店主の読書日記 OCT2002 タイトルリスト 作家別リスト

2002/10/31

「なりたい自分になってやる」

 さて、初めてのテーマ日記月間、いかがでしたでしょうか?
 読了本もあるのだけど、せっかくだからコピーで閉めよう。
 これは、確かアルバイト雑誌のコピー。(いつものようにウロ覚えだけど) これがいつ頃のコピーなのかは忘れたけど、「なりたい自分」というのは折にふれ私のテーマとなっている。
 誰だって「なりたい自分」がいて、そのイメージとセルフイメージがあんまりずれていないほど幸せなのだと思う。これが大きくずれていると、やるせなーい気持ちになったりする(笑)。

 ハタチくらいの頃、私がなりたかった自分の条件は二つあった。
 ひとつが「誰とでも1時間くらいはお話できる」、もうひとつが「思いついた時にビジネスクラスで出かけられる」だった。
 知らない人が苦手で、知らない人とお話をすると私は今でも緊張してしまう。ハタチのコムスメの頃なんて、今よりもっと世慣れてなかったから、沈黙が恐かった。共通点があまりない人とお話をしたりすると、ふと話題が尽きる時ってあるでしょ? あの瞬間。
 思えば、ハタチってちょうど人生の端境期で、それまで家族以外は同年代とだけ接してればいい生活がだんだん変わってくる時だ。(大学生の私はそうだった)
 そういう時期の目標が「1時間のお話」。
 もうひとつは、もう少し大人になってからちゃんとした言葉になった目標。
 ビジネスクラスで出かけるのには、何が必要か。
 お金? 確かにそうだ。 パスポート? もちろん。でも、それ以外にだって必要なことはたくさんある。
 1人でふらりと出かけてどうにかできる実力。これはお金以外にも、とっても重要なファクターだ。たとえばホテルの予約が自分で出来るとか、そういうことだってある。
 実は、いまだに自腹でビジネスに乗ったことはないのだけれど、国内のスーパーシートなら乗ったことがある。贅沢じゃなしに、スーパーシート以外の席が空いてなかったのだ。
 最初は大阪=羽田の短距離線。その当時スーパーシート料金は今より高く、50分しかフライト時間がないくせに、5000円もした。当然、ある一定以上の年齢とかクラスの人しか乗っていない。当時は私も本当にコムスメで、しかも、カジュアルな服だったので、そりゃもー、回りの視線が痛いのなんの(笑)。
 結論。ビジネスクラスに乗るには自信と度胸も必要だ。

 さて、現在。
 私はハタチの目標をクリアできてるだろうか。まだまだ、本当になりたい自分にはなってないが、そんなに悪くもないんじゃないかと思う。


2002/10/30

 先週末、ちょっと用があって銀座に行ったら、松屋銀座正面の旧ワーナーブラザースのビルがシャア専用ビルになっていた。
 と、思ったら、ライティングと真っ赤な布を吹きぬけで貼ったディスプレイ効果(笑)。ここのビルはカネボウから、ワーナーになって、百日店になって、移り変わりが激しい。(後で調べてみたら、今はシャネル銀座ビルというらしい)
 キョーレツなディスプレイは、Vogue写真展『All About Elegance』のため。
 写真展は「ヴォーグ誌に掲載された写真作品のうち、ヴォーグエレガンスを象徴するGILC(ギルク)加盟ブランドの作品をピックアップ」したというコンセプト。やたらカタカナが多いのは、エレガントな世界にはありがっちっすね(笑)。
 GILCとは、銀座通り連合会に属する海外ブランド7社の連合組織で、Ginza International Luxury Committeeの頭文字を取ったものだそう。Burberry(バーバリー)、Bulgari(ブルガリ)、Cartier(カルティエ)、Harry Winston(ハリー・ウィンストン)、Hermes(エルメス)、Louis Vuitton(ルイヴィトン)、Tiffany & Co.(ティファニー)の7社 。キラ星のような一流ブランド達だけど、ハリー・ウィンストンなんてあったっけ?
 と、考えながら1丁目方面に歩いていたら、あった。あった。一見さんおことわりのような、重々しい鉄の扉が印象的なエントランスが。エルメスには「へっへん、ひやかしだよーん」と言いながら入れる私も(←ほんとには言いません。いや、一応。)、ここにひやかしで入る勇気はないなあ。もしかしたら、一生入店しないかも。
 ところで、ここって前は読売広告だったはず。最近は、老舗の建ち並ぶ銀座といえども油断できない。ちょっと見ない間にものすごく変わってしまう。

 Vogueの写真展はおもしろかった。ぱーっと見れば15分で充分な小規模ながら、エレガンスの粋といった感じ。長い歴史のVogueだけあって、1963年の写真と2002年の写真が交互に並んでいたりする。
 そのくせ、年代が古いからといって別に古びていない。これはすごいなあ、と、思う。
 たとえば一般に、マンガは賞味期限が短い。よく言われる理由は、そのファッション性だという。でも、本当に優れたセンスで作られたものは古びないのかもしれない。
 さ、精進、精進。

*銀座公式WEBサイト・銀座コンシェルジェ
ここは「お気に入り」に入れておけばかなり便利かも。
デパートにもリンクしてるし、催しもののスケジュールもわかる。
バーチャル銀ブラで歴史的建築物を見られたり、歴史のページがあったりするのもポイント。


