店主の読書日記 SEP2002 タイトルリスト 作家別リスト

2002/9/30

 久しぶりに一気に本を読む。『TVアニメ青春記』(辻真先/実業之日本社)。
 辻真先という名前を推理小説家ではなく、アニメの脚本家として認識している人も多いと思う。巻末にアニメーション放映リストが付いているのだが、著者のかかわった番組の多いこと多いこと。(他とのかねあいがあって、辻真先という名前を出してないものも多いそうだ) そうでなくても、あのオバケ番組サザエさんの脚本を長いこと書かれていたので、字面に覚えがある方も多いのではないか。

 さて、ひさしぶりの一気読みである。
 辻真先という人はNHKに就職してアニメの脚本家になった。黎明期のTVドラマから黎明期のTVアニメの世界へ。
 もともとアメリカの漫画映画のファンであり手塚ファンであった作者の、「アニメに関われるんだ!」という浮き立つような気持ちに読んでいる方もわくわくさせられる。若い時代、若いメディアの熱が伝わってくるようだ。
 著者が関わった最初のアニメ脚本は、エイトマンだった。原作は『ウルフガイ』の平井和正。
 これの脚本陣がすごい。広瀬正、筒井康隆、半村良、豊田有恒……そのまんま日本SF黎明期を支える作家陣じゃん。当時は映画に近い製作スタイルをとっていて、このゴーカメンバーがTBSにあったマンガルームという1室で「あーでもない、こーでもない」と議論しながら、内容を組みたてていったそうな。
 日本のTVアニメはSFからはじまって(なにしろ第1号は「鉄腕アトム」だ)、SFオンパレードだったらしい。
 子供向け番組が、一流の(その頃はSF自体が確立されたジャンルではなかったけれど)脚本陣によって毎週送り出されていたのだ。今、世界に誇るオタク大国ニッポンは、ここいらで英才教育を受けていたのかもしれないなあ。


2002/9/29

 ジャイアンツがリーグ優勝したので、夕方から三越に行ってみた。(母の荷物持ち)
 最近、私が一番お金をかけているもの、それは寝具である。

 西村しのぶの『ライン』で、「彼は本当に私のベッドが好きだ」っていうくだりがある。バツイチのリツコさんは結納金を寝具に使いきって、離婚した今もダブルベッドにプレスしたシーツで寝ている。
 素敵な彼女に、素敵な素敵なベッド環境。彼氏は大学生の邦彦くん。
「泊まりにおいで、のひとことでイチコロだ」
 私もイチコロだわー(笑)。
 だって私も寝具には一身代かけてるもの。実家時代から、カバー類から枕、羽毛布団まで自分のお金で買っていた。さすがにシーツをプレスに出すほどではないけれど。

 つーことで、今日はマンション用のカシミア毛布の物色である。その横で元値20万円という、寝たらバチがあたりそうな毛布をすすめられている母がいる。
 私はそれほどお金持ちでないので、シルクカシミアの毛布をお買い上げ。手触りうっとりの一品。しかし、最近買った中で一番高いのが毛布とはなー。(2番目が最上級コットン使用の枕カバー&パジャマのセット)
 いや、寝具は金をケチらないと誓っているのだ。
 とりあえず、最近、睡眠しか楽しみがないんだろうというツッコミはナシで。


2002/9/27

 最近、毎日タクシーに乗っている。
 だいたい決まったところから乗るので、今週は3回続けて同じ運ちゃんだった。
 でもさ。
 行き先を言わずにタクシーが家の前に止まるって、結構イヤ(笑)。


2002/9/26

 なんでこんなに短くて単純なのにいい話なんだろう。『のっぽのサラ Sarah,plain and tall』(パトリシア・マクラクラン、金原瑞人訳/福武書店)。

 舞台はいまより少し昔。人がまだ馬や馬車で移動していた頃。
 アンナは弟のケイレブとお父さんとの3人暮らし。お母さんは、ケイレブを生んだ次の日に死んでしまった。ある日お父さんが新聞に奥さん募集の公告を出す。そしてやってきたのが「のっぽのサラ」。
 メイン州の海のそばから、草原の真ん中へ。のっぽでぶさいくなサラ(Sarah,plain and tall)が気に入れば、サラはお父さんのお嫁さんになり、アンナのお母さんになってくれるかもしれないだが……。

 plainという題名通り、本当に飾り気のない話だ。
 わくわくのサスペンスも、けれん味のあるストーリー展開もない。それでも、サラがこのうちにいてくれるのか、主人公のアンナと弟のケイレブのようにハラハラしてしまう。
 この作品はニューベリー賞(1985)とスコット・オデール賞(第3回)を受賞してる。スコット・オデール賞は優れた児童文学の作家であるスコット・オデールが創設した賞だが、オデール自身が「サラがいてくれるのが心配で途中で最後のページを見てしまったよ」と言っているのだ。(おじさん、かわいいぜ(笑))
 シンプルで素朴なのに、なぜだか涙が出てきそうになる。
 疲れたところで出された一杯の素朴な野菜スープの味わい……と、食べ物にたとえるとあんまりかな。じんわり染みて、わからないところで滋養がありそうな、そんな感じ。


