All people be HAYAKAWA'N
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<<一億総ハヤカワ化計画12>>
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: Presented by IPPO :
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積読(つんどく)といい、乱読(らんどく)という。未読(みどく)
山脈なんてのもある。
楽読(らくどく)だとか放読(ほっとく)だとか言うのもあるのだろうか。
読読(よんどく)とか駆読(くどく)とか猛読(もうどく)とか致死読(ちしどく)
とか。
ま、なんにせよ、こんな語呂には惹かれるモノがあったりするのだ。
……ひょっとして、俺が駄目駄目なのだろうか(笑)
ま、とにかく、そういう訳で最近読んだ本の御紹介〜。ハヤカワSFに偏らず、
ファンタジーやら、ソウゲンやら、幅広く読んでます、ここんとこ。
そうそう、もう一つ御報告。こないだハヤカワ計画で紹介した冊数を
(かなりいい加減な数え方なんですけどね(汗))数えてみたところ、
どうやらそろそろ100冊を突破した様なんですよ、今回含めて。
100冊。
う〜ん。早川なんか通し番号で既に1000を越えてるんだから、
1/10にだっておいついてない訳だけど、それでも、こう、
よしよしと思える所がありますねえ。継続は力なり。頑張ろっと。
(その割りに今回はなんだか冴えない本が半数な訳ですが(爆))
ということで、まずは早川ファンタジー二連発ぐらいしときましょか。
竜王伝説 1 −妖獣あらわる!−
竜王伝説 2 −魔の城塞都市−
竜王伝説 3 −金の瞳の狼−
竜王伝説 4 −闇の追撃−
竜王伝説 5 −竜王めざめる!−
《時の車輪》 |
ロバート・ジョーダン |
THE EYE OF THE WORLD
- THE WHEEL OF TIME - |
Robert Jordan
一九九七年発行 1990
一九九七年発行 1990
一九九八年発行 1990
一九九八年発行 1990
一九九八年発行 1990 |
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良くも悪くも、普通のファンタジー、という所である。
ファンタジーはファンタジーでも、童話系列、というのではもちろんなく、
剣と魔法、城に住む王と闇に住む魔物、そして伝説と神話に彩られた騎士、
そういう世界ね。
(誰だったかが「ライト・ファンタジー」の対極として「重ファンタジー」
というサブジャンルの称し方をしていましたが、そういうものです。)
そんなのはありきたり、食傷した、というアメリカで、
それでもブレイクしたのがこのシリーズだという。何が一体売りだったのか。
分析してみて思うのは、キャラの造詣、というよりは、
書き込みの丁寧さである。(って、それを言うなら
「ゲド戦記」はどうなんだという反論がありそうかな?(笑))
沢山の主要登場人物が登場し、
だが誰も手抜きされる事なくとても生き生きと彼らが描かれ、
それに行数をとられてやたらぶ厚い本になっており、
なのにそれが苦にならずすらすらと読めていく。
やるな、とも思うが、さりとて、だからこれは面白い本かというと、
そうでもない。俺としては、あってもなくてもいいようなシリーズ、
としか評価できない。
背表紙を虹色に塗ってまで力入れて売り出したシリーズのようなのだが、
さてさて。
今回刊行された5冊が、実は海外での1冊にあたり、しかも、
続編が続いて現在3冊まであるとか……先は長い(けど、
話の進行としては短い:前述の通り行数はあっても経過時間は短い)
話である。
世界のあらすじ。
世界には光の力と闇の力があり、その二つが戦っている。
そして、世界は幾つかの「時代」と呼ばれる相を、ゆっくりと、
だが確実に巡り続ける。時の車輪(タイムホイール)は回り続けるのだ……
かつて、世には大いなる光の力を自由に駆使した「竜王」が居た。
そして闇の力に誘われて魔と化した「闇王」が居た。両者は戦い、
一度は竜王が勝ったものの、封じられた闇王は脱走し、復讐の牙を向いたのだ。
その攻撃は直接にではなく、光の魔力の源泉を汚染する事にあった。
超能力を使おうと光の民の男がその泉に手を伸ばした時、闇が混じり、
彼を狂わす。竜王は自らの手で妃を、家族を殺し、国を、
更には世界の半分を滅ぼした。
世界には、恐るべき「闇王」の、そしてやはり恐怖の狂王「竜王」
の伝説が残る事になる。
そして、魔法使い達は?