2002/10/29

 「痛快! 娯楽RPG」

 プレステのソフト、「暴れん坊プリンセス」 のコピー。
 普通、いいコピーとしては、
 1.短い
 2.商品の内容を説明できている
 3.商品の魅力の説明できている
 この3つがクリアできているものとされるのだが(ウロ覚え。ウソかも(笑))、このコピーはその条件を満たしている。
 ……って、この広告を見て、こんなことを考えていたのは私だけ?
 どうも時代劇ファンとしては、「痛快」とか「大型」とか「娯楽」とかの単語に弱いんだよな。


2002/10/28

 以前、歓送迎会で後輩と新しく来た派遣さんが盛り上がっていた。
「そうそう、浜ジイが怒るんだよね」
「悪いこと教えるとね。血相変えて」
 年も住むところも違う二人がこんなに盛り上がるとは。私は不思議に思って聞いてみた。
「浜ジイって誰?」
「侍従長ですよお」
 侍従長。
 現代日本で侍従長という役職は、あそこにしかないはず。そう、宮内庁。
 侍従長の名前が、飲み会でアイドルの名前のように気軽に出てくるって何事(笑)。
 でもそういえば、昔、同期に週末の予定を聞いたら、「赤坂に行くの」と、言われたことがあったっけ。
 ちっちっち、ただの赤坂じゃありませんぜ。
 赤坂御所でっせ。
 学習院卒であーやと紀子さまと同じテニス・サークルだった彼女は、ホームパーティに呼ばれたのだった。
 こういうのが身近であるあたり、やっぱり現代って開かれた皇室の時代なんだろうなあ。それって、やっぱり美智子さまのおかげなんだろうなあ。
 昨日の読書の感想とはまた別の意味で、しみじみした私だった。


2002/10/27

 ちょっと微妙な読書、『美智子皇后その愛と哀しみの物語』(河原敏明解説原案、文月今日子/講談社+α文庫)。
 日曜早朝の皇室アルバムをかかさず見ている人には大オススメの1冊。……って、いるのかな、ここ見てる人で(笑)。そうでなくても、文月今日子ファンにはいいでしょう。あの繊細なタッチで、昭和の皇太子妃の素顔が読めるんだもの。
 なんでもそうだと思うが、パイオニアにはパイオニアの苦労がある。
 ご成婚は私が生まれる前だから、民間から入った皇太子妃がどんなに画期的だったか、私は知らない。ご成婚パレードがどんなに熱狂的だったかは知らない。
 ただ、今でも繰り返し放映される美智子皇后の婚約インタビュー、
「心からご尊敬申し上げ……」
は、何回も見ている。愛らしくフレッシュな若いプリンセス!
 私が知っている美智子妃殿下(現在は美智子皇后)とはずいぶん違った。私の知っている美智子妃はもっと線が細くて悲しげだ。
 なにがあの愛らしいプリンセスを変えてしまったのか、読み応えのあるドラマになっている。
 しかも、素敵なのはプリンス達が10割増……だと単に2倍か、じゃあ100割増(笑)でカッコよくなっていること! 浩宮さまもカッコいいぞ。
 こんな人に
「ぼくが全力でお守りしますから」
と、言われたら嬉しいよねえ。
 でも、考えてみたらこのセリフ、そうそう言えるものではない。浩宮さまって、実は男として相当カッコいいのかも。


2002/10/26

 『白雪姫の殺人』 (徳間文庫/辻 真先)読了。
 引退済みのアニメーター達が入居する老人ホーム・ダイヤライフ多摩。そこで白雪姫の衣装をつけた死体が発見された。お面をつけた死体は頭部が切り取られていて……。
 と、いった話。
 アニメーターさん達は、それぞれアッコちゃん、オバQ、鬼太郎など、往年のアニメの主人公のあだ名がついている。このあだ名と本名が作中に混在して、結構大変。
 この作品、とにかく登場人物が多い。辻作品のオールスターキャストといった感じで、ポテト・スーパーはもちろん、それを取り巻く可能兄、新谷編集長、マンガ家那珂一兵他大勢。名前だけならルパン・シリーズの朝日刑事、トラベル・ライター瓜生慎の名前も出てくる。
 サービス精神旺盛な割に、読後感はモヤモヤ。細かい謎が解決しないまま終わるからだろう。
 そんな細かいとこいいじゃんかよ、と、すませられないのがミステリなんだってば。


2002/10/25

 ふと、気がついたら財布に250円しかなく、しかも夜の9時を過ぎていた。ちょうどロッカーで同期と会ったので、1,000円借りて帰る。
 あやうく夕食抜きになるとこだったわ。セーフっ。
 ……。
 ……なんだか毎回こんなことを書いているな……。
 ちょっと財布の中身がギリギリ過ぎ?