2002/9/25

 昨日の日記を書くために検索をかけていたら見つけたサイト、「八ヶ岳の東から」。
 八ヶ岳・横岳の中腹にログハウスを建てた管理人さんが、そこから広がった生活のあれこれを綴るページだ。園芸や飼い犬、お母様の句集まで。
 こんなのどかなHPを何でここで紹介するかというと、このHPの管理人さん、新聞記者さんだったのだ。

 記者の裏話がブン屋の戯れ言というコーナーに載っている。
 問題のよど号事件の時、この方はもう新聞記者だった。そして、結婚式を控えていた。事件は、結婚式の予定にジャストミート! 披露宴会場に行くと、招待客がごっそりいない。写真を撮るはずのカメラマンもいない。新聞社づとめの同僚も上司も、みんな、よど号を追ってソウルに行ってしまったのだ。
 「事件は会議室じゃない、現場で起こっているんだ」
というのは、『踊る走査線 The movie』で有名なセリフだが、よど号事件の「事件」は、全国さまざまな形で起こったのだろう。
 この結婚式場も、まさしくよど号関連の事件現場だったように。


2002/9/24

 昨日は、よど号ハイジャック事件の再現ドラマなど見てしまった。
 今まで「よど号」というくらいだから船だと思っていた私である。(よく考えてみれば、船ならシージャックじゃん。>自分)
 よど号事件は1970年。今になってみると懐かしいのオンパレード。
 スッチーの制服はこんなだったんだなあ、とか。機内でお弁当が出てるんだなあ、とか。
 一緒に見ていた私と妹にとっては知らない事件、母にとっては当時報道をばっちり見ていた事件である。番組の最後には「登場人物その後」がナレーションされた。ピョンヤンに夜間到着を成し遂げた石田機長は「その後日航を退職、流転の人生を送る」と、サラリと語られていた。(石田機長役は根津甚八)
 この石田機長、本当に流転の人生を送っている。
 母情報によると、このよど号事件で愛人の存在が発覚してしまったらしい。愛人宅から出勤したのがバレて、日航を退職。自家用機の雇われパイロットとして転々とする。その後、会社が倒産して、お漬物屋をはじめ(←母情報)、心労がたたってガンにかかり(←母情報)、最近亡くなったらしい。(←あくまでも母情報)
 その石田機長のカバンがしばらく家にあった。(←やっぱり母情報) 旅客機のパイロットというのはフライトケースと呼ばれるバッグを持っていて、必要なグッズを入れている。石田機長のフライトケースなら、よど号事件をそばで見守った歴史の生き証人であろう。
 このフライトケースを
「もう、いらないから」
と、言って父にくれたのだそうだ。(知り合いだったのか、父?)
 お漬物屋のあたりからアヤシくなった母情報なので、私は念を押した。
「それ、ホント?」
「ホントだよ。だって、いらないから私がゴミ捨て場まで捨てにいったんだもん」
 ……。
 …………。
 こうして歴史の生き証人とういうのは失われていくのだ、と、思った今日のわたくし。


2002/9/23

 近所にホームセンターがオープンしたので行ってみる。
 とにかくすごい品揃えで、どれくらいすごいかというとレンガだけで10種類以上あるといえばおわかりだろうか。
 建材や資材もたくさん置いてあって、よく道路工事現場においてある黒と黄色の工事中表示、あんなものもある。(誰が買うんだ?) 腕さえあれば、あそこで買ったもので家の一軒くらい建ちそうである。
 工具も販売の他にレンタルもしていて……。
 ……。
 …………はっ、いかん。日曜大工には手を出さないと誓ったじゃないの、リオハ!