大きな力を操れる男の魔法使い達は、源泉に触れれば狂い、魔となり、
そして死んだ。
比較的小さな力しか操れぬ女の魔法使い達の源泉は、
汚されるのをまぬがれており、故に生き伸びたが、その力は異端として、
一般からは尊敬とも畏怖ともつかぬ感情を持たれる様になった。
そして時の車輪は回る。
今、世界には伝説があった。
竜王が転生する、という伝説が……
第一巻のあらすじ。
辺境の村で、仲良し三人組の青年 マット・ペリン・ランド
は春祭りを楽しみにしていた。
ランドは宿屋の娘エグウェーンをどう誘ったものか思案中。
だが、今年はなんだかおかしい。冬が異常に長く、まだ植物が芽ぶかない。
あちこちの土地では、竜王を語る男が現れては兵を起こし、倒されている。
折しも村には護衛士ラン、異能者モイレインが現れ、何かを待っている様子……
そして祭りは惨劇と化した。今まで物語の中だけの存在だった化物、
闇王の配下トロロークが村を襲ったのだ!
なんとか生き残った青年三人にモイレインは話す。これは、
転生した竜王を狙う襲撃だったのだ、と。そして、それは貴方達三人のうちの
誰かなのだ、と……
闇王の攻撃をかわすには、異能者の本拠へと逃げ込むしかない。そう説かれ、
三人の逃避行が始まる。
いや、村の賢女ナイニーヴやエグウェーンまでもを巻き込んで。
第二巻のあらすじ。
「我が配下に下れ。」
三人の夢に繰り返し現れ、そう囁やく闇王。やみくもに逃げ続ける一行。
パーティーは、様々なサブキャラ達と物語を編みながら流れていく。
ランドは不思議な予言を聞く事になり、
マットは呪われた財宝に手を出してしまって徐々に狂い始める。
敵の再びの襲撃。
一行は、幾つかのグループに分断された。
第三巻のあらすじ。
皆からはぐれたペリンとエグウェーンは、
それでも合流しようと先を急いでいた。
そして、狼を友だと語る金色の眼をした男に出会い、助けて貰う事になる。
彼はペリンをも友、と呼び、古い血を起こせ、と語りかけた。
いつしか、ペリンの瞳も金色を帯び、そして、狼と意志を疎通できる様に……
第四巻のあらすじ。
闇王の襲撃は執拗だった。
悪霊の呪いにどんどんとりつかれ、狂っていくマット。
ようやくの事、ある街で、パーティーはもう一度合流する。
街では、偽の竜王が捕らえられ、それを曝す為のパレードが組まれていた。
それを見物しようとうろうろしていたランドは、
うっかり王族の家に足を踏み入れ、王女と親しくなってしまう。
運命はどう流れているのか。
第五巻のあらすじ。
ここに来てパーティーには時間がなくなる。
行く先を異能者の本拠地から秘宝の隠された地へと変更し、
ギリギリ闇王の追跡をかわしながら道中は続く。
そして、その秘宝に触れた時、ランドは知った。
自分が転生した竜王である事を。
一瞬で彼は力を発揮し、追っ手を全滅させる。
竜王。
……そんなものには、なりたくなかった。
異能者内部でも確執や派閥のあるらしい事や、
主人公ランドが父から貰った剣は、実はいわくのあるものだとか、
護衛士ランも、実はちょいいわくのある身分だとか、
もう、設定や伏線は盛り沢山、でも、
全然混乱する事はなくスラスラと読めていきます。
俺としては、なんちゅーか、求心力に欠けますが、
素人にはファンタジー入門として、
玄人には久しぶりのまともなファンタジーとして、
受け入れられるのではと思います。
長さだけですかね(中身の量に比して、の)、あえて言えば気になるのは。
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宮廷魔術師は大忙し!
《マジカルランド4》 |
ロバート・アスプリン |
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Hit or Myth |
Robert Asprin
一九九八年発行 1983 |
旅先でふらりと本屋に寄ってみれば。あらまあ、出ているではないですか。
早速買って読みました。
そして納得。うん、やっぱり
「銀河おさがわせ」
を書いたその人だ!