2002/10/24

 なんだか唇がカサカサする。
 だいたいオフィスビルというのは、常に乾燥しているところだ。私は、オフィスの引き出しにリップクリームを常駐させている。
 モニターを見ながら引き出しを開け、キャップをはずしてリップをつける。
 ……。
 なんだかすごく変な感触なんですけど。
 ……と、思ったら、私の握っていたのはスティックのりであった……。ああ……。


2002/10/23

 前から興味があった本、『アニメーションの色職人』(柴口育子、保田道世/徳間書店) 読了。  発売からずいぶんたっているのだけれど、もしかして平積みの帯ってプロローグのタイトルがついていたんじゃないかなあ。
 いわく、「高畑勲監督は『同志』、宮崎駿監督が『戦友』と呼ぶ女性」。
 高畑・宮崎両監督の作品を支えた女性・保田道世さんの仕事史を語りながら、日本のアニメの色についてのお話にもなっている。(共著に名前が入ってるが、厳密にいうと書いてないので敬称をつけてみました)
 まずは、著者に聞いてみたい。
 なんで、この本を書こうと思ったのか。
 保田さんの仕事は「仕上げ」。アニメーションの中でもものすごくスポットがあたりにくい分野だ。私だって、この本を読むまで「仕上げ」がどんな仕事をしてるか知らなかった。
 こうした裏方の裏方のようなポジションのことを、なぜ取り上げたのか。普通だったら、1冊の本として成立しにくそうではないか。

 仕上げの仕事というのは、彩色をして、色バケをチェックして、セルの傷をチェックして撮影にまわす。日本で主流のセル・アニメーション製作の工程でいえば、かなり最後の方になる。最後ということは、前の方の作業が遅れればどんどん仕上げにしわ寄せがくるわけで、語られる保田さんの生活はかなりすさまじい。
 保田さんの仕事のひとつに「赤毛のアン」がある。
 私も大好きなTVアニメーションで、関東では日曜に放映していた。孤児院から来た空想好きな少女アンのプリンンス・エドワード島での生活を綴る物語……なんて、今さら説明する必要もないだろう。毎週毎週、叙情的な物語と風景にうっとりしていたものだ。
 そんな作品世界とはうらはらに、スケジュールはかなり厳しかったという。地方によっては土曜放映なのに、場合によっては金曜日に完成。テレビ局にフィルムを入れる時間を考えると、まさに放映との綱渡りだ。保田さんが家に帰れるのは週に一度。日曜日に帰って、掃除洗濯をして1週間分の着替えを持って、また仕事場に、という生活をしていたそうだ。
 なんか、もー、このへんを読んでいて、最近の自分の生活をほーふつとさせて思わず涙が出そうになる。そう、ホントに忙しいと季節の変わったのにも気がつかないんだよね。
 ふと思い出したのが、たぶん同じ時期にアニメの仕事をしていた真先の『TVアニメ青春記』。受ける印象も内容もかなり違う。個人作業と集団作業ということもあるだろう。製作過程の最初の方と最後という違いもあるだろう。つくづくアニメーションというのは、大勢の人ががんばってできているんだなあ、と、思う。

 途中から、保田さんは色彩設計という仕事を担当するようになる。保田さんの仕事は、『火垂の墓』の高畑監督と『となりのトトロ』宮崎監督(この2つは併映)が取り合ったという素晴らしさ。
 ジブリが高い評価を受けているのは、こういう職人に支えられているのだろう。
 もちろん、ジブリのみならず、アニメ全体が語る問題点などにも語られて、何よりも現場の気持ちがわかる1冊なのではないだろうか。


2002/10/22

 よくお仕事で連絡を取り合うJ社のE江さんが、ピョンヤンに行って来たそうだ。
 確か先々週、電話をしたら「出張です」と言われたのを覚えているのだが、まさかピョンヤンに行っていたとは。
 E江さんのお話だと、写真を取るのも大変だったそうだ。でも、これはスパイがどうこういうキナ臭い話ではない。
 北朝鮮といえば、やはり金日成。
 パリといえばエッフェル塔、ロンドンといえばタワー・ブリッジ、ニューヨークといえば自由の女神のように、北朝鮮といえば名物は金日成なのだ。しかし、実物と写真を撮れるはずもない。残された手段は彼の銅像をバックに写真を撮ることだけ。
 一行の皆さまを配置して、さあシャッターを押そうとしたE江さんは北朝鮮の係員に止められた。
「写真を撮ってはダメです」。
 なぜだ。ただの銅像だし、あたりに機密に触れるような建物はない。
 E江さんはいぶかしんだ。
「どうしてダメなんですか?」
「金日成主席の顔に太陽があたってないからです」

 その日は、運の悪いことに曇りであった。E江さんとそのご一行は太陽を待ったが、ついに雲から顔を出すことはなかったという……。

 やっぱり不可解な国だわ。北朝鮮。


2002/10/21

 『聯愁殺』(西沢保彦/原書房)読了。  タイトルは「れんしゅうさつ」と読む。私は読めませんでした(笑)。

 見ず知らずの若い男に殺されそうになりながらも、なんとか助かった梢絵。だが、なぜ自分がこんな目にあったのかがまったくわからない。
 事件から四年後、梢絵は、男が自分を襲った理由をはっきりさせるため、「恋謎会(れんめいかい)」に調査を依頼した。各メンバーはそれぞれが持ち寄った“証拠”をもとにさまざまに推理を繰り広げるのだが…。
 ロジックに淫した西沢ミステリの真骨頂。

 内容は楽をして本の見返しから。(一部省略しました)
 ロジックに淫して、というのは本当にその通りで、この本の事件が起こっている部分というのは全体の1割程度なのだ。あとの9割で何をしているかというと、謎解き。
 クライマックスで、金田一とか探偵が登場人物の皆さんを集めてやるでしょう?
 あれが延々と9割続くと思いねえ。
 しかも、主人公の梢絵以外は全員が(回想や推理途中で名前だけあがるキャラクターを除いて)探偵役だと思いねえ。
 これを聞いて読みたいと思うんだったら、たぶん、予想を裏切らないだろう。私も、この本が2/3の分量だったら、ものすごく絶賛しそうな気がする。
 手放しで評価できないのは、探偵諸君のお話を聞いているうちにいくつか先が読めることと後味が悪いこと。
 でも、この物語の終わりは、これでこそいいんだろうなあ。難しいわ、エンディングって。


