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Kangeki Kansou Link : IPPO's part 1998

観劇感想りんく

一歩支部
SF副題は「緑の少女(なぜ、とかつっこまないように)
1997年   1999年

 1998年に観た芝居について。つらつらと思った事など。
 「 観劇感想りんく」参加。


観劇感想リンク:私のおしながき
1998年・11本
ユウダチソウ 芝居屋坂道ストア ☆☆☆
脳天気番長出馬する 劇団衛星 ☆☆☆☆
宇宙人のお兄ちゃんはドロドロ満月星人や アフロ13 ☆☆☆
ヴォルスの部屋 調 ☆☆☆
その男たちは鉄塔にいるという MONO ☆☆☆☆
足音のあと 南船北馬一団 ☆☆
キョウノコト。 夏目組
SOLARIS クロムモリブデン ☆☆☆
珊瑚抄 清流劇場 ☆☆☆
鈴虫のこえ、宵のホタル 三角フラスコ ☆☆☆
0007 −マダム・ルージュに愛をこめて− リリパット・アーミー ☆☆☆☆
観劇感想リンク:事務局
事務局 規約と書式解説 運営掲示版 演目総目次 そして全てを統べる 和田本部


芝居屋坂道ストア #9
『ユウダチソウ』
期間 1998年12月25日(金)〜12月27日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第六回
観劇日 12/27(日)M 座席 三列目中央 客席 ぼちぼち満席 チケット 当日券2300円
  独自の間合い。と笑い。とフィール。

 う〜ん。ちょっと☆x3はきついか? ☆x4にすべきか?
 いやいや、値段が高かったからこれぐらいにしとこうか。

 いかにも”芝居”という感じの”芝居”でした。
 かなり感覚面に頼った、というか、それを狙った品物。 ある女性の内面を形象化した、という風な物。 それでいてきちんと筋はある、と、思っていたのだが ……最後で判らなくなりました。
 役者の腕は一流未満、というとこでしょうか。 狙ってたそうしてたのならこれは失礼ですが、 これまたいかにも”芝居”風の口調、発声をしていました。 一部男優の発声が聞き取りにくかった、というのもありますね、特に前半。 一部動きに鮮やかさとキレがないとか、一部台詞を噛んでいたりとか、時に後半。

 こういう、つまり、「きちんとした物語」でない芝居というのに対して、 私は評価が低くなります。具体的になるかな、話してみると、 別に天使が出ても悪魔が出ても自分の中の”何か”が具象化した存在であろうと、 その登場は許すのですが、”それ”というか、”その役”の説明が、伏線が、 紹介が、しっかりしてないと、ニュアンスだけでなく、 きちんと台詞などで明確化されていないと 「なんか訳の判らん話やね」となる訳です。
 ところが! この芝居は違った。劇中時に訳の判らないモードになるのに、 最終的に全体が全て訳判らないモードになっているというのに、 それをするりと呑下してしまった。これはすごい。加点。

 結構笑ったのですが、その笑いがまた独特でした。
 ここもオリジナリティという事で加点。
 なんていうかね、私が好んでいた「馬鹿笑い」とは質から違うんです。 センスで笑わす、いや、センスでもないか、変さで笑わす、 間のおかしさで笑わす。いやいや。なんだかどれもぴったりこないなあ。
 とりあえず、役者さんが今真剣にやってるのかどうかが判らないのです。 言葉が悪いな。そのシーンを真剣なものとして設定しているのかどうか、ですね。 今私は黙っているべきなのか。「ワハハ」と笑うべきなのか。「クスッ」 と笑うべきなのか。結果からいうと、「クスッ」に近い笑いをしてたのですが。