   全国のみなさま。私が大工の棟梁のところに修行に行かないように祈っててください。(すでにそれは日曜大工ではないぞ>自分)


2002/9/23

 会社に行くバスを待っていたら、後輩に会う。彼女も出勤するところだったらしい。
 これだけだとふつーの話なのだが、問題は本日が3連休の中日で弊社も土日祝日はお休みなあたりである。ついでに言えば、昨日もその後輩とは会社で会っていた
 祝日ダイヤのバスを待ちながら、のんびり話をする。
 「最近、家にいないからゴミも出なくって。唯一、でるのは空き缶ですかねえ。寝る前の缶ビールだけが楽しみで」
 うーん。
 自分がオヤジなのはかまわないけど、まわりの女の子までオヤジになっちゃうのは、いやーん。


2002/9/21

 最近、店主の読書日記でなく残業日記になりつつあるので、読んでみました。『ロンドン・アンティーク物語』 (小関由美、笹尾多恵/東京書籍) 。
 と、いってもイラストが多い読み物のような体裁なので、読むのはラク。
 アンティークといっても、オールドのレースとかスージー・クーパーのカップとか、そういう手工芸品が中心。お二人はイギリスに住んでいたことがあるそうで、その時代のお買い物からスタートしているようだ。だから、女学生さんのおこずかいで買えるような、かわいらしいものが多い。
 でも、羨ましいのはコレクションじゃなく、アンティークを見に、イギリスに行く生活。フラットを借りて1ヶ月イギリスで欲しいものをさがす……って、やってみたいなあ。(商売だと大変なんだろうけど)
 遠くにいると、あのイギリスのまずい食事さえ恋しく思えてしまうのが不思議。


2002/9/20

 久しぶりにウクレレ教室に行けそうだったが、寝坊する。
 最近、毎日タクシーに乗っているせいか、フラフラとタクシーで西大井へ。
 ウクレレを持っていると、たいがい運ちゃんに
「それ何ですか?」
と、聞かれるのだが、本日も聞かれた。
 それをきっかけに運転手さんとだーらだら話をする。(私はタクシーに乗ると、たいがい運転手さんと話をする)
 ここいら細い道だけど、商店街がおもしろそうですね、とか。自転車欲しいんですよ、とか。
「自転車が欲しいなら」
と、運転手さんは言った。
「今度やるDINOSの催しで、MTBの塗装がちょっとはげたやつが1万円均一でやりますよ。TOC(東京卸売りセンター)で」。
 そ、そんな詳細なネタをいったいどこから。運ちゃん、いったいナニモノ?


2002/9/18

 夜食を取った。
 最近遅いので、コンビニ食かデリバリーを頼むことが多い。ピザも幕の内弁当も飽きたので、本日は私の家に投げ入れ広告のあった中華のメニューを持参してみた。(うちはピザや上海エクスプレスなどの投げ入れ広告が多い)

 何回か日記にも書いているが、昨年のテロ以来、私のオフィスには外部の人は入れなくなった。以前はオフィスのフロアまで来てもらっていたバイク便も、地下のメーリングセンターまで取りに行かなくてはいけない。
 本日も注文の際に警備室前で電話で呼んでもらえるように言って、電話を置いた。8時過ぎ、警備室から電話。デリバリーの到着である。お財布を持ってみんなの夜食を取りに行った私の見たものは!
 ……おかもちを持ったおっちゃんであった。

「持って行きますけど」
 出前に来たおっちゃんは言った。
 しかし、荷物はいちいちX線にかけるようなうちのオフィス。おいそれとおっちゃんに入ってもらうわけにもいかない。
 かくして、6人前の丼とライスが入ったおかもちを持ってオフィスに上がった私を待っていたのは、ほっぺたを変な風にゆがめて「お疲れさまです」という警備員さんと、体をくの字にまげて「かっこいい」と声にならない声を発する後輩であった。
 ま、いっか。おかもちを持って出前という、長年の夢が一部かなったし。


2002/9/17

 真柴さんのBBSの書き込みのため検索をしていたら、面白いページがあった。「文句があるならベルサイユにいらっしゃい!」、略してもんベル
 マニアックな旅行記があったり、「ベルばらファンへの100の質問」があったり、よく出来ているのだが、中にベルばらグッズ情報のカテゴリがあった。
 ここで私はタノシイものを発見する。
 そりゃもー、私の腕力が300万馬力だったら机を持ち上げてあさっての方向に800mくらい投げてしまいそうな楽しさである。(なんだそりゃ)
 DVDやジグゾーパズルも紹介されてるが、そんなものではもちろんない。ワイン……というやつもあるが、おフランスといえばワインの国。意外でもなんでもない。
 私が机を持ち上げ(中略)投げそうになったのは、これだ!

 ベルばらこしひかり

 米のパッケージには麗しのオスカル様と華やかなアントワネットのプリントがばっちり。宝塚な少女マンガ世界の画面の中に、しっかりと「こしひかり」の文字が……。あああ。(←悶絶)
 あきたこまちファンの君もがっかりすることはない。あしべゆうほの「クリスタル☆ドラゴン」米があるぞ! 日本人なら米を食え!


