白をとるのは、あれは観てる者への配慮だった訳ですか、
それとも京都での通常の会話の間合いですか。
チョウチョウハッシとなにも考えずにやりとりしなきゃ
家族の会話じゃないですよ。
あんな、ざーとらしい過去の数シーンだけで、家族の「いい面」
を演出しないで欲しかったなあ。もっと小さく、消えるように小さく、
でも、ちゃんと存在するそれを書いて欲しかったなあ。
と、愚痴だけならどこまでも続く。
やはり、最近おいらの精神状態はあまりうまくないのか?(笑)
そうそう、三女。
「タオル」が、姉が白いので、自分が新聞おまけだった時に、すかさず
「ほらあ、やっぱり私だけ」
ってスネなきゃ。
そうじゃなきゃ、君のキャラじゃないぞ(笑)
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