駄目野郎共、というか、個性的”すぎる”奴らを取りまとめながらの大脱線。
こういうのはうまくノせないと、上滑りしてしまい、「ふうん、それで?」とか、
「あらあ、もう終り? なんもなかったね」とかになってしまう、訳です。
実際、今までの三冊にはその味がなきにしもあらずだった訳ですが、
今回はかなり地に足つけて踊っている感じがあります。やっと、
ノリと話が同調しだしたとでも言いましょうか。
そう、ついに我らの「偉大なるスキーヴ」君が、気合いをかけて、
(無理矢理にしろ(笑))それなりの成長と一人だちを見せてくれるのです!
これですね。今までスキーヴが只のお荷物になり下がっていた事、
そのあたりが私の興をそぐ要因だったのでしょう、その彼がしっかりと根を張り、
成長を見せ、いつものジタバタを切り抜けてくれるのです!
いいねえ、うん。
そういう「気持ちいい成長」を書いてくれるあたりでも、
うん、銀河おさわがせの人だなあとジィンとくる訳です。
今回の話は、実は二部からなっています。
そのあたり、こう、ちょっとバランスが悪いなあというか、
どうせなら一冊使ってゆっくりじっくり書いて欲しいドタバタだよなあとか
(これは今回に限らず、いつも思いますね。筆滑べり過ぎてるよ、というか。
あるいは翻訳が軽過ぎるのかな?)思いますね。
前半での一押しは、やはりあの女王様でしょう。
あの色気でもう少し攻めて欲しかった、は、男だけの願望かねえ(笑)
あらすじ。
師匠が帰ってしまった! 一人だちをヨギなくされてしまった主人公スキーヴ。
そんな時に限って、いつもの通り悶着は勃発する。
国王の休暇願い、隣国女王との結婚話。
ジェリー御大達を追って現れる借金とり=マフィア、
スキーヴに弟子入り志願に現れるマッシャ。
独力で、なんとかなるのか? 本当に?
……て、あれ? おいら、この話の前
(1〜3巻)、まだ紹介してない?
あいたたた、こいつは失礼致しました、と。早急に対処せねば。
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で、早川ですらないファンタジーとかも、ある。
西の善き魔女(3)
薔薇の名前 |
荻原規子 |
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Noriko Ogiwara
中央公論社 C.NOVELS 1998年発行 |
ええっと。
巻を追うごとに、
どんどんどうでもよくなってくるなあ(笑)
「竜」と呼ばれていたのが実は「恐竜」であるという事、
やはり王家には秘められた建国の秘密が隠されているらしい事、
というあたりが、設定サイドから見た場合の新規な点でしょうか。
後はもう、あーもー勝手にしてくれって感じ。いや、
ファンの人には悪いんだけどさ(笑)
甘甘で常道なラブコメをやってくれています、登場人物達。
あらすじ。
ついにヒロインと王女は、勢力争い渦巻く宮廷へと足を踏み入れた。
ちゃくちゃくと、それぞれの勢力の準備は整い、小競合いが始まり、
どんどん抜き差しならぬ立場へ追い込まれ、あるいは、
陰謀の的へと変わっていく。
幼馴染みの少年も、それに合わせて濁流に呑まれ、そして消えた。
暗殺を請け負い、黒幕の一人に始末をつけて、少年は姿を消す。
ヒロインは全ての身分を捨て、南に行ったと思われる彼を追う事を決心した。
折しも、南では竜が現れたとの知らせ。その倒罰隊へと付き添って、
ヒロインも南へ、建国の謎が隠されているらしい土地へと向かう事になった。
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ここからは、まぢめ(?)に早川SFを紹介ね。
レッドシフト・ランデヴー |
ジョン・E・スティス |
REDSHIFT RENDEZVOUS |
John E. Stith
一九九一年発行 1990 |
何と言うか、こんな言い方が正しくないのは判っているが、
ハチャメチャSFである。
作者は熱列なSFファンで、
同人活動やコンベンション活動を活発にしてるそうで、
各章のタイトルは有名SFの名をもじっているそうで、
うん、そういう感じだねえという話なのです。
話自身は至ってシリアス、なはずなのですが、
そこに持ち込まれる小道具というのか社会観というのか、