2002/9/16

 そして、店舗内に入る。
 最近のホームセンターはおしゃれになってきて、藤のカゴなんかも種類がたくさん置いてある。つらつらと見てまわり……そういえば、家具にオイルステイン塗らないと、なんて思い出す。
 刷毛だ、刷毛。
 そういや、最近、チェストにキャスターを取りつけた時、、電動ドリルがあると便利だと思ったっけ。
 あった、あった。えーっと、ドリル刃別売りか。本体とドリル刃と……。
 ……。
 …………。
 ち、違う。これはなんだか違う。乙女の手作り品といえば、刺繍やレース編み、小花のプチポワン……。(遠い目)
 せめて、日曜大工には手を出さないようにしよう。うん。


2002/9/15

 最近、手作りがしたくてしかたない。
 わかっている。これも、忙しいゆえの逃避なのだ。
 とりあえず母のお供でホームセンターに行って、ハーブの苗など見てみる。華やかさはないが、こんなのを寄せ植えにしたらかわいいだろう。テラコッタの鉢も色々と種類がある。ファンシーなもの、シックなもの……。
 しかし、しかしだ。
 引越し記念に買ったアイビーの鉢植え。手入れは手抜きでもオッケーの強い種のはずなのに、先週、枯れてしまった。
 水はやっていたのだが。
 どうやら、水以外の潤いのない生活に耐えられなかった模様。


2002/9/14

 久しぶりにウクレレ教室に行けそうだったのだが、私のマイレージを使い、私を置いて台湾旅行に行った妹さまが帰ってくるので、成田に迎えに行く。
 出てきた妹は身軽である。国内旅行のようである。スーツケースも持っていない。そして、その格好に不似合いな大きな紙袋を下げていた。

 今回、私はおみやげに乾燥梅干しをお願いしみた。詰梅(ワームイ)というやつで、老酒に入れる。日本の乾燥梅干しと違うのは、砂糖液に漬けて乾燥させるらしく甘いところ。(これを入れると老酒も甘くなる)
 私はこれをおしゃぶり昆布状態で、いただいている。
 台湾に行った時セブンイレブンでも売っていて、1袋100円程度だった。どこでも手に入るし、安いので頼んだのだ。
 家に着いて、妹は
「これ、おみやげ」
と、言って、なにやら豪華な箱を取りだした。
 赤い箱に金の金具。箱だけ見ても高級そうである。箱をあけてみると、サテンの布の中に上品な紙筒が6個ほど。
 ……違う。
 これは私のお願いした乾燥梅干しではない。だいたい、紙筒を開けてみると、ドライ・プルーンのような色合いの、乾燥梅干しにしてはウェットなものがこじんまりと入っているではないか。
「……これ、乾燥梅干しじゃないよ……」
 私がそういうと妹は
「私もそう思った」
と、言う。
 中のリーフレットを見ると宮廷料理の店とあり、かーなーり、高級そうだ。今回、妹は台湾の友達を訪ねての台湾行きだった。その友達が、その店に案内してくれてくれたのだそうだ。
 妹がこれは姉の頼んだチープな乾燥梅干しでないと気がついたとき、台湾の友人はこう言った。

「でも、私ならお姉さんにいいものを上げたいと思う」。

 台湾の友人の主張に勝てなかった妹は、その豪華6点詰め合わせを日本に持ちかえってきたのだった。


2002/9/12

 これは、本当に子供向けの本にしておくのはもったいない。『ジョコンダ夫人の肖像』(E・L・カニグズバーグ、松永ふみ子)。
 別に子供にはもったいないと言っているわけでなく、子供向けの棚にあることによって大人が手に取る機会が少なくなってしまう。それが「もったいない」。
 カニングスバーグは児童文学の秀作をいくつも書いていて、『クローディアの秘密』なんかは私の本棚のかなりいい位置(←思い入れで配置が決まる(笑))にある。
 そういえば『クローディアの秘密』も、メトロポリタン美術館が舞台の絵画にとてもかかわりのあるお話だった。今回の本は、あのルネサンスの巨人、レオナルド・ダ・ヴィンチと永遠の名作「モナ・リザ」が登場する。

白てんを抱く貴婦人の肖像 Lady with an Ermine  左の絵は最近日本に来ていたので実物をご覧になった方も多いだろう。モデルはチェチリア・ガッレラーニ。当時、ミラノ公爵家の実質的権力者だったイル・モロ(ルドヴィーゴ・スフォルツァ)の愛人だった女性だ。
 物語では、チェチリアは登場しないものの重要な役割を担っている。
 美しい愛人の影で顧みられない不器量な花嫁が、フェラーラのエステ家から嫁いできたベアトリーチェ・デステ。放られっぱなしのベアトリーチェと仲良くなるのが、レオナルドの弟子・サライ。そしてサライを仲介に、天才レオナルドもまたベアトリーチェと親しくなっていく。
 なぜ、レオナルドは、モナリザを書いたのか?
 日記の中で「うそつき」「どろぼう」と書きながら、弟子サライを20年も手元に置いたのか?
 イザベラ・デステ(ベアトリーチェの姉)の肖像はデッサンしかないのはなぜか?