 この笑いは更に磨きをかけてエスカレートして欲しいですね。 他では得がたい。

 セットは結構好きな細工でした。
 上手半面の壊れかけ2F建て。なんだか西部劇テイストでよし。
 下手半面に組まれた交差道路の使い方もうまかったです。

 舞台に居るのは一人の女性。
 舞台になっているのは崩れかけ木造アパート「ユウダチソウ」。
 彼女は只一人、子供の頃からここに住み続けていた。
 かつてある”事件”で立ち入り禁止になった事のあるこのアパートに。
 その”事件”がきっかけで、家族も、お隣さんも、 散っていったこのアパートに。
 彼女の周囲に沢山の人が集まって、かつての”事件”の話を解きながら、 舞台は進行します。
 彼女の幼馴染みの親友。駆け落ちばかりしてる姉。 2Fに住むあだっぽい女性。
 かつてお隣のチビだった高校生、その友人。新聞配達の男。
 そして時に幕合いの別次元から、フラッシュバックで現れ続ける 「お兄ちゃん」。
 兄の帰りを待ってるらしい彼女。そして兄と事件。むりやり忘れていた……

 と、そういう、「リアル」な舞台と思っていたのですが。
 最後の最後で「ひょっとしたらこれは全て彼女のインナースペース?」 とも解釈のとれる形で幕を降ろしたので。
 リアルとしたら、一体どう落ちがついたのかさっぱりでして。
 でもってリアルともインナーとも結局判断しがたかったりで。

 ここで「夢落ちかい!」とちゃぶ台ひっくり返したくなるのがいつもなのに、 そうはならずに結構納得してる自分が不思議な訳ですね、今回。
 ま、だからいい芝居だったんじゃないかなと。

 怒涛のエンディングと結末と理屈には、理解はしますが、 俺的に許可しがたい思想ではありました。やはり、 その感情のもうひとつ向こうまで、つまり、 ある意味での”正義”に近い「答え」まで裏打ちつきで示してくれないと、 この手のシリアステーマは最高評価しがたいですね。

 どうでもいい余談ですが。
 じろじろとねえちゃんを見つめ回して、それでいて文句も言われない、 警察にも訴えられない。芝居って、やっぱりいいですよねえ。(爆)

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 支部長 由信 はるお


劇団衛星
『脳天気番長出馬する』
期間 1998年12月18日(金)〜12月20日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第五回
観劇日 12/20(日)S 座席 中列下手 客席 満席 チケット 当日券1000円
  ギャグ! 馬鹿! オッケー(笑)!

 俺的な基準値において大ヒット。こういうのを期待して私は足を運んでます。 かなり密度も高く、筋も落ちもしっかりある。 そうだな、あとはもう少ししんみりしたラブラブや先公物語があればそれだけで 満ちたりているかな(笑)
 「役者の腕」を基準とした場合には、 さあて、どうかな? という所があるので、それが減点でしょうか。 発声、動作の歯切れ、目を惹かれてしまう魅力、そういう部分ですね。

 34才でまだ高校生をやっている番長。スライム宇宙人を倒したりもする。 ところがこれが「男なら」と突然選挙に出馬表明!
 ほんとに出馬してしまう(笑) ライバルは現れ〜の、 スキャンダルは発生し〜の、もう、登場人物は全員馬鹿ばっかり。
 イけるぜ!

 始まりは私的には少々寒く。なのに後ろの方からはよく通る女の子の笑い声が。
 なんかな〜? と思ってたのですが、 ずうっとおっかけてる固定ファンの娘のようですね。 彼女にはよく判るギャグ、「内輪ウケ」や「お約束」ですね、 が沢山あった様子です。判らなかったのは、ちとくやしいかな? 怒るかな?

 以下は、観てないと判らないですが。
 「女先生」役が非常に美人に見えました。
 時に豹変する(忍法も含めて)番長の演技が非常にうまいと思ってました。 喋り方や仕草一つで、全く別の人格に見えますから。あれは、芸です。 あれで笑いをとれる、とるのは、非常にプッシュする路線です。
 最初からでずっぱりの番長の彼女役、まさしく男の鏡でしょう。よくやった! (笑) 一緒に観た いあはーと氏 は、「最初女性だと思ってた」そうです。
 最前列中央は、今回非常に特殊な意味で特別席でした(笑)
 あとは……変化部分、ちょっと脈絡なく真剣になったかな? ぐらいか。

 以下は、観てても判らないですが。
 観劇後、「キョウノコト。」 で洗濯ものを干していた役者さんをロビーで見た気がしたのですが。 和田(制御盤)さんと「同じ人かなあ」と話してたのですが、 真実は闇の中。

評者:一歩  評価:☆☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 いあはーと iwamomo 由信