登場人物達のステロタイプがというのか、つまり、
そういう所が、ファンらしいふざけ方をしてるみたいなんです。
ファン魂を捧げて出来た、SF世界へのオマージュ、とでも言うのかなあ。
あかん、自分で言っててよう判らんわ。
さくっと粗筋に行きましょう。私の読後評価は、あまり高くありません、
この本。ツボを外しましたね。
あらすじ。
レッドシフト。ワープ中の船の中では、その現象が世界を覆う。
光速が極端に遅くなる為に、「光より速く走る」事が簡単に出来てしまうのだ。
今見えている景色は、数秒、いや、船の動力源に近い所では、
数分前の状態でしかなくなる。また、ドップラー効果やら、
光の屈折やらも絡んで、妙な色やら方向やらが見えたりもする、
なんともマジックミラーな世界なのだ。
この船に勤めるカモクなパイロットが主人公。
彼には背負っている過去があるのは、いずれ作中で明らかにされる。
そして、彼の乗り組む船、レッドシフトの中で事件が起きたのだ。
事態は急転直下、彼自身の過去とも絡みながら、
犯罪組織の陰謀が明らかになっていく……
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緑の少女(上・下) |
エイミー・トムスン |
THE COLOR OF DISTANCE |
Amy Thomson
一九九六年発行 1995 |
「ヴァーチャル・ガール」
で一発私の気をひいた、
エイミー・トムスンの第二作。
エイリアンとのファースト・コンタクトものである。
というか、サバイバルな話かも。
エイリアンの星が、文化が、そしてその姿や心が、非常に細やかに、
異質に、それでいて共感できる形で書かれている所が異色(笑・色かあ)
の出来である。よくぞここまで設定を練り上げてくれた、という感じ。
その一事だけでも、星をあげたくなる出来の「SF」である。
そう、特に文化。これの書き込みが素敵。
そして只のファーストコンタクトとしてでなく、その背景となる社会まで、
巻き込み、踏まえた、その緻密さが素敵である。
一概に、異星にしろ異文化にしろ、最初に接触した時は
「相手に何も影響を与えるな」
というのが鉄則である。相手の文化を「汚染」する心配からのものである。
だが、ここで作者はこう言っている。「お互いに接触する、
それはお互いに影響を与え合う事だ。それを「汚染」と呼ぶのなら、
汚染は接触の本質に他ならない」と。
そしてその言葉の通り、一人異なる星で、
異なる人々と暮らす物語のヒロインは、
たった一人であるに関わらず、ほとんど何も道具を持たないのに関わらず、
大きく相手に影響を与え、また、与えられていく。
そして文化は「汚染」され、姿を変えていく。
いいではないか。それが「生きている」事なのだから。
そんな事も思わせた。
原題に含まれる「色」の意味は、
この皮膚に模様を描いて会話するエイリアンのあたりから、
「距離」の方はそんなエイリアン達との距離、つまり、つき合うスタンス、
みたいな所にあるらしい。なんだか蘊蓄な話である。それはそれとしてだね、
和題の「少女」の部分。幾らなんでも「少女」じゃあないと思うんだけどなあ
(笑)
あらすじ。
未知の惑星のジャングルで、未知の環境要因に侵されて、
探査員ジュナは死にかけていた。
その時、ジャングルから、彼らが、
今までその存在すら知られて居なかった種族テンドゥが現れ、
彼女を救った。
彼らは、両生類から進化した、この星の原住民である。
お互いの間の意思疎通は、声を出しての「言葉」ではなく、
皮膚表面に自在に模様と色を浮かべて「皮膚言語」で会話する。
また、生理化学的な操作について本能的な才能と機関(相手の体に打ち込む針)
を持ち合わせ、
これによりより深く細やかな感情的結合やナノテク的手術を可能としている。
そう、その力を用いて、彼女はこの惑星に「適応」させられたのだ。
皮膚は分厚くなり、体組織は変化し、その姿は、そして中身も、
限りなくテンドゥに近い、一見グロテスクな姿態を持つ「改造人間」として。
もちろん、
この惑星で(スペーススーツもなしに)生きていく為にはそれが必要だったし、
純粋に善意から行なわれた改造だった。
気がついた時には既に全てが終っており、探査船は帰路についており、
エマージェンシーを発しはしたが、向かえが来るのは数年後。