2002/10/20

 さんのオススメだったので前々から読んでみたかった乙一。やっと読めたのが、『夏と花火と私の死体』(乙一/集英社文庫)。
 第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作にして、乙一のデビュー作だそうだ。
 同作品はJBOOKSから発刊されてるのだが、やっぱりそれだと購買層が限られるのだろう。確かに、一般文庫に入っても遜色ない。
 実はなかなか読めなかったのも、私が行く書店はライトノベルがほとんど置いていなかったせいもある。梢さんが持っていたのが、確か角川スニーカー文庫の『きみにしか聞こえないCalling you』だったので、私はてっきりライトノベルの人かと思っていたよ。安孫子武丸、綾辻行人絶賛のホラーの人だなんて知っていたら、手に取らなかったかもしれない。(笑)。
 いくつか書評も読んでみたが、「16才で書いた」のオンパレードがちょっともったいないかも。  そればっかり言われちゃうのもなあ。
 文庫解説で書かれていたように、若いから作品の評価をプラスできるものでも、老年だからマイナスするものでもない。(解説:小野不由美)

 語り口の冷静さに好みは別れると思うのだが、文庫の値段が充分に楽しめるのは本当。


2002/10/19

 読み終わっときながら、忘れていた、『フローリストは探偵中』 (ジャニス・ハリソン、野口百合子訳/ 集英社文庫)。
 設定はいいのだと思う。花屋、アメリカの田舎町、アーミッシュと、興味深いモチーフが用意されている。
 しかし、総合した印象が地味。もうょっとねちっこく描写していけば面白いのになあ、と、思ったりするのは、私が日本人だからだろうか。でも、「刑事ジョン・ブック」なんかは、アーミッシュの生活に入り込んだ刑事、という設定で成功しているし。
 ところで、ガーデニング・ミステリと表紙に銘打ってるのはいかがなものか(笑)。ガーデニングったら、やっぱり庭造りがどうの、コンテナの配置がどうの、でしょ?


2002/10/18

 本日は会社の定期健康診断。
 後輩Yが
「レントゲン撮るの面倒だから、『妊娠の可能性あり』にしちゃおうかなー」
と、言っていた。
「検尿も面倒だなー。えっと、生理中にマルをして」
 ……。
 ……って、おいおい、その二つは両立しないぞ!(笑)

 レントゲンを撮るために並んでいたら、先輩が胃部レントゲン・デビューの人(←素直な性格)を脅かしていた。
「バリウムはいいんだけど、発泡剤飲んで回るのがきっついんだよ」
「ええっ、回るんですか? 自分で?」
「そう、3回転回って、アラベスクのポーズを取るのがツライの」
 ……ウソです。
「ゲップが出そうになるのを必死でガマンしてると、係の人が『はい、ぴたっと止まって腰骨を押し付ける感じで〜』って」
「ええっ、ゲップしちゃいけないんですか!?」
「で、『視線、こっち下さい。はーい、撮りまーす』って撮るんだよ」
 大ウソです(笑)。
 でも、そっとしておいてあげるのも愛情だろう。胸部レントゲンしか撮らない私は、青ざめている同僚を後に「がんばってね、アラベスク」と手を握って待合室を後にしたのだった。


2002/10/17

「かっこいいとは、こういうことさ。」

 ご存知、「紅の豚」のコピー。
 スタジオ・ジブリの作品のすべては糸井重里作品だそうで、どれも上手いのだけれど、これは唸るくらいの出来。
 そう、ポルコ・ロッソは、かっこいい。
 中年だし、オナカ出てるし、ブタさんだけれど、それでも。

 タフでなければ生きていけない。優しくなくては生きていく資格がない。

 こちらは、チャンドラー描く、探偵・フィリップ・マーロウの名セリフ。
 ミステリ名セリフ・ベスト10なんかを選んだら絶対ランクインするだろうほど有名なのに、マーロウは、このセリフをすっごくサラリと言うのですね。
 実は、私はハードボイルドっていうのは「やせがまんの美学」だと、思う。男の人が、その柔らかい部分を照れながら、タフに毎日を生きていく。
 それをとてもよく体現してるのが、またポルコ・ロッソというキャラクターだ。マーロウの名セリフは、そんな男の人すべてに送るエールのようでもある。

 「紅の豚」は、を映画会社の試写室で見た。パンフは買えないかわりに、帰りに広報用のプレス・シートなんてものをもらった。
 このプレス・シート、4Pくらいの薄いもので内容紹介と宮崎駿監督の談話が掲載されていたと思う。思う、としか書けないのは、さっさと知人にあげてしまったから。(とっとけば、ヤフオクあたりで高価落札されたかもしれないなあ(笑))
 だから記憶で申し訳ないんだけれど、こんなことが書いてあった。
「登場人物は空賊にしても単純で明るい。でも、それは色々なことを越えての単純さなのです。逆に言えば、そうでない単純さを僕は好きではありません」
 なるほどな、と、思った。
 明るく単純でタフで優しくて、カッコ悪いのも平気。