アフロ13  #1
『宇宙人のお兄ちゃんはドロドロ満月星人や』
期間 1998年12月18日(金)〜12月20日(日) 会場 京都大学吉田寮食堂
観劇日 12/19(土)S 座席 中列下手袖 客席 超満席 チケット 当日券学生500円
  歌って踊れる成長過程チーム。

 不器用な所は体力でカバー、という所か。
 喋りの量と運動量で言えば相当なものである。

 大きな筋は単純な一本。
 下流にある泥干ガタを見つめる女の子は、そこに宇宙船が沈んでいるという。 それに乗って月まで鬼ごっこで逃げると言う。不可解なその言葉の裏には、 かつてそこで自分を助ける為に死んだ兄の存在があった。 自分を宇宙人だと言っておちゃらける兄の存在が。
 「迫力」とか形容されるだろうその少女の魅力に巻かれて、やはり兄と弟 (妹?)という二人の兄弟が振り回され、 そしてその泥干ガタへと足を運んだ……

 と、いうもの。
 いかにも頭の悪そうな登場人物ばっかりで、 ああ、大阪下町の臭いがフンプンするぜえなどと ノスタルジィに浸るもよしだろう(笑)
 結論は、ない、に近いと思う。
「芝居に結論を求めるな」「感性や感情の表現手段なのだから」 「日常を切りとる断面図な表現手段なのだから」
とは一緒に見た 和田(制御盤)さん の意見。そういうものか。
 結論はないが、情動はあった。力技で、それは感じさせられた。加点。

 で。本筋である上述と絡んで、実はもう一本の筋がある。
 強引で理不尽でメチャメチャな(ある意味子供時代の心そのものを感じさせる) この話、場面転換がまた強烈。
 その度に話は別の、全く別の世界へとトランスし、 ものごっついキツい幕アイ小話を挟む事で「場面転換」をしてるのだ。
 キツい、というのは、ギャグが。んで、歌ったり踊ったりもする。

 邪推その1:書いたらシナリオが短かくて長く書き直せなかったので、 時間を埋めるのに短い一発ギャグ沢山混ぜた。 けど繋がらないので繋がらないままにした。
 邪推その2:実は馬鹿で寒いギャグがしたかったので、 芝居にするのに適当にシナリオをくっつけた。

 場所は大学にありがちな、崩れかけ木造といった所。
「上演中に寒くなりますので」と毛布をかけてくれたりしていた。
 私はこれ、「気候の為」にだと思っていたのだが、ひょっとしたら、 「ギャグの為」の意味もあったのかもしれない。体感温度として、間として、 確かにそれでも納得がいくのであった(笑)

 踊りは、それを求めたら駄目なんだろうが、 今時点ではまだ付け焼き刃な感じだった。
 ラストには、話とはほぼ関係しないが、 「カノン」という曲(だと思う)を日本語に意訳して歌ってくれた。 これはよかった。

 この、無関係にあった歌を、 そして幕合いに独立させてしまっていた時のノリを、 そしてすぐにギャグに逃げてしまわないでうまく真剣な部分を、 話の筋としっかりと絡めて演出してくれていたら、素敵だったと思う。

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 iwamomo リン


調(しらべ)
『ヴォルスの部屋』
期間 1997年12月15日(火)〜12月16日(水) 会場 都住創センター
観劇日 12/16(水)S 座席 前列下手袖 客席 ほぼ満席 チケット 当日券600円
  激突体当り! でも売られた喧嘩は買い損ねちゃったい

「美女5人がウハウハですぜ(嘘/誇張/誤解/曲訳アリ)」 という 和田さん の御推薦に釣られて行ってきました(笑)

 いやもうとにかく体当り演技としか言えない。 「女の意地見せます」との事だが、まさしくそんな感じである。 これを600円で観せて頂けたのはありがたいの一言。
 で、「体当り」と「うまい」の間には、 似てるし、共有する部分も沢山あるのだが、違う所もある。
 うまい芝居だったかと問われるとふと悩むとこもある、と。

 音大のメンバとの事で音にもこだわり。
 ピアノの直演奏で全てに音をつけている。
 芝居が始まる前に、BGMに流していてくれたのが気持ちよかった。
 芝居の始まりと終りにおいらの好きな歌 「翼をください」を歌ってくれたのもよかった。
 ええっと、ああ、ピアノ奏者さん、時に「なめらか」 でない指使いがあったと思う。
 と、音楽への感想とケチはこんなものかな。