異星の上で、異星人達の中、異質な文化の中で、異なる体を(そう、
その機能はおろか使い方すら判らぬ体だ)持て余しながら、
ヒロインのサバイバルが始まる。
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辺境の人々 |
オースン・スコット・カード |
THE FOLK OF THE FRINGE |
Orson Scott Card
一九九三年発行 1989 |
うーん。
カードだねえ。
……それ以上どうにも言えないよ、こりゃ(笑)
シチュエーション的にも、テーマ的にも、かなり
「ポストマン」
に近いものがあるかな。
自分達が只の「個」ではなく、
ある「国」という大きな単位の中にある欠かせぬ部品なのだ、
という自覚こそが、人間と獣の間を隔てるものだ、というか。
そこからくる情愛や情けこそが、人の一番大事な部分だ、というか。
あらすじ。
確かに、戦争で人口は激減した。だが、
それ程までに悲惨になった訳でもなかった。
世界大戦を潜り抜けた近未来のアメリカ大陸。
世界は確実に前世紀とは違う道を歩き出していた。
スペアが無くなり、壊れていく電化製品。修理のしようがなくなり、
停止したエンジン。ゆっくりと、ゆっくりと、文明は姿を消し、
白人の姿が少なくなり、大陸は昔の姿を取り戻していく。
そんな、どこか滅びを、もしくは回帰を思わせる雰囲気の中、
湖の側でなんとか自活を営む巨大なコロニーがあった。
彼らはモルモン教徒であり、静かに、只静かに暮らしていた。
そんな町を目指す人、そんな町で暮らす人、そんな町から離れる人。
幾つかの、辺境をさまよい生きる人々の瞬間を綴った、連作短篇集。
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スロー・リバー |
ニコラ・グリフィス |
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SLOW RIVER |
Nicola Griffith
1998年発行 1995 |
ネビュラ賞受賞。
全体を通じてながれていく、なんと表現しようか、そう、「詩感」が、
私の心の波長にチューニングしちまった物語でした。
常に主人公ローアの視点と感情を持って、物語は進行します。
後に粗筋で書きますが、三つの時の中をくるくると回りながら話は語られますが、
そういう風に視点が固定されてる為か、混乱は全然しませんでした。
全編を通じて、主人公のおびえが伝わってくる様な、
そういう繊細な所のある物語です。
反面、そういう、なんというか、ナルシスな世界の捕らえ方、
壊れやすい様な、身勝手な様な、自分以外の全ての登場人物が薄っぺらい様な、
そういう感じな世界の捕らえ方も少し鼻につきますが。
そう。どこか根底で、逃げ続けている主人公を、
私は強く感じるのかもしれません。だからこそ完全にこの作品を賛美しえず、
同時に、けなし切れない。
そういう、とても心に涼しくもグッとくる所もある、
なかなかイイ雰囲気の物語です。
作者はレズビアンの女性との事。そう言われるとフムムと思う所もあります。
退排的でありながら、どこか反発よりも哀感を漂わせる世界。
何かの物理的に大きいイベントが発生する、というよりも、
ひたすらに内面的に追いかけられた、感情に立脚する起伏と大イベント、
を主体にした物語の世界。
男にはちょっと思いつかないだろうなと、書けないだろうな、
という、そういう世界。
一番それを思ったのは、何と言うか、逃げ続けていた主人公の立ち直り方。
ただ黙って、少しずつ前へ前へと進む姿と、華々しく相手の非を攻める姿。
男だとこれは逆だと思うんですよね。相手を叩くのはズバーンとやっちゃうか、
ずうぅっとやり続けるか、で、そして「俺はこんなに進歩するぜい!」
と華々しく自分の功績みたいなのを誇ってハッピーエンドする。
「貴方はやっちゃいけない事をやった」と攻撃し裁くのでなく、
「貴方はやるべき事をやっていなかった」と責めるその姿とかも。
なんだか新鮮に視点を切替えましたね、同時に、嫌な気分も。
って、これはきっと痛い所を突かれたという事だろうなあ(笑)
パラパラめくって見て、その雰囲気に取り込まれたなら、
読んで損のない一冊です。そうでなければ苦痛かもしれないが(笑)
あらすじ。
