2002/7/15
『FBIマインド・ハンター−セックス殺人捜査の現場から−』(ジョン ダグラス、マーク オルシェイカー・, 井坂清訳/早川書房)読了。
「アメリカで『FBI心理分析官』を凌いだベストセラー」とうたい文句にあるように、こちらもプロファイラー書いた本である。著者のジョン・ダグラスは、『FBI心理分析官』のボブ・レスラーと同じ職場で働き、レスラーの名前も作中に何度も出てくる。
プロファイルという技術は、比較的新しい技術だ。現在のスタイルまで進化させるには色々な人の色々な努力が必要で、その中には刑務所を巡って連続殺人犯へインタビューする、などというフィールドワークも含まれているのだ。ダグラスとレスラーもコンビを組んで、エド・ケンパーやリチャード・マンソンなどの有名な連続殺人犯にインタビューしている。
だから、これは『FBI心理分析官』とあわせ技で読むのが正しい。同じ仕事を一緒にしていて、だから同じ殺人犯が何度も登場する。実際の出来事は変わらない。ただ書き手の視線が違う。
レスラーの『FBI心理分析官』が異常殺人犯にフォーカスされているとしたら、ダグラスの本はプロファイラー(の自分)が焦点だ。プロファイラーになった男の半生記としても読める。だから、どちらが読んでいてラクかというと、こちら。
また、ダグラスの方がユーモア感覚がきつい。何ヶ所かピックアップしてみようか。
彼はたびたび警察官向け講習の講師となっている。(年間出張日数は150日!←そりゃ倒れるよ、アンタ……) そういう場面でのエピソード。
それから日本人警察官のケースもある。彼は他の警官たちに、尊敬を集めているインストラクラーにどう挨拶したらいいかたずねた。そのあげく、わたしが廊下で会うたびに、彼は微笑を浮かべ、丁寧にお辞儀をしてこういった。「ファック・ユー、ミスター・ダグラス」
わたしは面倒くさいことを避けて、お辞儀を返して、こういった。「ファック・ユー・ツー」
また、妻に殺されそうになった特別捜査官のエピソードを、こう始めている。
ジャドソン・レイはクオンティコの生きている伝説のひとりである。彼はもう少しで死んだ伝説になるところだった。
こういうユーモア感覚をすべての日本人がおもしろく感じるとは思わない。
プロファイリングという仕事に関しては
残念ながら、われわれの仕事は成長産業であり、顧客がいなくなることはない。
と、述べているが、頭のカタイ人に言わせると「不謹慎な」と、なるかもしれない。
でも、たぶん、こうした精神が殺人犯の心理を追う日常から彼を健全な日常に連れ戻しているのだろう。