 かっこいいとは、そういうことさ。


2002/10/16

タイトルまですべて手書き「大人は判ってくれない」  近所で「野口久光・ヨーロッパ名画座展」をやっていた。
 独特のイラストと描き文字でいい雰囲気のポスターは、名前だけはよく知っている名画がたくさん。「モンパルナスの灯」、「殿方ご免あそばせ」、「夜ごとの美女」……。
 野口久光という方は20世紀初頭の1909年に生まれて、1994年に亡くなった。映画会社に入社し、映画を何本かプロデュースしているが、ジャズの評論家として名高い。
 今回の展覧会は、50年代を中心としたポスター作品。
 つまり、戦後、ジャズやフランス映画はこの人によって一般の日本人に紹介されたわけですね。時代がちょっと違うので、無知な私は知らなかったのだけど。
 それでも、1992年の淀川長治と双葉十三との3ショット写真には、
「お、御大。おんたいいいいいいいっ!」
と、ひざまづきそうになった(笑)。
 その分野で一時代を築いた80代の方というのは、本当に趣がある顔をしていらっしゃる。

 なんでこれを平日に見られたかというと、ビルのアトリウムでやっているから。ビルには夜中12時まで外部の人間も入れて、展示のポスターは夜間もふつーに置いてあるのだ。「誰か盗っていきやしないのだろうか。はらはら」と、ひとごとながら心配になったりするが、別に問題もないらしい。まだまだ日本って平和な国なのね。

 なお、検索していたら、「淀川長治のクラシック名作映画」というところがあった。氏が、生前、自分の解説を付けて次世代に残したいと情熱を傾けた映画作品に口述で解説したものをUPしてある。
 IVCというソフト会社のHPの中にあるのだけれど、淀川長治の口述そのまんま、スチール写真満載の掲載だ。データベースとしても、かなり価値のあるものだと思う。
 おあとはDVDでどうぞ、とか言わず見せてくれるあたり、なんだか良心的でいいなあ。


2002/10/15

 この本はきっぱりすっきり絶版。でも、完本の形で再発されてるからいいか。『建築探偵日記・東京物語』(藤森照信/王国社)。
 東京に住んでて何が便利かといえば、地域資料が手に入りやすいことだ。東京都の図書館なら、地域資料は必ず置いてあって、専用の書棚もある。 一般書籍の棚でも東京や江戸に関する文書は、かなり充実していると思う。
 はい、これも資料として貸出ししました。
 でも、なんとなく資料を読むのに疲れたというか、放っておいたまま2週間。某所で「読んで感想文をあげ」るように言われたので、あわてて読んだ次第。

 私は不勉強で知らなかったが、藤森照信という人はかなり有名な人なのですね。東大の教授であり、赤瀬川原平らと設立した路上観察学会のリーダーであり、"建築探偵"である。
 「千と千尋の神隠し」で有名になった小金井の江戸東京たてもの園の設立にも尽力している。この本に登場する白金の小寺醤油店や千住の子宝湯も、その使命を終えた後たてもの園に移築されているのだが、その移築にも尽力されていらっしゃる。

 こうした古い建物は、東京からガンガン消えていっている。今のプレハブな家の作りと違って、職人さんが一軒、一軒大切に建てた家や、当時の最新の技術で建てられた洋館やビル達。どれも、それぞれに魅力的だ。
 私も古い建物は好きなので、日本橋で働いていた時代、三井銀行本店(現在の三井住友銀行東京営業部)の建物なんかは大好きだった。遠回りなのに表通りの三井信託銀行から入って、中を通りぬけてキャッシュ・ディスペンサーに行っていた。
 黒と白の大理石のチェッカー模様の床、彫刻の施された木の手すり、外部のエンタシスの柱! 私にとって旧三井銀行本店は、子供の頃のおとぎ話で読んだ「大広間」の姿だった。伝票なんか乗ってる机も待合の椅子もうっちゃってしまえば、ダンスパーティーにぴったりの夢の広間でないか。
 こんな古い建物やビルは、どんどん都心から消えつつある。確かに、古い建物はあまり快適とは言えない。三井銀行本店も、行員さんの話だと天井が高くて手元が暗くて作業しにくいそうだ。(←派遣で来ていた元銀行員さんに聞いた)
 それは確かにそうなのだけれど、やっぱり古い建物がなくなってしまうのは悲しい。
 木の雨戸、濡れ縁。広い上がり框(かまち)。
 建築探偵には新しすぎる昭和の建物だって、私は愛していたよ。まあ、思い出は美しくなりがちだけどね(笑)。


2002/10/14

 お休みだったが、上司から電話がかかってきた。
 くっそう。私はテロを憎むぞ!


2002/10/13

 どうも、私は眠ってストレスを解消するタイプらしい。とにかくこの日は予定もヤボ用もなかったので、こんこんと眠りつづけた。途中、トイレ休憩を挟みながら、実に合計20時間。
 ……。
 …………どうも3連休という感覚がなかったのは、このせいか!