 色々な「なぜ」に答える『ジョコンダ夫人の肖像』。
 そこに描かれる人間模様も、一筋縄ではいってない。こういう作品がごろごろしてると思うと、児童文学の棚をのぞくのはやめられないなあ。
「真珠の髪留めの婦人」 ミラノ・アンブロジア−ナ図書館蔵 レオナルドの真筆かはっきりしない。ベアトリーチェ・デステの肖像と言われている イル・モーロ。最初はイザベラに求婚した イザベラ・デステ ←登場人物の方々


2002/9/11

 再読だと思い込んでいたのに初読だった本、『悪魔のトリル』(高橋克彦/講談社文庫)。
 たぶん、このタイトルは澁澤龍彦の本で目にしたんだと思う。苦手なのに勘違いでホラーを読んでしまったよ。

 タイトルの「悪魔のトリル」というのはバイオリン曲として有名で、18世紀のイタリアの音楽家・ジュセッペ・タルティーニの作品。この曲は悪魔に魂を売り渡して得た名曲というエピソードを持っている。

 タルティーニがある夜見た夢に悪魔が現われ、「魂を渡すなら曲をあげよう」という。悪魔はこれまで聞いたことのないような素晴らしい曲を奏でる。目覚めたタルティーニは曲を書いた。
 夢の中の悪魔の曲を必死に再現してみたのが、「ヴァイオリン・ソナタ・ト短調」、別名を「悪魔のトリル(Trillo del Diavolo)」」というわけ。

 どうもこのエピソードが心に残っていて、本を手にとってしまった。魂と引き換えに悪魔からもらった曲なんて、とっても面白い話ではないか。
 で、読んでみたら、この本は怪奇小説を集めた短編集。
 表題の『悪魔のトリル』はあんまりテルティーニの話とは関係がなかったが、バイオリン弾きの男が出てくる。今は香具師となったサーカスのバイオリン弾き。物語の冒頭は昭和40年代で、その頃にはとっくに時代遅れになった「衛生博覧会」というものが出てくる。あやしい展示物がひしめく蝋人形の展覧会だ。
 そこで主人公が少年のバラバラ死体の蝋人形。数十分も1人きりの部屋でじっとバラバラ死体を眺めている。
 猟奇の匂いはするが、そこはかとなく品がいい。なんとなく乱歩テイストの、昔の怪談のような短編集だ。
 なんとなーくしみじみした風情があるので、「しみじみホラー」とでも呼ぼうか。


2002/9/10

 そういえば、私がマリーアントワネットの名前を最初に知ったのは、ベルばらではない。なんと、ツバイクの伝記であった。
 小学校の頃、学校で伝記を読んで感想文を書きなさいとかあるでしょ? あの時、うちの母が買ってくれたのが『悲しみの王妃』(シュテファン・ツバイク、大庭さち子訳/偕成社)。
 ……小学生にギロチンで殺された王妃の話か……。
 同級生の女の子はキュリー夫人やナイチン・ゲールを与えられている頃である。
「私も将来は人のためになる人になりたい」
と、クラスメートが純真な思いにひたっている頃、私は
「浪費はいかんなー」
などと思っていたのだった。
 そういえば、小学生の頃の「将来の夢」という作文に
「暖炉の前のロッキング・チェアーで読書をしていたい」
と、夢見る隠居生活を描いてしまったのも、この一件が悪かったのだろうか。


2002/9/9

 ちょっと前に図書館に行ったら、『ベルサイユのばら・愛蔵版』(池田理代子/中央公論新社 )が置いてあった。2巻だけ(全2巻)読んでみたら、びっくりした。
 毎ページがクライマックス!(笑)
 すごいなあ、この頃は週刊マーガレットも本当に週刊だったから、毎週毎週毎週毎週こんな少年誌並みの熱い世界が繰り広げられていたのか。
 後半というと、オスカルがフランス革命の市民側になって、アンドレの目がどんどん悪くなって、ふたりは結ばれて、そうしたらアンドレは死んじゃって……ああっ、書ききれないっ。
 しかし、改めて読んでみるとすごい巧妙なドラマ作りをしている。
 結局、オスカルは死んでしまうのだけれど、その死のタイミングがすごい。バスティーユ陥落の時に素晴らしい未来を予想させつつ、という絶妙のタイミング。
 フランス革命の歴史を詳しく知ったのは大人になってからで、1789年以降の革命後の歴史を知ったのもそう。フランス革命後、吹き荒れたのは粛清の嵐。やっぱり、オスカルがロマンの中に生きているキャラクターなら、あそこで死ななくてはなあ。
 うーむ、歴史ロマン、かくあるべし、か。


2002/9/8

 起きてみたら午後1時近かった。
 久しぶりにのんびりした日曜日である。洗濯機を回して、ちょっとだけ片付けものをして、久しぶりに髪を巻いて、キレイにしてから……出勤してみました。
 いや、だって! 出かけるときくらい休日仕様にしとかないと!