主人公ローアは、ダウンタウンの川べりに倒れて、否、捨てられて、いた。
何も持たず、そう、裸で。背中に血を流す大怪我を背負って。
そこから物語は始まる。
それまでのローアは、大富豪一族の末娘だった。
優秀な専門知識と企業経営の人だった。
水質浄化等今の世界にかかせぬ分野に関わるバイオテクノロジーを独占する
一族の。そして、彼女は誘拐され、払われるはずだった身代金は払われず、
彼女は犯人達に捨てられたのだ。
それからのローアは、非合法な世界の住人だった。
拾い治療してくれた女ハッカーと共に、只生きる為だけになんであろうとする、
人としての自尊心を捨て、野良猫としての警戒心と他者切捨ての心を持った。
蝕まれていく自分の心を見つめながら尚その姿勢で生きていく人達の中で、
もとの家族の元には戻れない、と決心を固めながら。
そして、今のローアは、偽りの名と偽りのIDを利用して、
表の世界に別人として復帰しようとする人だった。汚水処理場に勤める、
ただの平社員、一番の汚れ仕事をする肉体労働者の。
3つの時間の中を一人の視点で泳ぐ形で物語は進行し、
その時その時の人間関係が、そして感情が、おびえが描写され、そして
「何故家族は身代金を払わなかったのか?」という謎が、
そしてそれに纏わる全てが、徐々に、最後にはドミノの様に展開されていく。
全てが終った時、ローアは「誰」に変わっているのか。
いつでも、そのかたわらでは変わる事なく川がながれていた。ゆっくりと。
発掘 Reference
-
ぴかさんの書評
- SFマガジンレビュアー
渡辺英樹さんの書評
- 独断と偏見のSF&科学書評な
森山和道さんの書評
-
森下一仁さんの書評
-
ファンタジア領は
かつきよしひろさんの書評
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銀の髪のローワン
《九星系連盟1》 |
アン・マキャフリィ |
THE ROWAN |
Anne McCaffrey
一九九三年発行 1990 |
後々「ローワン・シリーズ」と呼ばれ、正式には「九星系連盟シリーズ」
と銘うたれたシリーズの、記念すべき第一冊です。
いやあ、
二巻、
三巻、
四巻
と紹介しておきながら、カンジンの第一巻については忘れていましたわ(笑)
もとは、「塔の中の姫君」という、エスパーものの短篇でした。
それを大幅に加筆(つうか、その短篇のシーンの前後、そう、特に前の方、
その少女が成長して彼女に育つまでが主体かな)してできたのがこの本。
ぐぐっとマキャフリィ節の効いた、ファンには答えられない一冊でしょう。
少女の成長もの、といったのが好きな方にもお勧めです。
こういう感情的な機微というのでしょうか、書かせたらうまいですよね、
マキャフリィって。
そうやってヒロインが恵まれた世界をゆうゆうと満喫する所が御都合主義だ、
と怒る人もいるんですけど、いいじゃないですか、それはそれで。
これの前日談(冒頭でも数ページだけ触れられている
ヘンリー・ダロウ達の物語)が、実は
「ペガサスに乗る」と
「ペガサスで飛ぶ」
だったりします。能力者達が人権と尊敬を勝ちとっていく物語。
合わせて読むと最高。
まあ、それを言うとこの世界は実は
「歌う船」シリーズと世界を共有してたりとか、
「クリスタル・シンガー」シリーズとも共有してたりとか、
更には
「パーンの竜騎士」シリーズも実はサブセットらしいとか、
どれもこれもマキャフリィのを読まないといけなくなる訳ですけど……(笑)
(「恐竜惑星」シリーズもそうらしい(笑)<3巻、でてないのかなあ)
あらすじ。
人類は他恒星へとその版図を広げ、尚拡大を続けていた。
この世界での恒星間流通の大半は、
主に「タワー」が、そうつまり、エスパー達が巨大発電機の力を借り、
テレポーテーションで行なっている!
能力を持つ人や家族は、いわばエリート、高い教育を受けた人、
そういう認識のある世界、それがこの物語の舞台である。
ある日、ある開発惑星で、町一つを呑み込む山津波が発生。
一瞬で土砂の中に埋められた少女は、その恐怖の故に能力を花開かせた。
「マミイィ!」
その叫びは、惑星全土を覆い、あらゆるタラント(能力者)
の頭に響き渡った。恐るべきとも形容できる程の力だった。
貴重な、それもこれほどの能力者を失う訳にはいかない!