2002/10/12

 その日、私はキョーレツにお金がなかった。
 ……って、前にもこんなことを書いていたなあ(笑)。(そんなにいつもいつも貧乏なのか?>自分)  とにかく、前日、1万円CDでおろしたくせに、それでガス・電気・水道の公共料金を払ってしまったので、残金がちょっとしかなかった。コンビニでお買い物した後は、1000円ちょっとしか残っていないという体たらく。
 ヤボ用があって、早起きして駅の向こうの地区センターに行き、とぼとぼと駅前までの道を歩く。
 あれ? いつもとなんか違う。(行きは時間がなかったので、歩道がない道をショートカットしていっていた)
 屋台……?
 なんと、その日は3連休ということもあって、駅前で「ふくしまつり」をやっていたのだった。福島祭りではない。福祉祭り。(←自分が間違えた)
 特設舞台でのイベントや、指文字講座などの他、ハンディキャップの人が作った果物やクッキーやケーキなどの販売、後援団体他のバザーなどなど。戸越銀座商店街から出店も出ている。
 ああ、お祭りって素晴らしいっ。
 靴下は100円だし、餅太郎は30袋で285円だし、ハンカチなんて1枚10円だし!
 1000円もあれば楽勝なあたりが素敵。
 ちなみに笑えたのが、某ホテルのホテルマンがきちんとしたスーツ姿で売っている屋台。
 チャリティーですもんね。地域社会に貢献しないと。


2002/10/11

 最近、ちょっと気になるアーティストを発見。
 まずは、この文章を読んで下さいな。

 これらの写真は、私がかつて世界各地をあの男と廻った際に採取した摩訶不思議な生物の一部である。  あの男とは、そう、ヒロポンスキー氏。
 旧ソ連科学アカデミーに所属していた、また、政府の某組織にも在籍していたこともある、と語る謎の人物のことだ。
 私は彼に誘われるがままにヨーロッパ、アフリカ、アジアの各地へ赴き、これらの驚異的とも言える生命体の捕獲を行ったのだった。

 そして、このページをどうぞ。
 どうです?
 不思議でしょう?
 なんだか人間進歩してないなあ、と、思うけれど、いまだに「空想科学」は素敵でしょうがない。「人魚のミイラ」への興味とどこが違うんだ、と、いわれれば何も言えないのだけれど。
 暗い蝋人形館への、ちょっといかがわしい興味に通じるところなんかもあるのかもしれない。
 でも、こういうのがセンス・オブ・ワンダーな気もするんだよなあ。

   リンクしたページは、以前のオフィスのすぐそばのギャラリー。もう、とっくに終わってしまっていて、残念至極。
 次に江本創という人の展覧会を見かけたら要チェックだ。


2002/10/10

 昨日書いた『うまい犯罪、しゃれた殺人』という本は、ヘンリー・スレッサーの短編集でした。アルフレッド・ヒッチコック編、となっていたので、勘違いした模様。BBSでご指摘いただいたので、お詫びして訂正します。

 さて、本日のコピー。
「欲しいものが欲しいわ」

 これは、出典を覚えている。ずいぶん前の西武百貨店のお歳暮かお中元のコピー。
 こっちはうろ覚えなのだけれど、目をつぶって顔を寄せる女の子のアップの写真を使っていた気がする。キスの直前というか、そういう恋愛を想像させる出し方だった。
 で、素直にそうした思惑に乗せられ、
「そうだよね。自分に自信がなかったり、変に考え込んだり恥ずかしかったりして、好きなものを好きと言えないことって多いもんな。それをきちんと相手に伝えられるって大事だよなあ」
と、考え込んだ。
 そして感動を胸に、学校の友達に「このコピーいいよねえ」と語ろうとすると、
「そうだよね、欲しくないもんもらっても邪魔なだけだし」
と、アッサリ返答されたのだった。


2002/10/9

 最近、仕事ばっかりしていてどうも日記が短調だ。(←指摘される前に言って、ラクになろうと思いました)
 と、いうわけで、読書感想文がない日は「今月のテーマ」を決めて簡単な文章を書こうかと思う。読書日記始まって以来の企画もの。コラム……みたいなコーナーがないもんね。うちのHP。
 今月のテーマは「うまいキャッチ、しゃれたコピー」。
 実はこれ、『うまい犯罪、しゃれた殺人』という、早川から出てたアンソロジーのタイトルのもじりなのだけれど……どうも、もじった時点で平凡になってしまったわ。オリジナルのタイトルはあんなにシャレているのにねえ。

「違いを愛そう」

 以前行った研修で、教官に
「その友達とは『なぜ』友達なのか、理由を書き上げなさい」
ということを言われたことがあった。
 書き上げたものを各自読み上げていくのだけれど、「年が近い」、「趣味が同じ」、「価値観が似ている」……などなど。
 ひととおり読み上げられて教官いわく、
「人間は自分と似たものだけを愛しがちなんですよ」。
 最初に結論を言われてると反発しそうだが、こうやってみると「なるほどな」と、思ったものだった。

 それとは全然尽き抜けてて好きなのが、このコピー。確かデパートの広告だったと思う。
 サイズ展開やカラー展開が豊富にありますよ〜、という広告だった気がする。(よく覚えてないんだよなあ(笑))
 だけど、この言葉って、短いけどピースフルなパワーがあっていい感じ。
 人種が違ったり、宗教が違ったり、正義が違ったり。そういう世界だけれども、お互いの「違い」を愛せるといいなあ、などと思ったり。