 あと面白いというか、芝居の性質がね。
 客に喧嘩売ってた(笑)
 そらもうビシバシと(笑)
 残念ながら、私はこの喧嘩は買い損ねた、という感触。

 日常の中、 「いいひと」でありたいと思いながらもドロドロした所をひきずる主人公。 (芝居か何かを仕事としている人らしい。ん〜、メタ的表現。)
 前半、世間への不満コントあり〜の、 天使(善)と悪魔(悪)が戦ったり〜ので笑わせる、ポイント高し。
 俺的には、この路線を突き詰めてもっと笑わせて欲しかった(笑)
 転じて後半、心の中の捨て切れぬドロドロ=いや、つまり、 心の中核にある闇部分、へと話は焦点を結び直し、 感情の爆発、観客への喧嘩売りへ転じる。

 ここで心の深奥へと役者さんと共に旅立たされれば、 それはそれで名作なのだろう。
 旅立てば、この芝居を本当の意味で楽しめたのかもしれない。
 んが、俺的には、皮肉の目線でそういうのは見てしまう所あるからなあ。

 都住創センターは小さな所。 20人の立食パーティーをすればそれでもう全て埋まってしまうぐらいの空間。 彼我の距離がとても短くて楽しめた、というのは、 芝居とは又別の評価でしょうが、とりあえずメモ。

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩


MONO #23
『その男たちは鉄塔にいるという』
期間 1998年12月10日(木)〜12月13日(日) 会場 伊丹AIホール
観劇日 12/13(日)M 座席 2列めほぼ中央 客席 満席 チケット 当日券2500円
  ギャグ1級、シリアス1.5級。

 私が今まで観て覚えている中で3番以内に入る出来。
 高い値段払うとうまい芝居が観れるのか、となんか当たり前の事を納得。

 時はおそらく近未来、日本は海外派兵を、そしてゲリラ狩りをしていた。
 最前線に慰問として来た芸人4人は、近く一掃作戦があると聞き、 人殺しに加胆している自分らに嫌気がさし、衝動的にキャンプを脱走してしまう。 そして、ゲリラからも友軍からもある程度離れた鉄塔の中2階に居を構え、 一掃作戦が終ってしまうのを待つ。
 一週間。一週間すれば、そんな血生臭い作戦も終っているはずだ……
 同じく戦争が嫌で逃げ出してきた脱走兵も加え、5人は時に笑い、 時に喧嘩しながら時を待つ。戦場を考えず、戦争を考えず。

 漫才だか落語だかをしているというメンバ(そっちでは有名だそうな) が入っての芝居だとかで、故に、観客の女性(ファン)比率高し(笑)。
 その事実に非常に喜ぶも劇中は照明が落ちるので意味なし(涙)。
 受付のお姉さんも美人だったのだが、残念、 今回の芝居は男ばかり5人のシナリオ。って、 そういう目線だけで評価しちゃ男じゃないよね。 ある意味とても男らしいとも言えるが。(笑)

 芝居の内容、まさしく「喋って笑わせる」を職業としてる人物達の「間」 がありました。他の芝居ではあまり観た事ない、あの「アと言えばウン」 「チョウチョウとくればハッシ」とでもいう、 お笑い系ならではの間をおかない「間」による会話の呼吸。
 とにかく楽しい。

 一部俺的にすべってしまったギャグなどもあるし、 笑いにしろ、逆のベクトルにあるもの=登場人物同士のいがみあい、にしろ、 時にうまく歯車の合ってない瞬間をかいだりしましたが、許せる範囲でしょう。
 人の「嫌な」部分、「嫌いな」部分を、70%までは笑いと共に表現してしまい、 するっと喉に通してくれました。 (あと30%あれば、100点以上をあげるのだが。おしい)

 作者の一番に訴えたかった事が「戦争」にあったのなら、 私の中に確固として何かの主張、というのは残りませんでしたから、 あんまり成功じゃないですね。
 半端に生きてきた奴らなりのツッパリ、というのなら、ある程度納得です。
 もっと深読みしろと言われると困るけど、 そうでないならごっつう楽しかった芝居でした。