総力を上げて救助作業は続けられ、やがて少女は救出された。
生来のものか、恐怖の為か、その髪は一筋も色の混じらぬ銀髪。
そして、精神錯乱に近い彼女の治療の為、彼女の記憶は失われた。
記録も一緒に土砂に埋もれた為、身元確認も出来ず、名前も判らない。
かつてあった(今は土砂に埋もれてもうない)その町の唯一の生き残りとして、
少女は「ローワン」と呼ばれた。
そして、少女の新しい生活が、教育が、始まる。
エリートとして。タラントとして。成人した暁には「タワー」
をきりもみしていく「プライム」、一等級能力者、主任技師、
メインオペレーターとして、の教育が。
「普通の子供」としては暮らせない、彼女の新しい生活が。
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こちら異星人対策局 |
ゴードン・R・ディクスン |
THE MAGNIFICENT WILF |
Gordon R. Dickson
一九九八年発行 1995 |
さて。
なんと評価してよいのやら、の一冊である。
楽しく読んだ。
読んだけど、あちこちの書評でささやかれている評価に反論できるほど
熱狂した訳ではない。まあ、こんなもんって、ところかな。
時間潰しに、100円払って買って、バハハと笑いながら読む。
それぐらいの価値を認めよう。
実際、古本屋で100円で買ったんで、損はしなかった、とね。
話の雰囲気は、本書の後書きにもあるが「奥様は魔女」な感じ
(そう、クライマックスから見ても、原題から見ても、
重心は夫婦のうちの夫君よりも奥さんの方にあるよな(笑)。
原題の意味は
ぴかさんの所
でも見て下さい)の、
軽〜い感じのSFコメディ。話の筋も展開もオチもありがち。
だけど、そのパターンがいいんだって向きもあるだろうしなあ。
これで、キャラ造形にひとひねり、でなきゃ、
出てくるエイリアンに深い深みと味つけ、でなきゃ、
展開となるトンチにシャーロックばりの鮮やかさかミステリ、があれば、
傑作になるのになあ。
うん。そんな感じ。
かつてアシモフは「SFでミステリは書けないよ。どんな不可能犯罪でも、
都合よく光線銃や転送機や翻訳装置が出てきて可能になってしまう」と言われ、
奮起してロボット・シリーズを書いたという。
宇宙戦艦ヤマトでは、どんな危機でも真田さんが「こんな事もあろうかと」
と言いながら道具を出してきて解決してしまう。
だからといってロボットでないSFやヤマトが面白くない、
という事でもないのだけどね。
うん。そんな感じ。
あらすじ。
沢山のエイリアンひしめく銀河評議会。つい最近発見され、
ぎりぎり知的種族に認められた地球人類。
評議会には気のいいのもいれば領土拡張を目指すのもいる訳で、
加盟したばかりの星などはいいカモな訳で……
主人公の二人組、トムとルーシーの夫婦は地球の異星人対策局に勤める
ただの職員だったのだが、エイリアン重要人物の接待を命じられた所から
どんどん事態は転がって行き、地球の運命を握る任命大使として、
あちこちの星を渡り歩いていくハメに……!
発掘 Reference
-
ぴかさんの書評
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さて。今回はなんだか早川濃度が薄くなってしまっております。
でも、この二冊は紹介しておきたいんだよなあ。結構面白かったんですよ。
という訳で、創元からも、少々。
20憶の針 |
ハル・クレメント |
NEEDLE |
Hal Clement
1963年初版 1950 |
あっはっは。これ、この粗筋って、
「エイリアン刑事」と同じじゃないか、
と笑いながら手に取ったお話。
読んでみると、正しくそういうお話でした。こちらの方がどろどろしてなく、
古き良き時代な意味で「SF」していて、楽しめましたが。
と、
「エイリアン刑事」を知ってる人になら、これだけで終ってしまうなあ
(笑)
やはり、「寄生する異星人」というのは、
ごくごく基本的なガジェットなんでしょうかねえ。
そしてその寄生者と宿主との間のやりとり、犯人探しのグルグル。もう、
定番! という感じです。我儘を言うなら、
「定番」からつき抜けた独特の設定が欲しかった、なんて欲張ってみたり。
いやまあ、これ自身古典みたいなものだとしたら、仕方がないか。
あ、余談。20億ってのは、ちょっと嘘が入ってます、はい。
続編として
「一千億の針」
というのもあるそうなのだが、残念、未入手である。
(追記:入手しました。感謝)
(余談。色々と聞くにですね、どうも、こちら「20億の針」
をこそ元にして、「エイリアン刑事」などの作品が産れてきたようです。あわわ)
あらすじ。
「捕り手」は「ホシ」を追っていた。宇宙を超高速で飛び回るカーチェイス。
その時目前に惑星が現れた! とてもとても避け切れず、
二人はその星へ、そして海へと墜落してしまう。
彼らの落ちた星の名は、地球。
そして「ホシ」はまんまと追跡を振り切り、惑星の何処かへと姿を消した……
「捕り手」も最後の余力を振り絞り、なんとか近くの島へ。更に右余曲折を経て、
一人の小学生へと取りついた。
そう、「捕り手」と「ホシ」は、一種の寄生生命体で、
その姿は他の生命体の体内に融け込むゼリー状、そう、つまり、
宿主が居ないと生きていけない生物なのだ!