2002/10/8

 3週間くらいダラダラ読んでいた『見ないふりして』 (メアリ・H.クラーク、深町真理子・安原和見訳/新潮文庫)。
 私は知らないんだけど、"Pretend You Don't See Her"という曲があるそうだ。「本当は気になっているのに見ないふりをして……」みたいな歌詞らしい。そこからタイトルを取ったこの作品は、見なければよかったものを見てしまった女性が主人公。

 NYの不動産会社で働くレイシーは、死んだ娘の部屋を売りたいというイザベルのために仕事をしていた。アパートに呼ばれた彼女が見たものは、走り去る男と瀕死のイザベル。殺人事件の目撃者となってしまったレイシーは、FBI証人保護プログラムを適用されるのだが……。

 結局はロマンチック・サスペンスなので、複雑な筋立てや驚愕の事実を期待してはいけない。サスペンスのくせに3週間も読むのにかかったあたり、先が知りたくてたまらない、ということもない。こう書くといいところがなさそうだが、この本の場合、注目は証人保護プログラムだろう。
 今まで、ミステリで何回も目にした「証人保護プログラム」。
 証人として証言することに身の危険が伴う人が受ける。たとえば、マフィア関連の証言をすれば消されるのが常識なので、そういう時に適用される。
 だいたいは、「証人保護プログラムを受け」といった、あっさりした記述。(グリシャムの『依頼人』とかさ) 名前は知ってはいたが実体を知らないもの、それがFBI証人保護プログラムだ。
 さすがクラーク、大作家だけあって取材対象も懇切丁寧に教えてくれるらしい。
 私は証人保護プログラムに置かれた人間の立場からの詳しい描写を初めて読んだ。
 色々わかったぞ。
 まず、証人保護プログラムはニセの社会保障ナンバーをくれる。(←戸籍のないアメリカでは、日本の戸籍くらい重要) 新しい名前で運転免許証も発行してくれる。でも、ニセの紹介状(←アメリカ社会での仕事さがしに前勤務先のこれが必要)までは発行してくれない。

 と、いうことで、FBI証人保護プログラムのハウツーとして読むにはいいんじゃないかな、うん。


2002/10/7

 出発待ちの時間に読もうかと思ったら、案外アッサリ乗れてしまったので行きの飛行機の中で読んだ『輝夜姫(20巻)』(清水玲子/白泉社)。
 読んでいる時には気がつかなかったが、もう20巻か。前の連載が13巻くらいだったので、それくらいの時点で1巻から一気読みした。(だって、ちんたら読んでるのたるいじゃーん) こんなに長くなるとは思わなかったよ。それから結局1巻ごとに読んでいるので、13巻まで貯めておこうと一緒じゃん(笑)。
 ストーリー紹介は白泉社のHPからもらっちゃおう。

 時は21世紀、日本の孤島・神淵島(かぶちじま)で育てられた少年達が、再び島へ集められた。それは、彼らがたどる激動の運命のプロローグだった…! 衝撃のSFロマン。

 うーん、これだけじゃ何がなんだかですね(笑)。
 神淵島は天女伝説の残る島。タイトルの『輝夜姫』は「かぐやひめ」と読み、この日本人なら誰でも知っている昔話が物語りのベースになっている。
 でも、一筋縄ではいかないのが清水玲子の描く世界。
 神淵島に集められた少年・少女は世界の要人のクローンで、交換部品として生を受けたものだった。神淵島の天女伝説の真実とは何なのか。月の石とは一体何なのか。
 思うに、繊細で美しい絵柄で、どろどろと醜い人間の姿を描くのが著者の真骨頂だろう。この巻でも、愛情の渦巻き具合がものすごい。
 私がやられた、と、思ったのが17巻。
 ロシアに拘束された守に面会に行く主人公・晶(あきら)。晶は輝夜姫の生まれ変わり、という設定で、神淵島に育った少年のほとんどは晶に恋しているわけですね。
 クローンとしての意識が暴走して、晶の目の前で人を殺した守が叫ぶ。
「いつまでもこんな汚いところにいるな、早く行け!」。
 これはそのまま晶が過去に(意識のないうちに)犯した殺人の風景とだぶる。

「行け」
(行かないで)
「いつまでもこんな汚いところにいるな」
(血で汚れても、変わってしまっても)
「早く行け!」
(それでも好きだといって)

 理解されて愛されたいと思う、ものぐるしい激しい思い。
 こんなに重いドラマティックなシチュエーションにいない普通の人間でも、誰もがかかえる思い。やたらハッピーエンドが好きな私が、決して読後感がいいとは言えないこの作品を読むのも、毎回、そんな思いに動かされるからだろう。
 たぶん、誰もが愛されて許されることを望んでいる。
 そして、本当に理解されることはとても少ない。
 だからこそ、私はハッピーエンドを受け取り手に送り出したいと思ったりするのだ。


2002/10/6

 高校からのお友達のイラストレーターさんがグループ展をするというので、出かけていく。大阪・藤井寺のゆめいろミュージアムというところ。
 遠かったです、藤井寺は。どっちかというと、大阪に着いてからが(涙)。
 でも、明治時代の町屋を改装したミュージアムは雰囲気があって素敵。狭いところなんだけど、銀座や日本橋のギャラリーとはまた違った雰囲気があって。
 夕方5時近くに着くという余裕ぶっこいた登場だったため、展示を見て、お茶をいただいて……そのあと撤収をお手伝いする。展示物を見たのが10分、片付け2時間といったところか。
 そして、高速バスに乗る為に急いで去っていく友を見送る……。
 充実してたけど、慌しい日曜でした(笑)。