おまけ:脚本・土田さんの考えの一端


評者:一歩  評価:☆☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 いあはーと iwamomo 由信 はるお


南船北馬一団 #8
『足音のあと』
期間 1999年12月4日(金)〜12月7日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第四回
観劇日 12/4(金)S 座席 中列中央上手寄 客席 満席 チケット ?券?円
  舞台装置ベスト。テーマ不親切。

 入場一番、設置されてた舞台が素敵で、「おお、これは!」と期待するも、 話はよく判りませんでした。
 とある公園を舞台とした劇。
 塾帰りの小学生らが、残酷な遊び 「イケニエごっこ」 をして、自分らのペットを殺す。
 これが一軸。
 そして、その公園に住んでいるホームレスの老婆、 その老婆を取り巻く浮浪者仲間。
 これが更に一軸。

 二つの軸は時に交わり、時に分離しながら、
 芝居は終る。

 無惨さ、切なさみたいな所がテーマだったのでしょう。
 しかし、明文化されてない部分、雰囲気や観る人の主観や想像に頼る部分多く、 まだまだ未完成な感じ。

 もう少しテーマを詳細に書くと。
 小学生の方は、現代っ子の舌たらずな「恐さ」の提出と、 私達からは非常識に見えるその行為にも、実は彼らなりに 「規則」があるのだ、彼ら独自の常識が、別の世界があると知れ、 という提出でしょうか。
 ホームレスの方は、最底辺とはなにか、行き場がなくて、 どうしようもなくて今ここに居る、その現実の提出、でしょうか。
 両方を通じてあるのは、「甘えている」存在、がある事、 「甘えられない/甘える相手が居ない」所まで追い詰められた存在、がいる事。

 まあ、で、私の毎度の愚痴ですが、
「で、だから?」
 という疑問が浮上する訳ですな。結論は私には汲み取れませんでした。

 雰囲気のみで呑ませる舞台だとしても力量不足、でしょう。
 あの雰囲気を、明確に観客の胸に刻み、主張を感じさせる力量があれば、 オチを執拗に求めようとする私でも、また違った感想を持ったかもしれない。


 ここしばらく劇を見ての感想。
 まあ、やっぱりインディーズ。プロじゃない。
 10観て1アタリ、で満足しなきゃね。

評者:一歩  評価:☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 支部長


夏目組 #6
『キョウノコト。』
期間 1999年11月27日(金)〜11月29日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第三回
観劇日 11/28(土)S 座席 最前列中央 客席 満席 チケット ?券?円
  眠い、だるい、焦点不明。

 登場するのは、二人組x3。
 それぞれに、他のペアは無視してお互いだけの問答を行なう。

 現代風倦怠感と閃く感性だけで生きてるアベック。
 洗濯ものを干す美人とお茶の用意をする盲目青年。
 自転車に乗り登場し、キャベツをやりとりする兎男二人。

 訳判らん? 判らんでしょうねえ。私にも判らんでした。
 動きはほぼない。
 間が、意味深な台詞と台詞の間に長大に空く。
 筋は、判らない。

 あれっすね、エヴァの、エレベーターの中のシーンとか、 カヲル君をやるシーンとか、そういうので二時間つなげた感じです。
 あるいは、これは私だけの感想なのですが、 今借りて読んでるヴォネガットの 「スローターハウス5」 が、俺的にこんな感じと言うか。
(余談になるけど、 「フリーダム・ライディング」 の中でこの台詞が出てきた時、 おいらはにやりとしましたね)
 ひらめく台詞は、なんか、格好いい時があるんです。でも、 それに前後するシチュエーションに、時空間的に意味がくみとれない。 「抽象芸術」系。

 ああ。イライラした。
 私はあの空気を共有しなかった。

評者:一歩  評価:
観劇感想リンク 和田 一歩 iwamomo 支部長


清流劇場
『珊瑚抄』
期間 1999年11月13日(金)〜11月15日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第二回
観劇日 11/15(日)M 座席 中列中央 客席 満席 チケット ?券?円
  うまい、けどおもろない。

