1998年が明け、正月の挨拶にでも・・・とてくてくバイク屋まで歩いたある日。私の顔を見たメカ氏、
「FCR の中古がはいったよ!」


どうもこの店は危険です。話を聞くと、BMWに乗っていたオーナーが手放すらしい。
サーキットランにはまってモトルネッサンスに出場するためにFCRまで装着したのに、急に悟って単車を乗り換えることにし、それも何といにしえのR90Sだそうで。あのあたりになると、純正のごっついビングのキャブが似合うので、FCRはいらなくなってしまったというのです。使用はたったの1回サーキットを走ったきり。しかも、アルミ削り出しのファンネル付き。41φ、元はグッチ用だったのを加工して取り付けたというくらいなのでうちのにはぴったり。
ということで、これはまあ文字通り天の声だと思うことにしました。FCRの中古(それもグッチ用)なんて、狙って手に入るものじゃありませんからね。お代は、ほぼ半値。但し、スロットル・ワイヤーは専用品なので別に注文しなくてはなりません。また、取り付けた後に判ったのですが、ガソリン・ホースの長さが足りずにこれも注文になりました。
取り付けは、K&Nのエアフィルターを使うことにしました。殆ど新品だからもったいないし(まあこれを中古で売るという手もあるけど)、幾ら雨の日は走らないとはいっても絶対に降らないという保証はこの島国にはありませんからね。ファンネルはせっかくだけど、部屋の飾りになる運命のようです。
さてこのFCR、なぜかチョークが付いている。加速ポンプ付きのキャブなので、チョークはいらないのになあ・・・(笑)。右側はワイヤーの取り回し上ちょっと外側に張り出してしまうイメージなのですが、膝には普通に乗る限りはあたらなそう。ちょっとだれてくると引っかけそうですが。スロットルは、思ったほど軽くはなってはいないなという感じです。まあ、昔のCRやミクニTMRよりは軽いかな。ただ、もともとのデロルトのキャブのレスポンスの悪さとアクセル開度の大きさに嫌気がさして交換してあった、アルミのスロットル・ホルダー(ややハイスロ気味)だと、FCRにはちょっとハイスロになり過ぎで、特に低速域では気を付けないと開け過ぎになってしまいます。殆どのFCRユーザーがノーマルのスロットル・ホルダーに戻すそうですが、私の場合は今更樹脂のホルダーに戻すのも癪に障るし、もともと2スト乗りである程度スロットル・ワークには自信もあるのでこのままにしてあります。
それにしても、レスポンスのいいことといったら!本当に信じられません。全然違うバイクみたい。モトグッチは、スタンダードの状態の出来がある意味で悪すぎるので、手を入れれば入れただけよくなっていく、いじり甲斐のあるバイクなのですが、それにしてもこれほどまでに変わるとは!今までどんなに工夫してももたついていらいらさせられた低速〜中速域が明らかに豊かになり、アクセルに付いて来るようになりました。これまではどんなに丁寧にスロットルを扱っても駄目で、むしろガバっ!と大きめにアクセルを開いてやってキャブが付いて来るのを待つ方がまだ楽なくらいだったのに・・・とにかくこのツキの良さなら安心して峠も走れます。登りの立ち上がりなどで、アクセルが開けられずにもたつくことがない!
まだ現役だったころの阿部孝夫が「バイクの善し悪しを決めるのはキャブだ!」といってましたが、本当に身に染みて感じられるコトバでした。TZRでサーキットを走っていた時も、RHでMXコースを走った時も、キャブが決まると走りが全然かわったものでしたが、そういうレベルですらない。とにかく全然違うバイクなのです。誰かにジマンしたくてたまらないという感じです。
というわけで、早速峠を攻めに出かけました。しかし・・・うーん、乗り手の腕がまだまだ。久し振りの単車ということもあって、ゼロからやり直さなけりゃいかんのね・・・。コゾーに負けているのが現実です。ああ、もっと乗りこなさなくては・・・・。ま、普通、グッチでコゾーに戦いを挑むことはないともいうけどさ(笑)。