 行ってみたら、結構、人がいてヤな感じ(笑)。


2002/9/7

 出産を機に会社をやめた同期にメールを送ったら、「遊びに来ない〜?」と、誘ってくれた。いそいそ赤ちゃんを見に行く。
 9ヶ月にして9kgのTくんは、でっかい元気な赤ちゃんであった。この勢いでいけば、1歳で12kg、2歳で24kgになるに違いない。(って、そんなバカな)
 お持たせのケーキを食べているとき、
「ねえ、天才バカボンのエンディングの『41歳の秋だから♪』の前って、どんな歌詞だっけ?」
と、同期Y田が言った。(さすが私の同期である)
 むむむ。そのEDは、確かに再放送で何回も見たことがある。あるけどとっさに出て来ない。赤ちゃんと遊びながら、Y田と話しながら5時間。なかなか出て来ないとスッキリしないものだ。
 そうこうするうちに、土曜出勤のダンナさんが帰って来た。
「リオハ(仮名)ちゃんも、わからないって」
 どうやら、夫婦でしばらくの間、悩んでいたテーマだったらしい。
 3人で悶々とするのもなんなので、こうした方面に一番強そうな
じくモンに電話をかけてみた。
「あのさあ、天才バカボンのEDの歌詞わかったらメールで送って。よろしくっ」
 私の目に間違いはなかった。しばらくして、キッチリ1番の歌詞が全文流れてきた。
 素晴らしいぞ、じくモン!

 その日、Y田邸では、「元祖天才バカボン」の物悲しいエンディング・テーマを大人3名で合唱する姿が見られたのであった……。


2002/9/6

 昨日、夜の12時少し前。私は残業していた。
 同じく残業していた後輩Sと、
「リオハ(仮名)さん、いつ頃帰ります?」
と、話していた頃。
「何って、会社で仕事してますよ」
 M田さんがなにやら携帯で話している。
 もしや……奥さんか?
 こんな時間にどこで何をしてるのよ、と言われているのか? しかし、前田さんといえば残業キングである。12時過ぎまで仕事をしているなど、日常茶飯事ではないか。
「奥さん? 奥さん? ねえ、奥さん?」
 私は後輩Sに聞いた。
「そうみたいです〜」
 どうも、この私達の会話がまたまずかったらしい。
「まわりに……って、会社の人ですよ」
 回で女の声が聞こえるわ、会社のわけないじゃないっ、とでも言われたのだろう。(←予想)
「こんな遅くまでみんな残ってる会社があるわけないでしょ!」
 そう、M田さんは言われたそうだ。
「そうだよねえ」
 私と後輩Sはうなずきながら、M田さんを残して先に失礼したのだった。

「……っていうことがあったんですよ」
 本日の残業中、後輩SがM田さんと奥様のやりとりを発表した。同席していた常務はちょっと考える顔をする。
常務:「それは、そういう文書を出そうか」
M田さん「アンタ、自分で書いたんじゃないの、って言われますよ」
常務:「女というのは99%信じていても、心のどこかに疑惑があるんだよ」
M田さん:「割合、逆だったりして」

 結婚って……大変なのねえ(笑)。


2002/9/5

 最近、業務量拡大にともない、クレームケースも増えている。
 今週、一件クライアントから
「土曜日に自宅へ来い!」
という、割と深刻なケースが発生した。
 問題は………………手土産である。
「お詫びの手土産といえば虎屋の羊羹だろう」
と、常務が言えば
「独身の男性に羊羹あげてどうするんですか」
と、T課長(女性)はケンもホロホロ(←間違った用法)だ。
 しばらく、真剣に週末のお詫び行脚に持参の手土産について8人あまりで検討する。夜の10時過ぎの話である。
「では、お酒は?」
「万が一、投げられた時にびしょ濡れだからイヤだ」
「あられは?」
「5000円〜1万円の予算だと嵩が増える」
「果物は」
「値段がはっきりしない」
 手土産ひとつ選ぶのも大変である。(だから、手土産を持ってお詫びに来た人に「こんな間に合わせを持ってきやがって」と、冷たく応対してはいけない)
 値段がはっきりしない、という意見が出たところで、M田さんが言った。M田さんは他社からの転職組である。
「私なんかが手土産というと虎屋ですねえ」