 役者さん最高。
 やりとりのペースが、感情の極端化(判りやすさ)がうまい。
 舞台効果なかなか。
 あんな少ない部品、単純な部品で、よくまあ様々に印象を描いてくれる。
 演技や行為の中に含まれる暗喩なんかもビリビリくる。

 でも、内容が俺的にアウト。
 悩める青年の内面を描き出す、系列なのだが。
 悩んで、追い詰められて、んで終り。
 こら。
 答えは何処だ。
 「オチがない」制御盤さん言。
 「日本の純文学はこんなのばっかりですよ」制御盤さん言。
 ははっん。おいらが純文学を、ほとんど読まず嫌いしてるのは、 どうやら正解だね。

 私が芝居に、映画に求めるのは、「救い」や「助け」である。
 「楽しみ」としてもいい。
 金を払ってまで、「堕ち様」を見てなにがいい。
 堕ちるだけなら、俺にもできる。俺だって堕ちてる。
 堕ち様のバリエーションを見たって、「堕ちる」本質において変わらず、 そこに魅力はない。
 堕ちた所から「どうはい上がる」か、少なくとも、 堕ちた所とどう「正面から向きあう」か。
 つまり、「その後」をどうするか。
 そこがないと意味0である。

 ひょっとしたら、堕ち方のバリエーションを見せて、「これは堕ちてるから、 この手のパターンにはまったら気をつけなさいね」と警句を発してるのか。
 それは、全然ないと思う。
 これを見て共感する人は「俺もその堕ち方をした」という人だろうし。
そうでない人は「こういう生き方もあるのか」と、それを「避ける」のではなく、 それに「はまる」方向でとらえると思う。
 語弊ありだが、「かっこいい」とでも言わす様な、いわばすがすがしさ、いや、 そうじゃあないな、ないけど、惹かれるモノみたいなのが、舞台にあるのだ。
 なまじ役者さんタチうまいだけに。
 「ああはなりたくない!」と心底からは思わせない。と言えば判るか。

 ああくそ、なんかすっごいまともで腹にズンとくる物語を、あの舞台で、 あの役者で見たかったぞ。

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 支部長


クロムモリブデン
『SOLARIS』
期間 1999年11月12日(木)〜11月15日(日) 会場 神戸アートビレッジセンター
観劇日 11/15(日)S 座席 最前列中央 客席 満席 チケット ?券?円
  舞台装置・照明ピカいち、色気あり。話の筋はなし。

 いやあ、SFやと思っていったんですが、  結局それってネタ、フレーバーにすぎない、全然別のものでした。

 「夢中夢」の、話の筋や結論的には全然判らん物語です。
 3つくらいの話が一応絡んでいますが、それぞれが、それぞれの見てる夢、 みたいな感じで進んだり、時に理不尽に展開したりします。
 結論的には、舞台終盤で語っていましたが、
「夢と現実に境界はない。理屈づけて解釈しようとするな」
 とかって。
 こら。
 本人がそれ言っちゃ駄目。それ、単に言い訳。

 で、この、夢見る、幻想が現実化する、  そのあたりでソラリス設定をひっぱってきて有効活用してる訳ですね。

 衣装がよかったですねえ。適度にスマート、エロス、洒落っけがあって。
 舞台もねえ。もう、これでもかって感じの「鉄とパイプ」でね。
 SF心くすぐるったら。
 音楽も証明も気合いはいってるし。
 時々混じるギャグもいけるし。

 でも、突然に踊りだし目が痛くなる程フラッシュかけ、 訳の判らん話をその力技でもってぶちきって場面転換、 でもって始まるのはまた別の「訳の判らん物語」じゃねえ。
 同じ訳の判らん、でも、出だしは気にいってるんだが。
 そこから、あの波長ともう少し現実波長な所をブレンドしてツッキってくれれば、 判らんなりに俺にも受けると思うのだが。


 ああくそ、なんかすっごいまともで腹にズンとくる物語を、あの舞台で、 あの役者で見たかったぞ。と、これまた。

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 iwamomo 支部長 はるお


三角フラスコ #11
『鈴虫のこえ、宵のホタル』
期間 1999年10月23日(金)〜10月25日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
OMS第一回
観劇日 10/?(?)? 座席 中列中央 客席 満席 チケット ?券?円
  私には少々「つらい」作品でした。