2002/10/4

 管理人さん(正しくは管理会社の人)からのメッセージが携帯の留守電に残っていた。
「リオハ(仮名)さまは住んでいらっしゃるのでしょうか?」
 ……。
 …………確かに、朝早く出かけて、日付が変わってからじゃないと帰ってません。滞在時間=睡眠時間みたいなもんです。生活していないので、ゴミもほとんど出してません。
 でも、毎日帰っているんだよ〜。
 しかし、先週になって、引っ越して初めて隣の人に会ったという私はいいわけのしようもなく、素直に残っていた電話番号に電話して、
「2ヶ月前から住んでます……」
と、報告したのであった。


2002/10/3

 10/1に台風が来たおかげで読めた本、『名探偵は、ここにいる(ミステリ・アンソロジー1)』(太田忠司ほか/角川スニーカー文庫)。「仕事はとりあえず明日にしていい」という帰宅命令が出たので、私としてはウホウホしながら帰った。
 いいわね、天災って(笑)。(深刻な被害が出たところには申し訳ない話だけど)
 内容は 大田忠司『神影荘奇談』、鯨統一郎『Aは安楽椅子のA』、西澤保彦『時計じかけの小鳥』、愛川晶『納豆殺人事件』の4本の書き下ろし短編。
 今回のトピックスは、初めてバカ・ミステリを読んだこと!
 トリックがチャチとか、そういう話ではない。
 鯨統一郎の短編は、あまりにバカ・ミステリではないだろうか。だって、タイトル通りなんだもん。
 安楽椅子探偵。普通は安楽椅子に座って事件の話を聞いただけで謎を解く探偵を指す。要は現場百辺の警察やなんかとは対局にいる探偵のこと。代表をあげれば、クリスティーのミス・マープルか。
 んで、こちら安楽椅子探偵。安楽椅子に座った探偵ではない。安楽椅子探偵なのだ。まあ、詳しくは作品を読んで下さい。そこいらなかなか脱力するぞ。

 西澤保彦の短編は、最近の西澤氏らしい感じ。ちょっとした話の断片や物事の切れ端から風が吹けば桶屋が儲かる式に推理を展開していって真相にぶちあたるという、「お前、そりゃ強迫観念の思い込みっていうヤツじゃあ」と、ツッコミを入れたくなるような話の流れ。
 驚愕のパズラーものが好きな私としては物足りないなあ。
 まあ、スニーカー・ブランドで「ミステリ初心者にもOKなもの」というの企画で編まれているようなので仕方ないか。


2002/10/2

 ちょっと前に少し毛色の変わったガイドブックが流行ったが、もしかしてそのひとつだったのかな。『ヴィヴァ!イタリアの職人(アルティジャーノ)たち−神の指をもつ人々の物語 −』(松山猛/世界文化社) 。
 内容は、めんどくさいので出版社がつけているものを紹介しよう。

 イタリアの町を歩けば、今日でも小さな路地の一角でコツコツと手仕事に精出す職人たちの姿を目にすることができる。
 「工芸の国」の人々、彼らがアルティジャーノだ。日本ではとうに失われてしまった世界、伝統を受け継ぐ彼らの世界の豊かさに魂を揺さぶられてしまった筆者は、5年間におよぶ取材を経て、彼らの指先に「神」を見ていた。
 フェラガモ、グッチをはじめ26工房を取材・収録。フィレンツェ、ヴェネツィアの工房ガイドマップ付き。

 ベネツィアは行ったことがないが、フィレンツェは今も中世の雰囲気を色濃く残す土地だ。(イタリアは古い建物がごろごろ残っているので、中世を残すのはフィレンツェに限ったことではないが)
 フィレンツェは、お買い物ゴコロもそそる町である。
 それは、この本で取り上げられている職人が数多く今も優れた工芸品を作っているところだからだろう。橋上家屋が見られる有名なベッキオ橋は金細工で有名だし、街中にはマーブル紙で有名な店もある。一時期、日本女性に流行ったのが、元エルメスの職人が作るというウリのバッグのオーダーだった。買いたいもの、買いたくなるものが街中に溢れている気もする。
 ヨーロッパという国は階級社会の国で、あまりその階級を飛び出すことがないという。つまり、職人の子供は職人で、たとえば大学教授になるとか、そういうことがあまりないそうなのだ。
 だからこそ守られる職人のワザなわけだが、上昇思考がない、という言い方もされたりする。

 でもね。
 日本女性が競うようにブランドものをもつことについて、面白いコラムを読んだことがある。
 日本や韓国の上昇志向は、これすべて中国の科挙の故事によっているという。
 科挙といえば、中国の官僚採用試験。優秀な人材を登用するため、身分にはこだわらず広く門戸をあけていた。
 コラムは、この科挙の制度が今の日本の上昇志向のモトだというのですね。
 優秀であれば、どんどん高い地位に行くことはできる。こうした考えを、日本やアジアの人々は経験で知っていると(笑)。
 なーんて、そんなことを読みながら思い出したり。


2002/10/1

 会社員なので、残業計算をした。
 ……。
 …………。
 ……130時間30分。
 一応、あの時はそんなこともあったと、笑って見れるように書いておこう。あの時はと……くっ。

 タイムカードのチェックをしていた上司に
「よく、生きてるね」
と、言われたが、私も不思議っす。



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