 虎屋の羊羹は2500円が2本で5,000円。そういう認識が広がっているので、いいのだという。虎屋の包みを持ってくれば、それで5,000円のものを持って来たとわかるのが世の中の常識だ。(そうだ)
「だから買いまわりなんかもあるんですよ」
と、M田さん。
 虎屋の商品を偽造カードか、今にも強制取消になりそうなカードで買って、バッタ屋に売って日銭を稼ぐ。昔は現金化といえば時計か商品券だったが、今や虎屋にそんな市場があったのか!
 しかし、私は虎屋の流れ品を売っているところなど見たことがないぞ。ひょっとして、闇から闇か?
 パチンコの玉の現金化のように、ひっそりと裏の虎屋窓口があるのかっ!?

 あやしい風体の人が不似合いにたくさん虎屋の羊羹を買っていたら、それは犯罪の現場なのかもしれない。


2002/9/4

 これはホントにオススメ。『シャーロック・ホームズのクロニクル』(ジューン・トムスン、押田由起訳/創元推理文庫)。
 古今東西でこの人以上に知られている探偵はいないのが、シャーロック・ホームズ。100年も人々を惹きつけて来た物語だけに、色々な作家が様々なホームズを世に送り出している。
 あるものはパロディだったり、あるものはニセモノだったり、映画のチョイ役に使われたり。当然、贋作もたくさん作られているのだが、個人的には20世紀最良の贋作のひとつだと思うのが、このシリーズ。
 以前、日記で書いた『
シャーロックホームズの愛弟子』シリーズのローリー・キングと同じく、ジューン・トムスンも賞を受賞している実力者。
 でも、愛弟子シリーズよりぐっと本物くさいのが、ワトソンの未発表手記という体裁を取っているところ。私は知らなかったのだが、聖典(シャーロキアンは、ドイルの原作をこういう)中に「事情があって発表できない事件の記録を  銀行の貸し金庫に預けておく」という記述があるそうなのだ。この記述を頼りに「ワトソンの未発表手記」という体裁の贋作はかなり多いという。
 NHKの海外ドラマを見た方ならわかるだろうが、ホームズの舞台は19世紀末。ビクトリア朝の時代背景を丹念に調べて、脚注にほどこすことで時代の匂いなんかもばっちりである。
 ホームズの新しい事件簿が読みたい! と、思ったらどうぞ。


2002/9/3

 「バイオハザード」が見に行きたい。
 普段は、ホラーSFは絶対見ないのだが、これは見たい。

 うちのプレステは、DDRがやりたいがために買ったようなもので、長いこと付属のコントローラーを使ったことがなかった。使わないどころかビニールから出してもいなかった。
 その私にコントローラーの封印(んな、たいそうなものかいっ)を破らせたのが、「BIOHAZARD」という作品。
 そろそろバイオ3が出ようという頃だったので、BIOHAZARD2を買って、来る日も来る日も来る日もプレイした。プレイした方ならわかるかもしれないが、このゲームはマップ攻略。
 バイオハザードの被害に襲われて人はゾンビに、犬はゾンビ犬に、カラスはゾンビカラスに、猫はゾンビ猫にゴキブリはゾンビゴキブリに蚊はゾンビモスキート(ここいらゲームには登場しませんが、絶対なっているはずだ)になってしまった町。ゾンビにガブガブ食われながら、プレイヤーは町を疾走する。
 プレイヤーはゾンビの影におびえながらも、ゾンビの町に舞い戻る。恐いのに、ああ、とっても恐いのになぜか舞い戻ってしまう。
 しまいにゃ、プレステのスイッチオンで聞こえるタイトルの男声SE、「BIOHAZARD2」に、
「『バイオハザードちゅう〜』に聞こえるぞっ」
と、ツッコミをいれつつも、おかあさんの「おかえりなさい」のような安らぎを覚える始末。
 あのバイオ世界がどう映画になっているか見ものである。

 ところで、数あるバイオのファンサイトの中でも特に詳しかったのがここ。最新情報もマメ。capcomHPで壁紙無料ダウンロード開始などという情報までマメにピックアップしている。素敵な(←)壁紙(ランチョマットに印刷したら、ダイエット効果があるかも!)が多いので、ファンの方はどうぞ。


2002/9/2

 本日は歓送迎会。
 ……考えてみると、うち、歓送迎会多いなー。3年で異動になるのが普通だけれど、3月に1回異動が出てる気がする。
 流浪の番組タモリ倶楽部……じゃなくって、流転の部署なのだろうか。