 真剣な芝居です。扱うテーマは「家族」です。

 舞台装置がイカしてました。
 客席を狭くしてでも作った奥行きのたっぷりとあるその舞台。 廊下に囲まれた、大きな田舎家の典型的な部屋です。 私も、自分の田舎の家を思い出しました。
 そして、時にスクリーンにもなる、縁側にかけられた簾。これがいい。 ナイスアイデア。
 舞台暗転した時には、あちこちに貼られた蛍光テープが蛍の色を発し、 夏の夜を見せてくれました……
 って、実はあれ、役者さんへの目印テープ兼用だったんだな、きっと。
 かしこい! かしこい! うまいぜ、ナイスアイデア!
 舞台装置へのこういう凝り方、に、私は絶賛です。


 さて、「つらい」と言った舞台の中身。
 3人の姉妹のみによる会話中心の劇です。
 3人はそれぞれに家を出て、ケーキ職人見習い、専門学校生、 OLとして働いています。
 家には父が、そしてその父とうまく行かず、かつぼけ始めている祖母が、 祖母の実子である母が居ました。
 その母が、突然の事故死をしたのです。
 盆にも帰らず、正月にすらひょっとしたら帰らなくなっていた姉妹が、 久しぶりに集い、そして、通夜が始まります。
 そして、その通夜を中心とした舞台が始まるのです。

 どこにでもある「家族」です。
 表面的には普通でも、内側にうまくいかない、 「どろどろ」を持った家族です。
 言わないけれどそれぞれに感じている「コンプレックス」 を抱えている姉妹です。
 そんな黒いものが、全て悪いベクトルの方で解放されます。
 相手を攻める、攻める、つッぱねる言葉で一気に全て紡がれます。

 おばあさんのおむつは誰が世話する、 晩御飯が口に合わないとぐちるアレをどうする、 父と祖母の冷たい喧嘩は、間に入る人間はすり切れる、 じいさんは施設に入れてぼけて死んだ、おじさんは金を借りにくる、 母は姉だけをえこひいきしていた、すねて仮病をした思い出、 正論だけど正論だけでは無理、では誰がその嫌な決断を下す、 下したくて下したのじゃないそれを、下す決断を放棄した誰かが攻める……

 ほらあ、心あたりが沢山。(笑)

 これは笑えない。
 作者や役者が笑わせようとしてない(のだろう)だけに、なおさら笑えない。

 全員が背負う十字架としてそれを抱えていこうという思いのないものに、 つらいもの、おもいものから逃げたいと思うものに、 家に、祖母に、親戚に、田舎に、 そんなものに暗さしか感じれなくなったものに。

 ああ、つれえ。

 誰もが我儘です。
 誰もが自分が泥をかぶるのはいやがります。
 姉妹でも、押しつけ合います。
 共同してあたるのではないのです。


 特に三女は、世の全てに刺を持って対応していました。
 あれ、演技? ならいいけど。普段からそうなら、 あんた、背中がすすけてるぜ?(笑)
 特に二女は、ゴーイング・マイウエイでした。
 特に長女は、ええかっこしいの世話焼きでした。

 そして、ばあさん。
 舞台には出なかった、三人の言葉だけで語られるばあさん……

 うちのばあさんも、今は天です。
 ぼけて、ハイカイして、だあ、心あたりがありすぎる。

 あかん。つらい。見れん。


 救いは?
 結論は?
 ……私の理解できた範囲で、この芝居で、これらの感情、問題に、 全て答えは出ていませんでした。
 もうすぐ祖母は死ぬだろう、というのが、ひょっとしたら救いなのですか?
 問題解決方法なのですか?
 あれだけの黒い部分を放出しておいて、 それら全てを解決するのではなくチャイにして、 手をつないで和解して終るのですか?

 次こそは、同じ過ちをしない。
 既にした過ちをいかにして自分らはつぐなう。
 その、答えは何処ですか?