やがて「捕り手」は「宿主」となんとかコンタクトを取り、
自分の存在を信じさせ、そして犯人追跡の任務を伝え、協力を求める。
おかしくも不思議な二人三脚探偵が始まった。
だが、果たして「ホシ」は何処だ? 例え島の中だけに絞っても、
宿主になりそうな生命体=人間はおそろしく沢山居るのだ!
それは「二十億本の藁の中に落ちた一本の針」を探すにも等しい捜索だった!
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スターファイター |
ロバート・A・ハインライン |
HAVE A SPACE SUIT --- WILL TRAVEL |
R.A.Heinlein
1986年初版 1958 |
やあ、久しぶりに買ったハインラインだ!
そして、久しぶりに楽しんだハインラインだった!
もうこの人に関しては特に解説っていらないんですよね、俺的には。
何を読んでも外れはない、というべきか、何を読んでも、まあ、
半分は異口同音というか。
そうはいいつつも、ハインラインの著作の中で、今回のこれは真中か、
それより上に位置する出来だと思います。少なくとも、
これより下の作品が3つはある、と、何も考えずに上げる事はできる
(その3つが何かってのは、秘密。)。
ぶっちゃけて言うと、結構ジュブナイル臭い仕立てのお話。
運や偶然の系列の介入があって話が成り立っているし、
都合良くエイリアンやUFOが出てくるし。
だけど、そういう所で冷めてしまう事なく楽しく読めてしまうんです。
うんうん。
で、主人公はもちろんとしておいて。
それよりも、
副主人公として出てくる少女においらはもうメロメロだったりするのだ(爆)
いやほんと、これが可愛いんです。もう、絶対ですよ、うん。(笑)
強制権利発動で美少女計画にくり込んでやろうかしらんと思うぐらいです。
ところで。
AMEQさんの所のリスト
によると、どうも私は、後は
「ラモックス」
を読むだけでハインライン和訳作品をコンプリートするらしい。
おやおや。そんなに読んだっけ? ……読んでるみたいね(笑)
さあ、では問題はラモックスが何処にあるかという事なのだが
……近所の古本屋からは消えて久しいしなあ……
あん時買っときゃよかったなあ……
あらすじ。
「父さん。僕、月に行きたいんだけど。」「いいとも。行っておいで。」
父にそう切り返された日から”どうやって”行くのかは”彼の問題”になった。
折よく、石鹸会社がキャッチコピーの一般応募を始め、
その懸賞として宇宙旅行を提示した!(って、まるで今(98年)
のペプシコーラまんまやね(笑))
すわ、これだ! と彼はその石鹸を買いまくり、コピーを送りまくるが、
当たったのはおしくも二等賞。景品は「宇宙服」だった。
がっかりしたのもつかの間、彼はその宇宙服を丹精込めて整備する。そう、
本当に真空にあっても働くまでに。そして、それを来てみて想いを馳せる。
ヘルメットの給水装置から水を吸い、ラジオのスイッチを入れてみて応答を待つ……
え? 本当に応答が帰って来た? なんでだ!?(笑)
それと同時に、突然に目前に着地するUFO!
そしてガツンとくらって気を失い……目覚めればそこは宇宙船の中、
そしてあれ程にあこがれた月だった!
まるで猫の様な滑らかな毛皮を持つエイリアンの”お母さん”や
こまっしゃくれた天才オテンバ少女と共に、捕らわれの彼等の冒険が始まる。
そう、全ては宇宙服から始まった!
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