 宴会が終わってみたら、まだ12時前だった。うきうきと家路を急ぐ。
 そう、12時前に帰れた今日こそは……洗濯をしようっ!
 洗濯機だけクロネコの小さな引越し便で運んでから約1ヶ月。今まで、洗濯機を胸を張って稼動させられる時間に帰ったことがなかった。大物でなければ、ちまちまと手洗いしていた。
 洗濯機であれば、バスタオル2枚同時洗濯も可能。ああ、文明って素晴らしいよなー。
 感動しながら洗濯機のスイッチを押して、蛇口をひねる。
 そのとき悲劇は起こった。
 すごい勢いで蛇口とパイプの接合部から吹き出す水、水、水。それはあたかもクロサワ映画の、勢いよく吹き出す斬られた浪人の血しぶきのよう。(表現長いぞ、おい) これがマンガなら、私は「ぷしゅーっ」という効果音をつけている。
 洗濯するはずだったバスタオルを引っ張り出して、そこいらの水を拭いた。(←どうせ後で洗濯するのだ)
 体にもかかったけど、洗濯のためほとんど脱いでいたので、問題はない。
 そのまま1人暮らしの乙女の必需品・ドライバーセットを出し、下着姿で接合部分と格闘する。おかしいなあ。前はこんなに苦労しなかったはずなのに……。って、前はお金を払ってセッティングしてもらったんだよ。そうだよ。
 と、ひとり黙って心の中でノリツッコミをしながら直す。本当は説明書を見た方が早かったのだが、それは実家。今は夜中。
 小1時間後、正しくセッティングできて、無事に洗濯は始まった。時に夜中の12時半。さあ、ひとっ風呂浴びて寝ようっと。


2002/9/1

 『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ 』(モフセン・マフマルバフ、武井みゆき・渡部良子訳/現代企画室 )読了。
 このインパクトのあるタイトルと、白地にタイトルのみのインパクトのあるブックデザインに引かれて手に取った。
 著者はイラン人で作家になった後、映画監督となった。10代の頃パフラヴィ(パーレビー)国王打倒の地下活動に身を投じ、4年半に渡る獄中生活を送った体験の持ち主。
 中近東の政治情勢の只中を生きてきた人だ。
 だからといって、書いてある内容に素直にうなずくことが出来ないのは、私がひねくれているせいか。
 このタイトルは、本文の要旨そのままで、「アフガニスタンの人々の現状を嘆いているのは、バーミヤンの仏像ただひとりだった」ということ。
 いや、ちょっと待て。
 日本からは、あの緒方貞子さんが難民キャンプを視察に行っているぞ。救援募金も募っている。会議だって行われた。
 そんな出来事にも著者は冷ややかである。視察に来た日本人女性は何もわかっちゃいいない、と、いうのだ。
 近隣の諸国の無関心によってアフガニスタンは貧困にあえいでいる。
 そう主張するのはいい。それでも、援助のために差し延べられている手を無視して嘆くことは、かなり失礼な話なのではないか?

 確かに日本でアフガン事情に通じている人間は少ない。それは遠いせいもある。そして宗教が違うせいもある。人種だって違う。注意喚起をするのはかまわない。日本人だって、自分の豊かさに溺れて、それほど運に恵まれていない国に冷ややかなところだってあるのは知っている。
 バーミヤンの仏像の破壊を嘆くのはいけないことなのか?
 あのプロバカンダで私達は知ったではないか。アフガニスタンは、世界の孤児なのだと。どんなに優しい言葉や、ためになる叱る言葉も受け入れないほど、かたくなで切羽つまっていて、かんしゃくで大切なおもちゃを木っ端微塵に壊してしまうような子供。

 カンダハルの陥落から、報道ドキュメントで以前よりアフガニスタンの生活が私達に触れるようになった。それを見て胸を痛めているのは私だけではないと思う。
 色々すっきりしない後味の(私の場合は)本だが、アメリカ人でもヨーロッパ人でもない人のアフガニスタンへの視点が読めたのはとても貴重なことだ。文化と宗教の隔たりは大きいなあ、と、今更ながら思う。
 とりあえず、苦難にあえぐアフガニスタン事情早分かりと言う点ではとても優れた本。

 まず、理解しようとつとめること。
 たぶん一気には何もできないので、それが第一歩。……なんて、こういうことを思うあたり、憤りながら、まんまと著者の意図にはめられてるのかもしれない。それでもかまわない。
 この本を読むのに必要なのは、だいたい1時間。本の折り返しによると、その間に12人がアフガニスタンで死んでいっているという。
 要は今も生死の境にいる人のためになればなんでもいいのだ。



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