 全てを許せるのが、というか、無許可で共に居れるのが家族だ、 とは思います。
 でも、この芝居はそれが結論じゃないです。
 その特性を利用して結論をうやむやにしちゃった話です。

 それを結論にするなら、もっと家族の「楽しい面」を、 普段からの会話にひそむ「敵意」だけじゃない、その逆ベクトルを、 もっともっとひそませるベきです。
 あるいは、あれですか? 単に役者が下手で、 会話のノリがまずかっただけですか?
 会話の間に、「あ、いま台詞を思い出そうとしてるのかな?」 と思わせる空白をとるのは、あれは観てる者への配慮だった訳ですか、 それとも京都での通常の会話の間合いですか。
 チョウチョウハッシとなにも考えずにやりとりしなきゃ 家族の会話じゃないですよ。

 あんな、ざーとらしい過去の数シーンだけで、家族の「いい面」 を演出しないで欲しかったなあ。もっと小さく、消えるように小さく、 でも、ちゃんと存在するそれを書いて欲しかったなあ。

 と、愚痴だけならどこまでも続く。
 やはり、最近おいらの精神状態はあまりうまくないのか?(笑)


 そうそう、三女。
 「タオル」が、姉が白いので、自分が新聞おまけだった時に、すかさず
「ほらあ、やっぱり私だけ」
 ってスネなきゃ。  そうじゃなきゃ、君のキャラじゃないぞ(笑)

評者:一歩  評価:☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 iwamomo 支部長


リリパット・アーミー #34
『0007 −マダム・ルージュに愛を込めて−』
期間 1999年10月7日(水)〜10月18日(日) 会場 扇町ミュージアムスクエア
観劇日 10/11(日)? 座席 桟敷中列下手寄 客席 満席 チケット ?券?円
  リパット・アーミーは面白い!!

 今回は 「0007 マダム・ルージュに愛を込めて」 という事で、 「正しい”007”のパロディ」 という品物だった。
 中身は一応3部構成、つまり、 コードネーム0007、ジェームス・ボンド君が3つの事件を渡り歩く訳だ。
 まずはロシア、世界を滅ぼすという細菌兵器の奪取と冷凍に、
 そして中国、レーザー兵器の焦点となる大型宝石の爆破に、
 更にアラビア、核兵器売買を行なうという秘密シンジケートの壊滅に……

 そしてそしてお約束、毎回「美女」が現れて、彼ボンド君を助けてくれる。

 そう、「お約束」である。これこそが大阪芸人の心意気なのである(うそ?) (笑)

 和田さん の語る
「大阪の芝居は”寒い”、そこがいい。」
 と語るこの”寒い”こそは、私が今表現した”お約束”と同義、 もしくは類義と思う。また彼は
「ギャグがすべる。そのすべった所で笑いをとる」
 とも語った。うんうん、その表現も良く判る。その通りなのだ。

 てな訳で、 和田さん、 ありがとうございました。
 今日も又面白いものを観させて貰いました。
 大阪ナビゲートさせたら日本いちっ! よっ!!

評者:一歩  評価:☆☆☆☆
観劇感想リンク 和田 一歩 いあはーと 支部長 はるお



評者:一歩 の思う所



 その観劇姿勢など。

 芝居を観だしたのは、ひとえに 和田さん (又の名は制御盤さん)に誘われたから。
 必ず5割、いや、無理でも3割は、冷静に、シニカルに、理性的に舞台を観よう、 っていうか、誰が笑ってやるものかという姿勢を保とうというのが一応方針。
 感想はけなし専門。

 プラス評価は
1)ギャグ
2)オチ(結末がきちんとついてる)
3)エンターテイメント(シリアス含む)
 マイナス評価は
1)ピンボケ(判りやすく)
2)眠気(静か過ぎず)

 笑わしてくれて、かつ、後味がすっきりしてれば最高ってわけ。

 強度の眼鏡着用による眼労と、 不節制な生活によるバイオリズム崩壊の為、始終アクビをしています。
 が、これは劇がつまらないとかとは全くの無関係ですので、 大口開けている馬鹿を見ても皆様怒らないで下さい。


 観たの一覧は こちら になりますね。



 ☆の数についてなど。

 一応、五段階評価。

☆☆☆☆☆ 理想!(絶対出ない(笑))
☆☆☆☆ 完璧おもろい! 〜 並よりマシ
☆☆☆ 並 〜 一点買い
☆☆ 意欲は買う


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